76 / 153
8章 アレクシアと竜の谷の人々
反アリアナ派との一触即発①
しおりを挟む
「これ!落ち着くんじゃ!今は此奴の処遇を決めるんじゃろう?」
冷静になったポーポトスが牢の中に視線を向ける。そこには無視され続けて怒りに満ちたアランカルトが憎しみを込めてこちらを睨みつけていた。
「何なんですか?騒ぐなら他所でやってもらって良いですか?」
「む。うちのアレクシアがお前の様子を見たいとわざわざこんな所に足を運んだのに結構な言い草だな?」
アレクシアを守るように自分の背後に隠して怒りを露わにする父親であるルシアード。
「そうだな。こいつの処遇もそうだが、まずはゼスト様がこいつの両親を含めた反アリアナ派を集会所に集めているからそちらに向かおう」
アランカルトを見ようともせずに皆を集会所へ促そうとするデズモンドに賛同して洞窟から出て行こうとする一同。アレクシアは下を向いたままのアランカルトから最後まで目が離せなかった。
洞窟から暫く歩くと、里の中心にある大きな集会所が見えてきた。集会所の入口には先程まで一緒だった筈のゼストがリリノイスと共に立っていた。そんなリリノイスの一歩後ろには可憐な女性が立っていた。
「あっ!メルシーしゃんでしゅ!!昨日はあまり話せましぇんでしたから会えて嬉しいでしゅ!」
「ふふっ!相変わらず可愛いわね~!改めてトトを助けてくれてありがとうございます。そしてトトに友達まで与えてくれたわ!」
そう言って涙ぐむ可憐な女性。薄緑色の瞳に琥珀色の髪の竜族には珍しい小柄で可愛らしいメルシーと呼ばれたこの女性は、リリノイスの妻でありトトの母親だ。
「トトは良い子でしゅ!メルシーしゃんに似たんでしゅね!」
メルシーと仲睦まじく話すアレクシアに厳しい視線を向けるリリノイス。
「遅かったな。もう“皆”が集まってるぞ」
「ジジイ、いないと思ったらいちゅのまに⋯」
含んだようなゼストの言葉に頭を傾げるアレクシア。
不思議に思いながらも開けられた入口に足を踏み入れると、何故か室内が異常に騒がしい。
「おい!何でお前はそうなんだ!?あいつがお前らに何かしたのか!?」
「お前こそ何であんな人族の味方をするんだ!?畑だって荒らされて迷惑していただろ!?」
「お主もいい加減にその思想を止めんか?」
「うるさいわい!最強の戦士があんな人族の小娘に良い様に利用されおって⋯恥ずかしくないのか!?」
集会所の中には想像以上の竜族が集まっていた。ロウゴイヤやロウリヤそしてウリドなどの戦士や側近を始め、平民も参加しているが皆見知った顔だ。
「うわぁ~!爺や婆がいっぱいいましゅね!!」
よちよちと室内に入ってきたアレクシアを見てあからさまに顔を歪める者達が隅の方に肩身が狭そうに座っていた。そう、大半がアレクシアに会いたくて集まった者達で室内が満席で立っている者もいるくらいだ。そして窓の外にはプニやピピデデ兄弟、ロウやトトなどの子供達が見守っている。それに気付いたアレクシアが手を振るとキャッキャと外で大騒ぎしているが、事情を知っているプニやピピデデ兄弟は反対派を睨みつけて威嚇している。
「よぉ!アレクシア!朝ご飯はちゃんと食べたか?」
「よぉ!ゴイ爺!ご飯三杯おかわりちまちた!!」
「ホホっ!相変わらずの食いっぷりよのう~!」
お茶を出されて和気あいあいと話しだすロウゴイヤ率いる引退した老人戦士達とアレクシア。
「肩たたきならシアの右に出るものはいないでしゅよ!!」
「おお、見返りなしで自ら肩たたきしてくれるとは⋯成長したのぅ」
そう言って椅子の上に立ち上がるとロウゴイヤの肩を叩き始めるアレクシアだったが、感動する老人達の言葉にあからさまに目を泳がせる。そんなアレクシアをジト目で見ているゼストやウリド、そしてリリノイス。
「む。俺も最近肩が異常に凝っているんだが⋯」
肩に手を置きアレクシアをチラチラと見ながら様子を伺うルシアード。
「⋯色んな人に恨まれているから何かが憑いているんでしゅよ!悪霊退しゃん!!」
そう言って愛娘に軽くあしらわれる父親ルシアード。
「ハイハイ!!わしも肩が凝ってる!!」
苦しそうに肩をさするミルキルズ。だが⋯
「そんなに若返って何言ってるんでしゅか!!金髪美ちょうにぇん!!」
怒られてしまい落ち込んでいるミルキルズを慰めてあげるアレクシアの五匹の従魔達。彼らはただ暇で遊んで欲しいだけだったがミルキルズは喜んでいる。
「おい!何だこの生温い空気は!?ここに集まったのはこの人族の悪魔をどうするか話し合う為だろう!」
そんな光景を唖然と見ていた反対派が怒りに震えて猛抗議する。
「ああ、すまない。皆静かにして下さい。お前も大人しく座れ」
リリノイスが冷静に進行を始める。注意されたアレクシアは静かに椅子に座る。
「では、貴方達に聞きたいがこのアレクシアをどうしたいんだ?」
「言わなくても分かるだろう!竜の里への立ち入り禁止、いや⋯まぁ一番良いのはこの世からまた消えてくれれば⋯うぐっ!!」
一人の竜族がアレクシアを見ながらこの場で一番言ってはいけない禁句を口にしてしまう。皆が殺気を放ち一触即発の事態になった瞬間にいち早く動いたのは“原初の竜”である黒竜ウロボロスであった。
冷静になったポーポトスが牢の中に視線を向ける。そこには無視され続けて怒りに満ちたアランカルトが憎しみを込めてこちらを睨みつけていた。
「何なんですか?騒ぐなら他所でやってもらって良いですか?」
「む。うちのアレクシアがお前の様子を見たいとわざわざこんな所に足を運んだのに結構な言い草だな?」
アレクシアを守るように自分の背後に隠して怒りを露わにする父親であるルシアード。
「そうだな。こいつの処遇もそうだが、まずはゼスト様がこいつの両親を含めた反アリアナ派を集会所に集めているからそちらに向かおう」
アランカルトを見ようともせずに皆を集会所へ促そうとするデズモンドに賛同して洞窟から出て行こうとする一同。アレクシアは下を向いたままのアランカルトから最後まで目が離せなかった。
洞窟から暫く歩くと、里の中心にある大きな集会所が見えてきた。集会所の入口には先程まで一緒だった筈のゼストがリリノイスと共に立っていた。そんなリリノイスの一歩後ろには可憐な女性が立っていた。
「あっ!メルシーしゃんでしゅ!!昨日はあまり話せましぇんでしたから会えて嬉しいでしゅ!」
「ふふっ!相変わらず可愛いわね~!改めてトトを助けてくれてありがとうございます。そしてトトに友達まで与えてくれたわ!」
そう言って涙ぐむ可憐な女性。薄緑色の瞳に琥珀色の髪の竜族には珍しい小柄で可愛らしいメルシーと呼ばれたこの女性は、リリノイスの妻でありトトの母親だ。
「トトは良い子でしゅ!メルシーしゃんに似たんでしゅね!」
メルシーと仲睦まじく話すアレクシアに厳しい視線を向けるリリノイス。
「遅かったな。もう“皆”が集まってるぞ」
「ジジイ、いないと思ったらいちゅのまに⋯」
含んだようなゼストの言葉に頭を傾げるアレクシア。
不思議に思いながらも開けられた入口に足を踏み入れると、何故か室内が異常に騒がしい。
「おい!何でお前はそうなんだ!?あいつがお前らに何かしたのか!?」
「お前こそ何であんな人族の味方をするんだ!?畑だって荒らされて迷惑していただろ!?」
「お主もいい加減にその思想を止めんか?」
「うるさいわい!最強の戦士があんな人族の小娘に良い様に利用されおって⋯恥ずかしくないのか!?」
集会所の中には想像以上の竜族が集まっていた。ロウゴイヤやロウリヤそしてウリドなどの戦士や側近を始め、平民も参加しているが皆見知った顔だ。
「うわぁ~!爺や婆がいっぱいいましゅね!!」
よちよちと室内に入ってきたアレクシアを見てあからさまに顔を歪める者達が隅の方に肩身が狭そうに座っていた。そう、大半がアレクシアに会いたくて集まった者達で室内が満席で立っている者もいるくらいだ。そして窓の外にはプニやピピデデ兄弟、ロウやトトなどの子供達が見守っている。それに気付いたアレクシアが手を振るとキャッキャと外で大騒ぎしているが、事情を知っているプニやピピデデ兄弟は反対派を睨みつけて威嚇している。
「よぉ!アレクシア!朝ご飯はちゃんと食べたか?」
「よぉ!ゴイ爺!ご飯三杯おかわりちまちた!!」
「ホホっ!相変わらずの食いっぷりよのう~!」
お茶を出されて和気あいあいと話しだすロウゴイヤ率いる引退した老人戦士達とアレクシア。
「肩たたきならシアの右に出るものはいないでしゅよ!!」
「おお、見返りなしで自ら肩たたきしてくれるとは⋯成長したのぅ」
そう言って椅子の上に立ち上がるとロウゴイヤの肩を叩き始めるアレクシアだったが、感動する老人達の言葉にあからさまに目を泳がせる。そんなアレクシアをジト目で見ているゼストやウリド、そしてリリノイス。
「む。俺も最近肩が異常に凝っているんだが⋯」
肩に手を置きアレクシアをチラチラと見ながら様子を伺うルシアード。
「⋯色んな人に恨まれているから何かが憑いているんでしゅよ!悪霊退しゃん!!」
そう言って愛娘に軽くあしらわれる父親ルシアード。
「ハイハイ!!わしも肩が凝ってる!!」
苦しそうに肩をさするミルキルズ。だが⋯
「そんなに若返って何言ってるんでしゅか!!金髪美ちょうにぇん!!」
怒られてしまい落ち込んでいるミルキルズを慰めてあげるアレクシアの五匹の従魔達。彼らはただ暇で遊んで欲しいだけだったがミルキルズは喜んでいる。
「おい!何だこの生温い空気は!?ここに集まったのはこの人族の悪魔をどうするか話し合う為だろう!」
そんな光景を唖然と見ていた反対派が怒りに震えて猛抗議する。
「ああ、すまない。皆静かにして下さい。お前も大人しく座れ」
リリノイスが冷静に進行を始める。注意されたアレクシアは静かに椅子に座る。
「では、貴方達に聞きたいがこのアレクシアをどうしたいんだ?」
「言わなくても分かるだろう!竜の里への立ち入り禁止、いや⋯まぁ一番良いのはこの世からまた消えてくれれば⋯うぐっ!!」
一人の竜族がアレクシアを見ながらこの場で一番言ってはいけない禁句を口にしてしまう。皆が殺気を放ち一触即発の事態になった瞬間にいち早く動いたのは“原初の竜”である黒竜ウロボロスであった。
165
お気に入りに追加
7,494
あなたにおすすめの小説
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
幼子は最強のテイマーだと気付いていません!
akechi
ファンタジー
彼女はユリア、三歳。
森の奥深くに佇む一軒の家で三人家族が住んでいました。ユリアの楽しみは森の動物達と遊ぶこと。
だが其がそもそも規格外だった。
この森は冒険者も決して入らない古(いにしえ)の森と呼ばれている。そしてユリアが可愛い動物と呼ぶのはSS級のとんでもない魔物達だった。
「みんなーあしょぼー!」
これは幼女が繰り広げるドタバタで規格外な日常生活である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。