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第1章 終わりの始まり
「<奴ら>」
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「た、助かったよ……!ありがとう……!」
博や俺たちに向かって佐橋先生は頭を深く下げる。
とりあえず今の危機は乗り越えて、少しだけ心が落ち着いた。
「せ、先生はなんで屋上に……?」
俺は少し警戒しながら質問する。
「ああ、実はね……?」
佐橋先生はぽつりぽつりと語り始める。
「職員室に突然生徒が入ってきたと思ったら、急に加藤先生にその生徒が首に噛み付いて……それでみんなパニックになってさ、命からがら職員室から逃げたんだ。最初は玄関から逃げようとしたんだが、1階からも登ってきてな…幸運なことに後ろの方だったから無事だったけど、前にいた人は……」
概ね想像通りの結果だった。
だが、佐橋先生の体験したことに戦慄した。
一体下はどれほどの惨状をなのだろうか、<奴ら>を扉越しにしか見ていない俺達には想像もつかない。
「食われた人は口から血を吐いて、動かなくなって……また動き始めたんだ!……人を襲う側としてね。明らかに死んでるであろう人が動くだなんて、そんな映画みたいなことが……どうしてこんなことに……。」
佐橋先生は俯きながら、涙を浮かべる。
女子達がが離れていてよかった。
美結がこんなこと聞いたら、間違いなく大声で叫ぶだろうな……。
「つまり、<奴ら>に食べられて死んだら……<奴ら>に転化するーーまんまゾンビじゃねぇか……。」
俺は呟く。
性質は同じだが、ゾンビとあんな<奴ら>を一緒にしたくなかった。
ゲームの中で倒すことを前提にしたゾンビとは、全く別物のように感じられた。
事の深刻さを察したのか、山田くんが急に真面目な顔つきになる。
「ねぇ、いったん状況を整理しない?この数十分の情報量が多過ぎて、何言ってるか分からないし。それに、ほら…」
指を指した方向を見てみると、屋上にある自販機の隣のゴミ箱の前でガタガタと震えている美結の姿と、それを宥める橋山さんの姿があった。
「ほら、もう大丈夫だから。ね?」
橋山さんが美結にそう言いながら歩み寄り、手を差し出した。
「うん……。ありがとう、橋山さん……。」
美結は震える手で橋山さんの手を握り、立ち上がって深呼吸をした。
「ちょっとだけ落ち着いた……」
美結は橋山さんの手をまだ握りしめている。
余程さっき見たものが怖かったのだろう。
だが、この状況では普通なのかもしれない。
「とりあえず、今のこと知るためにも現状を整理しようよ!」
「あ、それ今からやろうとしてた。」
俺は、橋山さんだけにこっちに来てもらい、小声で今の事情を説明する。
「なるほどね……じゃあ整理しよっか!じゃあまとめ役、言い出しっぺの友也くん!よろしく~」
「ええっ?俺!?」
山田くんは俺の方をじっと見つめた。
が、俺は気づかない振りをする。
ため息をついたあと、少し考える素振りを見せて、まとめ始めた。
「まず、感染爆発が発生して、先生も含め僕達六人は屋上に逃げ込んできた。
<ゾンビ>の特徴としてはーー
①見た目は完全に死んでいる。
②人を喰べる。
③喰われて死ぬと<ゾンビ>になる。
噛まれるだけでジ・エンドなのかは今のところ分からない感じかな?」
「あぁ、そうだな。」
扉の前で鎮座している博が言った。
「それで、今屋上に1匹でも入ったら一巻の終わり……かなり状況としては厳しいよね……。」
山田くんがその言葉を発したあと、何か考えるように、
「なぁ、お前たち。なにか持ってるものってあるか?」
佐橋先生は俺達に聞く。
「俺は充電切れの携帯電話と、ポケットにSwitchのカセットがいくつか。」
「なんで携帯とSwitchのカセットを学校に持ってきているんだ……」
佐橋先生は困惑気味で俺を見る。
しまった。つい言ってしまった……
「私は、生徒手帳と……あ、あとは眼鏡があります。」
まだ恐怖が抜けきっていないのか、美結は少し声を震わせながら質問に答えた。
「なるほど……他の人は?」
「僕は小銭入れだけです。」
「私はポケットにティッシュと、怪我した時用の消毒液、絆創膏が入っているよ~」
山田くんと橋山さんが続けて答える。
「俺はーーなんも持ってねぇや。」
博もポケットを探したが、何も出てこなかったようだ。
「先生も煙草とライターとハサミくらいしか持ってないからなぁ……」
先生も「うーん」と唸り声を上げ、悩んでいる。
全員分の持ち物を聞いて、俺は考えた。今ある持ち物の中で、<奴ら>に喰われずに切り抜ける方法を……
ーー考えろ。
こんな時、ゲームやアニメのキャラクターはどうしている?
この少ない持ち物を最大限に生かす方法は……
ーー考えろ!
何回も思考実験を重ね、とあることを思いつく。
「…俺に考えがある。」
一同は驚いた様子でこっちを見る。
「<奴ら>視界さえ見えてなければの話だけど……」
「私が逃げている時に時々壁にぶつかってたこを見たからから、少なくとも目はよくないと思う。」
佐橋先生が俺に助言をする。
「なら大丈夫かも。じゃあ、みんな聞いてくれーー。」
俺は考えたことをもとに説明を行った。
博や俺たちに向かって佐橋先生は頭を深く下げる。
とりあえず今の危機は乗り越えて、少しだけ心が落ち着いた。
「せ、先生はなんで屋上に……?」
俺は少し警戒しながら質問する。
「ああ、実はね……?」
佐橋先生はぽつりぽつりと語り始める。
「職員室に突然生徒が入ってきたと思ったら、急に加藤先生にその生徒が首に噛み付いて……それでみんなパニックになってさ、命からがら職員室から逃げたんだ。最初は玄関から逃げようとしたんだが、1階からも登ってきてな…幸運なことに後ろの方だったから無事だったけど、前にいた人は……」
概ね想像通りの結果だった。
だが、佐橋先生の体験したことに戦慄した。
一体下はどれほどの惨状をなのだろうか、<奴ら>を扉越しにしか見ていない俺達には想像もつかない。
「食われた人は口から血を吐いて、動かなくなって……また動き始めたんだ!……人を襲う側としてね。明らかに死んでるであろう人が動くだなんて、そんな映画みたいなことが……どうしてこんなことに……。」
佐橋先生は俯きながら、涙を浮かべる。
女子達がが離れていてよかった。
美結がこんなこと聞いたら、間違いなく大声で叫ぶだろうな……。
「つまり、<奴ら>に食べられて死んだら……<奴ら>に転化するーーまんまゾンビじゃねぇか……。」
俺は呟く。
性質は同じだが、ゾンビとあんな<奴ら>を一緒にしたくなかった。
ゲームの中で倒すことを前提にしたゾンビとは、全く別物のように感じられた。
事の深刻さを察したのか、山田くんが急に真面目な顔つきになる。
「ねぇ、いったん状況を整理しない?この数十分の情報量が多過ぎて、何言ってるか分からないし。それに、ほら…」
指を指した方向を見てみると、屋上にある自販機の隣のゴミ箱の前でガタガタと震えている美結の姿と、それを宥める橋山さんの姿があった。
「ほら、もう大丈夫だから。ね?」
橋山さんが美結にそう言いながら歩み寄り、手を差し出した。
「うん……。ありがとう、橋山さん……。」
美結は震える手で橋山さんの手を握り、立ち上がって深呼吸をした。
「ちょっとだけ落ち着いた……」
美結は橋山さんの手をまだ握りしめている。
余程さっき見たものが怖かったのだろう。
だが、この状況では普通なのかもしれない。
「とりあえず、今のこと知るためにも現状を整理しようよ!」
「あ、それ今からやろうとしてた。」
俺は、橋山さんだけにこっちに来てもらい、小声で今の事情を説明する。
「なるほどね……じゃあ整理しよっか!じゃあまとめ役、言い出しっぺの友也くん!よろしく~」
「ええっ?俺!?」
山田くんは俺の方をじっと見つめた。
が、俺は気づかない振りをする。
ため息をついたあと、少し考える素振りを見せて、まとめ始めた。
「まず、感染爆発が発生して、先生も含め僕達六人は屋上に逃げ込んできた。
<ゾンビ>の特徴としてはーー
①見た目は完全に死んでいる。
②人を喰べる。
③喰われて死ぬと<ゾンビ>になる。
噛まれるだけでジ・エンドなのかは今のところ分からない感じかな?」
「あぁ、そうだな。」
扉の前で鎮座している博が言った。
「それで、今屋上に1匹でも入ったら一巻の終わり……かなり状況としては厳しいよね……。」
山田くんがその言葉を発したあと、何か考えるように、
「なぁ、お前たち。なにか持ってるものってあるか?」
佐橋先生は俺達に聞く。
「俺は充電切れの携帯電話と、ポケットにSwitchのカセットがいくつか。」
「なんで携帯とSwitchのカセットを学校に持ってきているんだ……」
佐橋先生は困惑気味で俺を見る。
しまった。つい言ってしまった……
「私は、生徒手帳と……あ、あとは眼鏡があります。」
まだ恐怖が抜けきっていないのか、美結は少し声を震わせながら質問に答えた。
「なるほど……他の人は?」
「僕は小銭入れだけです。」
「私はポケットにティッシュと、怪我した時用の消毒液、絆創膏が入っているよ~」
山田くんと橋山さんが続けて答える。
「俺はーーなんも持ってねぇや。」
博もポケットを探したが、何も出てこなかったようだ。
「先生も煙草とライターとハサミくらいしか持ってないからなぁ……」
先生も「うーん」と唸り声を上げ、悩んでいる。
全員分の持ち物を聞いて、俺は考えた。今ある持ち物の中で、<奴ら>に喰われずに切り抜ける方法を……
ーー考えろ。
こんな時、ゲームやアニメのキャラクターはどうしている?
この少ない持ち物を最大限に生かす方法は……
ーー考えろ!
何回も思考実験を重ね、とあることを思いつく。
「…俺に考えがある。」
一同は驚いた様子でこっちを見る。
「<奴ら>視界さえ見えてなければの話だけど……」
「私が逃げている時に時々壁にぶつかってたこを見たからから、少なくとも目はよくないと思う。」
佐橋先生が俺に助言をする。
「なら大丈夫かも。じゃあ、みんな聞いてくれーー。」
俺は考えたことをもとに説明を行った。
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