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50.リプルの実験
天空の魔女 リプルとペブル
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50.リプルの実験
翌日。
朝早くからジールたちと魔女学園の先生たちの話合いが行われていた。
リプルは、いてもたってもいられず、昨日みんなで摘んだ大量のリギン草を実験室に持ち込んで、細かくくだいたり、乾燥させてみたりして、リギン草を闇の天魔たちとの戦いで使えるようにようと、いろいろ実験をしていた。
「ふぁ~せっかく休校になったんだから、こんなに朝早くから実験しなくてもいいのに」
リプルのとなりの机につっぷして、だら~んと腕を伸ばしていたペブルがあくびをかみころしながら言う。
乳鉢に入れたリギン草を乳棒でつぶしていたリプルは、手を止めずに答えた。
「昨日のさわぎを思い出したら、じっとなんてしていられないよ。闇の天魔たちは、もうすぐそこに迫っている」
「そーかなぁ?」
「ほら、そこ! ペブルの後ろ!」
と、リプルがおどすとペブルが「ひえっ!」と飛び上がり、そのはずみでイスから転げ落ちた。
床にしりもちをついたまま、後ろをふりかえったペブルは
「もう、なんもいないじゃん」
と、口をとがらせる。
「いったい、なんのさわぎ?」
ペブルの胸ポケットから使い魔のシズクが顔を出した。
「リプルが、私のことをおどかした」
「ちょうどいいよ。ペブルもそれで目が覚めただろ?」
と、しましましっぽをゆらすシズク。
「いや、今まで寝てたシズクに言われたくないわ」
ペブルも負けずにシズクにブーメランを飛ばす。
そんなふたりの間に、ヌッとお皿が差し出された。
「これ味見してくださる?」
こんがり焼けたクッキーの乗ったお皿を持ってほほ笑むイザベスだった。
昨日の夜、闇の天魔にあやつられた記憶がストンと抜け落ちているようで、イザベスは今日もバッチリ髪を結いあげて、女王様みたいに鼻をツンとあげている。
「うわ、おいしそう。ちょうどお腹空いてきたとこだったの。いただきます!」
パクっとクッキーを口にほうりこんだペブルだったが、次の瞬間、その顔がゆがんだ。
「うっ、なっ、何これ!? まずっ、苦っ。イザベス、毒を盛った!?」
イザベスが差し出したお皿をひっこめた。
「まっ、失礼ね。毒なんて入れてませんわ。わたくしがこのお菓子にこめたのは“愛情”ふふっ、これをジール様に召し上がっていただこうと思っているのですわ。ですが、腐ってるものでも食べられるペブルがまずいと言うとは、マーサ、作り直しますわよ」
「わかったわ、イザベス……あの、でも……ほれ薬なんて、入れないほうが……」
と、言いかけたマーサをイザベスがピシャリとさえぎる。
「あら、わたくしに意見しようだなんて、マーサったらずいぶんえらくなったのねぇ」
皮肉たっぷりなイザベスのことばに、マーサはピクっと肩をあげると
「ご、ごめんなさい」
と、目を伏せた。
翌日。
朝早くからジールたちと魔女学園の先生たちの話合いが行われていた。
リプルは、いてもたってもいられず、昨日みんなで摘んだ大量のリギン草を実験室に持ち込んで、細かくくだいたり、乾燥させてみたりして、リギン草を闇の天魔たちとの戦いで使えるようにようと、いろいろ実験をしていた。
「ふぁ~せっかく休校になったんだから、こんなに朝早くから実験しなくてもいいのに」
リプルのとなりの机につっぷして、だら~んと腕を伸ばしていたペブルがあくびをかみころしながら言う。
乳鉢に入れたリギン草を乳棒でつぶしていたリプルは、手を止めずに答えた。
「昨日のさわぎを思い出したら、じっとなんてしていられないよ。闇の天魔たちは、もうすぐそこに迫っている」
「そーかなぁ?」
「ほら、そこ! ペブルの後ろ!」
と、リプルがおどすとペブルが「ひえっ!」と飛び上がり、そのはずみでイスから転げ落ちた。
床にしりもちをついたまま、後ろをふりかえったペブルは
「もう、なんもいないじゃん」
と、口をとがらせる。
「いったい、なんのさわぎ?」
ペブルの胸ポケットから使い魔のシズクが顔を出した。
「リプルが、私のことをおどかした」
「ちょうどいいよ。ペブルもそれで目が覚めただろ?」
と、しましましっぽをゆらすシズク。
「いや、今まで寝てたシズクに言われたくないわ」
ペブルも負けずにシズクにブーメランを飛ばす。
そんなふたりの間に、ヌッとお皿が差し出された。
「これ味見してくださる?」
こんがり焼けたクッキーの乗ったお皿を持ってほほ笑むイザベスだった。
昨日の夜、闇の天魔にあやつられた記憶がストンと抜け落ちているようで、イザベスは今日もバッチリ髪を結いあげて、女王様みたいに鼻をツンとあげている。
「うわ、おいしそう。ちょうどお腹空いてきたとこだったの。いただきます!」
パクっとクッキーを口にほうりこんだペブルだったが、次の瞬間、その顔がゆがんだ。
「うっ、なっ、何これ!? まずっ、苦っ。イザベス、毒を盛った!?」
イザベスが差し出したお皿をひっこめた。
「まっ、失礼ね。毒なんて入れてませんわ。わたくしがこのお菓子にこめたのは“愛情”ふふっ、これをジール様に召し上がっていただこうと思っているのですわ。ですが、腐ってるものでも食べられるペブルがまずいと言うとは、マーサ、作り直しますわよ」
「わかったわ、イザベス……あの、でも……ほれ薬なんて、入れないほうが……」
と、言いかけたマーサをイザベスがピシャリとさえぎる。
「あら、わたくしに意見しようだなんて、マーサったらずいぶんえらくなったのねぇ」
皮肉たっぷりなイザベスのことばに、マーサはピクっと肩をあげると
「ご、ごめんなさい」
と、目を伏せた。
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