転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi

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9章 アレクシアとアウラード大帝国の闇

世界最強の男達、ご機嫌を伺う。

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「私は本当の事を言ったまでです」

本当に悪いと思っていないのか、平然とそう話すアランカルトに唖然とする男達一同。

「む。こいつはやっぱり牢に閉じ込めていた方がいいと思うぞ!」

ルシアードは怒りを露わに、珍しく興奮気味にアランカルトを責め立てる。

「そうだぞ!爺様!!こいつを里に送り返すぞ!!これからが不安だ!」

この先、同じ様な事が起きそうな予感しかしないので、ゼストも珍しくルシアードの意見に賛成だった。これにはデズモンドも、ランゴンザレスも同意見なのか横で頷いている。

「それじゃあ、此奴の為にならんじゃろう」

最強の問題児アリアナを弟子にしていた苦労人であるポーポトスは、さすがにこれぐらいでは見捨てない。


すると、目の前のドアが静かに開いた。急に緊張感が漂う中、よちよちと出てきたのは白玉だった。

『主しゃまからのでんごんーー!!』

伝言と聞いて固唾を飲む男達。

『⋯⋯えーと、ポーポトスしゃまは入って来ていいでしゅーー!!』

白玉の発言に、先程の慈悲深い発言を吹き飛ばす様な見事なガッツポーズをするポポ爺と項垂れるその他大勢。アランカルトは、そんな男達を見て呆れる。一人一人がこの世界を滅ぼせる程の力を持っているのに、たった一人の人族に一喜一憂する姿を見れば呆れるしかない。

「では、わしは先に行くぞ?」

白玉の案内でアレクシアの部屋へ入って行くポーポトスのドヤ顔を、決して忘れないと心に刻んだ魔国国王デズモンドと孫のランゴンザレスであった。そしてまた静まり返る男達の中で、一歩踏み出したのはミルキルズであった。

「アレクシアよ⋯ミル爺じゃ。わしが悪かった。こんなに可愛いひ孫を笑ってしまって⋯わしは反省しておるから開けておくれ?」

暫くの沈黙の後に、また目の前のドアが開いた。そして次によちよちとやって来たのは黒蜜であった。

『主しゃまからのでんごんでしゅよ!ミル爺は入って来ていいでしゅよー!⋯あっ⋯ジジイが二人、略してジーツー!!』

「黒蜜!それは言わなくていいのでしゅよ!!」

黒蜜の最後の発言を訂正するアレクシアの声が室内から聞こえてくる。それを聞いて何故かほっこりする男達。

「やっほーーい!わしも行くよーー!!」

黒蜜の案内でアレクシアの部屋へ入って行くミルキルズの嬉しそうな顔を、ジト目で見ている孫のゼスト。

「もう!ランしゃんよ!悪かったわ、反省してるから入れてちょうだい!」

ランゴンザレスが、主君であるデズモンドを押し退けてドア越しに必死でアレクシアを説得する。

「あんたは可愛いわよ!世界で私に次いで可愛いから、ね?」

また暫くの沈黙が続いて、ドアが開いた。そしてよちよちとみたらしがやって来た。

『ランゴンジャレチュ!主しゃまからのでんごんでしゅーー!!』

「あんた!言いづらいならランでいいわよ!!もう!!」

『ランしゃん、世界で一番はシアでしゅ!!しょうがないから許しましゅ!!だそうでしゅ』

それを聞いてホッと胸を撫で下ろすランゴンザレス。そして後ろを振り返り、憎たらしい笑顔で残った最強トリオに手を振る。

『ランゴンジャレチュ!行きまちゅよ!』

「あんた!もうわざとでしょ!?」

ランゴンザレスは、よちよちと歩き出したみたらしに文句を言いながらも嬉しそうに部屋に入って行った。

残ったのは最強トリオとアランカルトだけだった。意外にも先に動いたのはアランカルトであった。

「⋯⋯ゴブリンという言い方が悪かったらしいですね。小さい生き物はゴブリンしか思い浮かばなかったのでそう表現しただけですので、気を悪くしたならそれはしょうがないですね」

「「「⋯⋯は?」」」

謝る気がさらさら無いアランカルトの言い方に流石の最強トリオも開いた口が塞がらない。アレクシアの機嫌がもっと悪くなると危惧した最強トリオは、もうここでアランカルトを黙らせようとしたその時だった。

何故かアレクシアの部屋のドアが開いたのだ。そしてよちよちと出て来たのはきなこであった。

『でんごんをいうぞーー!!アランカルト、しょうじきでよろちい!!むかちゅきましゅが、ゆるちまちゅ!!』

きなこの後に続いてアランカルトは室内へ入って行った。

「おい!何でこいつを許すんだ!?」

納得がいかないゼストがドアを叩いて猛抗議する。

「む。アレクシア、お前の父親だ。ゴブリンよりは可愛いぞ。だから開けろ」

自分では凄く褒めたと思っているルシアード。

「アレクシア、お前は今はちんちくりんだが、ゴブリンは言い過ぎだな。それなりに可愛いぞ、俺の婚約者」

頬を赤く染めながら、照れくさそうに愛を囁いたつもりのデズモンド。

すると部屋の中から、ジーツー(?)とランゴンザレスの笑い声が聞こえてくる。そしてドアが開いて、よちよちと出て来たのはあんこだった。

『⋯⋯』

「おい、伝言はないのか!?」

何も言わないあんこに痺れを切らしたゼストが詰め寄る。

『じじいも⋯ちちうえも⋯でじゅもんどもゴブリンのエサにしてやりゅ!!この馬鹿ちんトリオ!!』

「「「⋯⋯⋯」」」

それだけ言うと、あんこはよちよちと部屋の中へ帰って行った。そして、またドアが少しだけ開いて顔を覗かせたのはウロボロスであった。

『お前ら⋯本当に馬鹿なのか?』

呆れながらそれだけ言うと静かにドアが閉まったのだった。さて、取り残された最強トリオは部屋に入れるのか?







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