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12・中等部の授業がはじまる
天空の魔女 リプルとペブル
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12・中等部の授業がはじまる
今日からいよいよリプルとペブルの中等部での勉強がスタートする。
リプルとペブルが廊下をばたばたと走って来た。
「もう、だから早く食べられるメニューにしようって言ったのに。初日からペブルのせいで遅刻しちゃうよ」
リプルが困り顔でペブルに文句を言っている。
「あんなに固いフランスパンになると思わなかったんだもん。リプルに教えてもらった通りに呪文をかけたのにな~」
ペブルは悪びれる様子もなくしれっと言った。
「ボクの前歯すらささらないような、カチカチのパンってどうなの?」
シズクが、ペブルの肩でゆり落とされないようにしっかりつかまりながら、言う。
「や、でもあの呪文をつきつめたら、もしかして”パンこん棒”みたいな魔法武器ができるかも!」
まったく反省の色のないペブルに、シズクががっくりとしっぽをたれた。
「ここよ。1年の教室」
リプルが急に立ち止まったので、ペブルは思わずつんのめりそうになりながら急ブレーキ。
その反動で、肩にのっていたシズクは「わ、わわわー」と言いながら宙を飛んだ。
ちょうどその時、反対側から歩いてきた女の人が、シズクをキャッチしてくれた。
「あら、かわいい、ムササビさんね。でも、学校の廊下を飛ぶのは感心しないわね」
青い魔女のワンピに、紫色のリボンを帽子に結んだその人は、よく見ると胸のあたりに魔女学校の紋章ドラゴンのバッジをつけている。魔女学校の先生の証だった。
「ムササビじゃないです。リスです」
シズクは、あわてて先生のかんちがいを訂正する。
先生がジーっと目を細めてシズクを観察した。
「あら、ホントだ。ごめんなさいね。私、目が悪くて。みんな教室に入りましょう」
やさしそうな先生の笑顔にリプルとペブルは、ほっとした。
先生に続いて、リプルとペブルも教室へと入った。
車座になって座っていた20名ほどの生徒たちがいっせいに顔をあげる。
遅刻ギリギリのリプルとペブルは、小さくなりながら、空いている床に座った。
「みなさん、おはようございます。私のクラスへようこそ! 楽しく魔法を勉強しましょうね。私の名前は、ホキントンです。よろしくね」
ホキントン先生は、目尻にやさしいシワを浮かべながらそう挨拶した。
先生は、クラスの生徒たち一人ひとりの顔を胸に刻みつけるかのように順に視線を注いでいく。
リプルは、先生と目が合うと胸の中に温かなろうそくがともったような気がした。
ペブルは、少し照れくさくなり、にこっと笑ってごまかした。先生の目もやさしく笑っている。
先生は全ての生徒とアイコンタクトを取ると、指をパチンと鳴らした。
すると廊下の向こうからガラガラガラと大きな音を立てて、何かが近づいてきた。
ドアが開き、入ってきたのは、手押し車だった。
ただしそれを押しているのは、ほうきだった。
先生は、手押し車からダークブラウンの表紙の分厚い本を何冊か取り出して、生徒達に一冊ずつ配っていく。
「これが皆さんが使う教科書です。魔法も薬草のことも、呪文も歴史も、皆さんが習うほとんど全てのことがここに書かれています」
全員に本を配ってしまうと先生は、生徒たちがつくる円の中心に立ち、そう説明を始めた。
「先生、私の本、途中から真っ白ですわ。落丁本ではありませんこと?」
金髪のイザベスだった。
それを聞いたペブルはあわてて自分の本のページをめくってみた。同じだった。
ペブルの本も途中から真っ白で何も書かれていない。
となりのリプルの本をのぞき込んでみたが、やはり途中から真っ白なページが続いていた。
先生は、それを聞くと、手でその女の子を座るよううながしながら、生徒たちに語りかける。
「イザベス、よく気がつきましたね。この本はあなたたちが3年間使うものですが、ちょうど半分から後が真っ白になっています。知っている人も知らない人もいるかと思いますが、中等部では、2年生の半ばに進級テストがあります。この進級テストに受かると、後のページに文字が現れることになっているんです」
それを聞いた生徒たちは、顔を見合わせる。
「正魔女になるためには、厳しい試練がいくつもあるのです。私としては、イザベス、マーサ、クラン、ステイト、リプル、ペブル、…ここにいるみんなに高等部にすすみ、やがては正魔女になって欲しいと思っているのですが。ぜひ、頑張って下さいね」
先生は、まだリプルたちが誰ひとりとして名前を名乗っていないにも関わらず、ひとり一人の顔を見ながら間違えることなくその名を呼びかけた。
(絶対に正魔女になるんだ)
と、心の中でつぶやくリプル。
それにしても、この白いページには、いったい何が書かれているのだろうか?
リプルは、まだ知らない魔法に関する知識がこんなにたくさんあるのだと考えるだけでわくわくしてきた。
今日からいよいよリプルとペブルの中等部での勉強がスタートする。
リプルとペブルが廊下をばたばたと走って来た。
「もう、だから早く食べられるメニューにしようって言ったのに。初日からペブルのせいで遅刻しちゃうよ」
リプルが困り顔でペブルに文句を言っている。
「あんなに固いフランスパンになると思わなかったんだもん。リプルに教えてもらった通りに呪文をかけたのにな~」
ペブルは悪びれる様子もなくしれっと言った。
「ボクの前歯すらささらないような、カチカチのパンってどうなの?」
シズクが、ペブルの肩でゆり落とされないようにしっかりつかまりながら、言う。
「や、でもあの呪文をつきつめたら、もしかして”パンこん棒”みたいな魔法武器ができるかも!」
まったく反省の色のないペブルに、シズクががっくりとしっぽをたれた。
「ここよ。1年の教室」
リプルが急に立ち止まったので、ペブルは思わずつんのめりそうになりながら急ブレーキ。
その反動で、肩にのっていたシズクは「わ、わわわー」と言いながら宙を飛んだ。
ちょうどその時、反対側から歩いてきた女の人が、シズクをキャッチしてくれた。
「あら、かわいい、ムササビさんね。でも、学校の廊下を飛ぶのは感心しないわね」
青い魔女のワンピに、紫色のリボンを帽子に結んだその人は、よく見ると胸のあたりに魔女学校の紋章ドラゴンのバッジをつけている。魔女学校の先生の証だった。
「ムササビじゃないです。リスです」
シズクは、あわてて先生のかんちがいを訂正する。
先生がジーっと目を細めてシズクを観察した。
「あら、ホントだ。ごめんなさいね。私、目が悪くて。みんな教室に入りましょう」
やさしそうな先生の笑顔にリプルとペブルは、ほっとした。
先生に続いて、リプルとペブルも教室へと入った。
車座になって座っていた20名ほどの生徒たちがいっせいに顔をあげる。
遅刻ギリギリのリプルとペブルは、小さくなりながら、空いている床に座った。
「みなさん、おはようございます。私のクラスへようこそ! 楽しく魔法を勉強しましょうね。私の名前は、ホキントンです。よろしくね」
ホキントン先生は、目尻にやさしいシワを浮かべながらそう挨拶した。
先生は、クラスの生徒たち一人ひとりの顔を胸に刻みつけるかのように順に視線を注いでいく。
リプルは、先生と目が合うと胸の中に温かなろうそくがともったような気がした。
ペブルは、少し照れくさくなり、にこっと笑ってごまかした。先生の目もやさしく笑っている。
先生は全ての生徒とアイコンタクトを取ると、指をパチンと鳴らした。
すると廊下の向こうからガラガラガラと大きな音を立てて、何かが近づいてきた。
ドアが開き、入ってきたのは、手押し車だった。
ただしそれを押しているのは、ほうきだった。
先生は、手押し車からダークブラウンの表紙の分厚い本を何冊か取り出して、生徒達に一冊ずつ配っていく。
「これが皆さんが使う教科書です。魔法も薬草のことも、呪文も歴史も、皆さんが習うほとんど全てのことがここに書かれています」
全員に本を配ってしまうと先生は、生徒たちがつくる円の中心に立ち、そう説明を始めた。
「先生、私の本、途中から真っ白ですわ。落丁本ではありませんこと?」
金髪のイザベスだった。
それを聞いたペブルはあわてて自分の本のページをめくってみた。同じだった。
ペブルの本も途中から真っ白で何も書かれていない。
となりのリプルの本をのぞき込んでみたが、やはり途中から真っ白なページが続いていた。
先生は、それを聞くと、手でその女の子を座るよううながしながら、生徒たちに語りかける。
「イザベス、よく気がつきましたね。この本はあなたたちが3年間使うものですが、ちょうど半分から後が真っ白になっています。知っている人も知らない人もいるかと思いますが、中等部では、2年生の半ばに進級テストがあります。この進級テストに受かると、後のページに文字が現れることになっているんです」
それを聞いた生徒たちは、顔を見合わせる。
「正魔女になるためには、厳しい試練がいくつもあるのです。私としては、イザベス、マーサ、クラン、ステイト、リプル、ペブル、…ここにいるみんなに高等部にすすみ、やがては正魔女になって欲しいと思っているのですが。ぜひ、頑張って下さいね」
先生は、まだリプルたちが誰ひとりとして名前を名乗っていないにも関わらず、ひとり一人の顔を見ながら間違えることなくその名を呼びかけた。
(絶対に正魔女になるんだ)
と、心の中でつぶやくリプル。
それにしても、この白いページには、いったい何が書かれているのだろうか?
リプルは、まだ知らない魔法に関する知識がこんなにたくさんあるのだと考えるだけでわくわくしてきた。
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