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第五話 覚悟を決める次期魔王

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俺は昔を思い出すことで現実逃避に浸りつつ、どうにか彼女をまいて逃げる方法を考えていた。


「さて、貴方。もう宜しくて?もっとお話したいのだけど……時間が無いの。招待した方々を待たせる訳にはいかないから…ね?」



少しずつ距離を詰めてくる彼女を見て、玄関から出ることを諦めた俺は、玄関横にあった少し大きめの窓から無理やり出ようとした。


しかし、彼女がそんな事をさせてくれるはずも無く、光魔法で拘束されてしまい、猿轡まで噛まされてしまった。

「んーーー!!!!(離せーーー!!!!)」


「うーん。捕まえましたが、意識がある状態だとまた脱走されかねませんね。時間もありませんし、少しお休みくださいませ。」



そう言って彼女は俺に睡眠魔法をかける。始めは魔法に抵抗していた俺だったが、すぐ魔力切れを起こし、あっさり意識を手放すのであった。


*******


「は.....!!ここは....?」



俺は気付けば結婚式の会場の入り口前にいた。


そういえば控え室で目を覚ました後、無理やり使用人達に着替えをされそうになって抵抗していたら、いつのまにか傍にいたエクシアに再度魔法を掛けられて意識を失ったんだっけ...。



「あら?もう魔法切れちゃったの?流石、次期魔王様というか...。」



エクシアは呆れた様子で俺を見つめると再度魔法を掛けようとする。魔法陣から察するに、それ心を操る魔法だよな!?それ、魔族の間じゃ禁術だぞ!?



「ちょ、ちょっと待て。」



俺は魔法をかけられる前に慌てて異空間から小さい箱を取り出す。



「こ、これ.....。」



「何?」



俺がおずおずと彼女にその箱を渡すと、彼女は訝しむ様子で俺を見てきたが、俺が箱を開けるように促すと、彼女は渋々その箱を開けた。


「指輪....?それにこれは……。」


箱の中にはダイヤモンドの飾りが付いたシンプルなシルバーリングが入っていた。俺とエクシアの名前入りの結婚指輪。


彼女は指輪をじっと瞬きもせず見つめ、手に取ると自分の薬指にはめた。彼女の友人にも手伝って貰ったお陰でサイズはピッタリだった。


「ほら、前街に行った時、それを羨ましそうに見てたろ?親が決めた婚約者だけどお前のことはし、結婚するなら俺からきちんとプロポーズしたいと思ってたんだけど、お前らが俺に黙っていつの間にか結婚式の日付を決めてたから俺も慌てて...」



「......プロポーズしてから結婚したかったってこと?」



早口で捲し立てる俺の言葉に被せるように彼女は言った。


「....ああ、そうだよ!悪いか!?人族の事なんてよくわかんねーから、お前の友達とか酒場のお姉さん達に理想のプロポーズを聞いたり、滅茶苦茶恥ずかしかったんだぞ!?本当は朝こっそり薔薇の花束を城下町の花屋に取りに行くところだったんだ…。」



俺は始め捲し立てるように彼女に言ったが、段々恥ずかしさのあまり、徐々に声が小さくなってしまった上、これ以上彼女の顔が見れず、彼女から目を逸らした。

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