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第1章 終わりの始まり
「ゲームと現実」
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扉の方をすぐさま見ると、人の手形のようなものが窓から見えた。
そして、「開けてくれ!おーい!」と大人の男の声がする。
「待ってください!今開けます!」
とっさに山田くんは大声で返事をして、手をかけ、鍵を開けようとした。
正直、俺は自分の安全を守りたかったために止めようか迷っていた。
もしこの騒動が本当にゾンビのせいとして、特徴と性質が同じならば、今開けるのは危険すぎる。
だが、人の声を聞いた俺に「見捨てる」という選択肢は良心が邪魔をして、すぐさま選ぶことが出来なかった。
頭の中で開けるか開けまいかを考えているうちに、山田くんが鍵を開ける音がする。
鍵が開いた瞬間、扉が「バン!」と音を立てて開いた。
その直後、俺たちのクラスの化学を担当している佐橋先生が転がり込んできた。
いつも着ている白衣には、赤い液体が斑点模様のようになっている。
引き戸だったので、扉の前にいた山田くんは扉にぶつかり、後ろに転んだ。
「うわぁ!っ痛!」
山田くんは頭を打ち、頭を抑える。
「山田くん!早く鍵を!」
ゾンビがすぐ来ているかもしれないので、俺は咄嗟に命令口調になる。
そして、頭を抑えながら山田くんが起き上がって閉めようとした。
しかし……
メキッ。
「ん?なんかが挟まって……?」
そう言いながら山田くんが足元に視線を落とすと、爪が剥がれ、肉がむき出しになった手が扉の隙間にくい込んでいた。
「うわあぁぁ!!」
叫び声を上げて山田くんは扉から離れようとする。
だが、腰が抜けたのか、動けないようだ。
「バカ!今手を離したらーー」
案の定、重い扉は軋む音をたてながら少しずつ開いていった。
すると生気のない死んだ魚のような目をした血まみれの女子生徒が、扉の隙間から少しずつ姿を現す。
「ヴヴヴァ…」
その奥から無数のうめき声が発されているのを聞き、『それ』が現実であることを確信した。
階段を何かが上がってくる音もした。
「やっぱり……現実なのか……!」
呼吸が早くなり、息が苦しい。
やはりゲームとは全然違う。
血の鉄臭い匂い、皮膚の剥がれた身体。
俺は吐きそうになったが、何とかこらえる。
ゾンビは見慣れていて、人よりホラーは強いと思っていたが、全然そんなことは無かった。
恐怖とか、そんな次元ではない。
もちろんゲームであったことが現実に起こったことに恐怖もあったのだろうが……
それでも、だ。
自分でも手が小刻みに震えているのがわかる。
ーー俺は死を予感した。
だが、その直後、博の言葉ではっと我に返る。
「おい!翔生!ゾンビが入る前に2人でタックルして扉閉めるぞ!」
体が硬直しているかのように、全く動かなかった。
俺がフリーズしている間も、少しずつ、だが確実に扉は開いていく。
「ーーっ!やばい!もう扉が…!クソっ!」
博は1人で、全速力で扉に向かって駆けだした。
俺はその姿を後ろから眺めながら、思う。
博の行動力が羨ましい。
まるでゲームや漫画の主人公みたいだと。
容姿もよく、スポーツもできる。おまけに、行動力まである天才ときたもんだ。
それに比べて俺は…博みたいにはすぐ動けないし、どこかの漫画みたいに、散弾銃一丁で異形の相手に戦う勇気もない。
ポケットの中に銃は一つもないし、保安官の人みたくリーダーシップもない。
ましてや、自分のDNAからワクチンが作れるって訳でもないだろう…
こんな状況でも果敢に動けるアニメや漫画のキャラクター達は、もともと頭がイカれているのだろうかとさえ思う。
「友也!どいて!」
博の声で、山田くんはなんとか後ろに少し下がり、道を開ける。
そんな中、博は扉が完全開き切る前に扉にタックルした。
そのおかげで、扉は勢いよく閉まる。
挟まっていた手がミシミシ、ブチブチと筋繊維と骨がちぎれそうな音が鳴る。
それにも構わず、博は扉を押し続ける。
ーー数瞬、数秒?どれくらいたっただろうか。
「ブツン!」という異音と共に扉が閉まる。
挟まっていた手がちぎれたようだ。
博はすぐさま鍵をかけた。
「おぇぇ……!」
美結が屋上に設置されている自販機の横のゴミ箱に駆けていった。
「美結ゆん!?だ、大丈夫?」
橋山さんはそれを追いかけ、美結の背中をさする。
「何とか……間に合ったみたいだな……」
息を乱しながら、博は扉のすぐ横に座りこんだ。
「た、助かった……のか?」
佐橋先生は自分が生きているか確認するような素振りを見せる。
「今は……何とかな……」
博が俯きながら返答する。
生きている人を襲ってきても姿は人間だ。
さすがの博も、自分が腕を扉を使って潰したという事実にかなりショックを受けているようだった。
そして、「開けてくれ!おーい!」と大人の男の声がする。
「待ってください!今開けます!」
とっさに山田くんは大声で返事をして、手をかけ、鍵を開けようとした。
正直、俺は自分の安全を守りたかったために止めようか迷っていた。
もしこの騒動が本当にゾンビのせいとして、特徴と性質が同じならば、今開けるのは危険すぎる。
だが、人の声を聞いた俺に「見捨てる」という選択肢は良心が邪魔をして、すぐさま選ぶことが出来なかった。
頭の中で開けるか開けまいかを考えているうちに、山田くんが鍵を開ける音がする。
鍵が開いた瞬間、扉が「バン!」と音を立てて開いた。
その直後、俺たちのクラスの化学を担当している佐橋先生が転がり込んできた。
いつも着ている白衣には、赤い液体が斑点模様のようになっている。
引き戸だったので、扉の前にいた山田くんは扉にぶつかり、後ろに転んだ。
「うわぁ!っ痛!」
山田くんは頭を打ち、頭を抑える。
「山田くん!早く鍵を!」
ゾンビがすぐ来ているかもしれないので、俺は咄嗟に命令口調になる。
そして、頭を抑えながら山田くんが起き上がって閉めようとした。
しかし……
メキッ。
「ん?なんかが挟まって……?」
そう言いながら山田くんが足元に視線を落とすと、爪が剥がれ、肉がむき出しになった手が扉の隙間にくい込んでいた。
「うわあぁぁ!!」
叫び声を上げて山田くんは扉から離れようとする。
だが、腰が抜けたのか、動けないようだ。
「バカ!今手を離したらーー」
案の定、重い扉は軋む音をたてながら少しずつ開いていった。
すると生気のない死んだ魚のような目をした血まみれの女子生徒が、扉の隙間から少しずつ姿を現す。
「ヴヴヴァ…」
その奥から無数のうめき声が発されているのを聞き、『それ』が現実であることを確信した。
階段を何かが上がってくる音もした。
「やっぱり……現実なのか……!」
呼吸が早くなり、息が苦しい。
やはりゲームとは全然違う。
血の鉄臭い匂い、皮膚の剥がれた身体。
俺は吐きそうになったが、何とかこらえる。
ゾンビは見慣れていて、人よりホラーは強いと思っていたが、全然そんなことは無かった。
恐怖とか、そんな次元ではない。
もちろんゲームであったことが現実に起こったことに恐怖もあったのだろうが……
それでも、だ。
自分でも手が小刻みに震えているのがわかる。
ーー俺は死を予感した。
だが、その直後、博の言葉ではっと我に返る。
「おい!翔生!ゾンビが入る前に2人でタックルして扉閉めるぞ!」
体が硬直しているかのように、全く動かなかった。
俺がフリーズしている間も、少しずつ、だが確実に扉は開いていく。
「ーーっ!やばい!もう扉が…!クソっ!」
博は1人で、全速力で扉に向かって駆けだした。
俺はその姿を後ろから眺めながら、思う。
博の行動力が羨ましい。
まるでゲームや漫画の主人公みたいだと。
容姿もよく、スポーツもできる。おまけに、行動力まである天才ときたもんだ。
それに比べて俺は…博みたいにはすぐ動けないし、どこかの漫画みたいに、散弾銃一丁で異形の相手に戦う勇気もない。
ポケットの中に銃は一つもないし、保安官の人みたくリーダーシップもない。
ましてや、自分のDNAからワクチンが作れるって訳でもないだろう…
こんな状況でも果敢に動けるアニメや漫画のキャラクター達は、もともと頭がイカれているのだろうかとさえ思う。
「友也!どいて!」
博の声で、山田くんはなんとか後ろに少し下がり、道を開ける。
そんな中、博は扉が完全開き切る前に扉にタックルした。
そのおかげで、扉は勢いよく閉まる。
挟まっていた手がミシミシ、ブチブチと筋繊維と骨がちぎれそうな音が鳴る。
それにも構わず、博は扉を押し続ける。
ーー数瞬、数秒?どれくらいたっただろうか。
「ブツン!」という異音と共に扉が閉まる。
挟まっていた手がちぎれたようだ。
博はすぐさま鍵をかけた。
「おぇぇ……!」
美結が屋上に設置されている自販機の横のゴミ箱に駆けていった。
「美結ゆん!?だ、大丈夫?」
橋山さんはそれを追いかけ、美結の背中をさする。
「何とか……間に合ったみたいだな……」
息を乱しながら、博は扉のすぐ横に座りこんだ。
「た、助かった……のか?」
佐橋先生は自分が生きているか確認するような素振りを見せる。
「今は……何とかな……」
博が俯きながら返答する。
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