刑事×怪盗の秘密

カルキ酸

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探偵登場

銀髪の美少年探偵

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「まさか、窓から・・・?」
 渡辺警部は、穴が開いた窓に近寄り、外の景色を見た。遥か遠くに街の灯が見えるだけで、目の前には真っ暗闇な田んぼが広がる。

「馬鹿ね。こんなスピードで走る列車から出たら死ぬわよ。それより・・・・・・」

 佐川警部は、いきなり近くにいた制服警官の頰をつねった。

「いっ!」
つねられた警察官は、頰を押さえてしゃがみ込む。

「あら、ごめんなさい。怪盗ナイトウォーカーが化けてるかもしれなかったから」
 佐川警部は、2人目の制服警官の頰もつねる。
「それもそうか」
渡辺警部は、香坂刑事の頰をつねる。
「やめてくださいくらはい警部へぃぶ
「よし、本物だな」
香坂刑事は、渡辺警部の頰もつねり返した。
「いてててて!いってぇな、香坂。何か恨みでもあんのか」

「間抜けな人たち。実在の人物に変装するなんて、漫画じゃあるまいし。ナイトウォーカーが変装するなら、毎回メンバーが変わる制服警官に決まってるじゃない。ねぇ、安藤?」
 佐川警部は、腕組みをしながら、渡辺警部と香坂刑事を見て鼻で笑う。
「全くです」
安藤警部補は、残りの3人目と4人目の制服警官の頰を同時につねった。ゴム製のマスクなどが、剥がれたりはしない。
「失礼しました。本人ですね」

 制服警官たちは、つねられた頰を撫でながらお互いに目配せした。


「この中に怪盗はいない・・・考えにくいけど、乗客を全員調べる必要がありそうね」
佐川警部は腕時計を見た。
「到着まで、あと2時間。頼みましたよ、捜査三課」

「は?」
渡辺警部は、言う。

「私と安藤・・・あと、そうね。そこのあなた」
佐川警部は、1人の制服警官を指差した。
「見張りに残ってくださる?あとは、乗客を調べてきなさい。ほら、行った行った」

 追い払われるように手を振られた渡辺警部は、不機嫌そうに3号車を出た。同じ階級のくせに威張りやがって公安め、と、ぶつくさ呟く。

 香坂刑事も、あとに続く。
 瞬間、ぺろんと尻を撫でられた感触がした。驚いて振り向いたが、誰もいない。
 左右にいた警官3人が、不思議そうな顔をした。




 全7両の列車の中で、それぞれの車両にいた乗客は、全員食堂に集められた。
 1人ひとり渡辺警部と香坂刑事が面談をしている間に、それぞれの車両では、王冠が隠されていないか、隠れている者はいないか等の捜索が行われる。


「警部さん、僕に捜査の協力をさせてくれませんか」
面談中、パソコンを持った1人の少年が口を開いた。

「ボウズ、推理小説の読みすぎだ。何か変わったことでも見たってんなら話してほしいけどな」
渡辺警部は、苛立ちながら言う。

 少年は、パーカーのポケットから名刺を取り出し、テーブルの上に置いた。
 そこには「白夜探偵事務所 所長:白夜ノア」と記載されていた。

「はぁ?白夜びゃくやノア?ペンネームか?」
名刺をつまみ上げて、渡辺警部は言う。

「本名ですよ」
 彼は、被っていたキャップを脱いだ。柔らかい銀色の髪が落ちる。長めの前髪が、大きな青い瞳にかかっていた。

「え、白夜ノア?確かイギリスで有名な大学生探偵・・・ですよね?」
 横から名刺を覗いた香坂刑事は、白夜に顔を向けながら聞く。

「大学は飛び級でもう卒業しました。今回、怪盗ナイトウォーカーの噂を聞いて、日本で私立探偵を始めたんです。父が、日本人なものですから」
 白夜は、ニコリと微笑む。
 その美しさに、香坂刑事はドキリとする。


「必ずや僕が、怪盗ナイトウォーカーを捕まえてご覧に入れましょう」
 白夜は、組んだ手に唇を近づけて、落ち着き払った声で話し始めた。
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