23 / 103
22.あきらめない二人
天空の魔女 リプルとペブル
しおりを挟む
22.あきらめないふたり
「頼んだよ!しずく」
そう胸ポケットに声をかけて、大きく走り出すと、ポケットの中から「グー!」と聞こえたような気がした。
ペブルは、トンと自分の胸をたたいて自分に気合いを入れ、ほうきにまたがると、足元にしげる青草を足で踏みしめながら、坂道をかけ下る。
飛べる、私、飛べる…はず。
崖がせまってくる。
飛ぶ、飛べる、飛べて…こ、怖い。
崖のギリギリ一歩手前で、ペブルは急ブレーキをかけて、止まった。
と、思ったら、勢いがつきすぎて止まれず、そのまま崖の下へ落下。
「わ、わわわ」と、いう声だけ残しながら落ちていった。
もっとも、崖の下に打ち付けられる前に、先生が地面の下に魔法でクッションを用意してくれたので、ケガはなかった。
クッションから立ち上がりながら、ペブルが「痛たた」とつぶやいていると、胸ポケットからしずくが顔を出して、
「ね、何があったの?せっかく気持ちよく寝てたのに」と、言う。
「寝てた?」
ペブルが聞き返す。うん、とシズクがうなずく。
「じゃあ、さっき私が、『頼んだよ!しずく』って言った時、『グー』って返事したのは?」
「うーん、いびき??」
ペブルは思わず、しずくの首根っこをつかむと、
「さっき、飛ぶ練習するの手伝ってくれるって言ってたよね」
と、しずくの顔をにらみつける。
しずくは、ハッと身を固めた。
そこに崖の上からホキントン先生が声をかけた。
「ペブル、もう少し低いところからはじめましょうか。それにしても、いい落ちっぷりだったわ」
先生の楽しそうな笑顔にペブルの怒りが、へなへなとしぼんでいった。
先生は、楽しそうに笑っている。
だけどペブルのことをバカにしているわけではないことが分かった。
やがて時間が経つにつれて、最初は10名ほどいた飛べないグループの生徒も、ほとんどが飛べるようになり、残っているのは、ペブルとマーサだけになってしまった。
高低差50センチほどの段差に移動したペブルとマーサ。
ペブルは、50センチ程度の段差から毎回のように転げ落ちては細かい傷や打ち身をつくっていたが、マーサは、なかなか段差から飛び出せずにいる。
それでも、二人とも練習をやめようとはしなかった。
(マーサったらあきらめないね、やるじゃん)
ペブルは自分のことを棚に上げてそんなことを思った。
やがて、午後に入り、今日の授業時間が終わってしまった。
他の生徒たちは、みんな学校へと帰っていったが、ペブルとマーサは、どちらも練習を止めるとは言い出さなかった。
ホキントン先生は、相変わらずニコニコしながら二人の練習に付き合ってくれている。
一度、学校に帰ったリプルもペブルのことが心配になったのか、戻ってきていた。
リプルの顔を見たとたん、ペブルの気持ちがボロッと崩れた。
「リプル~、飛べないよぉ」と、半べそをかきながら、リプルにかけ寄った。
リプルは、ペブルの頭をなでながら、
「大丈夫!ペブルならやれるって」と、はげます。
そんな二人の様子をマーサが崖の上からじっと見つめていた。
ブ、ブォーロー…その時、学校から大きな角笛の音が聞こえてきた。ホキントン先生がはっと顔をあげる。
「何かあったみたい」
ほぼ同じタイミングで、崖の上の方から、ドドド、ドドと重々しい音が響いてきた。
見ると、土煙をあげながら、家畜のガガイルたちが、数十頭、群れをなして草原を駆け下りてくるのが見える。
ガガイルは、牛に似た動物で、学校の農地で飼われている。
家畜小屋にいる時は、おとなしいのだが、何かに驚くと所かまわず走りまわるくせがある。
そのガガイルたちが、学校の家畜小屋を抜け出してきたのか、何十頭と群れになって、この草原へと下ってきている。
植木をなぎ倒し、石を蹴散らしてせまってくるガガイルたちは、まるで真っ黒な雪崩のようである。
「何?アレ」ペブルがぽかんとしていると、
「危ない、こっちに来る。飛んで。リプル、ペブルをお願い」
ホキントン先生は、そう言いながら、自分もほうきで空に飛び上がり、マーサを助けに向かった。
リプルは、自分もほうきにまたがると、ペブルに手を伸ばす。
ペブルは、ブルブルと頭を振った。
「ペブル、飛べる。一緒に」
リプルは、もう一度手を伸ばして、無理やりペブルの手をとった。
「行くよ!」
その声に励まされたペブルは、ほうきにまたがると、地面を思い切り蹴った。
しかし、ほうきは、一ミリも動かない。
ペブルは頭を振りながら
「リプルだけ逃げて」と、リプルの手を振りほどこうとした。
その間にも、ガガイルたちは、どんどんペブルたちの方へと迫ってくる。
「ううん、絶対に離さない!」リプルは、よりいっそう強くペブルの手を握りしめた。
「リプル……」ペブルの目にじわっと涙が浮いてきた。
「頼んだよ!しずく」
そう胸ポケットに声をかけて、大きく走り出すと、ポケットの中から「グー!」と聞こえたような気がした。
ペブルは、トンと自分の胸をたたいて自分に気合いを入れ、ほうきにまたがると、足元にしげる青草を足で踏みしめながら、坂道をかけ下る。
飛べる、私、飛べる…はず。
崖がせまってくる。
飛ぶ、飛べる、飛べて…こ、怖い。
崖のギリギリ一歩手前で、ペブルは急ブレーキをかけて、止まった。
と、思ったら、勢いがつきすぎて止まれず、そのまま崖の下へ落下。
「わ、わわわ」と、いう声だけ残しながら落ちていった。
もっとも、崖の下に打ち付けられる前に、先生が地面の下に魔法でクッションを用意してくれたので、ケガはなかった。
クッションから立ち上がりながら、ペブルが「痛たた」とつぶやいていると、胸ポケットからしずくが顔を出して、
「ね、何があったの?せっかく気持ちよく寝てたのに」と、言う。
「寝てた?」
ペブルが聞き返す。うん、とシズクがうなずく。
「じゃあ、さっき私が、『頼んだよ!しずく』って言った時、『グー』って返事したのは?」
「うーん、いびき??」
ペブルは思わず、しずくの首根っこをつかむと、
「さっき、飛ぶ練習するの手伝ってくれるって言ってたよね」
と、しずくの顔をにらみつける。
しずくは、ハッと身を固めた。
そこに崖の上からホキントン先生が声をかけた。
「ペブル、もう少し低いところからはじめましょうか。それにしても、いい落ちっぷりだったわ」
先生の楽しそうな笑顔にペブルの怒りが、へなへなとしぼんでいった。
先生は、楽しそうに笑っている。
だけどペブルのことをバカにしているわけではないことが分かった。
やがて時間が経つにつれて、最初は10名ほどいた飛べないグループの生徒も、ほとんどが飛べるようになり、残っているのは、ペブルとマーサだけになってしまった。
高低差50センチほどの段差に移動したペブルとマーサ。
ペブルは、50センチ程度の段差から毎回のように転げ落ちては細かい傷や打ち身をつくっていたが、マーサは、なかなか段差から飛び出せずにいる。
それでも、二人とも練習をやめようとはしなかった。
(マーサったらあきらめないね、やるじゃん)
ペブルは自分のことを棚に上げてそんなことを思った。
やがて、午後に入り、今日の授業時間が終わってしまった。
他の生徒たちは、みんな学校へと帰っていったが、ペブルとマーサは、どちらも練習を止めるとは言い出さなかった。
ホキントン先生は、相変わらずニコニコしながら二人の練習に付き合ってくれている。
一度、学校に帰ったリプルもペブルのことが心配になったのか、戻ってきていた。
リプルの顔を見たとたん、ペブルの気持ちがボロッと崩れた。
「リプル~、飛べないよぉ」と、半べそをかきながら、リプルにかけ寄った。
リプルは、ペブルの頭をなでながら、
「大丈夫!ペブルならやれるって」と、はげます。
そんな二人の様子をマーサが崖の上からじっと見つめていた。
ブ、ブォーロー…その時、学校から大きな角笛の音が聞こえてきた。ホキントン先生がはっと顔をあげる。
「何かあったみたい」
ほぼ同じタイミングで、崖の上の方から、ドドド、ドドと重々しい音が響いてきた。
見ると、土煙をあげながら、家畜のガガイルたちが、数十頭、群れをなして草原を駆け下りてくるのが見える。
ガガイルは、牛に似た動物で、学校の農地で飼われている。
家畜小屋にいる時は、おとなしいのだが、何かに驚くと所かまわず走りまわるくせがある。
そのガガイルたちが、学校の家畜小屋を抜け出してきたのか、何十頭と群れになって、この草原へと下ってきている。
植木をなぎ倒し、石を蹴散らしてせまってくるガガイルたちは、まるで真っ黒な雪崩のようである。
「何?アレ」ペブルがぽかんとしていると、
「危ない、こっちに来る。飛んで。リプル、ペブルをお願い」
ホキントン先生は、そう言いながら、自分もほうきで空に飛び上がり、マーサを助けに向かった。
リプルは、自分もほうきにまたがると、ペブルに手を伸ばす。
ペブルは、ブルブルと頭を振った。
「ペブル、飛べる。一緒に」
リプルは、もう一度手を伸ばして、無理やりペブルの手をとった。
「行くよ!」
その声に励まされたペブルは、ほうきにまたがると、地面を思い切り蹴った。
しかし、ほうきは、一ミリも動かない。
ペブルは頭を振りながら
「リプルだけ逃げて」と、リプルの手を振りほどこうとした。
その間にも、ガガイルたちは、どんどんペブルたちの方へと迫ってくる。
「ううん、絶対に離さない!」リプルは、よりいっそう強くペブルの手を握りしめた。
「リプル……」ペブルの目にじわっと涙が浮いてきた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。

私は旅人
バルジリス
児童書・童話
私は旅人。ただの旅人。
旅をした先、見たこと起きたことをメモして、また旅をするただの旅人。
さあ、次に行く世界は、どんな事が待っているのだろうか……
―――――
カクヨム・小説家になろうにも、一応連載しております。
問題があれば、そちらを非公開いたします
――――――
テムと夢見の森
Sirocos(シロコス)
児童書・童話
(11/27 コンセプトアートに、新たに二点の絵を挿入いたしました♪)
とある田舎村の奥に、入ったら二度と出られないと言われている、深くて広い森があった。
けれど、これは怖い話なんかじゃない。
村に住む十才の少年テムが体験する、忘れられない夢物語。

転生チートがマヨビームってなんなのっ?!
碧
児童書・童話
14歳の平凡な看板娘にいきなり“世界を救え”とか無茶ブリすぎない??しかも職業が≪聖女≫で、能力が……≪マヨビーム≫?!神託を受け、連行された神殿で≪マヨビーム≫の文字を見た途端、エマは思い出した。前世の記憶を。そして同時にブチ切れた。「マヨビームでどうやって世界を救えっていうのよ?!!」これはなんだかんだでマヨビーム(マヨビームとか言いつつ、他の調味料もだせる)を大活用しつつ、“世界を救う”旅に出たエマたちの物語。3月中は毎日更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる