9 / 11
第8話
しおりを挟む
転移した先は、懐かしい家から近い時空の狭間の森の中だ。転移の際に酔ってしまい、私は草むらに蹲り吐いていた。私は昔から乗り物や転移魔術で酔いやすいのだ...。まあ、何日もまともに食べていないから出てくるものも無いんだけど。
「.....うっ...気持ち悪い......。」
「転移の際にあれだけギャーギャー騒げば、気持ち悪くもなるわ。回復魔術をかけたとはいえ、よくあんなに騒げる体力が残っていたものよ....。」
魔神様は呆れたような顔をして私の横で私の背中をさすってくれている。私の背中をさすりつつ、回復魔術をかけてくれているのか、少し気持ち悪さがましになってきた。
「......申し訳ありません。もう大丈夫です...うっ。」
「うーん、少し良くなってきたようじゃな。....少し不安じゃが、早くお主の家に行って休もう。もう日が暮れるからの。」
魔神様は私の背を擦る手を止めて、すっと立ち上がる。私が立ち上がろうとすると、魔神様が私の手を引いて立ち上がらせてくれた。
その後、私達は魔神様の後ろについてヨロヨロ歩く私のペースに合わせてゆっくり森を進んでいたが、時間が経つにつれ気持ち悪さが徐々に治まってきたこともあり、少し歩くペースを上げた。ただ、歩くペースを上げてもあまり疲れない。魔神様に回復魔術をかけて貰い少し体力は回復しているとは言え、拷問を長期間受けていたので完全回復には程遠いのだが、魔神様が傍にいると魔物だけでなく、草木・石の方から避けていくのでかなりスムーズに歩ける。
私もこのあたりは小さい頃から良く知っているが、森の地面は木の根や石でデコボコし、背の高い雑草が生い茂っているので大変歩きにくい。その上、魔物もいるからこの森を歩くときは常に気を配っていないといけない。
始め草木・石、魔物の方から私達を避けていく光景を見た時はビックリしてしまったが、「妾が支配する空間なんだから当たり前じゃ。」と、呆れたように言われてしまった。
転移酔いの気持ち悪さが完全に無くなった私は、いつの間にか周りの景色が良く知るものとなっていることに気が付いた。ちょうど今歩いている場所は.....
「.....マリア?いきなり立ち止まってどうした?」
私が急に立ち止まったことに気付いた魔神様が、私を振り返り心配そうに私を見ていた。
「このあたりでアイツに出会ったんです......。」
私は今歩いている辺りで伯父にあったことを思い出したと同時に天族達にされたことがいきなりフラッシュバックしてきて恐怖や不安のあまり身体が震えてきた。
「安心しろ、天族の奴らはもうおらぬ。もう冬が過ぎて妾の力が戻った時点で、妾の信者でない奴らは結界の外に追い出されておる。とりあえず、今は大丈夫じゃ。」
魔神様は微笑むと私の手を優しくそっと包むように握ってくれた。魔神様の手はとても暖かく、緊張で冷たくなっていた私の手も魔神様の手の温かさが浸透していくかのように、だんだん温まっていく。それと同時に私の不安や恐怖も少しずつ和らいでいき、また歩けるようになった。
「すみません、お手数をお掛けしてしまって。」
「構わんよ。さあ、あと少しじゃ。」
その後も何だかんだ魔神様は私の手を放さなかったので、そのままの状態で森の中を歩いていると、すぐ広い広場の様な場所にたどり着いた。遠目に私の家も見える。
「ほら!お主の家に着いたぞ....ん?」
魔神様は私の家を見るなり、駆け足で家の方に走っていった。
私が慌てて魔神様の後を追うと、魔神様は私の家の扉を開け立ち止まり、怒りで顔が真っ赤になり身体も震えていた。
「.......許さぬ.....決して許さぬぞ.....!!」
「魔神様?どうされたのですか?....え?な、なんですかこれは.....」
私は目の前に広がる家の中の光景に頭が真っ白になった。
――家の中には血だまりがあちこちで出来ており、ハーフの人を始めとした多くの人々の惨殺された死体が投げ込まれていた。
「.....うっ...気持ち悪い......。」
「転移の際にあれだけギャーギャー騒げば、気持ち悪くもなるわ。回復魔術をかけたとはいえ、よくあんなに騒げる体力が残っていたものよ....。」
魔神様は呆れたような顔をして私の横で私の背中をさすってくれている。私の背中をさすりつつ、回復魔術をかけてくれているのか、少し気持ち悪さがましになってきた。
「......申し訳ありません。もう大丈夫です...うっ。」
「うーん、少し良くなってきたようじゃな。....少し不安じゃが、早くお主の家に行って休もう。もう日が暮れるからの。」
魔神様は私の背を擦る手を止めて、すっと立ち上がる。私が立ち上がろうとすると、魔神様が私の手を引いて立ち上がらせてくれた。
その後、私達は魔神様の後ろについてヨロヨロ歩く私のペースに合わせてゆっくり森を進んでいたが、時間が経つにつれ気持ち悪さが徐々に治まってきたこともあり、少し歩くペースを上げた。ただ、歩くペースを上げてもあまり疲れない。魔神様に回復魔術をかけて貰い少し体力は回復しているとは言え、拷問を長期間受けていたので完全回復には程遠いのだが、魔神様が傍にいると魔物だけでなく、草木・石の方から避けていくのでかなりスムーズに歩ける。
私もこのあたりは小さい頃から良く知っているが、森の地面は木の根や石でデコボコし、背の高い雑草が生い茂っているので大変歩きにくい。その上、魔物もいるからこの森を歩くときは常に気を配っていないといけない。
始め草木・石、魔物の方から私達を避けていく光景を見た時はビックリしてしまったが、「妾が支配する空間なんだから当たり前じゃ。」と、呆れたように言われてしまった。
転移酔いの気持ち悪さが完全に無くなった私は、いつの間にか周りの景色が良く知るものとなっていることに気が付いた。ちょうど今歩いている場所は.....
「.....マリア?いきなり立ち止まってどうした?」
私が急に立ち止まったことに気付いた魔神様が、私を振り返り心配そうに私を見ていた。
「このあたりでアイツに出会ったんです......。」
私は今歩いている辺りで伯父にあったことを思い出したと同時に天族達にされたことがいきなりフラッシュバックしてきて恐怖や不安のあまり身体が震えてきた。
「安心しろ、天族の奴らはもうおらぬ。もう冬が過ぎて妾の力が戻った時点で、妾の信者でない奴らは結界の外に追い出されておる。とりあえず、今は大丈夫じゃ。」
魔神様は微笑むと私の手を優しくそっと包むように握ってくれた。魔神様の手はとても暖かく、緊張で冷たくなっていた私の手も魔神様の手の温かさが浸透していくかのように、だんだん温まっていく。それと同時に私の不安や恐怖も少しずつ和らいでいき、また歩けるようになった。
「すみません、お手数をお掛けしてしまって。」
「構わんよ。さあ、あと少しじゃ。」
その後も何だかんだ魔神様は私の手を放さなかったので、そのままの状態で森の中を歩いていると、すぐ広い広場の様な場所にたどり着いた。遠目に私の家も見える。
「ほら!お主の家に着いたぞ....ん?」
魔神様は私の家を見るなり、駆け足で家の方に走っていった。
私が慌てて魔神様の後を追うと、魔神様は私の家の扉を開け立ち止まり、怒りで顔が真っ赤になり身体も震えていた。
「.......許さぬ.....決して許さぬぞ.....!!」
「魔神様?どうされたのですか?....え?な、なんですかこれは.....」
私は目の前に広がる家の中の光景に頭が真っ白になった。
――家の中には血だまりがあちこちで出来ており、ハーフの人を始めとした多くの人々の惨殺された死体が投げ込まれていた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる