76 / 142
8章 アレクシアと竜の谷の人々
反アリアナ派との一触即発①
しおりを挟む
「これ!落ち着くんじゃ!今は此奴の処遇を決めるんじゃろう?」
冷静になったポーポトスが牢の中に視線を向ける。そこには無視され続けて怒りに満ちたアランカルトが憎しみを込めてこちらを睨みつけていた。
「何なんですか?騒ぐなら他所でやってもらって良いですか?」
「む。うちのアレクシアがお前の様子を見たいとわざわざこんな所に足を運んだのに結構な言い草だな?」
アレクシアを守るように自分の背後に隠して怒りを露わにする父親であるルシアード。
「そうだな。こいつの処遇もそうだが、まずはゼスト様がこいつの両親を含めた反アリアナ派を集会所に集めているからそちらに向かおう」
アランカルトを見ようともせずに皆を集会所へ促そうとするデズモンドに賛同して洞窟から出て行こうとする一同。アレクシアは下を向いたままのアランカルトから最後まで目が離せなかった。
洞窟から暫く歩くと、里の中心にある大きな集会所が見えてきた。集会所の入口には先程まで一緒だった筈のゼストがリリノイスと共に立っていた。そんなリリノイスの一歩後ろには可憐な女性が立っていた。
「あっ!メルシーしゃんでしゅ!!昨日はあまり話せましぇんでしたから会えて嬉しいでしゅ!」
「ふふっ!相変わらず可愛いわね~!改めてトトを助けてくれてありがとうございます。そしてトトに友達まで与えてくれたわ!」
そう言って涙ぐむ可憐な女性。薄緑色の瞳に琥珀色の髪の竜族には珍しい小柄で可愛らしいメルシーと呼ばれたこの女性は、リリノイスの妻でありトトの母親だ。
「トトは良い子でしゅ!メルシーしゃんに似たんでしゅね!」
メルシーと仲睦まじく話すアレクシアに厳しい視線を向けるリリノイス。
「遅かったな。もう“皆”が集まってるぞ」
「ジジイ、いないと思ったらいちゅのまに⋯」
含んだようなゼストの言葉に頭を傾げるアレクシア。
不思議に思いながらも開けられた入口に足を踏み入れると、何故か室内が異常に騒がしい。
「おい!何でお前はそうなんだ!?あいつがお前らに何かしたのか!?」
「お前こそ何であんな人族の味方をするんだ!?畑だって荒らされて迷惑していただろ!?」
「お主もいい加減にその思想を止めんか?」
「うるさいわい!最強の戦士があんな人族の小娘に良い様に利用されおって⋯恥ずかしくないのか!?」
集会所の中には想像以上の竜族が集まっていた。ロウゴイヤやロウリヤそしてウリドなどの戦士や側近を始め、平民も参加しているが皆見知った顔だ。
「うわぁ~!爺や婆がいっぱいいましゅね!!」
よちよちと室内に入ってきたアレクシアを見てあからさまに顔を歪める者達が隅の方に肩身が狭そうに座っていた。そう、大半がアレクシアに会いたくて集まった者達で室内が満席で立っている者もいるくらいだ。そして窓の外にはプニやピピデデ兄弟、ロウやトトなどの子供達が見守っている。それに気付いたアレクシアが手を振るとキャッキャと外で大騒ぎしているが、事情を知っているプニやピピデデ兄弟は反対派を睨みつけて威嚇している。
「よぉ!アレクシア!朝ご飯はちゃんと食べたか?」
「よぉ!ゴイ爺!ご飯三杯おかわりちまちた!!」
「ホホっ!相変わらずの食いっぷりよのう~!」
お茶を出されて和気あいあいと話しだすロウゴイヤ率いる引退した老人戦士達とアレクシア。
「肩たたきならシアの右に出るものはいないでしゅよ!!」
「おお、見返りなしで自ら肩たたきしてくれるとは⋯成長したのぅ」
そう言って椅子の上に立ち上がるとロウゴイヤの肩を叩き始めるアレクシアだったが、感動する老人達の言葉にあからさまに目を泳がせる。そんなアレクシアをジト目で見ているゼストやウリド、そしてリリノイス。
「む。俺も最近肩が異常に凝っているんだが⋯」
肩に手を置きアレクシアをチラチラと見ながら様子を伺うルシアード。
「⋯色んな人に恨まれているから何かが憑いているんでしゅよ!悪霊退しゃん!!」
そう言って愛娘に軽くあしらわれる父親ルシアード。
「ハイハイ!!わしも肩が凝ってる!!」
苦しそうに肩をさするミルキルズ。だが⋯
「そんなに若返って何言ってるんでしゅか!!金髪美ちょうにぇん!!」
怒られてしまい落ち込んでいるミルキルズを慰めてあげるアレクシアの五匹の従魔達。彼らはただ暇で遊んで欲しいだけだったがミルキルズは喜んでいる。
「おい!何だこの生温い空気は!?ここに集まったのはこの人族の悪魔をどうするか話し合う為だろう!」
そんな光景を唖然と見ていた反対派が怒りに震えて猛抗議する。
「ああ、すまない。皆静かにして下さい。お前も大人しく座れ」
リリノイスが冷静に進行を始める。注意されたアレクシアは静かに椅子に座る。
「では、貴方達に聞きたいがこのアレクシアをどうしたいんだ?」
「言わなくても分かるだろう!竜の里への立ち入り禁止、いや⋯まぁ一番良いのはこの世からまた消えてくれれば⋯うぐっ!!」
一人の竜族がアレクシアを見ながらこの場で一番言ってはいけない禁句を口にしてしまう。皆が殺気を放ち一触即発の事態になった瞬間にいち早く動いたのは“原初の竜”である黒竜ウロボロスであった。
冷静になったポーポトスが牢の中に視線を向ける。そこには無視され続けて怒りに満ちたアランカルトが憎しみを込めてこちらを睨みつけていた。
「何なんですか?騒ぐなら他所でやってもらって良いですか?」
「む。うちのアレクシアがお前の様子を見たいとわざわざこんな所に足を運んだのに結構な言い草だな?」
アレクシアを守るように自分の背後に隠して怒りを露わにする父親であるルシアード。
「そうだな。こいつの処遇もそうだが、まずはゼスト様がこいつの両親を含めた反アリアナ派を集会所に集めているからそちらに向かおう」
アランカルトを見ようともせずに皆を集会所へ促そうとするデズモンドに賛同して洞窟から出て行こうとする一同。アレクシアは下を向いたままのアランカルトから最後まで目が離せなかった。
洞窟から暫く歩くと、里の中心にある大きな集会所が見えてきた。集会所の入口には先程まで一緒だった筈のゼストがリリノイスと共に立っていた。そんなリリノイスの一歩後ろには可憐な女性が立っていた。
「あっ!メルシーしゃんでしゅ!!昨日はあまり話せましぇんでしたから会えて嬉しいでしゅ!」
「ふふっ!相変わらず可愛いわね~!改めてトトを助けてくれてありがとうございます。そしてトトに友達まで与えてくれたわ!」
そう言って涙ぐむ可憐な女性。薄緑色の瞳に琥珀色の髪の竜族には珍しい小柄で可愛らしいメルシーと呼ばれたこの女性は、リリノイスの妻でありトトの母親だ。
「トトは良い子でしゅ!メルシーしゃんに似たんでしゅね!」
メルシーと仲睦まじく話すアレクシアに厳しい視線を向けるリリノイス。
「遅かったな。もう“皆”が集まってるぞ」
「ジジイ、いないと思ったらいちゅのまに⋯」
含んだようなゼストの言葉に頭を傾げるアレクシア。
不思議に思いながらも開けられた入口に足を踏み入れると、何故か室内が異常に騒がしい。
「おい!何でお前はそうなんだ!?あいつがお前らに何かしたのか!?」
「お前こそ何であんな人族の味方をするんだ!?畑だって荒らされて迷惑していただろ!?」
「お主もいい加減にその思想を止めんか?」
「うるさいわい!最強の戦士があんな人族の小娘に良い様に利用されおって⋯恥ずかしくないのか!?」
集会所の中には想像以上の竜族が集まっていた。ロウゴイヤやロウリヤそしてウリドなどの戦士や側近を始め、平民も参加しているが皆見知った顔だ。
「うわぁ~!爺や婆がいっぱいいましゅね!!」
よちよちと室内に入ってきたアレクシアを見てあからさまに顔を歪める者達が隅の方に肩身が狭そうに座っていた。そう、大半がアレクシアに会いたくて集まった者達で室内が満席で立っている者もいるくらいだ。そして窓の外にはプニやピピデデ兄弟、ロウやトトなどの子供達が見守っている。それに気付いたアレクシアが手を振るとキャッキャと外で大騒ぎしているが、事情を知っているプニやピピデデ兄弟は反対派を睨みつけて威嚇している。
「よぉ!アレクシア!朝ご飯はちゃんと食べたか?」
「よぉ!ゴイ爺!ご飯三杯おかわりちまちた!!」
「ホホっ!相変わらずの食いっぷりよのう~!」
お茶を出されて和気あいあいと話しだすロウゴイヤ率いる引退した老人戦士達とアレクシア。
「肩たたきならシアの右に出るものはいないでしゅよ!!」
「おお、見返りなしで自ら肩たたきしてくれるとは⋯成長したのぅ」
そう言って椅子の上に立ち上がるとロウゴイヤの肩を叩き始めるアレクシアだったが、感動する老人達の言葉にあからさまに目を泳がせる。そんなアレクシアをジト目で見ているゼストやウリド、そしてリリノイス。
「む。俺も最近肩が異常に凝っているんだが⋯」
肩に手を置きアレクシアをチラチラと見ながら様子を伺うルシアード。
「⋯色んな人に恨まれているから何かが憑いているんでしゅよ!悪霊退しゃん!!」
そう言って愛娘に軽くあしらわれる父親ルシアード。
「ハイハイ!!わしも肩が凝ってる!!」
苦しそうに肩をさするミルキルズ。だが⋯
「そんなに若返って何言ってるんでしゅか!!金髪美ちょうにぇん!!」
怒られてしまい落ち込んでいるミルキルズを慰めてあげるアレクシアの五匹の従魔達。彼らはただ暇で遊んで欲しいだけだったがミルキルズは喜んでいる。
「おい!何だこの生温い空気は!?ここに集まったのはこの人族の悪魔をどうするか話し合う為だろう!」
そんな光景を唖然と見ていた反対派が怒りに震えて猛抗議する。
「ああ、すまない。皆静かにして下さい。お前も大人しく座れ」
リリノイスが冷静に進行を始める。注意されたアレクシアは静かに椅子に座る。
「では、貴方達に聞きたいがこのアレクシアをどうしたいんだ?」
「言わなくても分かるだろう!竜の里への立ち入り禁止、いや⋯まぁ一番良いのはこの世からまた消えてくれれば⋯うぐっ!!」
一人の竜族がアレクシアを見ながらこの場で一番言ってはいけない禁句を口にしてしまう。皆が殺気を放ち一触即発の事態になった瞬間にいち早く動いたのは“原初の竜”である黒竜ウロボロスであった。
137
お気に入りに追加
6,786
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。