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33.浮遊大陸と地球
天空の魔女 リプルとペブル
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33.浮遊大陸と地球
先生の様子に、生徒たちは顔を見合わせつつも、床にまるく円を描いて座った。
先生は円の外にスッと立った。
「皆さん、これから私が語ることは、この大地の秘密と私たち魔女の使命に関わることです。いままでカリキュラムでは、中等部でこれを習うことはありませんでした。しかし、少々事情が変わりました。昨日の薬草摘みのときに、イザベスが黒いひも状の魔物に襲われました。本来なら、私たちの世界にあらわれる種類の魔物ではありません。しかし、魔物が現れてしまった。これがどういうことなのか、今から説明します。さあ、みんな円の中心を見て」
先生は、みんなが丸く座っているその中心に映像を映し出した。
そこに、青い丸い星と、その周りに浮いているいくつかの小さな島のようなものが現れた。
先生は星の上に浮いている島のうち一つを指さして言った。
「あなたたちが今、立っている大地は、ここ。この土地は、浮遊大陸なのです。私たちが暮らしている浮遊大陸は、この青い星、地球の上空を漂っています。地上から見ると雲にしか見えないけれども、こうした大陸は、他にもいくつもあります。それぞれが担当するエリアを分け合って地球上の災いを防いでいるのです」
「災いって? 」
ペブルが質問すると、先生は、
「覚悟して見てね」
と、言いながら新しい映像を見せてくれた。
それは、ペブルやリプルたちが見たこともないような恐ろしいものだった。
黒く大きな竜巻が木や家をなぎ倒していく様子。
火を噴く山。揺れる大地、川の水が氾濫して橋や箱のような物を流し去っていく様子。
初めて目にする恐ろしい光景に、生徒たちは思わず悲鳴を上げたり、目をそらしたりした。
先生はその様子をいたわしそうに見つめながら
「そうね。この大陸にはこうした厄災は起こらないものね……じつは今、見たのはすべてこの青い星、地球でおこることなのです」
そこで、先生は一息切ってからさらに言葉を続けた。
「ところで、この魔女学校の役目は、優秀な魔法使いを育てることというのは、皆さん知っているでしょう。では、私たちは、何のために魔法を勉強しているか、わかりますか?」
リプルがハッと顔を上げた。それは、ずっと前から知りたかった疑問だったからだ。
小さな頃から誰に聞いてもその答えを教えてもらうことはできなかった。
そのヒミツが今、先生の口から語られる。リプルは全身を耳にして先生の言葉を一言も聞きもらすまいとした。
「それは、この星を守るためなのです。さきほど目にしたような、地球上におこる自然の災害から、地球上に生きている人や動物を守るために、皆さんは魔法を学んでいるのです」
先生のその言葉がリプルの心の中に一滴のしずくを落とした。やがてそれは、喜びと怖さをぐるぐるとかき混ぜたような複雑な波紋となってリプルの体のすみずみにまで行き渡った。
「ですが、私たちに対抗する者たちがいます。それが、悪しき力を持つ者たち、闇の天魔です。彼らは、大きな力を発揮するために、普段は力を貯めておき、飽和点に達した時、一気にその力を吐き出します。それが、数百年に一度、地球上を襲う大厄災となるのです。そして、恐ろしいことに、彼らは、私たちが暮らしているこの大地の裏側に生息しています」
「でも、私たちこれまで闇の天魔とやらを見たことがありませんわ」
イザベスがいぶかしげに先生に問う。すると先生は、やさしい笑顔になった。
「それは、これまで皆さんが守られてきたからです。それと、ここ数百年間は闇の天魔たちの活動がおとなしくなっていたという理由もあります。でも、これからはわかりません。このあたりはまだまだ平和ですが、最近、王都近辺では、闇の天魔たちが出現したという報告がなされています。そして、イザベス。昨日あなたを襲ったのも、闇の天魔です」
「ええっ」
イザベスが顔色を変えた。
先生の様子に、生徒たちは顔を見合わせつつも、床にまるく円を描いて座った。
先生は円の外にスッと立った。
「皆さん、これから私が語ることは、この大地の秘密と私たち魔女の使命に関わることです。いままでカリキュラムでは、中等部でこれを習うことはありませんでした。しかし、少々事情が変わりました。昨日の薬草摘みのときに、イザベスが黒いひも状の魔物に襲われました。本来なら、私たちの世界にあらわれる種類の魔物ではありません。しかし、魔物が現れてしまった。これがどういうことなのか、今から説明します。さあ、みんな円の中心を見て」
先生は、みんなが丸く座っているその中心に映像を映し出した。
そこに、青い丸い星と、その周りに浮いているいくつかの小さな島のようなものが現れた。
先生は星の上に浮いている島のうち一つを指さして言った。
「あなたたちが今、立っている大地は、ここ。この土地は、浮遊大陸なのです。私たちが暮らしている浮遊大陸は、この青い星、地球の上空を漂っています。地上から見ると雲にしか見えないけれども、こうした大陸は、他にもいくつもあります。それぞれが担当するエリアを分け合って地球上の災いを防いでいるのです」
「災いって? 」
ペブルが質問すると、先生は、
「覚悟して見てね」
と、言いながら新しい映像を見せてくれた。
それは、ペブルやリプルたちが見たこともないような恐ろしいものだった。
黒く大きな竜巻が木や家をなぎ倒していく様子。
火を噴く山。揺れる大地、川の水が氾濫して橋や箱のような物を流し去っていく様子。
初めて目にする恐ろしい光景に、生徒たちは思わず悲鳴を上げたり、目をそらしたりした。
先生はその様子をいたわしそうに見つめながら
「そうね。この大陸にはこうした厄災は起こらないものね……じつは今、見たのはすべてこの青い星、地球でおこることなのです」
そこで、先生は一息切ってからさらに言葉を続けた。
「ところで、この魔女学校の役目は、優秀な魔法使いを育てることというのは、皆さん知っているでしょう。では、私たちは、何のために魔法を勉強しているか、わかりますか?」
リプルがハッと顔を上げた。それは、ずっと前から知りたかった疑問だったからだ。
小さな頃から誰に聞いてもその答えを教えてもらうことはできなかった。
そのヒミツが今、先生の口から語られる。リプルは全身を耳にして先生の言葉を一言も聞きもらすまいとした。
「それは、この星を守るためなのです。さきほど目にしたような、地球上におこる自然の災害から、地球上に生きている人や動物を守るために、皆さんは魔法を学んでいるのです」
先生のその言葉がリプルの心の中に一滴のしずくを落とした。やがてそれは、喜びと怖さをぐるぐるとかき混ぜたような複雑な波紋となってリプルの体のすみずみにまで行き渡った。
「ですが、私たちに対抗する者たちがいます。それが、悪しき力を持つ者たち、闇の天魔です。彼らは、大きな力を発揮するために、普段は力を貯めておき、飽和点に達した時、一気にその力を吐き出します。それが、数百年に一度、地球上を襲う大厄災となるのです。そして、恐ろしいことに、彼らは、私たちが暮らしているこの大地の裏側に生息しています」
「でも、私たちこれまで闇の天魔とやらを見たことがありませんわ」
イザベスがいぶかしげに先生に問う。すると先生は、やさしい笑顔になった。
「それは、これまで皆さんが守られてきたからです。それと、ここ数百年間は闇の天魔たちの活動がおとなしくなっていたという理由もあります。でも、これからはわかりません。このあたりはまだまだ平和ですが、最近、王都近辺では、闇の天魔たちが出現したという報告がなされています。そして、イザベス。昨日あなたを襲ったのも、闇の天魔です」
「ええっ」
イザベスが顔色を変えた。
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