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ユリア、旅をする!!
巻き起こる異変
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修行の森の異変はまだ終わらなかった。
アネモネがいつもの様にチェスターを説教しようとした時だった。森の奥の方からまた悍ましい鳴き声がした瞬間に倒したはずのマンティコアが今度は五体も現れてこちらに向かって来たのだ。
これには喜びを分かち合っていたスーミレの兵士とジェロラル国の兵士達も驚き過ぎて腰を抜かしてしまった。
「どういう事なんだ⋯!?何でこんなにマンティコアがいるんだ!!」
「おかしいぞ!⋯⋯どうなってるんだ!!」
チェスターはすぐに剣を抜き、アネモネも急いで魔法攻撃の準備をする。シロはユリアを守ろうとするが、当の本人は母親であるアネモネの横で慣れた感じでパンチの準備をしていた。
「まだいりゅーー!!ユリアがたおちゅぞ!!」
「お前はまだおチビだ!怖がるのが普通なのに何でいつもそんなにやる気なんだよ!パンチは禁止だ!俺が全部倒すからな!!」
「あにちうるちゃい!!ユリアがパンチでたおちゅの!」
「いいから二人とも邪魔よ!私とシロで引きつけて倒すから原因を調べてちょうだい!」
睨み合うチェスターとユリアだったが、アネモネの一喝に対して素直に従い背後に下がった。
「原因は森の奥にある。禍々しい気配がする」
シロがそう言いながら邪神セラムに目配せした。
「⋯ええ。分かりましたよ。このマンティコアが湧き出てくる状況を何とかしないとこの二人は帰らなそうですしね⋯はぁ」
背後でチェスターにパンチしているユリアとそれを華麗に避けるチェスターを見て頭を抱えながらセラムが答えた。
アネモネは人が変わったかの様に高笑いしながらマンティコアを一体、また一体と次々に瞬殺していく。そんな光景を唖然と見ている兵士とブルブル震えて見ている妖精コウとジョジュア。
「おい、おちび。あんなふうにはなるなよ?」
「かーしゃん⋯いつものかーしゃんじゃにゃい!!」
自分の娘に呆れながらも、孫の将来の心配をせざる負えないチェスターであった。
アネモネがマンティコアを攻撃している間にセラムとシロは禍々しい気配を追って森の最奥に来ていた。
「これは⋯」
「ええ。空間が歪んでいますね。ここからマンティコアが湧き出てきてるんだろう」
空間が歪むという現象は遥か昔に起こった事がある。それは邪悪の塊である破滅の子“ユーメア”が生まれた時だった。それにより世界が混沌と化し滅亡の危機に陥ったのだ。
「徳丸夢が関係しているかもしれない」
「何故ですか?この件はユメが現れる前から起こっている事です」
シロの意見に真っ向から反論するセラムだったが、何故か胸騒ぎがする。
「ああ。だが、この歪みは無視できない」
「⋯神の愛し子であるあの子なら何とかできると思うのは私だけですか?」
目の前の禍々しい歪みを前にして二人が考え込んでいると、背後から元気な幼児の声が聞こえてきた。
「おーーい!!何やってんでしゅかー?」
チェスターに肩車され、満面の笑顔でこちらに手を振るユリア。
「ユリア。こっちは危険だからあまり近づくな」
シロが歪みの前に立ちチェスター達が来るのを制止する。
「おいおい⋯何なんだよ」
歪みを見たチェスターは驚くが、ユリアはいつもの如くチェスターからズルズルと下りると、シロに駆け寄ろうとした。
すると歪みからドス黒い禍々した煙の様なものが出てきてユリアだけを襲おうとする。だが、あのユリアである。案の定ユリアから眩い光が溢れ出して禍々しい煙を一瞬で包み込み、歪みまでも綺麗さっぱり無くなってしまっていた。
これにはユリアの奇跡を見慣れたシロやチェスターも目が点になってしまう。邪神セラムは何が起こったのか理解できずに固まっていた。
「まぶちい!!」
ユリアが文句を口にすると、眩い光は一瞬で消えた。
「さすがの神の愛し子でもこんな簡単に歪みを消せるのか?」
「⋯⋯」
シロの問いに何も答えられないセラム。今までの愛し子でここまで力がある者は誰一人といなかったのだ。
「神にも匹敵する力をこんな小さな幼子が⋯」
「ユリアはちいさくにゃい!!」
自分の事と分かったのかセラムに向かいプンスカと怒り出すユリア。
「いや、小さいでしょう。あなたはまだ幼子なんですよ?」
真面目に答えるセラムだが、小さいという言葉に敏感なユリアを更に刺激してしまう。
「ユリアはちいさくにゃい!!」
「いや、豆粒だろ」
「あにちはうるちゃいーー!!」
小さく呟いたチェスターの言葉を聞き逃さなかったユリアが怒りのパンチを食らわす。ついでに邪神セラムにもポカポカとパンチを食らわしていく。
「おいおい!ユリアが邪神を攻撃してるぞ!!アハハハ!!」
妖精コウが指さして爆笑しているが、駆けつけたアネモネは急いでセラムからユリアを引き剥がした。
「ユリア!そのパンチはやめなさい!」
「にゃんで!?ユリアのひっしゃつわじゃ!!」
そう言ってユリアは崩れ落ちたのだった。
そんな攻撃をされてもユリアに何もせずにずっと考え込んでる邪神セラムとシロ。チェスターはパンチ禁止を言い渡され落ち込むユリアを小脇に抱え、アネモネと妖精コウ、そしてジョジュアと共にとりあえず兵士達が集まる場所に戻ることにした。
アネモネがいつもの様にチェスターを説教しようとした時だった。森の奥の方からまた悍ましい鳴き声がした瞬間に倒したはずのマンティコアが今度は五体も現れてこちらに向かって来たのだ。
これには喜びを分かち合っていたスーミレの兵士とジェロラル国の兵士達も驚き過ぎて腰を抜かしてしまった。
「どういう事なんだ⋯!?何でこんなにマンティコアがいるんだ!!」
「おかしいぞ!⋯⋯どうなってるんだ!!」
チェスターはすぐに剣を抜き、アネモネも急いで魔法攻撃の準備をする。シロはユリアを守ろうとするが、当の本人は母親であるアネモネの横で慣れた感じでパンチの準備をしていた。
「まだいりゅーー!!ユリアがたおちゅぞ!!」
「お前はまだおチビだ!怖がるのが普通なのに何でいつもそんなにやる気なんだよ!パンチは禁止だ!俺が全部倒すからな!!」
「あにちうるちゃい!!ユリアがパンチでたおちゅの!」
「いいから二人とも邪魔よ!私とシロで引きつけて倒すから原因を調べてちょうだい!」
睨み合うチェスターとユリアだったが、アネモネの一喝に対して素直に従い背後に下がった。
「原因は森の奥にある。禍々しい気配がする」
シロがそう言いながら邪神セラムに目配せした。
「⋯ええ。分かりましたよ。このマンティコアが湧き出てくる状況を何とかしないとこの二人は帰らなそうですしね⋯はぁ」
背後でチェスターにパンチしているユリアとそれを華麗に避けるチェスターを見て頭を抱えながらセラムが答えた。
アネモネは人が変わったかの様に高笑いしながらマンティコアを一体、また一体と次々に瞬殺していく。そんな光景を唖然と見ている兵士とブルブル震えて見ている妖精コウとジョジュア。
「おい、おちび。あんなふうにはなるなよ?」
「かーしゃん⋯いつものかーしゃんじゃにゃい!!」
自分の娘に呆れながらも、孫の将来の心配をせざる負えないチェスターであった。
アネモネがマンティコアを攻撃している間にセラムとシロは禍々しい気配を追って森の最奥に来ていた。
「これは⋯」
「ええ。空間が歪んでいますね。ここからマンティコアが湧き出てきてるんだろう」
空間が歪むという現象は遥か昔に起こった事がある。それは邪悪の塊である破滅の子“ユーメア”が生まれた時だった。それにより世界が混沌と化し滅亡の危機に陥ったのだ。
「徳丸夢が関係しているかもしれない」
「何故ですか?この件はユメが現れる前から起こっている事です」
シロの意見に真っ向から反論するセラムだったが、何故か胸騒ぎがする。
「ああ。だが、この歪みは無視できない」
「⋯神の愛し子であるあの子なら何とかできると思うのは私だけですか?」
目の前の禍々しい歪みを前にして二人が考え込んでいると、背後から元気な幼児の声が聞こえてきた。
「おーーい!!何やってんでしゅかー?」
チェスターに肩車され、満面の笑顔でこちらに手を振るユリア。
「ユリア。こっちは危険だからあまり近づくな」
シロが歪みの前に立ちチェスター達が来るのを制止する。
「おいおい⋯何なんだよ」
歪みを見たチェスターは驚くが、ユリアはいつもの如くチェスターからズルズルと下りると、シロに駆け寄ろうとした。
すると歪みからドス黒い禍々した煙の様なものが出てきてユリアだけを襲おうとする。だが、あのユリアである。案の定ユリアから眩い光が溢れ出して禍々しい煙を一瞬で包み込み、歪みまでも綺麗さっぱり無くなってしまっていた。
これにはユリアの奇跡を見慣れたシロやチェスターも目が点になってしまう。邪神セラムは何が起こったのか理解できずに固まっていた。
「まぶちい!!」
ユリアが文句を口にすると、眩い光は一瞬で消えた。
「さすがの神の愛し子でもこんな簡単に歪みを消せるのか?」
「⋯⋯」
シロの問いに何も答えられないセラム。今までの愛し子でここまで力がある者は誰一人といなかったのだ。
「神にも匹敵する力をこんな小さな幼子が⋯」
「ユリアはちいさくにゃい!!」
自分の事と分かったのかセラムに向かいプンスカと怒り出すユリア。
「いや、小さいでしょう。あなたはまだ幼子なんですよ?」
真面目に答えるセラムだが、小さいという言葉に敏感なユリアを更に刺激してしまう。
「ユリアはちいさくにゃい!!」
「いや、豆粒だろ」
「あにちはうるちゃいーー!!」
小さく呟いたチェスターの言葉を聞き逃さなかったユリアが怒りのパンチを食らわす。ついでに邪神セラムにもポカポカとパンチを食らわしていく。
「おいおい!ユリアが邪神を攻撃してるぞ!!アハハハ!!」
妖精コウが指さして爆笑しているが、駆けつけたアネモネは急いでセラムからユリアを引き剥がした。
「ユリア!そのパンチはやめなさい!」
「にゃんで!?ユリアのひっしゃつわじゃ!!」
そう言ってユリアは崩れ落ちたのだった。
そんな攻撃をされてもユリアに何もせずにずっと考え込んでる邪神セラムとシロ。チェスターはパンチ禁止を言い渡され落ち込むユリアを小脇に抱え、アネモネと妖精コウ、そしてジョジュアと共にとりあえず兵士達が集まる場所に戻ることにした。
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