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8章 アレクシアと竜の谷の人々

とりあえず宴会です!!②

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オウメの無言の圧力に屈してアレクシアを始めとするお野菜苦手組が懸命に野菜を頬張っていた頃、彼女と血の繋がりがある父親ルシアードの周りに次々と竜族が集まって来た。

「お前があのアリアナの父親か?」

一人の竜族の男性がルシアードに声をかけて来た。

「む。そうだが、アリアナではない。アレクシアだ」

面倒臭そうに答えるルシアード。

「あ⋯アレクシアは普段大人しいのか?今は一国の皇女だって馬鹿な噂が出回っていてな!ブッ⋯!」

男性がそう言いながら笑うと、他の竜族も馬鹿げていると笑い出す。

「もぐもぐ⋯失礼でしゅ⋯もぐもぐ⋯ね!!」口いっぱいに肉を頬張るアレクシア。

「おい!飲み込んでから話せ!危ないだろう!?」

「ジジイ!止めんしゃい!!シア、今リバースしそうでしゅ!!」

ゼストは心配してアレクシアの背中をさするが、力が強過ぎて全身が揺れ最悪の事態に陥りそうになる。

「アレクシアは俺の大事な娘だし、一国の皇女だ。何か文句があるなら俺が聞くぞ?」

ルシアードか殺気を放ちながら、竜族を威圧する。

「おい。そう怒るな、若いの!アリアナはよく城を壊してないか?昔は家を半壊させたりは日常茶飯事だったからのう!わしの家も二回程やられたわい!ガハハハ!」

そう言って豪快に笑うロウゴイヤだが、聞いていたウリドはその時の事を思い出して苦笑いする。

「ゴイ爺!何回言ったら分かるんでしゅか!今はアレクシアという崇高な名前があるんでしゅよ!!」プンスカ怒るアレクシア。

「アレクシアは可愛らしくて、そして俺の娘だ」

ドヤ顔でいうルシアードを、可哀想な人を見る目で見てしまう竜族の人達。

「父上、馬鹿ちんはちゅ⋯発言止めて下しゃいですわ!わたくし恥ずかしいでしゅわ!!⋯って何で笑うんでしゅか!?」

高貴な皇女の様に振る舞った瞬間にこの場が爆笑で包まれる。ポーポトスは飲んでいたお茶を吹き出し、ランゴンザレスは持っていた皿を落としそうになる。デズモンドも顔を背けて肩を震わせていた。

「あんた⋯止めなさい!⋯ブッ⋯今更お淑やかに振る舞っても本性は隠せないわよ!この前だって、城でボヤ騒ぎを起こしていたわよね!?」

これはまだアレクシアがアウラード大帝国にいた頃のお話で、ある穏やかな昼下がり。執務室から煙が上がっているのに気付いて城中が大騒ぎになる。当の本人は謁見の間にいたので、敵襲かと緊迫したが結果犯人はアレクシアであったのだ。

「あれはボヤじゃないでしゅ。魚を焼いていたんでしゅよ?」ごく普通に答えるアレクシア。

「馬鹿だろ!?お前が馬鹿ちんじゃねーか!!」

そんな娘に呆れるしかないゼスト。

「炭を使って網で焼く魚はおいちいんでしゅ!父上も美味しそうに食べてまちたよ!」

「ああ。あれは美味かったな。また、焼いてくれ」

微笑ましい親子の図だが、周りはドン引いていた。

「そうよ!あんたは怒るどころかこの子と一緒に食べ始めちゃうし!周りは怒るに怒れないし!部屋中⋯いや、城中魚臭くなって消臭活動がどれだけ大変だったか!?っていうかアタシのスーツが魚臭くなって⋯うぅ⋯」

ランゴンザレスは当時の煙を思い出して顔を歪める。

「何言ってるんでしゅか!怒られてないでしゅって!?ロイン叔父上に死ぬかと思うほど怒られまちた!罰として魚という字を一万回書かされまちた!!」

当時を思い出してブルブルと震えるアレクシアだが、それを聞いたミルキルズやロウゴイヤを始め竜族は大爆笑だ。

そんなこんなで楽しい宴会が続きますが、何故なのか力比べが始まっていた。ロウゴイヤが得意の腕相撲で竜族の若い衆を次々と倒していく中、近付いて来る小さな影。その影の正体を見たロウゴイヤは不敵な笑みを浮かべる。

「何じゃ?お前がわしに勝てると思っとるのか?」

「やってみなきゃ分かりましぇんよ?」挑戦者アレクシアもやる気満々だ。

「む。アレクシア、止めておけ。そのか弱い腕がへし折られてしまうだろ!」

流石に心配したルシアードが止めようとする。

「馬鹿ちんでしゅか!!シアはどんな事があっても負けましぇんよ!」そう言いながら腕捲りして準備するアレクシア。

『アレクチア~!がんばりぇ~~!まけりゅな~!ちかりゃのかぎり~!』

「ひ孫ーーー!!何故じゃーー!!」

「独特な応援だな、息子よ。一体どこで覚えたんだ?」そう言いながらもアレクシアをジト目で見るウリド。

ロウゴイヤが目に入れても痛くないくらいに可愛いがっているひ孫のロウが、自分ではなくアレクシアを応援し始めたのを見てショックを受け崩れ落ちてしまう。

「さぁ、どうしゅるんでしゅか?ロウが見てましゅよ?」

そんなロウゴイヤを挑発するアレクシア。

「むむ!わしは負けんぞ!!かかって来い、小娘!!」

回復したロウゴイヤは手をボキボキと鳴らしながら準備運動をしている。それを見たアレクシアも堂々と手を動かすが、何の音も鳴らない。ロウリヤが審判を務め、ミルキルズが横で見守っている中で竜族最強であり伝説の戦士ロウゴイヤvs悪童リーダー(美少女もつけて下しゃいな!)アレクシアの仁義なき戦いが始まろうとしていた。









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