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21.とびたい……のに
天空の魔女 リプルとペブル
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21.飛びたい……のに
リプルたち、ほうきを乗りこなせるグループは、先生の使い魔である賢きドラゴンの後について、空中を気持ちよさそうにすいすいと飛び回っていた。
飛べないグループの一番はしにこそこそと並びなおしたペブルは、小さくため息をつきながら心の中でつぶやいた。
(あ~あ、できる子リプルといまいちな私……いつか、私も輝ける時が来るのかな?)
”うにうに”とした気分で、いつの間にか無意識に体を左右にふらふらと揺すっていたらしい。
ペブルのほうきの柄がカツンととなりの生徒のほうきに当たってしまった。
「ごめんなさい」ペブルがあわてて謝る。
「いいえ」と、振り返ったのは、マーサだった。
とたんに、
「あ!」ペブルの表情が険しくなった。
昨日、マーサがイザベスの嘘を手助けしたことをまだ許せていなかった。
「あの、昨日は、本当にごめんなさい…」
マーサは、小さな声でペブルにあやまった。
しかし、ペブルは、すぐに許せる気持ちにはなれず、唇をとがらせている。
ペブルの様子にマーサはおびえたような表情になった。
「私、イザベスしか友達がいなくて。だから、あの人には逆らえないの。それに小さい頃からずっとイザベスの家で育ててもらっていて……」
マーサは、まわりに聞こえないように気をつかっているのか、小さな声でぼそぼそとしゃべる。
自信なさげなマーサの表情にペブルは、リプルにコンプレックスを感じる自分を見るような気がして、それ以上、責められなくなった。
ペブルは表情をゆるめると「わかった」と小さくうなずいた。
マーサが少しほっとした顔をした。
その時、ホキントン先生が、
「では、飛べないグループの皆さんは、いちから飛ぶ練習をします。こちらに集まって」と呼んだので、マーサは、いそいそとそちらに行こうとした。
ペブルは、そんなマーサの背中に
「事情はわかったけど……わからない、マーサは、どうしてそんな人を友達と呼ぶの?」と、言葉を投げかけた。
その言葉に、マーサは一瞬立ち止まって、ペブルの方を振り向こうとしたが、結局、こちらを見ることなく、少し背中を丸めながら、先生の方に向かって小走りに去っていった。
気持ちがモヤモヤしたままのペブルは、両手をぐっと握りしめたまま立っていた。
「ペブル~早くいらっしゃい!」
先生の声にペブルは、はじかれたみたいにかけ出した。
先生は小高い崖のうえに立っていた。
ちょうどスキーのジャンプ台のような形の崖である。
段差は2メートルほどだろうか。
「まさか、この段差を足がかりにして飛ぶなんていう…」
ペブルがつぶやいていると、先生が、
「その通り!」
と、両手をパチンとたたいた。楽しそうな笑顔である。
「ホキントン先生って、ときどき天然でプレッシャーかけてくるよね」
ペブルは思わずつぶやく。
「ん? 何か言ったかしら、ペブル。あ、最初にチャレンジしたいのね?」
ニコニコ笑顔でのプレッシャーの追撃である。
迷うペブルに胸ポケットにいたシズクが
「大丈夫、ぼくがこっそり手助けしてあげる」
と、ウィンクする。
それで、ペブルは、
「はい!やります」と右手を大きく挙げた。ことをペブルは、崖の上、先生の隣に立ってから後悔した。
脇から見ていた高さとはちがって、ここから飛び出すという意識を持って段差の上に立ってみると、足がすくむような感じすらする。
先生は、相変わらず今日の空のように晴れ渡った表情だ。
「大丈夫ね、ペブル。もし落ちてもあなたなら体のあちこちも丈夫そうだし、安心してトップバッターをつとめてもらえるわ」などと言っている。
「あの、先生、飛び方のコツを教えてもらえませんか?」
「そうねえ、自分が雲や鳥の羽くらいに軽くなったイメージを持つことね。習うより慣れろよ、まずは飛んでみよう!」
「イメージだけで、飛べるなら、私だってとっくに飛べているはず」
ペブルは大きくため息をついてから、助走をとるために20歩ほど、下がった。
こうなったらシズクに頼るしかないか。
ペブルは、先生に言われたとおり、自分が鳥になって段差から飛び出し、空を自由に飛ぶ様子をイメージした。
リプルたち、ほうきを乗りこなせるグループは、先生の使い魔である賢きドラゴンの後について、空中を気持ちよさそうにすいすいと飛び回っていた。
飛べないグループの一番はしにこそこそと並びなおしたペブルは、小さくため息をつきながら心の中でつぶやいた。
(あ~あ、できる子リプルといまいちな私……いつか、私も輝ける時が来るのかな?)
”うにうに”とした気分で、いつの間にか無意識に体を左右にふらふらと揺すっていたらしい。
ペブルのほうきの柄がカツンととなりの生徒のほうきに当たってしまった。
「ごめんなさい」ペブルがあわてて謝る。
「いいえ」と、振り返ったのは、マーサだった。
とたんに、
「あ!」ペブルの表情が険しくなった。
昨日、マーサがイザベスの嘘を手助けしたことをまだ許せていなかった。
「あの、昨日は、本当にごめんなさい…」
マーサは、小さな声でペブルにあやまった。
しかし、ペブルは、すぐに許せる気持ちにはなれず、唇をとがらせている。
ペブルの様子にマーサはおびえたような表情になった。
「私、イザベスしか友達がいなくて。だから、あの人には逆らえないの。それに小さい頃からずっとイザベスの家で育ててもらっていて……」
マーサは、まわりに聞こえないように気をつかっているのか、小さな声でぼそぼそとしゃべる。
自信なさげなマーサの表情にペブルは、リプルにコンプレックスを感じる自分を見るような気がして、それ以上、責められなくなった。
ペブルは表情をゆるめると「わかった」と小さくうなずいた。
マーサが少しほっとした顔をした。
その時、ホキントン先生が、
「では、飛べないグループの皆さんは、いちから飛ぶ練習をします。こちらに集まって」と呼んだので、マーサは、いそいそとそちらに行こうとした。
ペブルは、そんなマーサの背中に
「事情はわかったけど……わからない、マーサは、どうしてそんな人を友達と呼ぶの?」と、言葉を投げかけた。
その言葉に、マーサは一瞬立ち止まって、ペブルの方を振り向こうとしたが、結局、こちらを見ることなく、少し背中を丸めながら、先生の方に向かって小走りに去っていった。
気持ちがモヤモヤしたままのペブルは、両手をぐっと握りしめたまま立っていた。
「ペブル~早くいらっしゃい!」
先生の声にペブルは、はじかれたみたいにかけ出した。
先生は小高い崖のうえに立っていた。
ちょうどスキーのジャンプ台のような形の崖である。
段差は2メートルほどだろうか。
「まさか、この段差を足がかりにして飛ぶなんていう…」
ペブルがつぶやいていると、先生が、
「その通り!」
と、両手をパチンとたたいた。楽しそうな笑顔である。
「ホキントン先生って、ときどき天然でプレッシャーかけてくるよね」
ペブルは思わずつぶやく。
「ん? 何か言ったかしら、ペブル。あ、最初にチャレンジしたいのね?」
ニコニコ笑顔でのプレッシャーの追撃である。
迷うペブルに胸ポケットにいたシズクが
「大丈夫、ぼくがこっそり手助けしてあげる」
と、ウィンクする。
それで、ペブルは、
「はい!やります」と右手を大きく挙げた。ことをペブルは、崖の上、先生の隣に立ってから後悔した。
脇から見ていた高さとはちがって、ここから飛び出すという意識を持って段差の上に立ってみると、足がすくむような感じすらする。
先生は、相変わらず今日の空のように晴れ渡った表情だ。
「大丈夫ね、ペブル。もし落ちてもあなたなら体のあちこちも丈夫そうだし、安心してトップバッターをつとめてもらえるわ」などと言っている。
「あの、先生、飛び方のコツを教えてもらえませんか?」
「そうねえ、自分が雲や鳥の羽くらいに軽くなったイメージを持つことね。習うより慣れろよ、まずは飛んでみよう!」
「イメージだけで、飛べるなら、私だってとっくに飛べているはず」
ペブルは大きくため息をついてから、助走をとるために20歩ほど、下がった。
こうなったらシズクに頼るしかないか。
ペブルは、先生に言われたとおり、自分が鳥になって段差から飛び出し、空を自由に飛ぶ様子をイメージした。
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