刑事×怪盗の秘密

カルキ酸

文字の大きさ
上 下
8 / 22
探偵登場

怪盗の依頼主

しおりを挟む
 公安が管理する地下駐車場に、一台の黒いセンチュリーが停まっていた。
 そこに、1人の紙袋を持った女性が近付き、独特なリズムで窓ガラスをノックした。ドアが開くと、女性は車内に乗り込んだ。

「いやぁ、苦労したぜ。列車の下に潜り込んで床底を抜くのには」
 紙袋から王冠を取り出し、女装した怪盗は頭に被った。

「そう。ご苦労様」
彼の頭から抜き取り、佐川警部は自分の膝の上に王冠を置いた。

「しかし、なんで公安が、こんな物を盗ませるのかね」
 怪盗の呟きに、佐川警部も、運転席にいる安藤警部補も答えない。
「・・・まぁ、お前らの秘密主義は、よく知ってるけど」

 怪盗は、ドアを開けて帰ろうとする。

「待ちなさい」
佐川警部が、呼び止めた。
「白夜ノアとか言う、自称探偵に気を付けなさい」

「・・・あのコスプレみたいな野郎か。いけ好かないのは確かだが」
 怪盗は、香坂刑事が白夜に見惚れていた姿を思い出した。あんなガキに鼻の下伸ばしやがって、と未だにイライラする。

「ああいうのは、粘着質だから、しつこいわよ」
佐川警部は、薄く笑う。

「ああ。分かったよ」

 車を降りた怪盗は、ヒールの音をカツカツ響かせながら、暗闇に消えていった。




 白夜は、誰もいなくなった駅で、唇をトントン叩きながら考えていた。
 何度、考えても佐川がクロとしか思えない。


 構内にアナウンスが流れて、1番のりばに列車が停車する。階段を駆け降りてきた会社員らしき女性が、パンプスをカツカツ鳴らして走り、始発列車に飛び乗った。


 そうか。

 白夜は閃いた。おそらく警官に変装していた怪盗は、あの記者たちの群に紛れて列車を降りたに違いない。そして、割った窓ガラス・・・は人目につくから、列車の下だ。列車の床に隠し扉を作っておいて、潜り込んで、ケースの中の王冠を盗んだんだ。警官から、点検作業員にでも変装したのか、奴は。

「分かったぁ!!」
突然叫んだ白夜に、向かいのホームで掃除をしていた駅員がビクッとする。

「そっか、そっか」
パソコンを開いた白夜は、怪盗ナイトウォーカーについてのデータを更新する。

「僕をここまで本気にさせるなんて・・・」
 白夜は、胸を高鳴らせながら、舌舐めずりをした。

 絶対に、僕の手で捕まえてみせる。白夜は強く、心に決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

風邪ひいた社会人がおねしょする話

こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。 一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...