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探偵登場
消えた王冠
しおりを挟む予告状
明日 セントラルシティ発23時30分の特急列車にて護送される
アロマノフ王朝の王冠を頂きに参上する
怪盗ナイトウォーカー
「総員、気を抜くなよ。奴はもう、列車の中に紛れ混んでいるかもしれないんだからな」
渡辺警部は、インカムで車両内の全警察官に告げた。
7両編成の古びた汽車は、深夜の闇の中を高速で移動していた。
各車両には、乗客の他に4名の警察官が常備され、アロマノフ王朝の王冠が展示された3両目には、さらに渡辺警部と香坂刑事も持ち場についていた。
ガラッと扉を開け、4号車からグレーの品のあるスーツを着た女性と、紺のスーツを着た若い男性が現れる。
「渡辺警部、お疲れ様です」
女性が、渡辺警部に敬礼をする。
「お疲れ様です。佐川警部、それに安藤警部補も」
安藤と呼ばれた男性も、渡辺警部に敬礼をする。
「怪盗ナイトウォーカーは、一体どうやって盗むつもりかしら」
展示ガラスケースを叩きながら、佐川警部は中に置かれた王冠を眺めた。
「警備は万全です。奴がどんな手を使おうと、王冠は必ずや守ってみせます」
「えぇ、そうでなくては困るわ。今回の展示で、盗まれたとあっては、アロマノフ王朝との国交に関わるんだから」
5号車にて。
「ゲッ、公安の佐川と安藤来てんの?なんで」
警備中の柊巡査は、ヒソヒソ声で隣の安田巡査に話しかけた。
「やっぱ、外国の王朝の宝を盗まれたら、国際問題とかになるからじゃね?」
手で口元を隠しながら、安田巡査は答える。
「だからか。にしても公安の奴ら嫌いなんだよ、高飛車でさ」
「分かる。絶対にノンキャリを舐めてるよな」
「いっそのこと、怪盗ナイトウォーカーに盗まれちまえばいいのに」
そんな2人の近くに座っていた、キャップを深く被りノートパソコンを触る1人の男は、ニヤリと笑みを浮かべた。
ガタンッ。列車が大きく揺れると同時に、全車両が停電する。乗客たちの悲鳴があがる。
パリンッとガラスの割れる高い音が響き、3号車の車内に風が吹きこむ。
「懐中電灯を!」
渡辺警部が叫ぶ。
すぐに香坂刑事が懐中電灯で照らす。展示ケースは割られ、中の王冠は忽然と姿を消していた。
「待って、ケースの土台の中に隠されたのかもしれない」
佐川警部は、王冠が乗っていたクッションを持ち上げて中を覗く。
「・・・駄目、無いわ」
ため息をつく佐川警部。
やがて、車内の電気が復旧する。展示ケースだけでなく、展示ケースの真後ろの車窓まで割られ、あたりにはガラスの破片が散乱していた。
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