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54.お迎えの馬車

天空の魔女 リプルとペブル 

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54.お迎えの馬車

 リプルの説明を聞いていたペブルが、うで組みをしながら、もっともらしく言う。
「私、その魔法について考えてみたんだけど、みんなでいっせいに呪文を唱えるってことは、すごく大きな力が働くってことでしょ」

 ペブルのことばに、リプルはハッとした。
(だとしたら、闇の天魔たちとの戦いに備えるための魔法なんじゃ……)
 と、いうリプルの思考は、のーてんきなペブルによってやぶられた。
 
 ペブルはよだれをたらしそうな、むふふ顔で言った。
「つまり、とてつもなく大きなパンケーキか、ピザを作る魔法じゃないかと思う」

「もう、ペブルの言うこと真面目に聞くんじゃなかった」
 リプルはあきれ顔。マーサも引きつり笑いをしている。

 しかし、イザベスだけは心ここにあらずといった様子だ。
 真剣な目で宙をにらみながら「王都……ジール様……玉の輿」などと、ブツブツつぶやいていたのだった。

 次の日の朝、リプルとペブルは、学校の門の前に大きなトランクを持って立っていた。
「大切な役目を任されたね。がんばろうねペブル。でも、イザベスとマーサも一緒に行けたらよかったのにね」
 残念そうなリプルに向かって、ペブルはあっけらかんと答えた。
「きっと、ジールが嫌がったんだよ。イザベスの猛烈アタックにちょっと引き気味だったし」

 ペブルの口からジールという言葉が出て、リプルは、少しドキドキした。
 はじめての男の子の友だちということもあるけれど、何より、彼の真面目な態度や優雅な物腰は、人として信頼できる、そう思っていたからだった。
 旅を一緒にする仲間として、とても心強いし……。
 頭の中でジールのことをあれこれ考えて、思わずほおを赤らめたのをペブルがニヤニヤしながら見つめていたことをリプルは気づいていなかった。
  
 しばらくすると、街道の西の方から土煙をもうもうと上げて馬車が走ってくるのが見えた。
 二頭だての馬車は、大きな白い幌車を引いている。
 でもなんだかふらふらと道からはみ出しそうな危うい走り方をしていた。

「あれかな? お迎えの乗り物って」
 リプルが目を輝かせた。馬車を見るのも乗るのも初めてなのだ。
 動物好きのリプルは、早くも好奇心に目を輝かせている。
「うわーかっこいいな馬。早く乗りたい」

 リプルの弾んだ声の隣でペブルは、
「うわーなんだか頭がカクカクしそうな乗り物だなあ」
 馬車は、その間にもどんどん二人の方へ近づいてきた。

 馬を操っているのは、二人の御者だった。二人とも、ホコリを避けるためか、マントについているフードを頭からスッポリとかぶっている。

 ところが、馬車は、リプルとペブルの前を猛烈な勢いで走り抜けていった。
「えっ?」
 てっきり自分たちを迎えにきた馬車だと思っていたのに、予想が外れて首をかしげるリプルとペブル。

 と、馬車は、学校の前を百メートルほども行きすぎてからようやく停まり、道を外れて広場でUターンしてから二人の前にやってきた。

 馬は荒い鼻息を吐き出し、ブルブルと首を振っている。


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