刑事×怪盗はハコの中

カルキ酸

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ハコの中

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 香坂こうさか刑事は、ハンマーで金属を叩くような音に目を覚ました。ぼんやりとする視界に入ったのは、窓の鉄格子を何らかの棒で叩く怪盗の姿だった。

「何をしている。脱獄は諦めるんだな」

 上半身を起こしながら刑事は言う。机に突っ伏して眠っていたため腰が痛む。伸びをするとパイプ椅子がギシギシと鳴った。

「まだ寝ぼけていらっしゃるようで。我々は一刻も早くこの部屋から出るべきなんですよ、香坂刑事」

 手を止め振り返りながら怪盗は言う。高熱が出ているように紅潮した頰に、一雫の汗が伝う。

「そういえば、俺は何故こんなところに」

 目をこすりながら、刑事は辺りを見回す。コンクリート造りの4畳半ほどの部屋に、デスクとパイプ椅子が二脚。ドアは見当たらず、壁の一面のみが、鏡になっている。
 取調室か?と刑事は思った。しかし、怪盗を逮捕した覚えはない。記憶にあるのは、犯行予告時間に発生した催眠ガスのせいで、眠らされたことだけだ。それならば、美術館のフロアに倒れているはずだが。

 首を傾げる刑事に、壁を寄りかかりながら怪盗は小さく笑う。

「刑事、天井を見てください」

 指を指された先で刑事が見たのは、セックスしないと出られない部屋・・・・・・・・・・・・・・・という文字だった。

「な・・・んだコレは」
 唖然として声を絞り出す刑事。
「どうやら、攫われて、監禁されてしまったようです」
 怪盗は、はぁ、と息を吐きながら、自分を抱くようにしてしゃがみ込んだ。

「なんで、俺たち2人を?」
 デスクに倒れるように手をつきながら刑事は、うなだれた。
「さぁ?世の中には、男性同士の性行為を覗き見したいという、特殊な趣味を持った方が、少なからずいるようで」
 怪盗は、鏡が貼ってある壁のほうを向く。
「もしかしたら、透視鏡マジックミラーの向こうに居て、見ているのかも知れませんよ」
 怪盗の台詞にゾッとして、刑事は鏡の方を見た。未だに顔の赤い怪盗と、困惑する表情の自分が映るだけだ。

「ところで、お前、大丈夫か?熱でもあるんじゃないのか?」
 刑事の問いに、怪盗はビクッと身体を震わせる。体育座りの体勢になりながら、彼は俯く。
「いえ、何でもないですよ」
ぎこちなく目を逸らしながら、答える。

「そんな顔真っ赤で、何でもないわけ・・・」
ツカツカと詰め寄り、怪盗の額に手を伸ばす。

「あっ、やっ!」
 怪盗は、慌てて、這いずるように刑事から離れる。
 不機嫌そうな刑事を上目遣いで見ながら、怪盗はマントで自らの股間を隠した。

「その・・・精力剤か何かを盛られたようで・・・」
 怪盗は内股になりながら、ますます顔を赤らめた。
「ずっと勃ってるんです・・・」
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