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46.闇の天魔の誘い
天空の魔女 リプルとペブル
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46.闇の天魔の誘い
(闇の天魔の狙いは、大切な蔵書だったみたい)
闇の天魔の狙いに気づいたリプルは、まなじりをあげる。
イザベスの足には真っ黒なヘビのような丸みをおびた縄状のものが巻き付いている。
足から体、そして腕にも巻き付いている。ところどころに、昼間見たブドウのような黒い球体がくっついていて、なんとも不気味だ。
イザベスはどんな表情をしているのか、こちらからは確かめることができない。
すーっとイザベスが左手をあげた。ほうたいをまいていない方の手だ。
「ヱリスイーズ・カーライン・ホーメンス」
精気のない声でイザベスが呪文を唱えた。
すると、ゴオォオと音がして、ケヤキのまわりを丸く炎がとりまいた。
「本を守らなければ!」
リプルは、とっさに魔法の杖をかかげ、
「カルール・ホグリール・タエ!!」
魔法の無効化呪文を叫んだ。
すると、ゴーッと風が吹いてきて、ケヤキの木を燃やそうとしていた炎が消えた。
同時にイザベスの体に巻きついていた丸い球体付きのヘビのような縄状のものが、イザベスの体からずるずるとほどけて地面に落ちた。
そのとたんイザベスは、ドッと地面に崩れ落ちた。
「イザベス!」
リプルが、かけよろうとしたとたん、へびのような黒いものが、シュッとリプルめがけて飛びかかってきた。
イザベスに気をとられていたリプルの右腕に、黒いへびのようなものがぐるぐると巻きつく。
そして、そこからもわっと禍々しい黒いもやがわき出てきた。
顔にかかるもやを手で払おうとしていたら、黒いへびのようなものの先端に2つの赤い眼が開いた。
(見ちゃダメだ)
リプルはとっさに目をそらそうとした。
それなのに、まるで何かに命じられたように赤い眼から目をそらすことも、目をつぶることすらできない。
背中をツーっと冷たい汗が流れて落ちる。
赤い眼がどんどん大きくなってくる。そして、頭の中に声がひびいてきた。
<知りたいだろう? あの木の中にある本の知識を自分のものにしたいだろう?>
ゴクリとリプルはつばを飲み込んだ。
知りたい。この世界の秘密を、魔法の力のすべてを……。
<あの木の前に進むのだ>
そのことばに逆らうことができず、リプルは一歩踏み出した。
その時だった。
「リプル~!!」
背後からペブルの声が聞こえてきた。
我に返ったリプルは、魔法の杖の先を自分の右腕に向けて
「アルケーラ・ローンガ・エレトーリ!!」
と、かまいたちのように風で切り裂く魔法を唱えた。
次の瞬間、黒いへび状のものは、バラバラに切り裂かれリプルの腕から落ちていった。
地面におちたへびの破片は、スーッと地面に吸い込まれていった。
「リプル! なんか自分に魔法かけてたよね? あつ! 血が!!」
ペブルがあわあわと自分のポケットからハンカチを出して、リプルの腕を押さえた。
「あ、ありがとう。ペブル」
「いったい何があったの?」
そのとき背後で「イザベス!」というマーサの悲鳴が聞こえた。
遅れて駆けつけてきたマーサが倒れているイザベスを見つけたらしい。
「イザベスが、闇の天魔らしい魔物に乗っ取られて、このケヤキの木を燃やそうとしてたの。イザベスを助けて、火を消したら、今度は私の腕に闇の天魔がからみついてきて。それで」
「だからって自分がこんなケガをしてまで!!」
ペブルは涙ぐみながら、片手でリプルの腕を押さえつつ、もう片手でリプルの肩を抱いた。
そして、地面に倒れたイザベスの上半身をひざのうえにかかえあげたマーサのところへ近づいた。
「闇の天魔が、またイザベスを襲ったの」
リプルの説明にマーサが眉をひそめた。
「いったい、なぜイザベスばかりが襲われるの?」
ケヤキの図書館のことは秘密だから、ペブルたちにも打ち明けられなかったが、リプルはもう一つの恐ろしい可能性を考えていた。
(闇の天魔たちは、イザベスを利用してケヤキの図書館を燃やそうとしていた。私自身も一瞬、天魔にあやつられそうになった。彼らは、ただの低能な魔物ではないのかもしれない。もしかしたら、魔法使いをあやつってこの世界をほろぼそうとしているのかも)
リプルは「そんなこと、ぜったいにさせない」と、小さくつぶやいた。
(闇の天魔の狙いは、大切な蔵書だったみたい)
闇の天魔の狙いに気づいたリプルは、まなじりをあげる。
イザベスの足には真っ黒なヘビのような丸みをおびた縄状のものが巻き付いている。
足から体、そして腕にも巻き付いている。ところどころに、昼間見たブドウのような黒い球体がくっついていて、なんとも不気味だ。
イザベスはどんな表情をしているのか、こちらからは確かめることができない。
すーっとイザベスが左手をあげた。ほうたいをまいていない方の手だ。
「ヱリスイーズ・カーライン・ホーメンス」
精気のない声でイザベスが呪文を唱えた。
すると、ゴオォオと音がして、ケヤキのまわりを丸く炎がとりまいた。
「本を守らなければ!」
リプルは、とっさに魔法の杖をかかげ、
「カルール・ホグリール・タエ!!」
魔法の無効化呪文を叫んだ。
すると、ゴーッと風が吹いてきて、ケヤキの木を燃やそうとしていた炎が消えた。
同時にイザベスの体に巻きついていた丸い球体付きのヘビのような縄状のものが、イザベスの体からずるずるとほどけて地面に落ちた。
そのとたんイザベスは、ドッと地面に崩れ落ちた。
「イザベス!」
リプルが、かけよろうとしたとたん、へびのような黒いものが、シュッとリプルめがけて飛びかかってきた。
イザベスに気をとられていたリプルの右腕に、黒いへびのようなものがぐるぐると巻きつく。
そして、そこからもわっと禍々しい黒いもやがわき出てきた。
顔にかかるもやを手で払おうとしていたら、黒いへびのようなものの先端に2つの赤い眼が開いた。
(見ちゃダメだ)
リプルはとっさに目をそらそうとした。
それなのに、まるで何かに命じられたように赤い眼から目をそらすことも、目をつぶることすらできない。
背中をツーっと冷たい汗が流れて落ちる。
赤い眼がどんどん大きくなってくる。そして、頭の中に声がひびいてきた。
<知りたいだろう? あの木の中にある本の知識を自分のものにしたいだろう?>
ゴクリとリプルはつばを飲み込んだ。
知りたい。この世界の秘密を、魔法の力のすべてを……。
<あの木の前に進むのだ>
そのことばに逆らうことができず、リプルは一歩踏み出した。
その時だった。
「リプル~!!」
背後からペブルの声が聞こえてきた。
我に返ったリプルは、魔法の杖の先を自分の右腕に向けて
「アルケーラ・ローンガ・エレトーリ!!」
と、かまいたちのように風で切り裂く魔法を唱えた。
次の瞬間、黒いへび状のものは、バラバラに切り裂かれリプルの腕から落ちていった。
地面におちたへびの破片は、スーッと地面に吸い込まれていった。
「リプル! なんか自分に魔法かけてたよね? あつ! 血が!!」
ペブルがあわあわと自分のポケットからハンカチを出して、リプルの腕を押さえた。
「あ、ありがとう。ペブル」
「いったい何があったの?」
そのとき背後で「イザベス!」というマーサの悲鳴が聞こえた。
遅れて駆けつけてきたマーサが倒れているイザベスを見つけたらしい。
「イザベスが、闇の天魔らしい魔物に乗っ取られて、このケヤキの木を燃やそうとしてたの。イザベスを助けて、火を消したら、今度は私の腕に闇の天魔がからみついてきて。それで」
「だからって自分がこんなケガをしてまで!!」
ペブルは涙ぐみながら、片手でリプルの腕を押さえつつ、もう片手でリプルの肩を抱いた。
そして、地面に倒れたイザベスの上半身をひざのうえにかかえあげたマーサのところへ近づいた。
「闇の天魔が、またイザベスを襲ったの」
リプルの説明にマーサが眉をひそめた。
「いったい、なぜイザベスばかりが襲われるの?」
ケヤキの図書館のことは秘密だから、ペブルたちにも打ち明けられなかったが、リプルはもう一つの恐ろしい可能性を考えていた。
(闇の天魔たちは、イザベスを利用してケヤキの図書館を燃やそうとしていた。私自身も一瞬、天魔にあやつられそうになった。彼らは、ただの低能な魔物ではないのかもしれない。もしかしたら、魔法使いをあやつってこの世界をほろぼそうとしているのかも)
リプルは「そんなこと、ぜったいにさせない」と、小さくつぶやいた。
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