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滅びの理由
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友人の魔女の家へと遊びに行く途中、箒に腰掛け空を飛んでいると彼女の住む家の近くにいる村から強い煙が上がっているのが見えた。
友人が懇意にしている村だし助けてあげようかななんて考えて箒の先を変えて向かうと、煙は村の広場の様な場所から上がっており、火元には黒い塊が激しい炎に抱かれている。
「魔女の仲間が来たぞ!」
「あいつも捕まえろ!」
「殺せ!!」
広場に降り立った魔女へ農具や猟銃を手に殺気立つ村人達が詰め寄った。
パチリ
魔女が指を鳴らすと村の中の人間は全て動きを止め、轟々と燃え上がる炎の音だけが辺りに存在を主張する。
「そこで燃えているのはこの近くの森で暮らしていた、魔女キャディか?」
詰め寄っていた村人の一人に魔女が指を差すと怯えを含んだ瞳で村人が口を開く。
「そうだ」
「何故、燃やした?」
「あの魔女が今まで村に疫病や災いを振りまいていたからだ」
「おや? あの子はそんな趣味は無いし、この村を気に入っていたからむしろ疫病のよく効く薬を調合したり、災いを鎮めていたはずなのなのだが、どこからそんな話になった?」
「王都から来た教会の方がそうだと。あいつが自分で疫病をまき散らしながらそれを治す薬を売る事で、私腹を肥やしていたと言っていた」
「それを君達は信じた訳か」
「そうだ」
魔女が指を外すと村人はぴたりと口を閉ざす。
民衆を見渡し、その中から服装が異質な者達を発見した魔女がそちらへ、おいでおいでと手を振るとその者達が民衆から歩み出て来た。
その内で一番上質な服を着ている者へと魔女は指を差す。
「君らが王都から来た教会の人間か?」
「そうだ」
「何をもってして魔女キャディを疫病を振りまく魔女だと判断した?」
「あの魔女が邪魔だったから排除するのに疫病を振りまいている事にするのが一番丁度良かっただけだ」
「では魔女キャディが疫病を振りまいていた確証は無いと?」
「無い」
「何故、魔女キャディが邪魔になった?」
「この村だけ他に比べて異常に疫病の発生件数や死者が少なかった。人々は困難に陥れば教会を頼り、そこに救いを与える事が教会の威信に繋がるにも関わらずここの人間どもは魔女のせいで教会を頼らない。そのせいでこの村は他の村よりもゆとりがある癖に寄付金を積もうとしやがらない」
「では、金の為に魔女キャディを殺した、と?」
「そうだ」
そんな事だろうと思った。
教会の人間の言葉に魔女は指を外し、周りの村人達を見回す。
「聞いていたか? 魔女キャディは何もしていなかったにも関わらず、欲深い教会の金の為だけに殺されたらしい」
村の周りの森から魔獣達の騒めきを感じる。
魔女キャディが死んだ事で彼女がこっそりとこの村の周りに張っていた結界が消えている。
わざわざ村人達に知らせてやる義理もないし、結界が無い事に魔獣が気付くのも時間の問題だろう。
昔、魔女キャディに結界を張っている事を村人に知らせた方が良いと助言した事があったが彼女は『感謝されたくてやっている訳じゃないし、私がこの村を気に入って勝手にやっているだけだもの』と言って笑っていた。
その優しさの結果がこれなのだから本当に人間はどうしようもない。
魔女が両腕を掲げると燃え盛る炎の中から黒い塊となったキャディが浮かび上がり、腕の中に納まる。
「可哀想に、怖かっただろう? もっと早くに来てあげられなくてすまなかった」
魔女がキャディの体に視線を沿わせると足の先から黒い煤が落ちていき、その下から元の綺麗な体が現れていく。
着ていた服までもが燃やされる前の状態に戻り、キャディのふわふわとした長い金髪の生えた頭のてっぺんまで戻ると、閉じていた瞼がふるりと動き、開かれた。
「あら? いらっしゃい、思ったよりも早かったのね」
「いいや、遅いくらいだよ。怖い思いをさせてしまって悪かったね」
「貴女のせいじゃないわよ」
「君に危害を加えたんだし、もうこの村はどうなってもいいだろう?」
「そうねぇ」
魔女の腕に抱かれたキャディはゆっくりと周りの村人達を見渡し。
「ええ、もうどうでも良いわ」
「分かった」
彼女を抱えたまま魔女は箒に跨って空に浮き、一つ指を鳴らす。
「ま、待ってくれ!謝るから許してくれ!」
「お願いキャディ!戻ってきて!」
「俺たちは騙されたんだ!悪いのは全部こいつらだ!」
「こいつらを殺すから勘弁してくれないか!」
「なんだと?!貴様ら全員異端者として処分されてもいいのか?!」
「お前らが余計な事しなければこんな事にはならなかったんだろうが!」
魔法のより動く事も出来ず、叫ぶ事しか出来ない村人を尻目に魔女はもう一つ指を鳴らして村に設置してあった魔獣除けを粉々にする。
結界も魔獣除けも無くなり、叫ぶ事しか出来ない村に待ち受ける未来は一つだけだ。
魔女キャディの献身と優しさを踏みにじった報いだ、このまま身動きも取れず生きたまま魔獣の腹に収まると良い。
「一先ず荷物を取りに君の家に行くかい?」
「そうね、どうせならそのまま一緒に旅行なんてどう?」
「いいね、楽しそうだ」
こうして一つの村が滅んだ
友人が懇意にしている村だし助けてあげようかななんて考えて箒の先を変えて向かうと、煙は村の広場の様な場所から上がっており、火元には黒い塊が激しい炎に抱かれている。
「魔女の仲間が来たぞ!」
「あいつも捕まえろ!」
「殺せ!!」
広場に降り立った魔女へ農具や猟銃を手に殺気立つ村人達が詰め寄った。
パチリ
魔女が指を鳴らすと村の中の人間は全て動きを止め、轟々と燃え上がる炎の音だけが辺りに存在を主張する。
「そこで燃えているのはこの近くの森で暮らしていた、魔女キャディか?」
詰め寄っていた村人の一人に魔女が指を差すと怯えを含んだ瞳で村人が口を開く。
「そうだ」
「何故、燃やした?」
「あの魔女が今まで村に疫病や災いを振りまいていたからだ」
「おや? あの子はそんな趣味は無いし、この村を気に入っていたからむしろ疫病のよく効く薬を調合したり、災いを鎮めていたはずなのなのだが、どこからそんな話になった?」
「王都から来た教会の方がそうだと。あいつが自分で疫病をまき散らしながらそれを治す薬を売る事で、私腹を肥やしていたと言っていた」
「それを君達は信じた訳か」
「そうだ」
魔女が指を外すと村人はぴたりと口を閉ざす。
民衆を見渡し、その中から服装が異質な者達を発見した魔女がそちらへ、おいでおいでと手を振るとその者達が民衆から歩み出て来た。
その内で一番上質な服を着ている者へと魔女は指を差す。
「君らが王都から来た教会の人間か?」
「そうだ」
「何をもってして魔女キャディを疫病を振りまく魔女だと判断した?」
「あの魔女が邪魔だったから排除するのに疫病を振りまいている事にするのが一番丁度良かっただけだ」
「では魔女キャディが疫病を振りまいていた確証は無いと?」
「無い」
「何故、魔女キャディが邪魔になった?」
「この村だけ他に比べて異常に疫病の発生件数や死者が少なかった。人々は困難に陥れば教会を頼り、そこに救いを与える事が教会の威信に繋がるにも関わらずここの人間どもは魔女のせいで教会を頼らない。そのせいでこの村は他の村よりもゆとりがある癖に寄付金を積もうとしやがらない」
「では、金の為に魔女キャディを殺した、と?」
「そうだ」
そんな事だろうと思った。
教会の人間の言葉に魔女は指を外し、周りの村人達を見回す。
「聞いていたか? 魔女キャディは何もしていなかったにも関わらず、欲深い教会の金の為だけに殺されたらしい」
村の周りの森から魔獣達の騒めきを感じる。
魔女キャディが死んだ事で彼女がこっそりとこの村の周りに張っていた結界が消えている。
わざわざ村人達に知らせてやる義理もないし、結界が無い事に魔獣が気付くのも時間の問題だろう。
昔、魔女キャディに結界を張っている事を村人に知らせた方が良いと助言した事があったが彼女は『感謝されたくてやっている訳じゃないし、私がこの村を気に入って勝手にやっているだけだもの』と言って笑っていた。
その優しさの結果がこれなのだから本当に人間はどうしようもない。
魔女が両腕を掲げると燃え盛る炎の中から黒い塊となったキャディが浮かび上がり、腕の中に納まる。
「可哀想に、怖かっただろう? もっと早くに来てあげられなくてすまなかった」
魔女がキャディの体に視線を沿わせると足の先から黒い煤が落ちていき、その下から元の綺麗な体が現れていく。
着ていた服までもが燃やされる前の状態に戻り、キャディのふわふわとした長い金髪の生えた頭のてっぺんまで戻ると、閉じていた瞼がふるりと動き、開かれた。
「あら? いらっしゃい、思ったよりも早かったのね」
「いいや、遅いくらいだよ。怖い思いをさせてしまって悪かったね」
「貴女のせいじゃないわよ」
「君に危害を加えたんだし、もうこの村はどうなってもいいだろう?」
「そうねぇ」
魔女の腕に抱かれたキャディはゆっくりと周りの村人達を見渡し。
「ええ、もうどうでも良いわ」
「分かった」
彼女を抱えたまま魔女は箒に跨って空に浮き、一つ指を鳴らす。
「ま、待ってくれ!謝るから許してくれ!」
「お願いキャディ!戻ってきて!」
「俺たちは騙されたんだ!悪いのは全部こいつらだ!」
「こいつらを殺すから勘弁してくれないか!」
「なんだと?!貴様ら全員異端者として処分されてもいいのか?!」
「お前らが余計な事しなければこんな事にはならなかったんだろうが!」
魔法のより動く事も出来ず、叫ぶ事しか出来ない村人を尻目に魔女はもう一つ指を鳴らして村に設置してあった魔獣除けを粉々にする。
結界も魔獣除けも無くなり、叫ぶ事しか出来ない村に待ち受ける未来は一つだけだ。
魔女キャディの献身と優しさを踏みにじった報いだ、このまま身動きも取れず生きたまま魔獣の腹に収まると良い。
「一先ず荷物を取りに君の家に行くかい?」
「そうね、どうせならそのまま一緒に旅行なんてどう?」
「いいね、楽しそうだ」
こうして一つの村が滅んだ
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