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45.巨大シマリス
天空の魔女 リプルとペブル
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45.巨大シマリス
リプルは、慎重に廊下を進んでいく。
所々で立ち止まって、耳を澄ましたり、匂いをかいだりしていたが、やがて一番奥の部屋の扉をそっと指した。
その頃には、ペブルとマーサの目もかなり暗闇に慣れてきて、リプルの指し示す扉を見分けることができた。
3人が目を見合わせてうなずいた時、その部屋の中からバリバリと何かを突き破るような大きな音が聞こえてきた。
3人は、怖さのあまり思わずその場にしゃがみ込んだが、
「な、なによ? ギャー」
と、イザベスの悲鳴が聞こえたので、立ち上がり、ドアに突進した。
ところがその部屋はカギがかかっていて、ドアが開かない。
リプルはかぎ穴に注目した。
「シズク、お願い。魔法で小さくするから……」
シズクはリプルに最後まで言わせることなくうなずいた。
「まかせろ!」
リプルが、シズクに「ハールハレイ、コッマコラマ」と魔法をかけた。
シズクは、まるで糸のように細くなった。
「行ってくる」
糸状になったシズクは鍵穴から部屋の中へ入っていった。
「シズクを元に戻すのは、私がやるね♪」
と、ペブルがかぎ穴ごしに「コッマコラマ、フルルフーイ」と、呪文をとなえた。
「わわ、ペブル、ちょっとサイズ間違えたよ」
と、言うシズクの声がして、すぐにガチャと音がしてカギが開いた。
部屋の中に飛び込んだリプルたちは、なにか巨大なもふもふのクッションのようなものにバフンとぶつかった。
「敵!?」
と、身がまえるペブルに「やめてよ~、ボクだよ。シズクだよ。ペブルがサイズ間違えるから、こんな巨大になっちゃったんだって」
シズクの不機嫌な声がリプルの頭の上からふってくる。
ペブルが魔法を失敗したために、シズクはリプルたちの2倍ほどもある巨大シマリスと化していた。
部屋はもぬけの殻だった。
窓ぎわのテーブルの上のろうそくが赤々と燃えていて、今まで人がいた気配が残っている。
ベッドを回り込んだリプルが
「アッ」と声を上げた。
窓の下の壁に人が通れるほどの大きな穴が開いていて、すぐ近くにイザベスの使い魔のシッコクが倒れていた。
「シッコク、大丈夫?何があったの? イザベスは」
シッコクは、ゆっくりと目を開ける。
「イザベス……サラワレタ。タスケル」
そう言うと、シッコクは穴から外へ飛び出した。
「行こう!」
リプルたちも穴から次々と外へとびだした。
ただし、ペブルによって巨大な体にされたシズクだけは、お腹が穴につっかえて出ることができず、ひとり部屋に取り残された。
月あかりの下、何かを引きずったような跡が、西壁に向かって伸びていた。
リプルはハッとした。この先には、ケヤキの木の図書館がある!
あそこにある本は「どれもぜったいに守らなければならない大切な本だ」とホキントン先生が言ってた。
リプルの足が早まった。狼のように茂みを軽々と飛び越えていく。
リプルが予想した通り、ケヤキの木のまえにイザベスがこちらに背を向け、立っていた。
リプルは、慎重に廊下を進んでいく。
所々で立ち止まって、耳を澄ましたり、匂いをかいだりしていたが、やがて一番奥の部屋の扉をそっと指した。
その頃には、ペブルとマーサの目もかなり暗闇に慣れてきて、リプルの指し示す扉を見分けることができた。
3人が目を見合わせてうなずいた時、その部屋の中からバリバリと何かを突き破るような大きな音が聞こえてきた。
3人は、怖さのあまり思わずその場にしゃがみ込んだが、
「な、なによ? ギャー」
と、イザベスの悲鳴が聞こえたので、立ち上がり、ドアに突進した。
ところがその部屋はカギがかかっていて、ドアが開かない。
リプルはかぎ穴に注目した。
「シズク、お願い。魔法で小さくするから……」
シズクはリプルに最後まで言わせることなくうなずいた。
「まかせろ!」
リプルが、シズクに「ハールハレイ、コッマコラマ」と魔法をかけた。
シズクは、まるで糸のように細くなった。
「行ってくる」
糸状になったシズクは鍵穴から部屋の中へ入っていった。
「シズクを元に戻すのは、私がやるね♪」
と、ペブルがかぎ穴ごしに「コッマコラマ、フルルフーイ」と、呪文をとなえた。
「わわ、ペブル、ちょっとサイズ間違えたよ」
と、言うシズクの声がして、すぐにガチャと音がしてカギが開いた。
部屋の中に飛び込んだリプルたちは、なにか巨大なもふもふのクッションのようなものにバフンとぶつかった。
「敵!?」
と、身がまえるペブルに「やめてよ~、ボクだよ。シズクだよ。ペブルがサイズ間違えるから、こんな巨大になっちゃったんだって」
シズクの不機嫌な声がリプルの頭の上からふってくる。
ペブルが魔法を失敗したために、シズクはリプルたちの2倍ほどもある巨大シマリスと化していた。
部屋はもぬけの殻だった。
窓ぎわのテーブルの上のろうそくが赤々と燃えていて、今まで人がいた気配が残っている。
ベッドを回り込んだリプルが
「アッ」と声を上げた。
窓の下の壁に人が通れるほどの大きな穴が開いていて、すぐ近くにイザベスの使い魔のシッコクが倒れていた。
「シッコク、大丈夫?何があったの? イザベスは」
シッコクは、ゆっくりと目を開ける。
「イザベス……サラワレタ。タスケル」
そう言うと、シッコクは穴から外へ飛び出した。
「行こう!」
リプルたちも穴から次々と外へとびだした。
ただし、ペブルによって巨大な体にされたシズクだけは、お腹が穴につっかえて出ることができず、ひとり部屋に取り残された。
月あかりの下、何かを引きずったような跡が、西壁に向かって伸びていた。
リプルはハッとした。この先には、ケヤキの木の図書館がある!
あそこにある本は「どれもぜったいに守らなければならない大切な本だ」とホキントン先生が言ってた。
リプルの足が早まった。狼のように茂みを軽々と飛び越えていく。
リプルが予想した通り、ケヤキの木のまえにイザベスがこちらに背を向け、立っていた。
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