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8章 アレクシアと竜の谷の人々
楽しい一日でした!
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ロウゴイヤの豪快な笑い声に、皆の視線がアレクシアの逆立った髪に集中する。
「む。アレクシア⋯プーティーみたいで可愛いぞ」
ルシアードが愛娘の逆立った髪を優しい手つきで元に戻そうとしたが鋼鉄の如くビクともしない。
「⋯父上、プーティーって確か人族が呪いの儀式に使う不気味な人形でしゅよ⋯」
ちょっと傷つくアレクシア。
「ブッ!確かにプーティーみたいだわ!!ほら来なさい、直してあげるわ!」
ランゴンザレスは大笑いしながらもピンクのド派手な櫛を取り出してアレクシアの逆立った髪を梳かしてあげようとしたが、逆立った髪は意思を持っているかのようにビクともしない。そこにオウメが加わり、二人がかりで丁寧にほぐしていく。
「いたいでしゅ!!へりゅぷみーーー!!」
「我慢して下さいな!!全く女の子なんだからもう少しお淑やかに⋯無理ですね」
オウメが痛くて涙目になっているアレクシアを見て溜息を吐く。そんなアレクシアをハラハラしながら見守るしかない最強トリオ。
「む。俺も手伝おう!」ルシアードが腕捲りを始める。
「俺も手伝うぞ」
デズモンドも負けじと腕捲りをしてアレクシアに近づいて行く。
「お⋯「止めんしゃいーー!!」
ゼストも前に出ようとしたがアレクシアによって発言すら許されなかった。
「馬鹿ちんトリオがシアの髪をハゲにしようとちてましゅ!!」
近付いてくる最強トリオをまさに逆立った猫のように威嚇する。
だが、なかなか元の綺麗な髪に戻らず一旦休憩が取られた。
「何なの、この髪!?私の腕を持ってしても全然戻らないわ!!」
汗だくで倒れ込むランゴンザレス。オウメも額の汗を拭きつつ水分補給している。髪を梳かす作業が何故か軽い運動になっていた。
「むぅ⋯折角新しい身体強化魔法を考えたのに思わぬ副作用でしゅ」
「もうやめなさいよ!」
ランゴンザレスに言われて、シュンとなりながらも素直に頷くアレクシア。
ふと、宴会場の少し先のベンチにポツンと一人で座るミルキルズに気付いてよちよちと近づいて行くアレクシア。
「ミル爺、いないと思ったら何ちてるんでしゅか?」
「⋯おお!ロウゴイヤに勝ったな!さすが我がひ孫じゃ!!⋯ブッ⋯まだその髪は直らんのか!?」
「うぅ⋯どうちたら戻るんでしゅか⋯いっぱい毛が抜けまちた⋯。もう!失敗魔法でしゅよ!!」
プンスカ怒るアレクシアを愛おしそうに見つめるミルキルズ。
「⋯何でしゅか?ミル爺もシアをプーティーだと思ってるんでしゅか!?」
「いや、わしは今最高に幸せだと思ってるんじゃよ」
昔アリアナを失った時は思い出したくないくらいの絶望と喪失感だった。だが、ミルキルズ以上に絶望に打ちひしがれていた孫ゼストの前では気丈に振る舞うしかなかった。でもふと一人になるとアリアナのあの眩しいくらいの笑顔や一緒に行った数々の悪戯を思い出しては涙を流す日々を送っていた。朝起きたら、忙しいゼストの代わりにまずあの子を起こしに行くが、気付くと二人で寝てしまいオウメに怒られる朝。それから悪童アリアナと共に数々の魔法の実験や悪戯を行ったあの楽しい日々。それらを思い出さない日は無かった。
「まさかわしが若返るとは思っていなかったが、生きていて良かった⋯また愛しいひ孫と過ごせるんじゃ!!死んでたら後悔しっぱなしじゃった!」
「ミル爺⋯シアもまたミル爺やオウメに会えて嬉しいでしゅ!」
そう言って抱き合うミルキルズとアレクシア。だが、その光景を面白く思わない者達がぞろぞろとやって来た。
「おお、ここにいたかプーティー⋯ぷっ!」
「ジジイ⋯面白がってましゅね」
笑うゼストを睨み付けどんな仕返しをしようか考えるアレクシア。
「アレクシア、竜族にも効果がある即死魔法を考えたんだが試して良いか?」
「あい!このジジイでやって下しゃいな!」
「おい!」
本気で試そうとするデズモンドとアレクシアに焦るゼスト。
「む。アレクシアはプーティーなんかじゃないぞ。」
「⋯⋯。おい、父上が最初にプーティーって言ったんでしゅからね?」
そんなルシアードに呆れて、ジト目で見るアレクシアであった。
そんな楽しい光景を笑顔で見つめるミルキルズの元にオウメがやって来た。
「私も自分が若返ったのには驚きましたが、こんなに嬉しい日が来るなんて⋯生きてて良かったです」
涙ぐみながらアレクシアとゼスト、それからアリアナの死以来ずっと疎遠になってしまったランゴンザレスやデズモンドがあの時みたいに楽しそうに今ここにいるのを心から喜ぶオウメ。
「そうじゃな⋯こんな嬉しい日はない!」
ミルキルズとオウメはこの奇跡の日を一生忘れないだろう。
「⋯どうしたらいいの⋯この髪全然戻らないんですけど!?このままだとプーティー皇女になっちゃうわ!!」
「しょんなーー!嫌でしゅ!!」
ランゴンザレスの恐ろしい一言に絶望するアレクシア。
「む。アレクシアはこのままでも十分に可愛⋯「馬鹿ちんでしゅか!!そんなわけあるかーー!!」
アレクシアは理不尽な怒りをルシアードにぶつける。
『プーチーアレクチア~!!』
『呪いのプーチーリーダー!!』
「うぅ⋯プーティーって言わないで下しゃいな⋯」
嬉しそうに集まってくる天真爛漫な舎弟達に心を抉られるアレクシアであった。
「む。アレクシア⋯プーティーみたいで可愛いぞ」
ルシアードが愛娘の逆立った髪を優しい手つきで元に戻そうとしたが鋼鉄の如くビクともしない。
「⋯父上、プーティーって確か人族が呪いの儀式に使う不気味な人形でしゅよ⋯」
ちょっと傷つくアレクシア。
「ブッ!確かにプーティーみたいだわ!!ほら来なさい、直してあげるわ!」
ランゴンザレスは大笑いしながらもピンクのド派手な櫛を取り出してアレクシアの逆立った髪を梳かしてあげようとしたが、逆立った髪は意思を持っているかのようにビクともしない。そこにオウメが加わり、二人がかりで丁寧にほぐしていく。
「いたいでしゅ!!へりゅぷみーーー!!」
「我慢して下さいな!!全く女の子なんだからもう少しお淑やかに⋯無理ですね」
オウメが痛くて涙目になっているアレクシアを見て溜息を吐く。そんなアレクシアをハラハラしながら見守るしかない最強トリオ。
「む。俺も手伝おう!」ルシアードが腕捲りを始める。
「俺も手伝うぞ」
デズモンドも負けじと腕捲りをしてアレクシアに近づいて行く。
「お⋯「止めんしゃいーー!!」
ゼストも前に出ようとしたがアレクシアによって発言すら許されなかった。
「馬鹿ちんトリオがシアの髪をハゲにしようとちてましゅ!!」
近付いてくる最強トリオをまさに逆立った猫のように威嚇する。
だが、なかなか元の綺麗な髪に戻らず一旦休憩が取られた。
「何なの、この髪!?私の腕を持ってしても全然戻らないわ!!」
汗だくで倒れ込むランゴンザレス。オウメも額の汗を拭きつつ水分補給している。髪を梳かす作業が何故か軽い運動になっていた。
「むぅ⋯折角新しい身体強化魔法を考えたのに思わぬ副作用でしゅ」
「もうやめなさいよ!」
ランゴンザレスに言われて、シュンとなりながらも素直に頷くアレクシア。
ふと、宴会場の少し先のベンチにポツンと一人で座るミルキルズに気付いてよちよちと近づいて行くアレクシア。
「ミル爺、いないと思ったら何ちてるんでしゅか?」
「⋯おお!ロウゴイヤに勝ったな!さすが我がひ孫じゃ!!⋯ブッ⋯まだその髪は直らんのか!?」
「うぅ⋯どうちたら戻るんでしゅか⋯いっぱい毛が抜けまちた⋯。もう!失敗魔法でしゅよ!!」
プンスカ怒るアレクシアを愛おしそうに見つめるミルキルズ。
「⋯何でしゅか?ミル爺もシアをプーティーだと思ってるんでしゅか!?」
「いや、わしは今最高に幸せだと思ってるんじゃよ」
昔アリアナを失った時は思い出したくないくらいの絶望と喪失感だった。だが、ミルキルズ以上に絶望に打ちひしがれていた孫ゼストの前では気丈に振る舞うしかなかった。でもふと一人になるとアリアナのあの眩しいくらいの笑顔や一緒に行った数々の悪戯を思い出しては涙を流す日々を送っていた。朝起きたら、忙しいゼストの代わりにまずあの子を起こしに行くが、気付くと二人で寝てしまいオウメに怒られる朝。それから悪童アリアナと共に数々の魔法の実験や悪戯を行ったあの楽しい日々。それらを思い出さない日は無かった。
「まさかわしが若返るとは思っていなかったが、生きていて良かった⋯また愛しいひ孫と過ごせるんじゃ!!死んでたら後悔しっぱなしじゃった!」
「ミル爺⋯シアもまたミル爺やオウメに会えて嬉しいでしゅ!」
そう言って抱き合うミルキルズとアレクシア。だが、その光景を面白く思わない者達がぞろぞろとやって来た。
「おお、ここにいたかプーティー⋯ぷっ!」
「ジジイ⋯面白がってましゅね」
笑うゼストを睨み付けどんな仕返しをしようか考えるアレクシア。
「アレクシア、竜族にも効果がある即死魔法を考えたんだが試して良いか?」
「あい!このジジイでやって下しゃいな!」
「おい!」
本気で試そうとするデズモンドとアレクシアに焦るゼスト。
「む。アレクシアはプーティーなんかじゃないぞ。」
「⋯⋯。おい、父上が最初にプーティーって言ったんでしゅからね?」
そんなルシアードに呆れて、ジト目で見るアレクシアであった。
そんな楽しい光景を笑顔で見つめるミルキルズの元にオウメがやって来た。
「私も自分が若返ったのには驚きましたが、こんなに嬉しい日が来るなんて⋯生きてて良かったです」
涙ぐみながらアレクシアとゼスト、それからアリアナの死以来ずっと疎遠になってしまったランゴンザレスやデズモンドがあの時みたいに楽しそうに今ここにいるのを心から喜ぶオウメ。
「そうじゃな⋯こんな嬉しい日はない!」
ミルキルズとオウメはこの奇跡の日を一生忘れないだろう。
「⋯どうしたらいいの⋯この髪全然戻らないんですけど!?このままだとプーティー皇女になっちゃうわ!!」
「しょんなーー!嫌でしゅ!!」
ランゴンザレスの恐ろしい一言に絶望するアレクシア。
「む。アレクシアはこのままでも十分に可愛⋯「馬鹿ちんでしゅか!!そんなわけあるかーー!!」
アレクシアは理不尽な怒りをルシアードにぶつける。
『プーチーアレクチア~!!』
『呪いのプーチーリーダー!!』
「うぅ⋯プーティーって言わないで下しゃいな⋯」
嬉しそうに集まってくる天真爛漫な舎弟達に心を抉られるアレクシアであった。
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