刑事×怪盗の秘密

カルキ酸

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逃走する怪盗はトイレに行きたい

執念の追跡

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 夜20時頃。街にパトカーのサイレンが響く。
 何台ものパトカーに追われる銀色のポルシェは、乱暴に追い越し運転をしながら逃走していた。


 その様子を液晶画面越しに見ていた白夜びゃくや探偵は、ニヤリと笑いながらインカムで指示を出す。

「カーナビでは中央通りの方角を目指しています。先回りしてください」
 彼は、ゲームのコントローラーを握りながら言う。

「・・・ほう。これは優秀な追跡装置ですなぁ」
 白夜探偵の後ろで、画面を覗きこみながら渡辺わたなべ警部は言う。

「ええ。とある伯爵から莫大な開発費を頂きまして」
 白夜探偵は画面から目を離さずに言う。
 怪盗の後ろでは、小型飛行カメラが追跡しており、それを操作しているのが白夜探偵だった。



 目の前の道路を、警察が封鎖しているのが見えて、怪盗は急ハンドルを切る。

「チッ。今日の警部、やけに冴えてるじゃねぇか」

 用意していた逃走経路を、ことごとく先回りされ、怪盗は焦っていた。
 予定していた道を諦め、無理矢理に細い路地に入っていく。

「勿体ないが、仕方ない」

 怪盗は、アクセルを踏み込む。車は、フェンスを突き破り、自然公園の池にダイブする。
 怪盗は、盗んだダイヤの指輪を懐にしまい、車を脱出して池に飛びこんだ。


「な?!」
 液晶画面越しに見ていた渡辺警部は、唖然とした。
 車は暗闇の中に沈んでいく。

「まだ、諦めるには早いですよ」
 白夜探偵は、小型飛行カメラを浮上させ、高い位置から池を映す。
「東の方角に向かって、進む波紋があります。自然公園の東口を警備してください」
 近隣にいたパトカーは、自然公園の東口に向かった。



「いたぞー!こっちだ!」
 1人の警官が、懐中電灯で池の近くの茂みを照らす。
 ガサッと音を立て草むらから抜けた怪盗は、全力で走り抜ける。

「クソっ、ヘリも飛んでねぇのに、よく見つけられたな」
 怪盗は、上手く走り逃げながら、公園を出て、中央通りの人混みに紛れる。
 人の波を潜りながら、徐々に服を着替え、追いかけてくる警官たちの目をかいくぐる。
 
 中央通り添いにあるデパートに入る頃には、怪盗はロングのブランドヘアの女性に変装していた。まだ、警官はデパートに来ていない。
 念のため洋服屋に入り、試着室でドレスから紺のスーツに着替える。試着室を出る頃には、全く違う顔の、セミロングでダークブラウンの女性になっていた。

 ここまで別人になれば、気がつかれまい。怪盗は、買い物客に紛れて、店内をゆっくり歩く。

「あの紺のスーツの女だ!」
 向こうから走ってきた警官が指を指して叫ぶ。

 何でバレたんだ!?と仰天しながら、怪盗は、また走る。
 背後に飛ぶ小さなカメラには、まだ気付いていないようだった。
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