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高熱とバケツトイレ
発熱で動けないので、バケツをトイレ代わりにします。②
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ベランダからの光が強くなる。その眩しさに怪盗は目を開けた。まだ身体は熱い。頭痛もして、天井はぐるぐると回っているように見えた。
しばらくして目眩が治ると、怪盗は辺りを見渡した。壁にかかっている時計は3時を指している。あれから6時間以上は眠っていたのか。
テーブルを見ると、今朝には無かったスポーツドリンクと栄養ドリンク、それとコンビニおにぎりとカットフルーツの詰め合わせが置いてあった。
昼休みに刑事は一旦帰って来たらしいが、気付かないほどに熟睡していたようだ。
不意に、ぶるっと震えが来て、尿意を感じる。そっとベッドを降りようとするが、ぐらりと景色が反転し、床に倒れた。
ベッドのシーツを掴み、やっとの思いで上半身を起こすが、トイレまでのたった数メートルが辿りつけそうになかった。
すぐ横には、紺色の空のバケツがある。怪盗は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。この中に、するしか・・・。
重い身体に鞭を打ち、ズボンと下着を下ろす。片足を引き抜き、バケツの上に座るようにして跨る。バケツの中で、陰茎がぷらぷらと揺れた。
バケツに、おしっこするなんて。股の前で縁を握った手に、力が入る。誰も見ていないのに、羞恥心に駆られて出すのを我慢してしまう。そのまま数分は動けずにいた。
もう駄目。
下腹部を襲う尿意に負け、力を抜く。
バケツの底に当たってダラダラ鳴った音は、やがてジョボジョボという鈍い音に変わる。風邪薬のせいか、やけに濃い黄色の尿が溜まっていった。
全てを出し終わると、バケツを倒さないように、そっと降りた。思いのほか大量に出たのを見て、無性に恥ずかしくなる。
「俺って本当、馬鹿」
ベッドに登ると、頭から布団を被って丸まった。
夕方、玄関の鍵が回る音で目を覚ます。いつの間にか、また眠ってしまったようだ。
しかし、今朝よりは少し熱が下がり、楽になっていた。
寝室に入り、テーブルの上そのままの食品を見て、刑事は
「まだ調子悪いみたいだな」
と言った。
「んん」
眠い目で、刑事の方を見る。
「なんだ?トイレか?」
刑事の声に、怪盗は首を振る。
「じゃあ、まだ寝てていいから」
ネクタイを緩めながら、バケツに気づいた刑事は、それを風呂場に持っていった。
怪盗は、恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆った。
キッチンの方で、包丁を使う音がする。怪盗はゆっくり上半身を起こして、スポーツドリンクを口にする。
もしも普通の家庭で育っていたら、お母さんかお父さんは、こんな感じだっんだろうな、とぼんやりと思う。
自分は、いったい刑事に何を求めているのだろう。
考えるほどに頭痛がして、怪盗は、再び布団に潜り込んだ。
「おーい、少しは何か食べて薬飲もうぜ」
お盆に小さな土鍋を乗せて持ってきた刑事は、声をかける。
怪盗は、上半身を起こした。テーブルにお盆を置き、ベッドに腰掛けた刑事は、怪盗の額に触れる。
「お?ちょっと、下がったんじゃないのか?座薬が効いたか」
「ざ、座薬・・・?」
身に覚えのない単語に、怪盗は瞬きをする。
「昼、お前が寝てる時にさ、尻に入れてやったんだよ、気づかなかったのか」
刑事は腹を抱えて笑う。
「そ、そんな。寝てる間に」
怪盗は、恥ずかしくなって、布団の端を握りしめる。
「いつもそれ以上に恥ずかしいことしてんだろ。まぁ、それは良いから、雑炊食べろよ」
刑事は、お盆ごと相手に渡す。
「・・・ありがとう、ございます」
怪盗は、土鍋の蓋を開ける。湯気がボワっと広がる。大きさがバラバラの具材が、粥の中に埋もれていた。
レンゲですくい、何度か息で吹き冷ましてから口に入れる。
「美味いか?!」
初めて手料理を食べさせた子どものように、目を輝かせて刑事は言う。
正直、味がしない。調味料が足りてないか、下手したらダシを入れていない。
「・・・料理は、私が教えてさしあげる必要がありますね」
怪盗は、ふふ、と笑いながら言う。
「なんだと」
刑事は、唇を尖らせる。が、すぐに微笑んで
「軽口を言えるようになったんなら、もう大丈夫そうだな」
と言った。
しばらくして目眩が治ると、怪盗は辺りを見渡した。壁にかかっている時計は3時を指している。あれから6時間以上は眠っていたのか。
テーブルを見ると、今朝には無かったスポーツドリンクと栄養ドリンク、それとコンビニおにぎりとカットフルーツの詰め合わせが置いてあった。
昼休みに刑事は一旦帰って来たらしいが、気付かないほどに熟睡していたようだ。
不意に、ぶるっと震えが来て、尿意を感じる。そっとベッドを降りようとするが、ぐらりと景色が反転し、床に倒れた。
ベッドのシーツを掴み、やっとの思いで上半身を起こすが、トイレまでのたった数メートルが辿りつけそうになかった。
すぐ横には、紺色の空のバケツがある。怪盗は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。この中に、するしか・・・。
重い身体に鞭を打ち、ズボンと下着を下ろす。片足を引き抜き、バケツの上に座るようにして跨る。バケツの中で、陰茎がぷらぷらと揺れた。
バケツに、おしっこするなんて。股の前で縁を握った手に、力が入る。誰も見ていないのに、羞恥心に駆られて出すのを我慢してしまう。そのまま数分は動けずにいた。
もう駄目。
下腹部を襲う尿意に負け、力を抜く。
バケツの底に当たってダラダラ鳴った音は、やがてジョボジョボという鈍い音に変わる。風邪薬のせいか、やけに濃い黄色の尿が溜まっていった。
全てを出し終わると、バケツを倒さないように、そっと降りた。思いのほか大量に出たのを見て、無性に恥ずかしくなる。
「俺って本当、馬鹿」
ベッドに登ると、頭から布団を被って丸まった。
夕方、玄関の鍵が回る音で目を覚ます。いつの間にか、また眠ってしまったようだ。
しかし、今朝よりは少し熱が下がり、楽になっていた。
寝室に入り、テーブルの上そのままの食品を見て、刑事は
「まだ調子悪いみたいだな」
と言った。
「んん」
眠い目で、刑事の方を見る。
「なんだ?トイレか?」
刑事の声に、怪盗は首を振る。
「じゃあ、まだ寝てていいから」
ネクタイを緩めながら、バケツに気づいた刑事は、それを風呂場に持っていった。
怪盗は、恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆った。
キッチンの方で、包丁を使う音がする。怪盗はゆっくり上半身を起こして、スポーツドリンクを口にする。
もしも普通の家庭で育っていたら、お母さんかお父さんは、こんな感じだっんだろうな、とぼんやりと思う。
自分は、いったい刑事に何を求めているのだろう。
考えるほどに頭痛がして、怪盗は、再び布団に潜り込んだ。
「おーい、少しは何か食べて薬飲もうぜ」
お盆に小さな土鍋を乗せて持ってきた刑事は、声をかける。
怪盗は、上半身を起こした。テーブルにお盆を置き、ベッドに腰掛けた刑事は、怪盗の額に触れる。
「お?ちょっと、下がったんじゃないのか?座薬が効いたか」
「ざ、座薬・・・?」
身に覚えのない単語に、怪盗は瞬きをする。
「昼、お前が寝てる時にさ、尻に入れてやったんだよ、気づかなかったのか」
刑事は腹を抱えて笑う。
「そ、そんな。寝てる間に」
怪盗は、恥ずかしくなって、布団の端を握りしめる。
「いつもそれ以上に恥ずかしいことしてんだろ。まぁ、それは良いから、雑炊食べろよ」
刑事は、お盆ごと相手に渡す。
「・・・ありがとう、ございます」
怪盗は、土鍋の蓋を開ける。湯気がボワっと広がる。大きさがバラバラの具材が、粥の中に埋もれていた。
レンゲですくい、何度か息で吹き冷ましてから口に入れる。
「美味いか?!」
初めて手料理を食べさせた子どものように、目を輝かせて刑事は言う。
正直、味がしない。調味料が足りてないか、下手したらダシを入れていない。
「・・・料理は、私が教えてさしあげる必要がありますね」
怪盗は、ふふ、と笑いながら言う。
「なんだと」
刑事は、唇を尖らせる。が、すぐに微笑んで
「軽口を言えるようになったんなら、もう大丈夫そうだな」
と言った。
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