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55.御者の正体
天空の魔女 リプルとペブル
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55.御者の正体
「全く、馬車につながれたトッドとレッドほど御しにくい馬はないな」
「こいつら、あまり息が合わないからな」
馬車をあやつっていたのは、ジールとロッドだった。
二人は、御者台から目を丸くしているリプルとペブルの前に飛び降りた。
「おはよう、よく眠れた?」
「旅に随行してもらえるそうだな。よろしくお願いする」
「こちらこそ」
「よろしくね~、私、王都でおいしい物食べるの楽しみにしてるから」
と、言ったペブルの言葉にロッドが反応した。
「はぁ? 大切なお役目を果たせることを名誉だと喜べよ」
「それは、がんばるよ。けど、ごほうびも大切」
まったく悪びれないペブルをロッドが軽くにらみつける。
その間に、ジールがペブルのトランクを手にして、
「これ、荷台に積み込むね」
と、ほうり込もうとした時、ロッドが
「ちょ、おう、じゃなくて、ジール。私がやります」
横から手を出そうとする。
それをさえぎったジールがロッドに小声で言った。
「じゃまするなよ。これ、俺の力の見せ所なんだから」
「ん? はっ! 気づきませんで。失礼しましたっ」
ロッドは、魔法をかけられたみたいに固まった。が、顔は嬉しい物を見つけたみたいににやけそうになるのを必死に押し殺している。
そこに、ペブルが
「ジールくん、私のもお願い!」
と、クッキーの缶でいっぱいのトランクを手渡そうとしたとたんに、ロッドが体当たりをしてきて、ペブルは軽く吹っ飛ぶ。
「ちょっとお、何すんのよお」
「お前、ジール様になんてことを。お前のトランクは、オレが積み込む。貸せ」
「やだ。ロッドには渡さない」
「何でだよ」
「あんなに景気よく吹っ飛ばされた直後に『お願いね♪』なんて言えると思う?」
「そ、それは悪かった。だが、しかし。身分というものがあってだな、高貴な方に無礼な頼み方を……って、おい」
とか何とかロッドが言っている間に、ペブルはさっさと自分でトランクを積み込んでしまった。
その時、学校の中から校長先生が大あわてで、飛んできた。
文字通りほうきに乗って飛んできたのだ。
そして、ジールの前に来ると、あたふたとほうきを降り、片膝をついて頭を垂れた。
「校長先生、お立ちください。みんなが見ています」
ジールの声にわれにかえった校長先生は、
「しかし、ジール様自ら隣村まで馬車を取りに行かれるとは。おっしゃっていただければ私どもで手配しましたのに」
「朝早くに馬を駆けさせるのもいいものです。とくにこのあたりの自然あふれる空気は、魔力を含んでいて、王都ではなかなか味わえないものです。ところで、例の品は?」
「あーっ、うっかりしておりました。すぐお持ちいたします。少々お待ちを」
「僕たちも一緒にまいりましょう。行こうロッド。リプルとペブルも見に来るかい? 伝説の武器を」
「見たい!」
「行きます」
みんなが校長先生について、校舎の方へと歩き出したその時、幌馬車の荷台へと忍び寄る二つの影があった。しかし、リプルたちは誰もそれには気づかなかった。
「全く、馬車につながれたトッドとレッドほど御しにくい馬はないな」
「こいつら、あまり息が合わないからな」
馬車をあやつっていたのは、ジールとロッドだった。
二人は、御者台から目を丸くしているリプルとペブルの前に飛び降りた。
「おはよう、よく眠れた?」
「旅に随行してもらえるそうだな。よろしくお願いする」
「こちらこそ」
「よろしくね~、私、王都でおいしい物食べるの楽しみにしてるから」
と、言ったペブルの言葉にロッドが反応した。
「はぁ? 大切なお役目を果たせることを名誉だと喜べよ」
「それは、がんばるよ。けど、ごほうびも大切」
まったく悪びれないペブルをロッドが軽くにらみつける。
その間に、ジールがペブルのトランクを手にして、
「これ、荷台に積み込むね」
と、ほうり込もうとした時、ロッドが
「ちょ、おう、じゃなくて、ジール。私がやります」
横から手を出そうとする。
それをさえぎったジールがロッドに小声で言った。
「じゃまするなよ。これ、俺の力の見せ所なんだから」
「ん? はっ! 気づきませんで。失礼しましたっ」
ロッドは、魔法をかけられたみたいに固まった。が、顔は嬉しい物を見つけたみたいににやけそうになるのを必死に押し殺している。
そこに、ペブルが
「ジールくん、私のもお願い!」
と、クッキーの缶でいっぱいのトランクを手渡そうとしたとたんに、ロッドが体当たりをしてきて、ペブルは軽く吹っ飛ぶ。
「ちょっとお、何すんのよお」
「お前、ジール様になんてことを。お前のトランクは、オレが積み込む。貸せ」
「やだ。ロッドには渡さない」
「何でだよ」
「あんなに景気よく吹っ飛ばされた直後に『お願いね♪』なんて言えると思う?」
「そ、それは悪かった。だが、しかし。身分というものがあってだな、高貴な方に無礼な頼み方を……って、おい」
とか何とかロッドが言っている間に、ペブルはさっさと自分でトランクを積み込んでしまった。
その時、学校の中から校長先生が大あわてで、飛んできた。
文字通りほうきに乗って飛んできたのだ。
そして、ジールの前に来ると、あたふたとほうきを降り、片膝をついて頭を垂れた。
「校長先生、お立ちください。みんなが見ています」
ジールの声にわれにかえった校長先生は、
「しかし、ジール様自ら隣村まで馬車を取りに行かれるとは。おっしゃっていただければ私どもで手配しましたのに」
「朝早くに馬を駆けさせるのもいいものです。とくにこのあたりの自然あふれる空気は、魔力を含んでいて、王都ではなかなか味わえないものです。ところで、例の品は?」
「あーっ、うっかりしておりました。すぐお持ちいたします。少々お待ちを」
「僕たちも一緒にまいりましょう。行こうロッド。リプルとペブルも見に来るかい? 伝説の武器を」
「見たい!」
「行きます」
みんなが校長先生について、校舎の方へと歩き出したその時、幌馬車の荷台へと忍び寄る二つの影があった。しかし、リプルたちは誰もそれには気づかなかった。
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