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プロローグ
刑事と怪盗の秘密
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深夜の美術館に、防犯ベルの音が響き渡る。3階の扉が開き、現れた男は、黒いマントを翻しながら、バルコニーの柵の上に、飛び乗った。
「そこまでだ、怪盗ナイトウォーカー」
明るい室内を背に、香坂刑事が銃を向ける。彼の後ろでは、大勢の警官が構えていた。
「さぁ、それはどうかな?」
不適に笑みを浮かべながら、怪盗はシルクハットの鍔を持った。
その瞬間、怪盗は後ろに向かって飛び降りる。彼は、静かに外へ落ちていく。
刑事が慌てて、柵に駆け寄り見下ろす。
しかし、怪盗の姿はどこにも見当たらなかった。
「何っ!?また取り逃がしただと!」
警察署内の一室で、40代男のダミ声が響く。
「これで何回目だ。巷では、怪盗が現実世界に現れただのと騒がれているが、こう何回も取り逃がしたとなっては警察の信頼に関わるんだ。分かっているのか!」
香坂刑事は、腹を括った表情で、直立不動の姿勢で聞いていた。上司からのお決まりの説教に、頭に血がのぼるが、必死で耐える。
次こそ絶対捕まえてやる、と内心で誓いながら、刑事は両手を握りしめた。
深夜。ぐったりしながら帰宅して、玄関の鍵を開けると、廊下にミニ丈のニットワンピースを着た女性が立っていた。
「おかえりなさい、あなた。お風呂にする?ご飯にする?それとも・・・わ、た、し?」
ハイテンションの高い声で言われ、香坂刑事は、心底疲れたようにため息をついた。
「何だよ、人がせっかく可愛い服で出迎えてやったのに」
先ほどの高い声とは打って変わり、男性の低い声で話す。
「また勝手に入ったな。誰のせいで疲れていると・・・」
玄関の鍵をかけ、革靴を脱ぎながら刑事は言う。
「怪盗にとって、一般家庭の玄関など、鍵をかけていないに等しいですよ」
ピッキング用の針金を見せながら、彼は得意げな顔をする。
「はぁ・・・俺は風呂に入るからな」
怪盗の横を通り過ぎ、刑事は洗面所に向かう。
「一緒に?」
怪盗は、刑事について行く。
「勝手にしろ」
ぶっきらぼうに言いながら、刑事はネクタイを緩めた。
向かい合いながら、湯船に浸かる2人。白い入浴剤からは、ふわりと柑橘系の香りが広がる。
「お前さ、バルコニーから落ちたあと、どこにいたんだよ」
天井を見上げながら、刑事は言う。
「バルコニーの下ですよ。しばらく床を挟んで足元にいました」
湯船に浮かべたオモチャのアヒルをつつきながら、怪盗は答える。
「どうやって、張り付いてた」
目線を怪盗に向ける。
「それはまぁ、企業秘密ですね」
オモチャのアヒルのくちばしを、刑事の唇につける。刑事は、照れたように、アヒルをそっと避ける。
「・・・今日は、本当に疲れてんだよ」
湯船を上がり、刑事は髪をバスタオルで拭いた。
怪盗はニヤつきながら、湯船の縁に頬杖をついて、刑事の身体を眺める。
視線に気付いた刑事は、バサっとタオルで身体を隠した。
「見んな、減る」
「減りませんよーだ」
拗ねたように、怪盗は口元まで湯に浸かって、ブクブクと泡を作った。
ソファで、ビールを飲みつつテレビを見る刑事の膝に、頭を乗せた怪盗は、先ほど盗んだ宝石に見惚れていた。
「お前が盗みをしなきゃ、俺が警部に怒鳴られることもないってのに・・・返せ」
手を伸ばした刑事を躱し、怪盗は続ける。
「それは、お気の毒ですが、私にも依頼主からの仕事があるので」
上半身を起こし、刑事の隣に怪盗は座り直した。風呂から上がっても再び着たニットワンピースから、ムダ毛のない白い脚が伸びる。
依頼主がいるのか、と思いながらも、口にはせずビールをあおると、ジト目で怪盗は見つめてきた。
「ビールは苦いから、嫌いなんですよね」
「お前は、飲まなきゃいいだろ」
「苦い思いをするのは、私なんですよ」
「ん"ん"っ!」
意味を理解して、刑事は軽く赤面しながら咳き込んだ。
「お前・・・」
妙なこと言うなよ、と思いながら横を見ると、怪盗はニコリと微笑んだ。
相変わらず、女装の完成度が高い。知らない人が見たら、男とは思わないだろう。
「そんなに、見つめて・・・惚れ直しましたか?」
セミロングのカツラの毛先を弄びながら、彼は言う。
「馬鹿言うんじゃねぇ」
刑事は、そっと唇をつけた。探るように、舌で唇の内側をなぞっていく。
「・・・っ」
受け入れるように、怪盗は瞳を閉じて、口を少し開けた。
お互いに首の角度を変えながら、じっくりと舐め合う。
唇を離したときには、細い糸が引く。
「やっぱり、ビールは嫌いですね」
舌舐めずりをしながら、怪盗は呟いた。
「そこまでだ、怪盗ナイトウォーカー」
明るい室内を背に、香坂刑事が銃を向ける。彼の後ろでは、大勢の警官が構えていた。
「さぁ、それはどうかな?」
不適に笑みを浮かべながら、怪盗はシルクハットの鍔を持った。
その瞬間、怪盗は後ろに向かって飛び降りる。彼は、静かに外へ落ちていく。
刑事が慌てて、柵に駆け寄り見下ろす。
しかし、怪盗の姿はどこにも見当たらなかった。
「何っ!?また取り逃がしただと!」
警察署内の一室で、40代男のダミ声が響く。
「これで何回目だ。巷では、怪盗が現実世界に現れただのと騒がれているが、こう何回も取り逃がしたとなっては警察の信頼に関わるんだ。分かっているのか!」
香坂刑事は、腹を括った表情で、直立不動の姿勢で聞いていた。上司からのお決まりの説教に、頭に血がのぼるが、必死で耐える。
次こそ絶対捕まえてやる、と内心で誓いながら、刑事は両手を握りしめた。
深夜。ぐったりしながら帰宅して、玄関の鍵を開けると、廊下にミニ丈のニットワンピースを着た女性が立っていた。
「おかえりなさい、あなた。お風呂にする?ご飯にする?それとも・・・わ、た、し?」
ハイテンションの高い声で言われ、香坂刑事は、心底疲れたようにため息をついた。
「何だよ、人がせっかく可愛い服で出迎えてやったのに」
先ほどの高い声とは打って変わり、男性の低い声で話す。
「また勝手に入ったな。誰のせいで疲れていると・・・」
玄関の鍵をかけ、革靴を脱ぎながら刑事は言う。
「怪盗にとって、一般家庭の玄関など、鍵をかけていないに等しいですよ」
ピッキング用の針金を見せながら、彼は得意げな顔をする。
「はぁ・・・俺は風呂に入るからな」
怪盗の横を通り過ぎ、刑事は洗面所に向かう。
「一緒に?」
怪盗は、刑事について行く。
「勝手にしろ」
ぶっきらぼうに言いながら、刑事はネクタイを緩めた。
向かい合いながら、湯船に浸かる2人。白い入浴剤からは、ふわりと柑橘系の香りが広がる。
「お前さ、バルコニーから落ちたあと、どこにいたんだよ」
天井を見上げながら、刑事は言う。
「バルコニーの下ですよ。しばらく床を挟んで足元にいました」
湯船に浮かべたオモチャのアヒルをつつきながら、怪盗は答える。
「どうやって、張り付いてた」
目線を怪盗に向ける。
「それはまぁ、企業秘密ですね」
オモチャのアヒルのくちばしを、刑事の唇につける。刑事は、照れたように、アヒルをそっと避ける。
「・・・今日は、本当に疲れてんだよ」
湯船を上がり、刑事は髪をバスタオルで拭いた。
怪盗はニヤつきながら、湯船の縁に頬杖をついて、刑事の身体を眺める。
視線に気付いた刑事は、バサっとタオルで身体を隠した。
「見んな、減る」
「減りませんよーだ」
拗ねたように、怪盗は口元まで湯に浸かって、ブクブクと泡を作った。
ソファで、ビールを飲みつつテレビを見る刑事の膝に、頭を乗せた怪盗は、先ほど盗んだ宝石に見惚れていた。
「お前が盗みをしなきゃ、俺が警部に怒鳴られることもないってのに・・・返せ」
手を伸ばした刑事を躱し、怪盗は続ける。
「それは、お気の毒ですが、私にも依頼主からの仕事があるので」
上半身を起こし、刑事の隣に怪盗は座り直した。風呂から上がっても再び着たニットワンピースから、ムダ毛のない白い脚が伸びる。
依頼主がいるのか、と思いながらも、口にはせずビールをあおると、ジト目で怪盗は見つめてきた。
「ビールは苦いから、嫌いなんですよね」
「お前は、飲まなきゃいいだろ」
「苦い思いをするのは、私なんですよ」
「ん"ん"っ!」
意味を理解して、刑事は軽く赤面しながら咳き込んだ。
「お前・・・」
妙なこと言うなよ、と思いながら横を見ると、怪盗はニコリと微笑んだ。
相変わらず、女装の完成度が高い。知らない人が見たら、男とは思わないだろう。
「そんなに、見つめて・・・惚れ直しましたか?」
セミロングのカツラの毛先を弄びながら、彼は言う。
「馬鹿言うんじゃねぇ」
刑事は、そっと唇をつけた。探るように、舌で唇の内側をなぞっていく。
「・・・っ」
受け入れるように、怪盗は瞳を閉じて、口を少し開けた。
お互いに首の角度を変えながら、じっくりと舐め合う。
唇を離したときには、細い糸が引く。
「やっぱり、ビールは嫌いですね」
舌舐めずりをしながら、怪盗は呟いた。
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