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9.強キャラお嬢様
天空の魔女 リプルとペブル
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9.強キャラお嬢様
2週間後、リプルとペブルは、それぞれ大きなトランクを抱えてレンガづくりの重厚な建物の門の前に立っていた。
ここがリプルとペブルがこれから3年間を過ごすことになる「魔女学園中等部」だ。
小学部のとなりにあるが、レンガ壁と門でへだてられていて、ふたりとも中に入るのは試験のとき以来だ。
リプルは、瞳をキラっと輝かせて高い門を見あげた。
「ついに来たね。あこがれの中等部!」
ペブルのほうは、なぜか鼻をくんくんさせている。
「うんうん、寮の食事も豪華になるらしいし、スクールランチの量も増えるんでしょ? 楽しみすぎるっ!」
「ペブルの楽しみって、そこ!?」
「えー、じゃあリプルの楽しみって?」
「新しい魔法を覚えられるとか、ほうきに乗れるとか、魔法の杖が解禁になるとか。あ、あと薬草学の勉強も始まるよね」
「うぇ~勉強の種類が増えるのはうれしくない」
リプルとペブルがそんなたわいもない会話をしている横をほかの子たちがとおりすぎていく。
緊張でこわばった顔、ニコニコ笑顔、眠そうな顔……どの子も試験に受かって、魔女への新しい扉をぶじくぐりぬけた子たちだ。
小学部からいっしょだった生徒たちがほとんどだが、中には中学部から転入してくる生徒もいる。
ちょうど学校の門の前に一台の馬車が止まった。どうやら近郊の貴族の娘のようだ。
「見て、リプル。すんごい馬車で乗り付けた子がいる! うわ、御者が赤じゅうたんしきはじめたよ」
ペブルの実況どおり、校門の前に金色の飾りをゴテゴテとはりつけた馬車が横づけになり、御者が円筒状の赤じゅうたんを校門に向かって転がしはじめた。赤いじゅうたんがレンガ道をおおっていく。
じゅうたんがコロコロとこちらにせまってきたので、リプルとペブルは脇によけた。
「ペブル、そろそろ入ろうよ」
と、校舎に向かって歩き出そうとしたリプルの袖を、ペブルがガシッとつかんだ。
「あの馬車の中の人、見たい。きっとプリンセスみたいなかわいい子が出てくるに違いない」
そう言われてみると、知りたがり屋のリプルとしても、気になってしまう。
リプルとペブルは、手をつないで馬車のようすを見守った。
御者は赤いじゅうたんを馬車から校舎入口までしきつめると、馬車の扉を開き、片足を地面についてうやうやしくかがんだ。
「お嬢様、つきましてございます」
馬車の中から出てきたのは、リプルたちと同じ青い魔女服を着た少女。赤茶色の髪を左右ふたつにわけてお下げにしている。目の下にうすくそばかすが散らばっている。
「あ、あれ? めっちゃ普通の女の子だ」
予想が外れたといわんばかりに小首をかしげるペブル。
と、思ったら赤茶色の髪の子は御者のとなりで同じように片足をついてうやうやしく頭を下げた。
「あ、あの子はお手伝いさんだったんだ」
「私たちと同じ年くらいなのに、働いててすごいね」
そして、馬車の中からもう一人の少女が姿をあらわした。
金髪を高く結い、大きなリボンを飾り、下にたれた横髪には美しいウェーブがかかっている。
赤い瞳は勝気そうに輝いている。
青い魔女服にもレースの縁取りや金糸や銀糸で細かな刺繍がほどこされている。
「来た。こっちがプリンセスだ!」
ペブルは、金髪の少女をガン見している。
プリンセスっぽい少女は馬車のステップの上に立ち、堂々とした態度であたりを見わたした。
「マーサ。荷物を」
金髪の少女が、赤茶色の髪の子にそう命令した。
「はい、イザベス様」
赤茶色の髪の子は、深く頭をたれてそう答えた。
「イザベスだって、名前もカッコいい」
「もう行こう。あまりジロジロ見るのも失礼だよ」
リプルは「もっと見る~」と、じたばた手足を動かしているペブルのフードを引っ張り、校舎の中へ入っていった。
校舎の中に入ると、ふたりのまえに2本のほうきがあらわれた。
ほうきは、まるでおじぎするみたいに柄の部分をくの字におりまげたかと思うと、横になって宙に浮かんだ。
そして、ふたりの大きな荷物をそれぞれ柄にひっかけると、ついてこいとでもいうようにふたりを先導していく。
まえをふわふわと飛んで行くほうきを見て
「の、乗りたい」
と、両手の指をチョロチョロとあやしげに動かしているペブルをリプルは必死に止める。
「ダメだって。まだ許可されていないんだから!」
「ぬーっ」
ほうきは、C-18と書かれた部屋の前でぴたりと止まった。
「ここが私たちの部屋ね。案内ありがとう」
リプルが礼を述べると、ほうきたちはまたペコリと頭をさげて、ふわ~っと飛び去っていった。
2週間後、リプルとペブルは、それぞれ大きなトランクを抱えてレンガづくりの重厚な建物の門の前に立っていた。
ここがリプルとペブルがこれから3年間を過ごすことになる「魔女学園中等部」だ。
小学部のとなりにあるが、レンガ壁と門でへだてられていて、ふたりとも中に入るのは試験のとき以来だ。
リプルは、瞳をキラっと輝かせて高い門を見あげた。
「ついに来たね。あこがれの中等部!」
ペブルのほうは、なぜか鼻をくんくんさせている。
「うんうん、寮の食事も豪華になるらしいし、スクールランチの量も増えるんでしょ? 楽しみすぎるっ!」
「ペブルの楽しみって、そこ!?」
「えー、じゃあリプルの楽しみって?」
「新しい魔法を覚えられるとか、ほうきに乗れるとか、魔法の杖が解禁になるとか。あ、あと薬草学の勉強も始まるよね」
「うぇ~勉強の種類が増えるのはうれしくない」
リプルとペブルがそんなたわいもない会話をしている横をほかの子たちがとおりすぎていく。
緊張でこわばった顔、ニコニコ笑顔、眠そうな顔……どの子も試験に受かって、魔女への新しい扉をぶじくぐりぬけた子たちだ。
小学部からいっしょだった生徒たちがほとんどだが、中には中学部から転入してくる生徒もいる。
ちょうど学校の門の前に一台の馬車が止まった。どうやら近郊の貴族の娘のようだ。
「見て、リプル。すんごい馬車で乗り付けた子がいる! うわ、御者が赤じゅうたんしきはじめたよ」
ペブルの実況どおり、校門の前に金色の飾りをゴテゴテとはりつけた馬車が横づけになり、御者が円筒状の赤じゅうたんを校門に向かって転がしはじめた。赤いじゅうたんがレンガ道をおおっていく。
じゅうたんがコロコロとこちらにせまってきたので、リプルとペブルは脇によけた。
「ペブル、そろそろ入ろうよ」
と、校舎に向かって歩き出そうとしたリプルの袖を、ペブルがガシッとつかんだ。
「あの馬車の中の人、見たい。きっとプリンセスみたいなかわいい子が出てくるに違いない」
そう言われてみると、知りたがり屋のリプルとしても、気になってしまう。
リプルとペブルは、手をつないで馬車のようすを見守った。
御者は赤いじゅうたんを馬車から校舎入口までしきつめると、馬車の扉を開き、片足を地面についてうやうやしくかがんだ。
「お嬢様、つきましてございます」
馬車の中から出てきたのは、リプルたちと同じ青い魔女服を着た少女。赤茶色の髪を左右ふたつにわけてお下げにしている。目の下にうすくそばかすが散らばっている。
「あ、あれ? めっちゃ普通の女の子だ」
予想が外れたといわんばかりに小首をかしげるペブル。
と、思ったら赤茶色の髪の子は御者のとなりで同じように片足をついてうやうやしく頭を下げた。
「あ、あの子はお手伝いさんだったんだ」
「私たちと同じ年くらいなのに、働いててすごいね」
そして、馬車の中からもう一人の少女が姿をあらわした。
金髪を高く結い、大きなリボンを飾り、下にたれた横髪には美しいウェーブがかかっている。
赤い瞳は勝気そうに輝いている。
青い魔女服にもレースの縁取りや金糸や銀糸で細かな刺繍がほどこされている。
「来た。こっちがプリンセスだ!」
ペブルは、金髪の少女をガン見している。
プリンセスっぽい少女は馬車のステップの上に立ち、堂々とした態度であたりを見わたした。
「マーサ。荷物を」
金髪の少女が、赤茶色の髪の子にそう命令した。
「はい、イザベス様」
赤茶色の髪の子は、深く頭をたれてそう答えた。
「イザベスだって、名前もカッコいい」
「もう行こう。あまりジロジロ見るのも失礼だよ」
リプルは「もっと見る~」と、じたばた手足を動かしているペブルのフードを引っ張り、校舎の中へ入っていった。
校舎の中に入ると、ふたりのまえに2本のほうきがあらわれた。
ほうきは、まるでおじぎするみたいに柄の部分をくの字におりまげたかと思うと、横になって宙に浮かんだ。
そして、ふたりの大きな荷物をそれぞれ柄にひっかけると、ついてこいとでもいうようにふたりを先導していく。
まえをふわふわと飛んで行くほうきを見て
「の、乗りたい」
と、両手の指をチョロチョロとあやしげに動かしているペブルをリプルは必死に止める。
「ダメだって。まだ許可されていないんだから!」
「ぬーっ」
ほうきは、C-18と書かれた部屋の前でぴたりと止まった。
「ここが私たちの部屋ね。案内ありがとう」
リプルが礼を述べると、ほうきたちはまたペコリと頭をさげて、ふわ~っと飛び去っていった。
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