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カミンズ伯爵の逆襲

16 お酒のせい

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 怪盗は、タオルで髪をバサバサと拭きながら、喉を鳴らして缶ビールを飲み干した。髪からは、ふわりとシャンプーの香りがする。

「プハーッ、ずっと喉が乾いてたので、美味しいですね」

 美術館、エレベーター、車内、公園と短時間におしっこを繰り返した怪盗の身体は、水分を求めていた。

「飲むのはいいが、はやく服着ろよ。また風邪ひくぜ」

 ベッドに腰掛け、怪盗を見ながら、香坂刑事は言う。

「・・・はやく刑事が温めてくださるなら」

 全裸のまま怪盗は、刑事の片腿の上に跨り座った。睾丸の柔らかさが伝わる。

「・・・さて。俺もシャワー浴びてくるかな」

 わざと素っ気なく怪盗を振り払い、刑事は腰を上げる。

「一緒に入りましょうか?このラブホの浴槽、なかなかお洒落な間接照明がついてますよ」

 ベッドの端に足を組みながら座り、怪盗は2缶目を開けた。

「いや、1人で入る」

 刑事はネクタイを緩めながら、浴室の扉を開けた。

「いまさら照れなくても」

 つまらなそうに半目になりながら、怪盗はグビっとビールを仰いだ。




*****


 刑事が風呂から上がると、怪盗はベッドの上で仰向けに眠っていた。いつもより頬は紅く、気持ち良さそうな寝顔には、幼さが感じられて愛おしくなる。

「弱い癖に飲むから・・・」

 刑事はベッドの周りに散らばった空き缶をいくつか拾い上げテーブルに置く。
 未だに下着すら身につけていない怪盗に、そっと布団をかけてやるも、目を覚ます気配は無かった。

「まったく、こっちは不完全燃焼だってのに」

 刑事は下着の上から自分の股間に触れる。半勃ちになったそれは、軽く熱を帯びていた。
 寝顔を見ながら、自分で処理するか・・・。
 添い寝するように怪盗の隣で横になった刑事は、そっと自らを慰め始めた。

「んっ・・・」

 目を閉じたまま、怪盗は声を出した。起こしてしまったか?と思い息を潜めていると、怪盗は再び静かに寝息を立てた。
 少しホッとしたような、残念なような複雑な感情を抱きながら刑事は自慰を再開する。
 やがて、射精まで済ませた刑事は、特有の倦怠感に襲われ、そのまま消灯してすぐ眠りに落ちていった。


 



*****

 何時間か経っただろうか。刑事は不意に聞こえた、ジュイイイイィッという奇妙な音に起こされた。
 なんだ?とぼんやりしていると、隣でガバッと飛び起きる気配と、シーツの擦れる音がした。

「・・・どうした?」

 眠そうな声を出しながら、刑事はベッドの近くのランプを点ける。
 暗がりに目を凝らすと、怪盗が、必死に掛け布団を掻き寄せて股間に当てているところだった。
 刑事が起きたのに気付いて、怪盗はビクリとした。目が合う。彼の目は、赤く潤んでいた。

「お前・・・まさか」

 刑事は、そっと布団を捲る。
 怪盗の座り込む辺り一帯のシーツがぐっしょりと濡れていた。

 止められない分を出し切ってしまったのか、暫くしてから怪盗は赤面しながら、言った。

「あ、あの。お酒のせいですから・・・」

 そして彼は、握っていた布団をさらに強く握り俯いた。
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