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53.旅の準備
天空の魔女 リプルとペブル
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53.旅の準備
その日の夜、リプルとペブルは、寮の部屋に洋服やら小物やらを広げて荷造りをしていた。
ジールが校長にリプルが王都に行く許可を取ったのだ。
そして、リプルが王都に行くということは、パルであるペブルも一緒に行くということになる。
「ねえ、リプル。王都に行くのにその本の量はないんじゃない?」
部屋の端にうず高く積まれた本の山を見ながらペブルが言う。
天井近くまで積み上げられた本の山は、ちょっとつついたら雪崩をおこしそうだった。
「ペブルこそ、その量のクッキーは、ないんじゃない?」
リプルの言う通り、部屋のドアの前にピラミッドのようにクッキーの缶が積み上げられている。
「だって、一週間分のクッキー持っていかないと心配なんだもん。途中で遭難でもしたら? 食料がないと生き残れないんだよ」
ペブルが真顔で反論する。
「大丈夫よ。王都までは、途中にいくつか村もあるし、街道が続いているんだから、迷うことなんてないわ」
その時、部屋のドアが外から勢いよく開けられた衝撃で、クッキーのピラミッドがガラガラと崩壊した。
クッキーの缶が隣の本の山も崩して、部屋の中は、ひさんなことに。
崩れた荷物の間で、ぼーぜんとしているリプルとペブルに
「どこかに旅行でも行くの?」
二人の部屋に広げられたトランクを見てマーサが質問する。
「私たち、王都に行くことになって」
リプルの言葉に、マーサが
「あら、遠くまで行くのね」
と言いかけたのをさえぎって、
「まぁ、王都で王都のお土産に、最新のパフュームを買ってきてくださらない?」
と、イザベスが、目を光らせておねだりをした。
「どうして急に王都に行くことになったの?」
マーサがたずねた。
「ごめんね。それは言えないの」
リプルが目を伏せる。
「そうそう、ホキントン先生に内緒って言われてるから」
「ペブル、言っちゃダメでしょ」
「あら、ホキントン先生のご命令ですのね。どうぞ気を付けて行ってらしてね」
イザベスはさほど興味がなさそうにおざなりに言う。
「リプルとペブルがいなくなると寂しいわね」
「大丈夫よ、マーサ。ジールたちを王都に置いたらすぐ帰ってくるから」
「だから! ペブル、言っちゃダメって」
ジールと聞いたイザベスの顔色が変わった。
「ちょっと待ったぁ、いえお待ちになってくださいませんこと。あなたたちジール様とご一緒に王都へ?」
つかみかからんばかりのイザベスの勢いにペブルの顔がひきつる。
「あははっ」
「正直に言わないと、この学園への寄付を停止させていただきますわよ?」
イザベスのおどしに、リプルはあきらめて正直に言った。
「ジールたちは、王都からこの学校にある物を取りにきたの。それを持って明日の朝、彼らは王都に帰るんだけど、私とペブルは、その代わりに王都にある秘伝魔法の本を受け取って戻ってくるの」
「秘伝魔法?」
マーサが首をかしげる。これまで聞いたことがない種類の魔法だったからだ。
「私も初めて聞いたの。ホキントン先生が言うには、数百年に一度しか使われない魔法だそうで、これは一人じゃなくて大勢でいっせいに唱える魔法らしいんだ」
その日の夜、リプルとペブルは、寮の部屋に洋服やら小物やらを広げて荷造りをしていた。
ジールが校長にリプルが王都に行く許可を取ったのだ。
そして、リプルが王都に行くということは、パルであるペブルも一緒に行くということになる。
「ねえ、リプル。王都に行くのにその本の量はないんじゃない?」
部屋の端にうず高く積まれた本の山を見ながらペブルが言う。
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「ペブルこそ、その量のクッキーは、ないんじゃない?」
リプルの言う通り、部屋のドアの前にピラミッドのようにクッキーの缶が積み上げられている。
「だって、一週間分のクッキー持っていかないと心配なんだもん。途中で遭難でもしたら? 食料がないと生き残れないんだよ」
ペブルが真顔で反論する。
「大丈夫よ。王都までは、途中にいくつか村もあるし、街道が続いているんだから、迷うことなんてないわ」
その時、部屋のドアが外から勢いよく開けられた衝撃で、クッキーのピラミッドがガラガラと崩壊した。
クッキーの缶が隣の本の山も崩して、部屋の中は、ひさんなことに。
崩れた荷物の間で、ぼーぜんとしているリプルとペブルに
「どこかに旅行でも行くの?」
二人の部屋に広げられたトランクを見てマーサが質問する。
「私たち、王都に行くことになって」
リプルの言葉に、マーサが
「あら、遠くまで行くのね」
と言いかけたのをさえぎって、
「まぁ、王都で王都のお土産に、最新のパフュームを買ってきてくださらない?」
と、イザベスが、目を光らせておねだりをした。
「どうして急に王都に行くことになったの?」
マーサがたずねた。
「ごめんね。それは言えないの」
リプルが目を伏せる。
「そうそう、ホキントン先生に内緒って言われてるから」
「ペブル、言っちゃダメでしょ」
「あら、ホキントン先生のご命令ですのね。どうぞ気を付けて行ってらしてね」
イザベスはさほど興味がなさそうにおざなりに言う。
「リプルとペブルがいなくなると寂しいわね」
「大丈夫よ、マーサ。ジールたちを王都に置いたらすぐ帰ってくるから」
「だから! ペブル、言っちゃダメって」
ジールと聞いたイザベスの顔色が変わった。
「ちょっと待ったぁ、いえお待ちになってくださいませんこと。あなたたちジール様とご一緒に王都へ?」
つかみかからんばかりのイザベスの勢いにペブルの顔がひきつる。
「あははっ」
「正直に言わないと、この学園への寄付を停止させていただきますわよ?」
イザベスのおどしに、リプルはあきらめて正直に言った。
「ジールたちは、王都からこの学校にある物を取りにきたの。それを持って明日の朝、彼らは王都に帰るんだけど、私とペブルは、その代わりに王都にある秘伝魔法の本を受け取って戻ってくるの」
「秘伝魔法?」
マーサが首をかしげる。これまで聞いたことがない種類の魔法だったからだ。
「私も初めて聞いたの。ホキントン先生が言うには、数百年に一度しか使われない魔法だそうで、これは一人じゃなくて大勢でいっせいに唱える魔法らしいんだ」
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