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44.満月の夜のリプル

天空の魔女 リプルとペブル

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44.満月の夜のリプル

 リプルたちが寮の玄関から出たとき、外は黒と銀の世界に塗り分けられていた。
 月の光が世界を銀色に輝かせていたのだ。

 思わず、空を見上げたリプルは、
「あ、満月」と言ったかと思うと、地面にうずくまってしまった。

「大丈夫?」
 あわててかけよったマーサは、リプルの頭を見て、思わず息をのんだ。

「リプル、耳が……」
 リプルの耳は、いつものそれではなく、獣のような三角の耳に代わっていた。

「あ、ホントだ。今日、満月だからね」
 ペブルは、何事もなかったかのように、リプルの頭にフードをかぶせた。
 
 マーサは、今、目にしたモノが信じられないというように、口を手でおおっている。
 リプルは、すくっと立ち上がると、フードを取った。
「リプル、いいの? 秘密をあかしても」

 三角にとがった耳に生えたやわらかそうな毛が月の光を浴びて銀色に輝いている。
「私、満月の光を浴びたり、魔力の強い場所に行くと、少しだけ狼になってしまうの。耳だけじゃないのよ。しっぽも」
 と、ワンピースの裾からフサフサと銀色に輝くしっぽをマーサに見せた。



マーサは言葉もなくただただリプルを見つめている。
「黙っていてごめんね、マーサ。びっくりしたでしょ」
 リプルは少し申し訳なさそうに言う。

 マーサは、じっとリプルのことを見つめていたが、そっとリプルの手を取った。
「ううん。たとえどんな姿をしていてもリプルはリプルだもん」
 リプルのヒミツを知っても、マーサは少しも動揺しなかった。
 むしろ、リプルが自分にヒミツを明かしてくれたことがうれしいと思うほどだった。

 ペブルが、マーサに説明をする。
「リプルに使い魔がいない理由は、これなんだ。自分自身が使い魔の能力を宿しているんだ」
「だから、リプルはあんなに魔法が得意なのね」
 マーサが目を輝かせる。

 ペブルがパンと両手を叩いた。
「これってチャンスじゃない? 半狼になったリプルは、聴力も嗅覚もすごくなるんだから。イザベスの居場所がわかるかも」

「やってみる!」
 リプルは、神経を研ぎ澄まし、耳を澄ませる。
「やっぱり校長先生の家の方からイザベスらしい気配を感じる。でも、同時に何かまがまがしい気も感じられて……」
「まさか、あの黒いヌメヌメの奴らが?」
「分からない、とにかく急ぎましょう」
 ダッと掛けだしたリプルの足は、獣のように軽やかで速い。ペブル&マーサは急いで後を追った。

 しばらくして校長先生の家の離れに到着したリプルたちは、外から中の様子をうかがっていた。
「乗り込もう」リプルが言い、ペブルとマーサも真剣な表情でうなずく。

 なぜか玄関の扉はカギがかかっていなかった。ギギッーときしむような音がして、扉はゆっくりと開く。
 中は、灯りもなく暗かった。

「これじゃ何も見えないわ」
 ペブルがこぼしたが、リプルは、
「私、見える。ついてきて」
 と言った。

「さすが狼リプルちゃん、頼もしい」
 ペブルがふざけて言い
「しーっ!」「静かに!」と、リプルとマーサの両方から叱られた。


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