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ユリア、旅をする!!
では、そろそろ出発します!?
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バーベキューも終わり、アネモネや徳丸夢と共に片付けを始めた。オーウェンやシロは食べながらも瞼が閉じそうなおちび達を注意深く見守っていた。
「お、ピアが危ないな」
オーウェンがそう言うと同時にピアが椅子から落ちそうになるが、シロがタイミング良く支えた。次にルウが倒れシロがもう片方で支え、カイルは何故か倒れそうで倒れない絶妙なバランスで大人達を翻弄していた。妖精コウは満腹なのかお腹をさすりながら幸せそうにユリアの頭上ですやすやと眠っていた。
そしてユリアはというと口の周りだけでは無く顔中がタレまみれという異常事態になっていた。そんなユリアの足下ではジョジュアが泣き疲れて眠っていた。
「ユリア⋯どうしたらそうなるんだ?」
ルウとピアを寝かせて戻ったオーウェンとシロが苦笑いしていた。気付いたアネモネは娘の惨状を見て軽い悲鳴をあげ、急いでクリーン魔法をかけた。
「ユリア?お皿に顔を突っ込んだの!?」
「かーしゃん!おにゃかいっぱい~!!」
ぽんぽこお腹を摩りながら母であるアネモネに甘えるユリア。そんなユリアの横で目を泳がしている男がいたのをアネモネは見逃さなかった。
「ユリアと遊んでいたわね?」
「何で俺なんだよ!」
「父上しかいないでしょ!?」
怒り心頭のアネモネに引き摺られて行くチェスターを邪神セラムと時の精霊王ミリーが冷たい目で見ていた。
「馬鹿な男ですね」
「そうですね。こんな幼子と同じ思考回路とは⋯」
二人はユリアがタレまみれなのに拭きもせずにただただ笑っていたチェスターを目撃していた。チェスターはユリアの祖父と聞いていた二人は大人気なく、粗暴なチェスターを嫌悪した。
「あにちはいちゅも怒られてりゅ~!」
そう言いながら嬉しそうにアネモネについて行ったユリアだが、ちゃんと一緒に怒られて今は半泣き状態だ。浮遊赤ちゃんでお馴染みのルイーザはそんなユリアを懸命に慰めていた。
「ユリアを傷付けたら私は君を許さないよ?」
世界樹ユグドラシルと森の番人ドライアドは、創造神ラズゴーンと話をしていたが、ふとこちらを警戒する邪神セラムにユグドラシルが話しかけた。
「ユグドラシルは世界に干渉しないんじゃなかったですか?」
「そうだね。でもユリアは別だ、彼女は“この世界”に必要な子だ。それにこの荒地に息を吹き返してくれた恩人でもあるからね?」
そう言って優しく笑うユグドラシルを見て驚くラズゴーンとセラム。
「君がそんなに笑うなんて珍しいね~?」
「ふふ⋯あの子のおかげですわ」
ラズゴーンの言葉にドライアドが嬉しそうに答えた。
(あの子は一体⋯)
ユリアの話で盛り上がる三人を見ながら、セラムは世界樹ユグドラシルをも魅力する幼子にまた強い興味とそして危機感を覚えたのだった。
ユリアはアネモネに怒られている途中で力尽き、チェスターに抱えられて戻って来た。ルイーザもアネモネに抱っこされて眠っていた。
「カイルも眠ったのか?」
「ああ、部屋に寝かせて来た」
シロにそう聞いたチェスターは、ユリアとルイーザも他の子たちが眠る部屋に連れて行く事にした。
残った者達の中で気まずい沈黙が流れる。
「あの⋯旅って何処に行くんですか?」
恐る恐る話し始めたのは徳丸夢であった。
「そうですね、まずは大きな国より小さい国に行こうと思います。子供達が逸れたら面倒ですから」
「はい!あんな可愛い子達と旅が出来るなんてマジ楽しみー!!」
嬉しそうな夢を見て子供達の同行を許可するしかなくなり、これもラズゴーンの策略かと疑ってしまうセラム。
「小さな国で比較的安全な国だったら⋯そうだねぇ~、ああ!スーミレ小国なんて良いんじゃないかい?」
「スーミレ小国ですか!?わあー楽しみ!!」
またしてもわざとらしいタイミングで割って入ったラズゴーンにセラムが文句を言おうとしたが、夢が大喜びしているのを見て何も言えずに溜め息を吐く。
「スーミレ小国⋯聞いた事ないわね?」
「ああ、ルウズビュードは他国と関わりがなかったからな。辛うじてアーズフィールド国は親交があったが小国までは分からないな」
「スーミレか、まぁ平凡な田舎の国だな」
アネモネとオーウェンはスーミレ小国を知らずに首を傾げたが、魔物であるシロは知っているみたいだった。
「じゃあ、セラム。この子達を頼んだよ?上からずっと見てるからね?」
ラズゴーンが立ち上がり、真剣な眼差しでセラムを見た。
「私は知りませんよ?この子達の保護者がこんなにいるんですから大丈夫なのでは?」
「そんなこと言わない方が良いですよ?ユメを助けるのも、世界を守るのも意外にもこの子達かもしれないよ?」
ラズゴーンの言葉に驚くセラムだが、横でユグドラシルやドライアドも静かに頷いていた。
それからラズゴーンやユグドラシル、ドライアドは元の場所に戻って行った。夢もミリーに連れられて部屋に案内された。
そしてアネモネやオーウェン、シロはおちび達が眠る部屋に向かっていたが、何故か眠ったはずのおちび達の騒ぎ声が聞こえて来たのだ。
「おいおいおい⋯まさか」
嫌な予感がしてドアを開けたオーウェンが見た光景は、枕投げをして遊ぶおちび達の真ん中で大の字で眠るチェスターの姿であった。嬉しそうに遊んでいたジョジュアはオーウェンの後ろに静かに佇むアネモネを見た瞬間、危機を察知してベッドの下に潜り込んだ。妖精コウはすぐにサッと気配を消したのだった。
「おちび達!!ここに並びなさい!!」
屋敷中に響き渡るアネモネの声。静まり返る室内。
おちび達はすぐに並んだ。そこへオーウェンがやって来ておちび達に眠るようにと諭す中、その後ろではチェスターの悲鳴が聞こえていたのだった。
「お、ピアが危ないな」
オーウェンがそう言うと同時にピアが椅子から落ちそうになるが、シロがタイミング良く支えた。次にルウが倒れシロがもう片方で支え、カイルは何故か倒れそうで倒れない絶妙なバランスで大人達を翻弄していた。妖精コウは満腹なのかお腹をさすりながら幸せそうにユリアの頭上ですやすやと眠っていた。
そしてユリアはというと口の周りだけでは無く顔中がタレまみれという異常事態になっていた。そんなユリアの足下ではジョジュアが泣き疲れて眠っていた。
「ユリア⋯どうしたらそうなるんだ?」
ルウとピアを寝かせて戻ったオーウェンとシロが苦笑いしていた。気付いたアネモネは娘の惨状を見て軽い悲鳴をあげ、急いでクリーン魔法をかけた。
「ユリア?お皿に顔を突っ込んだの!?」
「かーしゃん!おにゃかいっぱい~!!」
ぽんぽこお腹を摩りながら母であるアネモネに甘えるユリア。そんなユリアの横で目を泳がしている男がいたのをアネモネは見逃さなかった。
「ユリアと遊んでいたわね?」
「何で俺なんだよ!」
「父上しかいないでしょ!?」
怒り心頭のアネモネに引き摺られて行くチェスターを邪神セラムと時の精霊王ミリーが冷たい目で見ていた。
「馬鹿な男ですね」
「そうですね。こんな幼子と同じ思考回路とは⋯」
二人はユリアがタレまみれなのに拭きもせずにただただ笑っていたチェスターを目撃していた。チェスターはユリアの祖父と聞いていた二人は大人気なく、粗暴なチェスターを嫌悪した。
「あにちはいちゅも怒られてりゅ~!」
そう言いながら嬉しそうにアネモネについて行ったユリアだが、ちゃんと一緒に怒られて今は半泣き状態だ。浮遊赤ちゃんでお馴染みのルイーザはそんなユリアを懸命に慰めていた。
「ユリアを傷付けたら私は君を許さないよ?」
世界樹ユグドラシルと森の番人ドライアドは、創造神ラズゴーンと話をしていたが、ふとこちらを警戒する邪神セラムにユグドラシルが話しかけた。
「ユグドラシルは世界に干渉しないんじゃなかったですか?」
「そうだね。でもユリアは別だ、彼女は“この世界”に必要な子だ。それにこの荒地に息を吹き返してくれた恩人でもあるからね?」
そう言って優しく笑うユグドラシルを見て驚くラズゴーンとセラム。
「君がそんなに笑うなんて珍しいね~?」
「ふふ⋯あの子のおかげですわ」
ラズゴーンの言葉にドライアドが嬉しそうに答えた。
(あの子は一体⋯)
ユリアの話で盛り上がる三人を見ながら、セラムは世界樹ユグドラシルをも魅力する幼子にまた強い興味とそして危機感を覚えたのだった。
ユリアはアネモネに怒られている途中で力尽き、チェスターに抱えられて戻って来た。ルイーザもアネモネに抱っこされて眠っていた。
「カイルも眠ったのか?」
「ああ、部屋に寝かせて来た」
シロにそう聞いたチェスターは、ユリアとルイーザも他の子たちが眠る部屋に連れて行く事にした。
残った者達の中で気まずい沈黙が流れる。
「あの⋯旅って何処に行くんですか?」
恐る恐る話し始めたのは徳丸夢であった。
「そうですね、まずは大きな国より小さい国に行こうと思います。子供達が逸れたら面倒ですから」
「はい!あんな可愛い子達と旅が出来るなんてマジ楽しみー!!」
嬉しそうな夢を見て子供達の同行を許可するしかなくなり、これもラズゴーンの策略かと疑ってしまうセラム。
「小さな国で比較的安全な国だったら⋯そうだねぇ~、ああ!スーミレ小国なんて良いんじゃないかい?」
「スーミレ小国ですか!?わあー楽しみ!!」
またしてもわざとらしいタイミングで割って入ったラズゴーンにセラムが文句を言おうとしたが、夢が大喜びしているのを見て何も言えずに溜め息を吐く。
「スーミレ小国⋯聞いた事ないわね?」
「ああ、ルウズビュードは他国と関わりがなかったからな。辛うじてアーズフィールド国は親交があったが小国までは分からないな」
「スーミレか、まぁ平凡な田舎の国だな」
アネモネとオーウェンはスーミレ小国を知らずに首を傾げたが、魔物であるシロは知っているみたいだった。
「じゃあ、セラム。この子達を頼んだよ?上からずっと見てるからね?」
ラズゴーンが立ち上がり、真剣な眼差しでセラムを見た。
「私は知りませんよ?この子達の保護者がこんなにいるんですから大丈夫なのでは?」
「そんなこと言わない方が良いですよ?ユメを助けるのも、世界を守るのも意外にもこの子達かもしれないよ?」
ラズゴーンの言葉に驚くセラムだが、横でユグドラシルやドライアドも静かに頷いていた。
それからラズゴーンやユグドラシル、ドライアドは元の場所に戻って行った。夢もミリーに連れられて部屋に案内された。
そしてアネモネやオーウェン、シロはおちび達が眠る部屋に向かっていたが、何故か眠ったはずのおちび達の騒ぎ声が聞こえて来たのだ。
「おいおいおい⋯まさか」
嫌な予感がしてドアを開けたオーウェンが見た光景は、枕投げをして遊ぶおちび達の真ん中で大の字で眠るチェスターの姿であった。嬉しそうに遊んでいたジョジュアはオーウェンの後ろに静かに佇むアネモネを見た瞬間、危機を察知してベッドの下に潜り込んだ。妖精コウはすぐにサッと気配を消したのだった。
「おちび達!!ここに並びなさい!!」
屋敷中に響き渡るアネモネの声。静まり返る室内。
おちび達はすぐに並んだ。そこへオーウェンがやって来ておちび達に眠るようにと諭す中、その後ろではチェスターの悲鳴が聞こえていたのだった。
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