腐りきったこの世界で。

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第1章 終わりの始まり

「崩壊」

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 『テスト』
それは高校生活で避けては通れないものである。
人々は好成績をとるためだけに勉強し、その結果によって一喜一憂する。だがしかし、勉強することに意味はあっても、テストをすることで成績があるという訳でもない。
よって、テストは人生に不要だと思うのだッ!!

「もうダメだぁ……おしまいだぁ!」

4限のテスト中、俺は内心そう呟いた。
to不定詞?目的語?文型?何それ?美味しいの?
……俺は考えることをやめてチラッと周囲の様子を観察した。
クラスのほとんどがこの難題を解けるのだろうか、カリカリととシャーペンを動かしているのが分かる。
俺は見てはいけない現実を見た気がして、現実逃避の如く近くの窓から外を眺めた。
するとーー

「ん……?」

とあることに気づく。
自分の家の方角から煙が出ているのだ。
どの家から煙出ているかは遠すぎて分からない。

「火事……?」

もしかして火の元を確認し忘れたのかと一瞬焦った。
だが、ちゃんと確認したのを思い出して安堵する。
そして、なんということでしょう!
考えている内に授業終了のチャイムがなってしまったのだったーー
テスト用紙回収後、俺は意気消沈したまま弁当を取りだした。
そこに自分の弁当を持ちながらニヤニヤと笑う博がやってきた。

「あれ?やっぱり今回も補習確定?」

「大丈夫だ、問題ない。三割は解いた。」

「そっか、いつも通り大丈夫そうだな!補習頑張れよ!」

盛大なフラグをおったてたのを無視して
博は弁当の蓋を開けるとーー
どうやらハンバーグ弁当のようだ。
俺はふと昨日の苛立ちを思い出し、とあることを考えた。

「…なぁ博。弁当、分けてくんない?」

「ん?弁当少ねぇのか?いいぜ!」

博は明るい調子で同意した。
……言質、とったからな?

「んじゃあ……いただきます!」

ハンバーグを箸で一突き。
そして自分の弁当箱に入れた。

「おい?!おまっ、それはマジ勘弁!」

「さっき和尚と呼んだのと反省文書くことになった恨みィ!!」

「待って!それは悪かったから!というか後者は完全に八つ当たりしてるよね!?」

「冗談だよ。半分な?」

俺はハンバーグを半分に切って片方を博の弁当に戻した。

「あぁ……俺のハンバーグがぁぁ……」

そんな博の悲痛な叫びを無視して、俺は弁当を食べ始めたーー

 弁当を食べていると、スピーカーから突然チャイムの音が教室に響く。
俺は不自然な時刻になるチャイムに違和感を覚え、スピーカーの方に耳を傾けた。
すると、しゃがれた声で、報道部の顧問と思われる人が喋り始めた。
《え~……さっき高校の周辺で、不審者情報が入りました。》
《特徴は、血のついた包丁を持つ40代男性で白のシャツを着た中肉中背の男だそうです》
《ここ最近の暴動事件とも関係がね、あるかもしれないのでぇ、この高校に入ることはないかと思いますが、下校時には十分注意してください。》

不意に、俺はテストの時に見た光景を思い出した。
ふと博の方を見返すと、博は窓の方を指をさしていた。
手が少し小刻みに震えている。

「な、なんだ……?あれーー。」

俺は指のさす方向を見て目を疑った。
さっきまで一つしか見えなかった黒い煙がいくつも、それも様々な方角から、立ち上ぼっている。
その光景を見て、自分の心臓の鼓動が明らかに早くなっていくのを感じた。
さすがに他のクラスメイトもこの異変に気づいたようで、ぞろぞろと一斉に窓の近くに駆け寄り、野次馬と化す。
ーーその時だった。
どこか遠くから女性の悲鳴が聞こえた気がした。
だが、どうやら気のせいではないようだ。
その悲鳴を聞いたクラスの皆は、ようやく異常事態だと気づきーー騒ぎ始めた。
クラスメイトの反応を見て、俺は今までやってきたゾンビゲームの記憶がフラッシュバックし始めた。

「火事、暴動事件、不審者悲鳴……まさかーーね?」

そう、ゾンビ物によくある感染爆発パンデミック初期の光景とほとんど一致している。
現実には程遠いことなのだが、そのことに気づいた瞬間、心臓の鼓動がさらに早くなったのが分かる。

ーーこの状況で真実を知っているのは自分しかいない……!

俺は多分この時、ゲームの主人公のような気分になっていたのだと思う。
今なら、自分が一番状況を理解している。
だから、みんなを助けなきゃ……と。

「博!まで走れ!
他の皆も!早く...屋上まで避難してくれ!!」

俺の表情と、命令口調になったのを見て何かを察した博は、ひとつ返事で了承した。
その言葉に続いて、美結が「なんで?」と問い返えした。

クラスの皆が一斉ににこちらを見る。

「理由は後で説明するから!とにかく時間が無いんだ!はやく来てくれ!」

「このバカ!……これで何もなかったら怒るからね!」

なぜ罵られたのかは分からないが、美結は文句を言いながらも、来てくれるようだ。

ーーだが、クラスメイトの大半はやはり俺の話を信じようともしてくれなかった。
中には「こいつ頭おかしいのか?」と言わんばかりの嘲るような目で見るやつもいた。
クラス替えをして、1ヶ月。
徐々に仲間の輪ができていく中で、博と美結にしかほとんど喋らなかった俺の言葉じゃ、届かない。

「ーーっ!死んでも知らないぞ!?俺は言ったからな!」

クラスメイトが自分の思い通りに行動しようとしないことに苛立ちを覚え、放って屋上に向かって走り出した。

その状況を見かねた博が、「俺達についてきてくれないか!頼むから!」と一喝。
その言葉で、今起きていることの深刻さに気づいた人がいたのだろうか?
博と美結以外にも後ろをついて走る足音が聞こえる。
人望がある人が言うのと、ない人が言うのとではこんなにも違うのか……
俺は少し劣等感を噛み締めながら、俺は無我夢中で階段を駆け上り、屋上の扉を開けた。
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