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第1話 人族最凶女勇者から逃走中の次期魔王
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静まり返った魔王城の中では自身が走る足音と、ゆっくりと...でも確実に逃げる自分を追い詰めるヒールの音がだけが響いていた。
「おいおい、何でアイツが鬼みたいな顔で追いかけて来るんだよ…!?」
俺は厨房に駆け込み、奥にあるボロボロになった勝手口の扉なら開くかもしれないという一縷の希望を持ってドアノブに手をかけたが、残念ながら開けることは出来ず、思わずドンッと蹴り飛ばした。
「クソっ!ここの扉もダメなのかよ!!!」
思いっきり蹴り飛ばしたはずなのに、何故か傷一つ付かなかった。そうしている間にヒールの音は確実に近付いている。
俺は全身から冷や汗を垂らしながら全速力で自分の城の中をある人物から逃走中である。
これまでも何度か外へ通ずる窓や扉から逃げようとしたのだが、複雑な魔法により鍵がかかっていて開けることは出来ず、また強引に壊して外に出ようにも、城の中の窓や扉は簡単に壊れるように出来ていなかった。ボロボロの勝手口の扉ですら例外ではないらしい。
「アレク様~?どこにいらっしゃるの…?意外と子供っぽい所があるんですのね…鬼ごっこなんて。きちんと城の中だけで私達二人で鬼ごっこが出来るように他の人には外へ出て頂いてますし、城の中の窓や扉も鍵を掛けてますし、物が壊れないよう魔法も掛けておきましたから思いっきり魔法も使えますわよ~。」
そう言ってニッコリ微笑みながら、自身の武器である大きな鎌を持ってゆっくり歩きつつ、じわじわと彼女は俺を追い詰めてくる。姿は見えないが声だけで、どんな表情を浮かべているか想像出来る程にはアイツの事をよく知っている。まるで蛇が獲物を痛ぶりながら追い詰めるのを楽しむ様な表情をしてるに違いない。
『鬼ごっこって何だよ!?そんなのやってるつもりねーよ!それに自分以外は魔法が使えないようにしてる癖によくそんなこと言えるな…!?』
俺は一人でブツブツと心の中で文句を言いつつ、厨房をこっそり抜け出し再び足音とは逆方向へ走り始めた。さっきから必死に走って逃げているのに悪寒が止まらない。次期魔王であるこの俺がだ。
今日はある式典が行われる予定であり、その個人的な準備の為、俺が朝早く起きて皆に内緒で自室の窓からこっそり城下町の方へ行こうとした所、彼女....人族最凶女勇者エクシアに遭遇してしまったのだ。
本来俺は誰にもバレないように外へ出るつもりだったので、慌てて彼女から逃げたのだが、それを許してくれる彼女では無く、血走った目で追いかけられてしまい、現在に至る。
面倒な事に彼女は俺を追いかけている間に、魔法で自分以外の者を城の外に転移させ、自分と俺を魔王城内に閉じ込めているので、誰も彼女の暴走を止めることは出来ない。
その上、特定のエリア内で使用者以外、魔法が使えない様にするというレアな魔道具を使っているようで、城の中で魔法が全く使えない。さっきから飛んでくるエクシアからのエグい攻撃魔法やら呪術を身体的能力で避けるのが精一杯だ。避ける度に壁が抉れたり、床が溶けたりしていて正直怖い。
黒髪のショートボブで小柄、何故か日に焼けない色白な肌を持ち、顔も整っているアイツは俺達の国、つまり魔族の国の中にいても可愛いと評されると思うが、俺は知っている……あれは外面が良い悪魔だ。魔に属すると言われる我々よりタチが悪いやつだ。あれが勇者で人族の王女とか人族の国はマジで終わってる。
「おいおい、何でアイツが鬼みたいな顔で追いかけて来るんだよ…!?」
俺は厨房に駆け込み、奥にあるボロボロになった勝手口の扉なら開くかもしれないという一縷の希望を持ってドアノブに手をかけたが、残念ながら開けることは出来ず、思わずドンッと蹴り飛ばした。
「クソっ!ここの扉もダメなのかよ!!!」
思いっきり蹴り飛ばしたはずなのに、何故か傷一つ付かなかった。そうしている間にヒールの音は確実に近付いている。
俺は全身から冷や汗を垂らしながら全速力で自分の城の中をある人物から逃走中である。
これまでも何度か外へ通ずる窓や扉から逃げようとしたのだが、複雑な魔法により鍵がかかっていて開けることは出来ず、また強引に壊して外に出ようにも、城の中の窓や扉は簡単に壊れるように出来ていなかった。ボロボロの勝手口の扉ですら例外ではないらしい。
「アレク様~?どこにいらっしゃるの…?意外と子供っぽい所があるんですのね…鬼ごっこなんて。きちんと城の中だけで私達二人で鬼ごっこが出来るように他の人には外へ出て頂いてますし、城の中の窓や扉も鍵を掛けてますし、物が壊れないよう魔法も掛けておきましたから思いっきり魔法も使えますわよ~。」
そう言ってニッコリ微笑みながら、自身の武器である大きな鎌を持ってゆっくり歩きつつ、じわじわと彼女は俺を追い詰めてくる。姿は見えないが声だけで、どんな表情を浮かべているか想像出来る程にはアイツの事をよく知っている。まるで蛇が獲物を痛ぶりながら追い詰めるのを楽しむ様な表情をしてるに違いない。
『鬼ごっこって何だよ!?そんなのやってるつもりねーよ!それに自分以外は魔法が使えないようにしてる癖によくそんなこと言えるな…!?』
俺は一人でブツブツと心の中で文句を言いつつ、厨房をこっそり抜け出し再び足音とは逆方向へ走り始めた。さっきから必死に走って逃げているのに悪寒が止まらない。次期魔王であるこの俺がだ。
今日はある式典が行われる予定であり、その個人的な準備の為、俺が朝早く起きて皆に内緒で自室の窓からこっそり城下町の方へ行こうとした所、彼女....人族最凶女勇者エクシアに遭遇してしまったのだ。
本来俺は誰にもバレないように外へ出るつもりだったので、慌てて彼女から逃げたのだが、それを許してくれる彼女では無く、血走った目で追いかけられてしまい、現在に至る。
面倒な事に彼女は俺を追いかけている間に、魔法で自分以外の者を城の外に転移させ、自分と俺を魔王城内に閉じ込めているので、誰も彼女の暴走を止めることは出来ない。
その上、特定のエリア内で使用者以外、魔法が使えない様にするというレアな魔道具を使っているようで、城の中で魔法が全く使えない。さっきから飛んでくるエクシアからのエグい攻撃魔法やら呪術を身体的能力で避けるのが精一杯だ。避ける度に壁が抉れたり、床が溶けたりしていて正直怖い。
黒髪のショートボブで小柄、何故か日に焼けない色白な肌を持ち、顔も整っているアイツは俺達の国、つまり魔族の国の中にいても可愛いと評されると思うが、俺は知っている……あれは外面が良い悪魔だ。魔に属すると言われる我々よりタチが悪いやつだ。あれが勇者で人族の王女とか人族の国はマジで終わってる。
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