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37.ジールとロッド
天空の魔女 リプルとペブル
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37.ジールとロッド
リプルの目の前で、ほほえんでいる少年は、どことなく気品がある。
リプルは少しドキリとした。
(前にどこかで見たことがあるような)
そう思いつつ、
「困っている人を助けるのは魔法使いとして当然のことです」
と、笑顔を返した。
続いて、丘を駆け上がってきたもう一人の少年も馬を下り、フードを外す。
「ふう、やっかいだったな」
こちらは、黒髪に黒い瞳。負けん気の強さが眉に現れている。
彼は、とつぜん、うやうやしく片膝をつくと、金髪の少年を右手で示し、
「こちらは、この国の第六王……」
と言いかけたところで、金髪の少年にヘッドロックされて口をおおわれてしまった。
「ほが、ほが」
金髪の少年は、取りつくろうように笑いながら、
「僕の名は、ジール。この『ほがほが』言ってるのが、ロッドだ。よろしくね」
とやや早口に言った。
「その、からみ方は何? なんかの儀式? それとも愛情表現とか?」
君ら怪しいよ、という疑いの表情を見せて、ペブルが聞く。
「いや、その……僕らパルだから、子どもの頃からこうやってじゃれるのが日課というか」
ジールは、そう言うとロッドを解放した。
ロッドは顔を真っ赤にしながら、
「お願いしますよ、王……ジール殿」
と言う。
「殿もいらない」
とそっけないジールにロッドは困った顔をした。
「はい」
「敬語も不要」
「は……わ、わかった」
やや納得できない表情ながらロッドはうなずいた。
「その青い魔女服、キミたちはオルサト村の魔女だね?」
「そうです」
ジールの澄んだ青い瞳をまぶしく感じながら、リプルは答えた。
「僕らはふたりとも魔法士なんだ」
「そうなんですね!」
学校の先生以外の魔法士をはじめて見たリプルの瞳がキラキラ輝く。
今度はジールが、リプルの瞳をまぶしく感じた。
魔法使いが魔法で敵と戦うのに対して、魔法士は、武器に魔力を宿して敵と戦う。
戦いの場面において魔法士が前線で戦い、魔法使いや魔女は後方から魔法で戦いをサポートしたり、傷ついた魔法士を魔法で治療したりするという役割の違いがある。
「その剣にどうやって魔法をかけるんですか? 属性は何ですか? 敵と戦ったことはありますか?」
次から次へとマシンガンのように質問をくりだすリプルの肩を「どうどう」とペブルがたたいてなだめる。
「ごめんね、ジール。リプルは魔法のこと、知らないことを知るのが大好きすぎて、こーなっちゃうんだ」
ジールは軽く首をふって、ほほえんだ。
「リプル……いい名だね。勉強熱心なリプルに、この国、いや、この星を守ってもらえるなら安心だ」
「話のスケールが大きいなぁ」
ペブルが口をぽかんとあけた。
リプルの目の前で、ほほえんでいる少年は、どことなく気品がある。
リプルは少しドキリとした。
(前にどこかで見たことがあるような)
そう思いつつ、
「困っている人を助けるのは魔法使いとして当然のことです」
と、笑顔を返した。
続いて、丘を駆け上がってきたもう一人の少年も馬を下り、フードを外す。
「ふう、やっかいだったな」
こちらは、黒髪に黒い瞳。負けん気の強さが眉に現れている。
彼は、とつぜん、うやうやしく片膝をつくと、金髪の少年を右手で示し、
「こちらは、この国の第六王……」
と言いかけたところで、金髪の少年にヘッドロックされて口をおおわれてしまった。
「ほが、ほが」
金髪の少年は、取りつくろうように笑いながら、
「僕の名は、ジール。この『ほがほが』言ってるのが、ロッドだ。よろしくね」
とやや早口に言った。
「その、からみ方は何? なんかの儀式? それとも愛情表現とか?」
君ら怪しいよ、という疑いの表情を見せて、ペブルが聞く。
「いや、その……僕らパルだから、子どもの頃からこうやってじゃれるのが日課というか」
ジールは、そう言うとロッドを解放した。
ロッドは顔を真っ赤にしながら、
「お願いしますよ、王……ジール殿」
と言う。
「殿もいらない」
とそっけないジールにロッドは困った顔をした。
「はい」
「敬語も不要」
「は……わ、わかった」
やや納得できない表情ながらロッドはうなずいた。
「その青い魔女服、キミたちはオルサト村の魔女だね?」
「そうです」
ジールの澄んだ青い瞳をまぶしく感じながら、リプルは答えた。
「僕らはふたりとも魔法士なんだ」
「そうなんですね!」
学校の先生以外の魔法士をはじめて見たリプルの瞳がキラキラ輝く。
今度はジールが、リプルの瞳をまぶしく感じた。
魔法使いが魔法で敵と戦うのに対して、魔法士は、武器に魔力を宿して敵と戦う。
戦いの場面において魔法士が前線で戦い、魔法使いや魔女は後方から魔法で戦いをサポートしたり、傷ついた魔法士を魔法で治療したりするという役割の違いがある。
「その剣にどうやって魔法をかけるんですか? 属性は何ですか? 敵と戦ったことはありますか?」
次から次へとマシンガンのように質問をくりだすリプルの肩を「どうどう」とペブルがたたいてなだめる。
「ごめんね、ジール。リプルは魔法のこと、知らないことを知るのが大好きすぎて、こーなっちゃうんだ」
ジールは軽く首をふって、ほほえんだ。
「リプル……いい名だね。勉強熱心なリプルに、この国、いや、この星を守ってもらえるなら安心だ」
「話のスケールが大きいなぁ」
ペブルが口をぽかんとあけた。
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