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20.ほうきのレッスン
天空の魔女 リプルとペブル
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20.ほうきのレッスン
次の日、リプルたちは、授業でほうきに乗る練習をすることになった。
学校の東にある見はらしのいい丘に集まった生徒たちは、一列に並び、心地よい緑のそよ風に吹かれて立っていた。
「それでは、ほうきに乗れる人チームと乗れない人チームの二つに分けます。乗れる人は、一歩前に出て」
一歩前にふみ出したリプルがとなりを見ると、いままで一度もほうきで飛べたことのないペブルも一歩前に出ていた。
「ペブルは、まだうまくほうきをコントロールできないよね?」
リプルが心配そうな顔でペブルに確かめる。
「大丈夫。中等部生になったから乗れるかも、いやきっと乗れる気がする」
ペブルは目をキラキラさせてそう言いはなった。
「ふぁ~よく寝た」
シズクが、前足で目をこすりながら、ペブルの胸ポケットから顔を出した。
どうやらポケットの中でぐっすり寝ていたらしい。
そして、おもむろに鼻を空に向けるとクンクンとにおいをかいで
「ああ~、青草のいい香りがする」
などとのんきなことを言っている。
「シズク、ちょうどいいときに起きたね。これから飛ぶよ」
ペブルは、真剣な表情をしてほうきの柄をつかむ。
それをみたシズクが状況を察したのか、おののいた表情をしてブルブルと首を振った。
「ペブル、早まるな。キミはまだ一度だって飛べたことがないよね?」
シズクが両手でペブルの肩をたたいて止めようとする。
ペブルは、ううんと首をふった。
「誰だって、はじめて飛ぶ日がある。私は今日がその日」
「ねえ、ペブル。悪いこと言わないから、基礎グループに入った方がいいよ」
そう言いながら、ほうきに乗ったリプルは、フワッと空へ上がっていく。
他にもほうきに乗れると申告した生徒たちは、次々と空に浮かんでいき、円を描きながら飛んだり、上下に上がったり下がったりして楽しそうに声を上げている。
乗れると宣言した中で、地上に残っているのは、ペブルだけになってしまった。
「私だって、できる!」
ほうきにまたがったペブルは両手にグッと力を入れると、右足で大きく地面を蹴った。
ほうきは、ビクンと飛び上がり50センチほど浮かんだが、急につんのめるようにして止まり、ペブルは地面へ戻された。
ペブルがちらっと飛べないグループのところにいるホキントン先生を見ると、先生も不思議そうにこちらを見ている。
(ま、まずい。先生に飛べないと思われる)
そう考えてあせったペブルは先生に向かって、ニカッと笑うと、必死に両手に力を込めて、両足でトンと地面を蹴った。
ところが、先ほど少し浮くことができたのに、もう何回、地面を蹴っても、ほうきはぴくりとも動かなくなってしまった。
ホキントン先生は「あら~」というように目を見はると、ペブルを手招きした。
「ねえ、ペブル。あなたこちらのグループで始めた方がよさそうよ」
ホキントン先生にうながされて、ペブルはがっくり、シズクは両手を小さくガッツポーズした。
次の日、リプルたちは、授業でほうきに乗る練習をすることになった。
学校の東にある見はらしのいい丘に集まった生徒たちは、一列に並び、心地よい緑のそよ風に吹かれて立っていた。
「それでは、ほうきに乗れる人チームと乗れない人チームの二つに分けます。乗れる人は、一歩前に出て」
一歩前にふみ出したリプルがとなりを見ると、いままで一度もほうきで飛べたことのないペブルも一歩前に出ていた。
「ペブルは、まだうまくほうきをコントロールできないよね?」
リプルが心配そうな顔でペブルに確かめる。
「大丈夫。中等部生になったから乗れるかも、いやきっと乗れる気がする」
ペブルは目をキラキラさせてそう言いはなった。
「ふぁ~よく寝た」
シズクが、前足で目をこすりながら、ペブルの胸ポケットから顔を出した。
どうやらポケットの中でぐっすり寝ていたらしい。
そして、おもむろに鼻を空に向けるとクンクンとにおいをかいで
「ああ~、青草のいい香りがする」
などとのんきなことを言っている。
「シズク、ちょうどいいときに起きたね。これから飛ぶよ」
ペブルは、真剣な表情をしてほうきの柄をつかむ。
それをみたシズクが状況を察したのか、おののいた表情をしてブルブルと首を振った。
「ペブル、早まるな。キミはまだ一度だって飛べたことがないよね?」
シズクが両手でペブルの肩をたたいて止めようとする。
ペブルは、ううんと首をふった。
「誰だって、はじめて飛ぶ日がある。私は今日がその日」
「ねえ、ペブル。悪いこと言わないから、基礎グループに入った方がいいよ」
そう言いながら、ほうきに乗ったリプルは、フワッと空へ上がっていく。
他にもほうきに乗れると申告した生徒たちは、次々と空に浮かんでいき、円を描きながら飛んだり、上下に上がったり下がったりして楽しそうに声を上げている。
乗れると宣言した中で、地上に残っているのは、ペブルだけになってしまった。
「私だって、できる!」
ほうきにまたがったペブルは両手にグッと力を入れると、右足で大きく地面を蹴った。
ほうきは、ビクンと飛び上がり50センチほど浮かんだが、急につんのめるようにして止まり、ペブルは地面へ戻された。
ペブルがちらっと飛べないグループのところにいるホキントン先生を見ると、先生も不思議そうにこちらを見ている。
(ま、まずい。先生に飛べないと思われる)
そう考えてあせったペブルは先生に向かって、ニカッと笑うと、必死に両手に力を込めて、両足でトンと地面を蹴った。
ところが、先ほど少し浮くことができたのに、もう何回、地面を蹴っても、ほうきはぴくりとも動かなくなってしまった。
ホキントン先生は「あら~」というように目を見はると、ペブルを手招きした。
「ねえ、ペブル。あなたこちらのグループで始めた方がよさそうよ」
ホキントン先生にうながされて、ペブルはがっくり、シズクは両手を小さくガッツポーズした。
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