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2.お気に入りの魔女帽子が!
天空の魔女 リプルとペブル
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2.お気に入りの魔女帽子が!
さけび声に気づいたリプルが、ずるずると落ちかけているペブルの足をとっさにつかまなければ、ペブルもビニール袋やツタと同じ運命をたどっていたに違いない。
ペブルの体は、逆さづりの状態となり、胸にかけていたネックレスが、キラリと光りながら落ちていった。
だけどリプルもまだ幼い女の子。自分と同じ体重のペブルを引き上げることはできなかった。
「うーん、うーーっしょ」
リプルは、必死でペブルを引き上げようとしたが、ぎゃくに空中へと引きずられていく。
「いや~!!」
こわがってバタバタさせているペブルの足に顔をけられながらも
「アル、ハイラノ、レブー!」
リプルは、必死で呪文を唱えた。
これはペブルの背中に羽根を生やす呪文。
しかし、何もおこらない。それも当然のこと。体を変形させる魔法など難しすぎて、子どもにはとても無理だ。
ふたりの体はずるずると壁の穴から空中へとずり落ちていく。
リプルは、片手でペブルの手を、もう片ほうの手でタランと垂れ下がっているつるをつかんだ。
しかし、つるはプチと切れてしまった。
「あっ!」
ふたりの体は、何もない空中へと放り出された。
そのとき奇跡が起きた。
光のつぶがペブルの背中に集まり、鳥の羽根の形にサッと広がった。
光の描いた軌跡のとおりにペブルの背に羽根が生えた。
「え、あ?」
「その羽根をはばたかせて、ペブル!」
逆にペブルにぶら下がるかっこうになったリプルが叫ぶ。
ペブルは、バサバサと羽根を羽ばたかせ、体をふわっと宙に浮かべると、しっかりとリプルの手を握りしめたまま壁の穴をくぐりぬけて大地の上へと戻ってきた。
「た、助かった!?」
リプルがほーっと息をはく。
「リプル、たすけてくれて、ぐすっ、ありがとーーー!!」
両手をひろげてリプルに抱き着くペブル。
わんわんと涙をながして泣くペブルの頭をリプルはよしよしとなでた。
「助かったんだから、泣かないの」
「だって……ぐすん……お気に入りの魔女帽子、なくしちゃったよぉ」
そう言うとペブルはよりいっそう激しく泣きだした。
もちろん魔女帽子ではなく、ただのビニール袋である。
「あれは……拾った袋で作ったニセモノだし。本物の魔女帽子は中等部生になったらもらえるから」
そのことばにペブルは、チラっと顔をあげた。
「私も、魔女になれるかなぁ。魔女帽子もらえるかなぁ?」
魔女に生まれたからといって全員が魔女になれるわけではない。試練や試験をクリアしないと正魔女にはなれないのだ。
「うん、いっしょに魔法の勉強がんばろうよ! 私も手伝ってあげるから」
リプルのはげましに、ペブルもようやく泣き止んだ。
その後、しばらくの間、ふたりは、ツタをより分けて壁にぽっかりと窓のように空いた空間から、カメみたいにひょっこり顔だけだして、壁のむこうに広がる青い世界をぽかんと見つめていた。
「世界のはてって、ほんとにあったんだね」
「はてのむこうには、雲のほかには、何もないんだね」
壁の向こうに広がっていたのは、上も前も下も全部青い世界。
目線の高さやもっと高い場所にも雲が浮いている。
見上げれば、どこまでもやわらかな青の世界が広がっている。
下を見ると、雲の間から空とは、また違った深い青が広がっていた。ところどころ、キラキラと輝いている。
「あっ! ペブル。見て、あそこ。大きな緑の大陸がある!」
「ほんとだ。すっごく下のほうだね。あんなとこにも陸があるんだ!」
「いつか、行ってみたいなぁ」
と、目を輝かせるリプルにペブルは、首をふった。
「えー、でっかいモンスターとかいるかもよ」
ペブルが口を大きく開け、両手をかぎづめみたいな形にして、リプルをおどかす。
「モンスターなんておとぎ話にしか出てこないよ。森とか洞窟に魔物はいるけど」
たくさんの本や図鑑を読んでいるリプルは、おどされても落ち着いて言い返す。
すると、ペブルがほおを真っ赤にして言った。
「さっき見たもん! でっかい細長い龍みたいなヤツが、下から来て天にかけあがっていったの。お尻から白い煙をもくもくって吐いて。あれ、ぜったいモンスター」
リプルが首をかしげた。
「そういえば……すごーく大きな、人が何人も乗れちゃうくらい大きな銀色の鳥が、この大陸の近くを飛んでいるのをみたって話を読んだことがある」
「ほらね、外の世界はあぶないんだよ」
「でも、そこに知らないことがあれば、行ってみてみたいよ!」
瞳をキラキラさせているリプルにたいして、ペブルは鼻の頭にしわをよせた。
「リプルの知りたがり屋!」
「でも、そこにすっごくおいしいお菓子があったら、ペブルはどうする?」
ペブルは鼻の穴をふくらませて即答。
「行く!」
リプルが「ほらね」と笑った。
さけび声に気づいたリプルが、ずるずると落ちかけているペブルの足をとっさにつかまなければ、ペブルもビニール袋やツタと同じ運命をたどっていたに違いない。
ペブルの体は、逆さづりの状態となり、胸にかけていたネックレスが、キラリと光りながら落ちていった。
だけどリプルもまだ幼い女の子。自分と同じ体重のペブルを引き上げることはできなかった。
「うーん、うーーっしょ」
リプルは、必死でペブルを引き上げようとしたが、ぎゃくに空中へと引きずられていく。
「いや~!!」
こわがってバタバタさせているペブルの足に顔をけられながらも
「アル、ハイラノ、レブー!」
リプルは、必死で呪文を唱えた。
これはペブルの背中に羽根を生やす呪文。
しかし、何もおこらない。それも当然のこと。体を変形させる魔法など難しすぎて、子どもにはとても無理だ。
ふたりの体はずるずると壁の穴から空中へとずり落ちていく。
リプルは、片手でペブルの手を、もう片ほうの手でタランと垂れ下がっているつるをつかんだ。
しかし、つるはプチと切れてしまった。
「あっ!」
ふたりの体は、何もない空中へと放り出された。
そのとき奇跡が起きた。
光のつぶがペブルの背中に集まり、鳥の羽根の形にサッと広がった。
光の描いた軌跡のとおりにペブルの背に羽根が生えた。
「え、あ?」
「その羽根をはばたかせて、ペブル!」
逆にペブルにぶら下がるかっこうになったリプルが叫ぶ。
ペブルは、バサバサと羽根を羽ばたかせ、体をふわっと宙に浮かべると、しっかりとリプルの手を握りしめたまま壁の穴をくぐりぬけて大地の上へと戻ってきた。
「た、助かった!?」
リプルがほーっと息をはく。
「リプル、たすけてくれて、ぐすっ、ありがとーーー!!」
両手をひろげてリプルに抱き着くペブル。
わんわんと涙をながして泣くペブルの頭をリプルはよしよしとなでた。
「助かったんだから、泣かないの」
「だって……ぐすん……お気に入りの魔女帽子、なくしちゃったよぉ」
そう言うとペブルはよりいっそう激しく泣きだした。
もちろん魔女帽子ではなく、ただのビニール袋である。
「あれは……拾った袋で作ったニセモノだし。本物の魔女帽子は中等部生になったらもらえるから」
そのことばにペブルは、チラっと顔をあげた。
「私も、魔女になれるかなぁ。魔女帽子もらえるかなぁ?」
魔女に生まれたからといって全員が魔女になれるわけではない。試練や試験をクリアしないと正魔女にはなれないのだ。
「うん、いっしょに魔法の勉強がんばろうよ! 私も手伝ってあげるから」
リプルのはげましに、ペブルもようやく泣き止んだ。
その後、しばらくの間、ふたりは、ツタをより分けて壁にぽっかりと窓のように空いた空間から、カメみたいにひょっこり顔だけだして、壁のむこうに広がる青い世界をぽかんと見つめていた。
「世界のはてって、ほんとにあったんだね」
「はてのむこうには、雲のほかには、何もないんだね」
壁の向こうに広がっていたのは、上も前も下も全部青い世界。
目線の高さやもっと高い場所にも雲が浮いている。
見上げれば、どこまでもやわらかな青の世界が広がっている。
下を見ると、雲の間から空とは、また違った深い青が広がっていた。ところどころ、キラキラと輝いている。
「あっ! ペブル。見て、あそこ。大きな緑の大陸がある!」
「ほんとだ。すっごく下のほうだね。あんなとこにも陸があるんだ!」
「いつか、行ってみたいなぁ」
と、目を輝かせるリプルにペブルは、首をふった。
「えー、でっかいモンスターとかいるかもよ」
ペブルが口を大きく開け、両手をかぎづめみたいな形にして、リプルをおどかす。
「モンスターなんておとぎ話にしか出てこないよ。森とか洞窟に魔物はいるけど」
たくさんの本や図鑑を読んでいるリプルは、おどされても落ち着いて言い返す。
すると、ペブルがほおを真っ赤にして言った。
「さっき見たもん! でっかい細長い龍みたいなヤツが、下から来て天にかけあがっていったの。お尻から白い煙をもくもくって吐いて。あれ、ぜったいモンスター」
リプルが首をかしげた。
「そういえば……すごーく大きな、人が何人も乗れちゃうくらい大きな銀色の鳥が、この大陸の近くを飛んでいるのをみたって話を読んだことがある」
「ほらね、外の世界はあぶないんだよ」
「でも、そこに知らないことがあれば、行ってみてみたいよ!」
瞳をキラキラさせているリプルにたいして、ペブルは鼻の頭にしわをよせた。
「リプルの知りたがり屋!」
「でも、そこにすっごくおいしいお菓子があったら、ペブルはどうする?」
ペブルは鼻の穴をふくらませて即答。
「行く!」
リプルが「ほらね」と笑った。
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