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2巻
2-2
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「何でしゅかこの絵? 蛇でしゅか?」
アレクシアが何気なく言った言葉で、エルマ氏の顔色が変わる。
「……てんだ」
「何でしゅかー?」
「どこを見てそげなこと言ってんだ! どこをどう見たら蛇になんだっぺよ! オラの絵を馬鹿にしてんのけ!?」
エルマは突如として訛った口調で猛烈に怒り始めた。
エルマの突然の豹変に、その場が静まり返る。
「皇女! オラはがっかりだべさ! 見込みがあると思っていだんだべが、とんだ見込み違いだっぺ!」
怒り心頭のエルマにアレクシアも言い返す。
「蛇にしか見えないっぺよ!」
「皇女、訛りがうつっていますよ」
エルマと睨み合うアレクシアの耳にはロインの言葉は入っていない。
「蛇じゃねえっ! これは皇女をイメージして描いたんだべさ! 何故わがんねぇんだ!」
「わかんないっぺ! シアは蛇じゃないでしゅよ!」
二人のやり取りを聞いて、ニーナ令嬢とダージェス侯爵は肩を震わせている。
ユージン伯爵は自分の筋肉に見惚れていて、ルシアードとゼストは訛っているアレクシアを微笑ましく見つめていた。
「皇女はもっと芸術を勉強しねぇとダメだっぺな!」
「シアはこの絵をシアと認めねぇっぺ!」
「はいはい、もうやめなさい。エルマ氏、この方は皇女ですよ。慎みなさい」
ロインに睨まれて我に返るエルマ。
「はっ! 私としたことが……申し訳ありません、アレクシア皇女よ!」
また演技じみた話し方になったエルマは、指を鳴らすと次の絵を見せる。
そこには先程の絵と同じ、赤と黒の渦巻きが並んでいた。
「……えと、シアでしゅよね?」
恐る恐るエルマに聞くアレクシアだが、横にいる男女の弟子が頭を抱えてしまう。
「……んん! 違いますよ、皇女」
「でもこれさっきの絵と一緒でしゅよね?」
アレクシアがそう言うと弟子達が顔面蒼白になっていく。エルマは我慢しているのか、ぶるぶると震え始めた。
「……ルシアード皇帝陛下はお分かりになる思います。皇女様に教えてあげてください」
「アレクシアが言っただろう。俺も蛇にしか見えない」
ルシアードの答えにうんうんと頷くアレクシアと他の家庭教師候補達。
「何ですとー! 陛下ともあろう方が蛇ですと! おったまげだ!」
「おったまげ? 何でしゅかそれ」
「俺にも分からん」
首を傾げるアレクシアとルシアード。
「驚いたということです」
ロインが頭を抱えながらそう答える。
「この絵が何か分かる人いましゅか?」
アレクシアはそう問いかけるが、エルマの怒りに巻き込まれたくないのか、皆黙っている。
そんな中で、一人の空気の読めない人物が声を上げた。
「これは綺麗な筋肉ですな!」
そう、筋肉大好きユージン伯爵だ。
「筋肉~? ふざげでんのが! おめぇは黙ってろ! これはどう見てもルシアード皇帝陛下だっぺよ!」
「父上、そう見えっぺか?」
アレクシアはまたも訛った口調でルシアードに問いかける。
「む。どう見ても蛇だ……っぺ」
「皇女また訛りがうつっていますよ。陛下は空気を読まなくて良いです。エルマ氏、いい加減にしなさい。絵の見方は人それぞれです。押し付けるのはいかがなものでしょうか」
ロインがエルマを諭すが、興奮状態のエルマは次の絵を自ら持ってきてアレクシアに見せる。
その絵はまた赤と黒の渦巻きが描かれていた。
「ああ~! 助けてくだしゃい!」
アレクシアが頭を抱える横で、ゼストが目を見開いた。
「この絵はアレクシアとルシアードだろ? 何で俺がいないんだ? 今すぐその横に描け!」
皆が信じられない目でゼストを見た。
「エクセレント! 貴方には才能がありますよ!」
興奮してゼストに詰め寄るエルマ。そんな光景を見てアレクシアが呟いた。
「おったまげたっぺよ……」
†
そしてアレクシアは家庭教師候補達と別れてルシアードとゼストとともに執務室に向かい、そこで国の最高権力者達を仁王立ちになり睨みつけていた。
先程まで家庭教師候補達と色々話をしたが、アレクシアはユージン伯爵とエルマ氏の強烈キャラぶりに心身ともに疲れ果ててしまった。
「シアは疲れまちたよ!」
「皇女、すみません。面接した時は普通でしたので……私の人選ミスです」
ロインはぐったりしているアレクシアに素直に謝罪した。
「伯父上、あの二人は本当に優秀なんでしゅか? シアは疑問でしゅ!」
アレクシアの言うことに横で頷くルシアードとゼスト。
「ええ、ユージン伯爵はただの筋肉馬鹿ではありません。彼は奴隷制度や差別、迫害を受けている者達のことや世界の闇を調べていて、そのように虐げられている者を助けるために尽力しています」
「あの筋肉馬鹿が……?」
アレクシアはさすがに驚いてしまう。
「そうです。普段はあんな感じかもしれませんが、数々の修羅場を乗り越えてきた方です。彼の屋敷には、奴隷の身から保護された者や戦争孤児達が、身分など関係なく働いています」
「……そうでしゅか、シアはただの筋肉馬鹿として見ていまちた。ちょっと反省でしゅね」
「皇女には世界の歴史を正直にお伝えしても大丈夫と判断して、私は彼を選びました」
「世界の歴史でしゅか、色々ありそうでしゅね……」
アウラード大帝国では強く禁止されているが、他国では奴隷や民族差別などが根強く残っているのだ。
「アレクシア、ユージン伯爵は良いとしても、あいつは駄目だぞ」
ルシアードが警戒する人物は、画家家兼音楽家のエルマだ。
「シアはあの人苦手だっぺよ」
「……皇女」
「はっ! ついつい出ちゃいましゅ!」
「彼の絵は世界的に有名で高値で落札される……」
「何でしゅと!? お金になるんでしゅか!?」
ロインは自分の口が滑ったことに気付いて頭を抱える。アレクシアはお金や宝石の類に目がないのだ。
「父上! あの蛇の絵はどうしまちたか!」
「む。あれはお前があいつに持って帰れと押し返していたぞ?」
「そういえば! ああ! シアは馬鹿ちんでしゅ!」
崩れ落ちそうになるアレクシアをルシアードはそっと支える。
「あいつの絵か? 俺、一枚貰ったぞ?」
そう言うゼストに皆の視線が集中する。
「じじい! 本当でしゅか!?」
「ああ。あいつが帰る時に押し付けられたんだよ」
アレクシアはキラキラした目でゼストを見つめるが、それが面白くないルシアードが間に割り込んで妨害した。
その様子を呆れたように見つつ、ロインは話を進める。
「皇女、彼も苦労人で、信じられないと思いますが、優秀な人物なんですよ。彼は田舎の孤児院育ちですが、持ち前の容姿と社交性を生かして必死にのし上がってきたそうです。本来は見事な肖像画や風景画を描いていますが、本当に描きたかったのはあの独特の絵なのでしょう」
「……シアは普通に肖像画や風景画を教わりましゅ」
「む。あいつで良いのか?」
「後悔しそうでしゅが……良いっぺ」
「陛下、皇女のその訛りもどきをやめさせてください」
もうすでに癖になりつつあるアレクシアの訛りを警戒するロイン。
「む。何故だ? こんなに可愛いのに」
「そうだぞ!」
本気で抗議してくるルシアードとゼストに再び呆れてしまうロインだが、アレクシアがあの二人を何とか受け入れたことに安心する。
「皇女、家庭教師のスケジュールですが、週に二日、二時間はエルマ氏の授業があります」
「ええーー! 年に二回で良いでしゅよ!」
「年二回って……礼儀作法は週に四回、魔術は週に三回、歴史は週に二回となっております」
「そんな! シアの自由が……断固抗議しましゅ!」
強い口調で言うアレクシアだが、ロインの返答は無情なものだった。
「却下します」
「ぐぬぬ……父上! シアは立派な皇女になるくらいなら自由を選びましゅ! 今まで……お世話には……なってないでしゅね! シアは一人で生きていきましゅから、安心してくだしゃいな!」
そしてアレクシアが指笛を吹くと、ドアをカリカリする音が聞こえた。
近くにいたゼストがドアを開けると、子犬従魔達がアレクシアの元に尻尾を振りながらやって来た。
「む。アレクシア、どこに行くんだ?」
「放浪しましゅ!」
アレクシアの決意表明にショックを受けたルシアードは、アレクシアの手を取り跪く。
「駄目だ。お前は俺の大事な娘だ、お前を蔑ろにしていた自分に後悔している。まさか自分が後悔をするなんて思っていなかったがな……アレクシア、俺はお前を幸せにする。だからどこにも行かないでくれ」
「何かプロポーズみたいでしゅね……」
懇願するルシアードにアレクシアは苦笑いを浮かべる。
「俺だって、お前を今度こそ幸せにする! だから俺の側にいてくれ!」
ゼストも跪いてアレクシアを必死に説得する。
そんな最強すぎるの男達のあり得ない光景を見たロインは、今後の二人の心理状態を心配して、アレクシアのスケジュールを少しだけ減らすことにしたのだった。
†
それから授業が始まる二週間後まで、思う存分に狩りをしたり色々な事件を解決したりと大忙しだったアレクシア。
そして授業当日になった。
今日はあのエルマ氏の授業だ。
憂鬱になりながらも授業を行う部屋に移動中のアレクシアに、ゼストと魔国の貴族である魔公爵ランゴンザレスが何故か一緒についてくる。ランゴザレスもまたアレクシアの前世からの友人で、アレクシアの希望によって皇宮で一時的に暮らしている。
なお当たり前のようにアレクシアについていこうとしたルシアードは仕事のため、笑顔のロインに強制的に連行された。
ランゴンザレスがいつもの口調でアレクシアに話しかける。
「あんたが勉強とはね~」
「シアもびっくりだっぺよ」
「……さっきから何なのその喋り方?」
「気にすんな」
「気になるわよ!」
ゼストが気にしないようにランゴンザレスに言い聞かせるが、ランゴンザレスは納得せずに言い返す。
アレクシアはしょうがないといった感じで説明を始めた。
「今日の先生が田舎出身で、興奮するとこんな話し方になるんでしゅよ」
「その先生って芸術家のエルマでしょう~?」
「ランしゃん、知ってるんでしゅか?」
「有名ですもの~! 私の屋敷にも彼の絵が飾ってあるわよ!」
エルマの絵の話で盛り上がりながら部屋に到着して中に入っていくと、エルマ以外にシェインとジェニファー、そしてドミニクが座っていた。
「あれ? どうしたんでしゅか?」
アレクシアが聞くと、シェインとジェニファーとドミニクは口々に答える。
「あの有名なエルマ氏に会えると聞いてね、参加させてもらおうと思って来たんだよ」
「私はアレクシアと勉強したくて来たの!」
「俺は……来た!」
アレクシアはゼストに椅子に座らせてもらい、四人が仲良く並んで座った。
「これはこれは皇太子殿下に皇女殿下! ようこそ、我が芸術の館へ!」
「「「館?」」」
首を傾げる三人にアレクシアが淡々と告げる。
「気にしない方が良いでしゅよ? 身が持ちましぇん!」
「今日はまず私の描いた作品を見て、感想を聞かせてください!」
エルマはそう言うと指を鳴らす。
するとこの前見た弟子の男女が現れた。アレクシアは嫌な予感がしてゼストを見ると、ゼストも苦笑いしている。
「まずはこの自信作! シェイン皇太子、感想を頂きたいですな!」
弟子達が出してきたのは、あの赤と黒が渦巻いている因縁の絵だった。それを初めて見たシェイン達は衝撃を受ける。
「え……あの、以前の作風と違うんですが……変えたんですか?」
シェインがエルマに尋ねた。
「私が描きたかったのはこれなのですよ! 新たなる道に足を踏み入れた私の作風を殿下達に是非見てもらいたくてですね……!」
「意味不明~」
そう言うアレクシアを天敵のように見つめるエルマ。
「アレクシア皇女は芸術を解っていない! 実に残念です!」
「何でしゅとー! 芸術は自由でしゅよ! シアが蛇だと思うのも自由でしょうがーー!」
「どこが蛇なんだ! おめえの目は節穴か?」
いきなり訛り始めたエルマを見て唖然とする姉兄達と、爆笑しているランゴンザレス。
「ちなみにこれシアらしいでしゅよ!」
「「「はぁ?」」」
揃って首を傾げた三人に、エルマは詰め寄る。
「驚くな! どう見てもアレクシア皇女だべさ!」
「驚くっぺ! いいから普通の風景画を教えてケロケロ!」
もはや訛りと呼んでよいか分からなくなった口調で、アレクシアが言い返す。
「おい、やめろ。お前も大人しく風景画を教えろ!」
そこに割って止めに入ったゼストが、アレクシアとエルマに言い聞かせる。
そこへ様子を見に、ルシアードとロイン、それにローランドが中に入ってきたが、二人は気付かない。
「じゃあ芸術を理解しないアレクシア皇女には風景画を教えっぺ」
「何でしゅかその言い方は! こっちは皇女だっぺよ! この馬鹿ちんが!」
「おい、おちびの話し方は一体何なんだ?」
ローランドはアレクシアの話し方が気になりルシアードに尋ねる。
「む。可愛いだろ」
だが、ルシアードは微笑ましく愛娘を見つめるだけだった。
アレクシアは頬を大きく膨らませて、椅子から下りると画材を持ち、よちよちと歩き出した。
「シアは一人寂しく庭で風景画を描いてくるっぺ」
「ああ、アレクシア! 私も行くわ! こんなヘンテコな絵描く気になれないわよ!」
「俺も行くぞ!」
ジェニファーとドミニクも自分の画材を持ち、アレクシアの後を追っていった。
「エルマ氏、我々は皇族ですよ? お忘れなく」
シェインは唖然とするエルマに向かい恐ろしい程の笑顔でそう言うと、画材を持って最後に出ていった。
ロインはエルマがルシアードに殺される前に、急いで引き摺って部屋から追い出して、長い地獄の説教を始めたのだった。
†
エルマがロインに引き摺られたまま戻ってこないので、四人姉弟は仲良く横に並んで座り、課題の風景画を描いていた。
ルシアード達が、中庭でちょこんと座り黙々と絵を描いていたアレクシアの絵を覗く。
そこには頭部が光った庭師のお爺さんの絵が描かれており、皆は大爆笑した。
「あんた……それは風景画じゃないわよ」
ランゴンザレスがそう言うので、シェイン、ジェニファー、ドミニクもアレクシアの絵を覗き込む。
「そうね……それは人物画じゃない? ぷっ」
「アレクシア、君は本当に面白いね……」
「ブハッ!」
三人とも笑いを抑えられないようだったが、アレクシアはそんな大騒ぎな皆を無視して黙々と描いている。
ちょっと先に庭師のお爺さんがいて仕事をしているが、ここにいる皇族達には気付いていない。
「静かにしてくだしゃいな! 爺に気付かれる!」
アレクシアはそう言いながら慎重にお爺さんの頭の光り具合を調整していた。
「後で爺にあげるんでしゅよ」
「む。何で庭師にあげるんだ、俺にくれ」
アレクシアが初めて描いた絵を貰えないことが面白くないルシアードは、その絵を欲しがる。
「あたしも欲しいわ~!」
手を拳げて猛アピールするランゴンザレス。
「俺も描いてほしいぞ!」
ゼストに至っては自分を描いてほしいと言い出した。
そんな大人達を呆れて見ていたアレクシアは、実は庭師のお爺さんはアレクシアを皇女と知らずに面倒を見てくれていたことを話した。
彼は母親に育児放棄されていた頃に庭で食べれる葉っぱを探していたアレクシアを見つけて、自分のお昼ご飯やお菓子を与えてくれていたのだ。
それを知って何も言えなくなる一同。
ルシアードは何を思ったのか庭師の爺さんに近寄っていく。
作業していた爺さんが大きな影に気付いて振り返ると、そこにこの国の最高権力者が立っていた。
「はあああ……皇帝陛下!」
急いで平伏そうとするお爺さんを止めて、いきなり頭を下げるルシアード。それを見て、驚いて開いた口が塞がらない一同とお爺さん。
「お前がいなかったらアレクシアは死んでいたかもしれない。父親として礼を言う。ありがとう」
ルシアードのこの言葉にはさすがのアレクシアも驚いている。
ルシアード皇帝陛下に頭を下げられた歴史上初めての平民になった庭師の爺さんは驚きすぎて腰を抜かしてしまった。
「父上、そんなに怖い顔で近付いたら誰でも腰を抜かしましゅよ!」
「む。だが、父親として礼をだな……」
「ん? シアじゃねえか!」
「オホホ、ご機嫌よう。庭師のお方」
庭師のお爺さんに気付かれ、いきなりお上品になるアレクシア。
お爺さんは途端に怒った表情になり、アレクシアを問いただす。
「お前、この前、庭から芋を盗んだろ!?」
「……知りましぇん」
「目が泳いでるぞ? 俺が大事に育ててた芋が三本消えてるんだ! 焼いて食ったな?」
「……知りましぇん」
皆が庭師の爺さんとアレクシアのやり取りを黙って聞いている。
「結局、アレクシアだな」
「そうね~!」
笑うシェインに、頷くジェニファー。
だが、ルシアードは面白くなさそうに二人のやり取りを見ている。
「……バターを載せるとさらに美味いんだぞ?」
「そうなんでしゅか! でもそのままでも美味しかった……はっ!」
「やっぱりお前か! あれは皇宮用の高級な芋なんだよ! 見つかったら……はっ!」
庭師の爺さんは目の前にその皇宮のトップがいることを思い出して、恐る恐る視線を向ける。
ルシアードは不機嫌になっており、アレクシアを見ながら近付いていく。
「皇帝陛下! 申し訳ございません! この子は悪くないんです! 罰するなら私を罰してくださいませ!」
だが、ルシアードはアレクシアを怒るどころか愛おしそうに抱きしめていた。
「アレクシアは芋が好きなのか?」
「好きでしゅ! 今度はバター焼きに挑戦しましゅよ! 父上にも食べさせてあげましゅね!」
「くっ……可愛い! ありがとうな。俺もお前に何か作って……」
「お腹壊しそうなのでいいでしゅ」
ルシアードは愛娘に冷たくあしらわれても嬉しそうだった。
「……シア、お前何者なんだ?」
驚く爺さんにアレクシアが話そうと口を開いた時、ランゴンザレスとゼストが何かに気付いて庭の奥を見た。
アレクシアが何気なく言った言葉で、エルマ氏の顔色が変わる。
「……てんだ」
「何でしゅかー?」
「どこを見てそげなこと言ってんだ! どこをどう見たら蛇になんだっぺよ! オラの絵を馬鹿にしてんのけ!?」
エルマは突如として訛った口調で猛烈に怒り始めた。
エルマの突然の豹変に、その場が静まり返る。
「皇女! オラはがっかりだべさ! 見込みがあると思っていだんだべが、とんだ見込み違いだっぺ!」
怒り心頭のエルマにアレクシアも言い返す。
「蛇にしか見えないっぺよ!」
「皇女、訛りがうつっていますよ」
エルマと睨み合うアレクシアの耳にはロインの言葉は入っていない。
「蛇じゃねえっ! これは皇女をイメージして描いたんだべさ! 何故わがんねぇんだ!」
「わかんないっぺ! シアは蛇じゃないでしゅよ!」
二人のやり取りを聞いて、ニーナ令嬢とダージェス侯爵は肩を震わせている。
ユージン伯爵は自分の筋肉に見惚れていて、ルシアードとゼストは訛っているアレクシアを微笑ましく見つめていた。
「皇女はもっと芸術を勉強しねぇとダメだっぺな!」
「シアはこの絵をシアと認めねぇっぺ!」
「はいはい、もうやめなさい。エルマ氏、この方は皇女ですよ。慎みなさい」
ロインに睨まれて我に返るエルマ。
「はっ! 私としたことが……申し訳ありません、アレクシア皇女よ!」
また演技じみた話し方になったエルマは、指を鳴らすと次の絵を見せる。
そこには先程の絵と同じ、赤と黒の渦巻きが並んでいた。
「……えと、シアでしゅよね?」
恐る恐るエルマに聞くアレクシアだが、横にいる男女の弟子が頭を抱えてしまう。
「……んん! 違いますよ、皇女」
「でもこれさっきの絵と一緒でしゅよね?」
アレクシアがそう言うと弟子達が顔面蒼白になっていく。エルマは我慢しているのか、ぶるぶると震え始めた。
「……ルシアード皇帝陛下はお分かりになる思います。皇女様に教えてあげてください」
「アレクシアが言っただろう。俺も蛇にしか見えない」
ルシアードの答えにうんうんと頷くアレクシアと他の家庭教師候補達。
「何ですとー! 陛下ともあろう方が蛇ですと! おったまげだ!」
「おったまげ? 何でしゅかそれ」
「俺にも分からん」
首を傾げるアレクシアとルシアード。
「驚いたということです」
ロインが頭を抱えながらそう答える。
「この絵が何か分かる人いましゅか?」
アレクシアはそう問いかけるが、エルマの怒りに巻き込まれたくないのか、皆黙っている。
そんな中で、一人の空気の読めない人物が声を上げた。
「これは綺麗な筋肉ですな!」
そう、筋肉大好きユージン伯爵だ。
「筋肉~? ふざげでんのが! おめぇは黙ってろ! これはどう見てもルシアード皇帝陛下だっぺよ!」
「父上、そう見えっぺか?」
アレクシアはまたも訛った口調でルシアードに問いかける。
「む。どう見ても蛇だ……っぺ」
「皇女また訛りがうつっていますよ。陛下は空気を読まなくて良いです。エルマ氏、いい加減にしなさい。絵の見方は人それぞれです。押し付けるのはいかがなものでしょうか」
ロインがエルマを諭すが、興奮状態のエルマは次の絵を自ら持ってきてアレクシアに見せる。
その絵はまた赤と黒の渦巻きが描かれていた。
「ああ~! 助けてくだしゃい!」
アレクシアが頭を抱える横で、ゼストが目を見開いた。
「この絵はアレクシアとルシアードだろ? 何で俺がいないんだ? 今すぐその横に描け!」
皆が信じられない目でゼストを見た。
「エクセレント! 貴方には才能がありますよ!」
興奮してゼストに詰め寄るエルマ。そんな光景を見てアレクシアが呟いた。
「おったまげたっぺよ……」
†
そしてアレクシアは家庭教師候補達と別れてルシアードとゼストとともに執務室に向かい、そこで国の最高権力者達を仁王立ちになり睨みつけていた。
先程まで家庭教師候補達と色々話をしたが、アレクシアはユージン伯爵とエルマ氏の強烈キャラぶりに心身ともに疲れ果ててしまった。
「シアは疲れまちたよ!」
「皇女、すみません。面接した時は普通でしたので……私の人選ミスです」
ロインはぐったりしているアレクシアに素直に謝罪した。
「伯父上、あの二人は本当に優秀なんでしゅか? シアは疑問でしゅ!」
アレクシアの言うことに横で頷くルシアードとゼスト。
「ええ、ユージン伯爵はただの筋肉馬鹿ではありません。彼は奴隷制度や差別、迫害を受けている者達のことや世界の闇を調べていて、そのように虐げられている者を助けるために尽力しています」
「あの筋肉馬鹿が……?」
アレクシアはさすがに驚いてしまう。
「そうです。普段はあんな感じかもしれませんが、数々の修羅場を乗り越えてきた方です。彼の屋敷には、奴隷の身から保護された者や戦争孤児達が、身分など関係なく働いています」
「……そうでしゅか、シアはただの筋肉馬鹿として見ていまちた。ちょっと反省でしゅね」
「皇女には世界の歴史を正直にお伝えしても大丈夫と判断して、私は彼を選びました」
「世界の歴史でしゅか、色々ありそうでしゅね……」
アウラード大帝国では強く禁止されているが、他国では奴隷や民族差別などが根強く残っているのだ。
「アレクシア、ユージン伯爵は良いとしても、あいつは駄目だぞ」
ルシアードが警戒する人物は、画家家兼音楽家のエルマだ。
「シアはあの人苦手だっぺよ」
「……皇女」
「はっ! ついつい出ちゃいましゅ!」
「彼の絵は世界的に有名で高値で落札される……」
「何でしゅと!? お金になるんでしゅか!?」
ロインは自分の口が滑ったことに気付いて頭を抱える。アレクシアはお金や宝石の類に目がないのだ。
「父上! あの蛇の絵はどうしまちたか!」
「む。あれはお前があいつに持って帰れと押し返していたぞ?」
「そういえば! ああ! シアは馬鹿ちんでしゅ!」
崩れ落ちそうになるアレクシアをルシアードはそっと支える。
「あいつの絵か? 俺、一枚貰ったぞ?」
そう言うゼストに皆の視線が集中する。
「じじい! 本当でしゅか!?」
「ああ。あいつが帰る時に押し付けられたんだよ」
アレクシアはキラキラした目でゼストを見つめるが、それが面白くないルシアードが間に割り込んで妨害した。
その様子を呆れたように見つつ、ロインは話を進める。
「皇女、彼も苦労人で、信じられないと思いますが、優秀な人物なんですよ。彼は田舎の孤児院育ちですが、持ち前の容姿と社交性を生かして必死にのし上がってきたそうです。本来は見事な肖像画や風景画を描いていますが、本当に描きたかったのはあの独特の絵なのでしょう」
「……シアは普通に肖像画や風景画を教わりましゅ」
「む。あいつで良いのか?」
「後悔しそうでしゅが……良いっぺ」
「陛下、皇女のその訛りもどきをやめさせてください」
もうすでに癖になりつつあるアレクシアの訛りを警戒するロイン。
「む。何故だ? こんなに可愛いのに」
「そうだぞ!」
本気で抗議してくるルシアードとゼストに再び呆れてしまうロインだが、アレクシアがあの二人を何とか受け入れたことに安心する。
「皇女、家庭教師のスケジュールですが、週に二日、二時間はエルマ氏の授業があります」
「ええーー! 年に二回で良いでしゅよ!」
「年二回って……礼儀作法は週に四回、魔術は週に三回、歴史は週に二回となっております」
「そんな! シアの自由が……断固抗議しましゅ!」
強い口調で言うアレクシアだが、ロインの返答は無情なものだった。
「却下します」
「ぐぬぬ……父上! シアは立派な皇女になるくらいなら自由を選びましゅ! 今まで……お世話には……なってないでしゅね! シアは一人で生きていきましゅから、安心してくだしゃいな!」
そしてアレクシアが指笛を吹くと、ドアをカリカリする音が聞こえた。
近くにいたゼストがドアを開けると、子犬従魔達がアレクシアの元に尻尾を振りながらやって来た。
「む。アレクシア、どこに行くんだ?」
「放浪しましゅ!」
アレクシアの決意表明にショックを受けたルシアードは、アレクシアの手を取り跪く。
「駄目だ。お前は俺の大事な娘だ、お前を蔑ろにしていた自分に後悔している。まさか自分が後悔をするなんて思っていなかったがな……アレクシア、俺はお前を幸せにする。だからどこにも行かないでくれ」
「何かプロポーズみたいでしゅね……」
懇願するルシアードにアレクシアは苦笑いを浮かべる。
「俺だって、お前を今度こそ幸せにする! だから俺の側にいてくれ!」
ゼストも跪いてアレクシアを必死に説得する。
そんな最強すぎるの男達のあり得ない光景を見たロインは、今後の二人の心理状態を心配して、アレクシアのスケジュールを少しだけ減らすことにしたのだった。
†
それから授業が始まる二週間後まで、思う存分に狩りをしたり色々な事件を解決したりと大忙しだったアレクシア。
そして授業当日になった。
今日はあのエルマ氏の授業だ。
憂鬱になりながらも授業を行う部屋に移動中のアレクシアに、ゼストと魔国の貴族である魔公爵ランゴンザレスが何故か一緒についてくる。ランゴザレスもまたアレクシアの前世からの友人で、アレクシアの希望によって皇宮で一時的に暮らしている。
なお当たり前のようにアレクシアについていこうとしたルシアードは仕事のため、笑顔のロインに強制的に連行された。
ランゴンザレスがいつもの口調でアレクシアに話しかける。
「あんたが勉強とはね~」
「シアもびっくりだっぺよ」
「……さっきから何なのその喋り方?」
「気にすんな」
「気になるわよ!」
ゼストが気にしないようにランゴンザレスに言い聞かせるが、ランゴンザレスは納得せずに言い返す。
アレクシアはしょうがないといった感じで説明を始めた。
「今日の先生が田舎出身で、興奮するとこんな話し方になるんでしゅよ」
「その先生って芸術家のエルマでしょう~?」
「ランしゃん、知ってるんでしゅか?」
「有名ですもの~! 私の屋敷にも彼の絵が飾ってあるわよ!」
エルマの絵の話で盛り上がりながら部屋に到着して中に入っていくと、エルマ以外にシェインとジェニファー、そしてドミニクが座っていた。
「あれ? どうしたんでしゅか?」
アレクシアが聞くと、シェインとジェニファーとドミニクは口々に答える。
「あの有名なエルマ氏に会えると聞いてね、参加させてもらおうと思って来たんだよ」
「私はアレクシアと勉強したくて来たの!」
「俺は……来た!」
アレクシアはゼストに椅子に座らせてもらい、四人が仲良く並んで座った。
「これはこれは皇太子殿下に皇女殿下! ようこそ、我が芸術の館へ!」
「「「館?」」」
首を傾げる三人にアレクシアが淡々と告げる。
「気にしない方が良いでしゅよ? 身が持ちましぇん!」
「今日はまず私の描いた作品を見て、感想を聞かせてください!」
エルマはそう言うと指を鳴らす。
するとこの前見た弟子の男女が現れた。アレクシアは嫌な予感がしてゼストを見ると、ゼストも苦笑いしている。
「まずはこの自信作! シェイン皇太子、感想を頂きたいですな!」
弟子達が出してきたのは、あの赤と黒が渦巻いている因縁の絵だった。それを初めて見たシェイン達は衝撃を受ける。
「え……あの、以前の作風と違うんですが……変えたんですか?」
シェインがエルマに尋ねた。
「私が描きたかったのはこれなのですよ! 新たなる道に足を踏み入れた私の作風を殿下達に是非見てもらいたくてですね……!」
「意味不明~」
そう言うアレクシアを天敵のように見つめるエルマ。
「アレクシア皇女は芸術を解っていない! 実に残念です!」
「何でしゅとー! 芸術は自由でしゅよ! シアが蛇だと思うのも自由でしょうがーー!」
「どこが蛇なんだ! おめえの目は節穴か?」
いきなり訛り始めたエルマを見て唖然とする姉兄達と、爆笑しているランゴンザレス。
「ちなみにこれシアらしいでしゅよ!」
「「「はぁ?」」」
揃って首を傾げた三人に、エルマは詰め寄る。
「驚くな! どう見てもアレクシア皇女だべさ!」
「驚くっぺ! いいから普通の風景画を教えてケロケロ!」
もはや訛りと呼んでよいか分からなくなった口調で、アレクシアが言い返す。
「おい、やめろ。お前も大人しく風景画を教えろ!」
そこに割って止めに入ったゼストが、アレクシアとエルマに言い聞かせる。
そこへ様子を見に、ルシアードとロイン、それにローランドが中に入ってきたが、二人は気付かない。
「じゃあ芸術を理解しないアレクシア皇女には風景画を教えっぺ」
「何でしゅかその言い方は! こっちは皇女だっぺよ! この馬鹿ちんが!」
「おい、おちびの話し方は一体何なんだ?」
ローランドはアレクシアの話し方が気になりルシアードに尋ねる。
「む。可愛いだろ」
だが、ルシアードは微笑ましく愛娘を見つめるだけだった。
アレクシアは頬を大きく膨らませて、椅子から下りると画材を持ち、よちよちと歩き出した。
「シアは一人寂しく庭で風景画を描いてくるっぺ」
「ああ、アレクシア! 私も行くわ! こんなヘンテコな絵描く気になれないわよ!」
「俺も行くぞ!」
ジェニファーとドミニクも自分の画材を持ち、アレクシアの後を追っていった。
「エルマ氏、我々は皇族ですよ? お忘れなく」
シェインは唖然とするエルマに向かい恐ろしい程の笑顔でそう言うと、画材を持って最後に出ていった。
ロインはエルマがルシアードに殺される前に、急いで引き摺って部屋から追い出して、長い地獄の説教を始めたのだった。
†
エルマがロインに引き摺られたまま戻ってこないので、四人姉弟は仲良く横に並んで座り、課題の風景画を描いていた。
ルシアード達が、中庭でちょこんと座り黙々と絵を描いていたアレクシアの絵を覗く。
そこには頭部が光った庭師のお爺さんの絵が描かれており、皆は大爆笑した。
「あんた……それは風景画じゃないわよ」
ランゴンザレスがそう言うので、シェイン、ジェニファー、ドミニクもアレクシアの絵を覗き込む。
「そうね……それは人物画じゃない? ぷっ」
「アレクシア、君は本当に面白いね……」
「ブハッ!」
三人とも笑いを抑えられないようだったが、アレクシアはそんな大騒ぎな皆を無視して黙々と描いている。
ちょっと先に庭師のお爺さんがいて仕事をしているが、ここにいる皇族達には気付いていない。
「静かにしてくだしゃいな! 爺に気付かれる!」
アレクシアはそう言いながら慎重にお爺さんの頭の光り具合を調整していた。
「後で爺にあげるんでしゅよ」
「む。何で庭師にあげるんだ、俺にくれ」
アレクシアが初めて描いた絵を貰えないことが面白くないルシアードは、その絵を欲しがる。
「あたしも欲しいわ~!」
手を拳げて猛アピールするランゴンザレス。
「俺も描いてほしいぞ!」
ゼストに至っては自分を描いてほしいと言い出した。
そんな大人達を呆れて見ていたアレクシアは、実は庭師のお爺さんはアレクシアを皇女と知らずに面倒を見てくれていたことを話した。
彼は母親に育児放棄されていた頃に庭で食べれる葉っぱを探していたアレクシアを見つけて、自分のお昼ご飯やお菓子を与えてくれていたのだ。
それを知って何も言えなくなる一同。
ルシアードは何を思ったのか庭師の爺さんに近寄っていく。
作業していた爺さんが大きな影に気付いて振り返ると、そこにこの国の最高権力者が立っていた。
「はあああ……皇帝陛下!」
急いで平伏そうとするお爺さんを止めて、いきなり頭を下げるルシアード。それを見て、驚いて開いた口が塞がらない一同とお爺さん。
「お前がいなかったらアレクシアは死んでいたかもしれない。父親として礼を言う。ありがとう」
ルシアードのこの言葉にはさすがのアレクシアも驚いている。
ルシアード皇帝陛下に頭を下げられた歴史上初めての平民になった庭師の爺さんは驚きすぎて腰を抜かしてしまった。
「父上、そんなに怖い顔で近付いたら誰でも腰を抜かしましゅよ!」
「む。だが、父親として礼をだな……」
「ん? シアじゃねえか!」
「オホホ、ご機嫌よう。庭師のお方」
庭師のお爺さんに気付かれ、いきなりお上品になるアレクシア。
お爺さんは途端に怒った表情になり、アレクシアを問いただす。
「お前、この前、庭から芋を盗んだろ!?」
「……知りましぇん」
「目が泳いでるぞ? 俺が大事に育ててた芋が三本消えてるんだ! 焼いて食ったな?」
「……知りましぇん」
皆が庭師の爺さんとアレクシアのやり取りを黙って聞いている。
「結局、アレクシアだな」
「そうね~!」
笑うシェインに、頷くジェニファー。
だが、ルシアードは面白くなさそうに二人のやり取りを見ている。
「……バターを載せるとさらに美味いんだぞ?」
「そうなんでしゅか! でもそのままでも美味しかった……はっ!」
「やっぱりお前か! あれは皇宮用の高級な芋なんだよ! 見つかったら……はっ!」
庭師の爺さんは目の前にその皇宮のトップがいることを思い出して、恐る恐る視線を向ける。
ルシアードは不機嫌になっており、アレクシアを見ながら近付いていく。
「皇帝陛下! 申し訳ございません! この子は悪くないんです! 罰するなら私を罰してくださいませ!」
だが、ルシアードはアレクシアを怒るどころか愛おしそうに抱きしめていた。
「アレクシアは芋が好きなのか?」
「好きでしゅ! 今度はバター焼きに挑戦しましゅよ! 父上にも食べさせてあげましゅね!」
「くっ……可愛い! ありがとうな。俺もお前に何か作って……」
「お腹壊しそうなのでいいでしゅ」
ルシアードは愛娘に冷たくあしらわれても嬉しそうだった。
「……シア、お前何者なんだ?」
驚く爺さんにアレクシアが話そうと口を開いた時、ランゴンザレスとゼストが何かに気付いて庭の奥を見た。
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