幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi

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ユリア、旅をする!!

スーミレ小国に到着です!

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コロコロと荷車を引く音と、幼子の話し声だけが響くのどかな田園風景。チェスターやオーウェンのお陰で森を思いの外早く抜けてしまい、徐々にスーミレ小国の関所に近づいて来た一同。

そんな関所手前にある大きな畑で忙しく働く人々は、こちらに向かい手を振る可愛い幼子達を見て笑顔で手を振りかえした。

「可愛い子達だべ!」

「何で荷車に乗ってんだべ?」

「派手な荷車じゃのう~?わしも真似しようかのう!」

荷車に乗る可愛い幼子達に農民達もついつい笑顔になるが、その荷車を引く人物達を見てすぐに顔色を変えた。

「あの強面の男!!まさかこの子達を奴隷として売るんじゃねーけ!?」

「確かに怖そうな男だべ!!国王様に報告した方が良いべか?」

「美人な女子(おなご)もいるぞ!まさかこの娘達も⋯!?」

「おい!聞こえてるぞ!俺のどこが強面なんだよ!!それに奴隷商人じゃねーよ!!」

聞こえるように大騒ぎする農民達に反論するチェスターと苦笑いするオーウェン。

「あにちのおかおはこわいでしゅ!」

「おこるとうるちゃい!!」

微妙な空気の中、ユリアとカイルが横から余計な一言を言い放った。それを聞いた農民達がまたザワザワと騒ぎ始めた。

「可哀想にのう⋯。いつも怒鳴られてるんじゃな」

「こんなに幼い子を!外道共め!!国王様に報告すっぺ!!」

更に事態が悪くなってきたので、徳丸夢やアネモネが急いで農民達に事情を説明し始めた。

「お騒がせして申し訳ありません。私達は小さな旅芸の一座です」

「そうなんです!この人達は大柄で強面ですが、一座の者なんです!護衛も兼ねているのであの顔なんです!!」

「おい!」

夢の大雑把な説明についツッコでしまうチェスター。ちなみに邪神セラムと時の精霊王ミリー、それに妖精コウとジョジュアは気配を消しているので周りには見えていない。

「旅の一座?こんな田舎に珍しいのう」

「今日はこのパスタ村に泊まって是非一芸見せて欲しいべ!!」

そう言って嬉しそうにする農民達を見て断る事も出来ずに頷くしかない夢とアネモネ。そんな騒ぎでもシロは我関せずで荷車を今か今かと下りようとするユリア達の面倒を見ていた。

「では⋯是非泊まらせて下さい」

面倒事を避けそうなセラムはというと元々がユメの為の旅なので彼女が良いならと何も文句は言わなかった。

なので一同は村長であるナポリと言う老人の家にお世話になる事になった。小さいながらもどことなく懐かしい雰囲気の赤いレンガの家で、おちび達も嬉しそうだ。

「かわいいおうちでしゅ!」

ユリアはシロを引っ張りながら遠慮なく家へ入って行った。

「あにちはいれりゅの~?」

チェスターによっていつものように小脇に抱えられたカイルが素直な意見を述べた。

「⋯⋯ギリギリだな」

オーウェンとチェスターの身長では屈んで入らないと無理だろう。

「ちっちゃいおうち⋯」

「すごーーい!!」

そう言いながら仲良く手を繋いで入っていくのはルウとピアだ。

「ぶう!!(歩いて行きたい!!)」

アネモネに赤ん坊のように抱っこされて不満タラタラなルイーザだが、周りの視線があるので仕方なくだが大人しくしていた。最後にオーウェンが屈んで入ってきたが、チェスターやオーウェンにとったらまるでドールハウスのようだ。

「何もねぇが、寛いでおくれ」

ナポリに言われるまでもなく、ユリアは床に大の字になって寛いでいた。カイルもルウもピアもユリアの真似をして大の字になり寛ぐので、ただでさえ狭い家なのにチェスターやオーウェンの居場所がないのだ。

「おちび共!広がり過ぎだ!何で人様の家でこんなに堂々と寛げるんだ!?」

「あにちもこっちだよ!!」

ユリアが横に来るようにチェスターを促すが、壁をぶち抜かないと寛げない。

「いや、無理だろ!お前達が縮まれば良いんだよ!」

そう言ったチェスターはユリア達を無理矢理に転がして縮めていく。

「キャー!もう!あにちはむこうにいって!」

プンスカ怒るユリアが隣にある小屋を指差した。

「あそこは豚小屋だ!!お前が寛ぐ所だぞ!」

そう言って笑うチェスターに怒り心頭のユリアは横にいるカイル達とコソコソ話し始めた。

「あにちがここにいたらおくつぬぎましゅ!」

「たいへんでしゅよ!ちいさいおうちがくちゃくなりゅ!!」

ユリアの発言に軽くパニックになるカイル。そんなカイルを苦笑いしながらも宥めるオーウェン。

「おうちが⋯あにちくちゃくなる?」

「あしくちゃ!」

マイペースなルウとピアだが、言っている事はかなり辛辣だった。

「おい、聞こえてるぞ!!靴は脱がねーよ!それにルウ!俺が臭いみたいじゃねーか!」

見えていないが妖精コウとジョジュアは大爆笑だ。それに横で話を聞いていた徳丸夢はチェスターに若干引いていた。

「小娘!引くんじゃねぇよ!俺だって傷つくんだぞ!」

「あ⋯すみません!見た目イケオジなのに足が臭いっていうギャップが⋯」

素直に謝る夢だが、夢の背後に立っていた邪神セラムは面白くない。イケオジと言われて嬉しそうなチェスターを睨みつけると、軽く指を鳴らした。すると、チェスターの靴が勝手に動き出して脱げそうになる。

「おいおい⋯何なんだ!?」

驚くチェスターだが、周りの方が大騒ぎだった。

「キャーー!たいへんでしゅよ!!おくつをとめましゅーー!!」

「しんじゃいましゅ!!」

そう言いながら懸命に脱げそうな靴を抑えるユリアとカイル。村長ナポリは何故騒いでいるのかが分からないのでひとりだけ首を傾げていた。

「たあ!!(この世の終わりよ!!)」

ルイーザも高速ハイハイで玄関に逃げて行こうとしていた。

この騒動が邪神セラムの仕業だと気付いたシロがセラムに警告する。

「お前の仕業だな?このまま靴を脱がせたらお前の大事なあの女も苦しむ事になるんだぞ?」

シロの言葉で皆と一緒にパニックになっているユメを見たセラムは我に返りまた指を鳴らして事態を収めた。

「おくつがとまりまちた!!ユリアのかちーー!!」

そう言ってドヤ顔をするユリア。その横ではカイルが放心状態で立っていた。

「たああ!!(助かったわ!!)」

玄関先でガッツポーズをする赤子に驚くナポリだが、更に驚いたのはその赤子がプカプカと浮遊している姿であった。






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