幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi

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ユリア、旅をする!!

ユリアとチェスターの活躍①

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「あれまあ!赤子が浮いてっぺ!!」

「あら~!」

村長のナポリとナポリの妻が目を見開いて驚いていた。

アネモネはぷかぷか浮いているルイーザを急いで捕まえると、徳丸夢に託した。

「おほほ!種あかしはできませんけどこれは私達の新しい芸の一つなんですの!」

「おお!今の芸は進化してるのう~?」

「これは楽しみだべ!」

アネモネの説明を簡単に信じたナポリと妻であるカルボは明日が楽しみだ!と大喜びだった。

そして落ち着きを取り戻し、カルボに出されたお茶を飲んでいたユリアは横に座るチェスターとオーウェンのせいでかなり窮屈な思いをしていた。邪神セラムと時の精霊王ミリーはユメが快適に過ごせるようにと外で待機していた。彼等と妖精コウ、それにジョジュアは姿を消しているので村人達には気付かれていない。

「あにちととーしゃん!おおきいからちいさくにゃって!!」

「なれるか!お前が豆粒になれ!!」

ユリアの理不尽な要求に理不尽な反論する祖父チェスター。

「それにお前の後ろにいるシロにも言え!」

シロはチェスターの言葉を無視してユリアを膝に乗せながら、カルボが出してくれたクッキーをおチビ達に配っていた。

「ユリア、ほらクッキーだ」

「シロ、ありがとー!!」

シロに渡されたクッキーを美味しそうに頬張るユリアだが、またしても肘がチェスターにぶつかる。

「もう!ていやーー!!」

そう言ってユリアがチェスターの腕をパンチする。そのパンチは見た者からしたら可愛いものだが、された方のチェスターは激痛が走っていた。

「イデデ!!お前⋯おチビのくせに痛いんだよ!!」

「あにちがおおきいからユリアのうでにあたりゅの!!クッキーがたべれにゃい!!」

そう言って睨み合う孫のユリアと大人気ない祖父であるチェスター。

「やめなさい!⋯うるさくてすみません!」

アネモネはナポリとカルボに謝るが、二人は何故か嬉しそうに笑っていた。

「いいんだ。こんなに賑やかで楽しいのは久しぶりじゃからのう」

「そうね⋯息子が魔物討伐に駆り出されてから寂しいもんでのう⋯」

そう言って寂しそうに下を向いてしまったナポリとカルボ。

「討伐ですか?この近くですか?」

夢が深刻そうな顔をしてナポリに聞いた。

「最近ここスーミレとジェロラル国の国境付近で強い魔物が暴れていてのう。ジェロラル国は最近王が変わり内政がまだ整ってなくて大変らしくて、ここスーミレにも要請が来たんじゃよ」

ナポリの話だと、そこは普段は強い魔物が少ない森で冒険者になりたての者達が腕を磨く為の“修行の森”と呼ばれている。ジェロラル国はユリアの生まれ育った森である古の森と修行の森に囲まれているのだ。

ちなみにユリアの住んでいた古の森は最強クラスの魔物が生息していて、ベテラン冒険者でも決して足を踏み入れない森なのだ。

「ジェロラル国か、今はあのライルが国王で平穏を取り戻したと思ったが⋯。あの森は比較的に弱い魔物しか生息していないはずだが一体なのがあったんだ?」

シロは助けたジェロラル国の第二王子ライルを思い出していた。ライルはシロ達の協力の元、腐りきった父親である国王や王太子の兄を自らの手で討ち国王になったのだ。今は政務に忙しくしていると聞いたが、まさかそんな事になっているとは思っていなかった。

だが部屋の片隅でその話を聞いていたチェスターが意味ありげにニヤリと笑っていたのを、ユリアだけがガン見していた。


そして皆は暫くまったりしていたが、疲れたのかユリア達がお昼寝を始めたのでオーウェンとシロがおチビ達をソファーに運んで行く。そしてアネモネや夢はカルボの夕食作りを手伝い、シロは今のうちに食事を済ませる為に先程の森まで戻っていった。オーウェンは村長のナポリと話している中で、不審な動きをするチェスター。そこら辺を散歩してくるとアネモネに言うと、怪しまれる事なく家を出たチェスターは外で佇むある人物の元へ向かった。

「おい!俺を修行の森へ連れてってくれ!!」

いきなり言われて怪訝そうにチェスターを見る邪神セラム。

「何で私がそんな事しないといけないのですか?」

「そうだ!失礼な奴だな!!」

時の精霊王ミリーも嫌そうだ。

「じゃあ、俺の出番だな!!」

そこに現れたのは面白い事が大好きな妖精コウだった。横にはジョジュアもいてパタパタと興味津々にチェスターの周りを飛んでいる。

「おお!お前がいたんだ!頼む!最近身体が鈍っててなー!」

「修行の森だな!!って⋯⋯おい、背中にユリアが張り付いてるぞ?」

妖精コウが笑いながらチェスターの背中を指差す。そこにはチェスターの大柄な背中に気配を消して張り付くユリアがいてセラムやミリーも驚愕した。

「私も気づかなかった」

セラムの呟きにミリーも同意するように強く頷いた。

「ユリアもいくーー!!」

そう言いながらも捕まえようとするチェスターの手からユリアはちょこまかと動き回り上手く逃げていた。

「ああ、ちょこまかと!!お前はダメだ!寝てたんじゃないのかよ!!」

「あにちだけずるい!ユリアもいくにょ!!」

言い合いになりそうになるが、気付かれたら終わりだとチェスターは一旦落ち着く為に深呼吸をした。

「討伐隊が出ているんですからわざわざ行かなくてもいいでしょう?」

「嫌だ!俺は行くぞ!!」

「いやでしゅ!ユリアはいくにょ!!」

同時にそう言う似たもの祖父孫に邪神セラムが呆れているが、その隙に妖精コウが動き出してしまった。

「じゃあ!行くぞーー!!終わったら戻ってくるから心配するな!!」

セラムが止めようとするがもう既に遅く、妖精コウによってチェスターとユリアは“修行の森”へと向かうことになった。

「妖精王!!全く!!⋯ミリー、私が追いかけますから彼等に事情を話しておいて下さい」

「セラム様⋯大丈夫ですか?あいつらを時の力で戻しましょうか?」

邪神なのに苦労が絶えないセラムを心配するミリー。

「いいえ、私が連れ戻してあの男には少し教育を施さないとね」

穏やかそうに言っているが、目が笑っていないセラムを見ていたジョジュアは、ブルブルと震えながらシロを呼びに森に向かって行ったのであった。





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