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57.それぞれの思い
天空の魔女 リプルとペブル
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57.それぞれの思い
「あれっ、さっきトランク積んだ時、こんな箱あったかな?」
荷台に置かれた大きな木箱を見てペブルが首をかしげたが、
「ま、いいか」
と、荷台に乗り込み、すぐに自分のトランクを開けるとクッキーの缶を開け、パリポリとかじりはじめた。
「出発するよ」
ジールの声が聞こえてきて、クッキーを口いっぱいほおばったままのペブルは
「ほおい」
と、返事する。
「うふふ、一人でここにいられるの最高!」
ジールとロッド、リプルは御者台に座っていて、後ろの幌の中は見られる心配はない。
ペブルは、クッキーの缶を抱えたままごろんと寝転んだ。
それから一時間ほど後のこと。
がたがた揺れる馬車の荷台で、ロッドは、ぶすっとした顔をしていた。
その隣で、ペブルは、頭をガクガクさせながら魂が抜けたような顔をしていた。
ロッドがぶすっとした顔をしていたのは、御者台のジールの隣に、自分に代わってリプルが座っていきいきと馬を御していたからで、しかもそれが、自分より上手だったからだ。
しかも、ジールとリプルは、魔法のことや歴史のことと、何かと二人で話が盛り上がる。
(なんだこれ、居場所がない)そう思ったロッドは、途中の休憩場所で荷台へと移動してきたのだ。
リプルの馬を操る様子を誉めるジールを思い返しながらロッドは、
「クッ、負けないぞ」
と、リプルに対して密かにライバル心を燃やしていた。
いっぽうペブルが魂が抜けたような顔をしていたのは、初めて乗った馬車に酔ったからだった。
「馬車に乗りながら、物食べるなんて自殺行為だぞ」
ロッドの厳しい言葉にも、ペブルは返事ができないでいた。
さらに、二人の背後にある木箱の中……息をひそめている人影があった。
「痛っ! もう、何ですの? この揺れ、髪が乱れてしまいますわ」
と、小声で文句を言っているのは、イザベス。
「しっ、イザベス。外に聞こえるわよ」
マーサがあわててイザベスをいさめる。
二人は、こっそり馬車の荷台に置かれていた衣装箱の中に忍び込んでいた。
イザベスが、自分もジールと一緒に王都に行くと主張し、止めるマーサをも引きずりこんだのだった。
そんな事とは知らないリプルたちは、隣村のハルケスを目指してのんびりと馬車の旅を楽しんでいた。
「あれっ、さっきトランク積んだ時、こんな箱あったかな?」
荷台に置かれた大きな木箱を見てペブルが首をかしげたが、
「ま、いいか」
と、荷台に乗り込み、すぐに自分のトランクを開けるとクッキーの缶を開け、パリポリとかじりはじめた。
「出発するよ」
ジールの声が聞こえてきて、クッキーを口いっぱいほおばったままのペブルは
「ほおい」
と、返事する。
「うふふ、一人でここにいられるの最高!」
ジールとロッド、リプルは御者台に座っていて、後ろの幌の中は見られる心配はない。
ペブルは、クッキーの缶を抱えたままごろんと寝転んだ。
それから一時間ほど後のこと。
がたがた揺れる馬車の荷台で、ロッドは、ぶすっとした顔をしていた。
その隣で、ペブルは、頭をガクガクさせながら魂が抜けたような顔をしていた。
ロッドがぶすっとした顔をしていたのは、御者台のジールの隣に、自分に代わってリプルが座っていきいきと馬を御していたからで、しかもそれが、自分より上手だったからだ。
しかも、ジールとリプルは、魔法のことや歴史のことと、何かと二人で話が盛り上がる。
(なんだこれ、居場所がない)そう思ったロッドは、途中の休憩場所で荷台へと移動してきたのだ。
リプルの馬を操る様子を誉めるジールを思い返しながらロッドは、
「クッ、負けないぞ」
と、リプルに対して密かにライバル心を燃やしていた。
いっぽうペブルが魂が抜けたような顔をしていたのは、初めて乗った馬車に酔ったからだった。
「馬車に乗りながら、物食べるなんて自殺行為だぞ」
ロッドの厳しい言葉にも、ペブルは返事ができないでいた。
さらに、二人の背後にある木箱の中……息をひそめている人影があった。
「痛っ! もう、何ですの? この揺れ、髪が乱れてしまいますわ」
と、小声で文句を言っているのは、イザベス。
「しっ、イザベス。外に聞こえるわよ」
マーサがあわててイザベスをいさめる。
二人は、こっそり馬車の荷台に置かれていた衣装箱の中に忍び込んでいた。
イザベスが、自分もジールと一緒に王都に行くと主張し、止めるマーサをも引きずりこんだのだった。
そんな事とは知らないリプルたちは、隣村のハルケスを目指してのんびりと馬車の旅を楽しんでいた。
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