幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi

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ユリア、旅をする!!

冒険が始まります!?

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魔神マーリンの発言に邪神セラムの顔色が変わった。

「夢が戻ってきてくれたんですよ?嬉しくないのですか?」

ドス黒いオーラを放つセラムにマーリンが言い返そうとした時、創造神ラズゴーンがこちらにやって来た。

「セラムよ⋯何故お主の封印が解けたのか教えてはくれないか?時の精霊王ミリーもじゃが固く封印したはずじゃ」

「ラズゴーンですか、あなたには聞きたいことが山ほどありますが封印の件は⋯あの男に聞いて下さい」

そう言ってセラムが指差したのは拘束されていたネロだった。指を差され皆の注目を浴びてもネロはいつものように不気味な笑顔のままだ。

「やはりこの男か⋯此奴は危険じゃな」

ラズゴーンはネロを見てそう言うと、自身の力を使い更に強くネロを拘束した。

「おい、旅だと?そんなのお前達で行けばいいだろ?ユリアは関係ないんだ。早く返せ!」

「そうだ!お願いだから娘を⋯ユリアを返してくれ!!」

シロがセラムを睨む。オーウェンも倒れてしまったアネモネを抱えながら必死に訴える。

「あなた方の意見など聞くつもりはありません。あの子は今の⋯夢に必要な存在なのです。決して傷つけるつもりはありません」

そんなセラムのほんの少しの変化にラズゴーンは気づいた。

「それを信じられると思うか?」

「あなたはシロと言いましたか?フェンリルか⋯今すぐにあの子をここに戻して、目の前であなたから殺していきましょうか?その次はあの子の家族⋯ふふ、それも楽しそうですね?」

邪悪に嗤うセラムに皆が一気に殺気立つ。

「旅に同行する四人を決めて下さい。四人以上は受け付けません。早くしないとあの子がお腹を空かして待っていますよ?」

「何故四人じゃないとダメなんだよ!」

チェスターが邪神を恐れる事なく反論する。

「それ以上は単純に多すぎて迷惑です」

セラムが嫌そうに答えた。元々一人でいるのを好んでいたセラムにとってこれは大きな譲歩だった。

「皆の気持ちはわかるが、ここはユリアと合流するのが得策じゃ」

ラズゴーンの言葉に言いたい事は山ほどある一同だが、ここはいち早くユリアの安否を確認する為にもと渋々話し合いを始めた。そしてそれぞれの事情を考慮して決まったメンバーがユリアの父親であるオーウェン、母親のアネモネ、ユリアの母方の祖父であるチェスター、そして魔物代表でシロだ。

オーランドが最後まで自分も行くと抗議していたが、ルウズビュード国の国王としての責務もあるのでオルトスが説得して何とか落ち着かせた。

「お前の元に必ずユリアを連れてくるから、国は任せたぞ?」

オーウェンの言葉に少しの沈黙の後、オーランドは静かに頷いた。他にもネオやゼノスは自分も行きたいと泣き出してしまったが、シロやそれぞれの親に説得されてグッと我慢している。ピピも怒りで大暴れしそうなのをクロじいと桔梗が止め、シリウスとチェビも怒り心頭のガルムを止めていた。

竜王クロノスや大賢者ヨルムンドもユリアの事が心配だがここはシロやオーウェン達に任せて、自分達にはやらなきゃいけない事があると拘束されているネロの元へ歩いて行く。

「お主を徹底的に調べるぞ?」

「お前が全ての元凶だろ?」

「さて?」

二人の威圧を笑顔で躱すネロには邪神セラムとは違う恐ろしさと気味悪さがあり、更に得体も知れないのでかなり厄介な存在だ。


「やっと決まりましたか。では行きますよ?ああ、もし私たちの後を誰かがつけて来た事が分かった瞬間、あの子を殺しちゃうかもしれませんのでそのつもりでいて下さい」

笑顔で恐ろしいことを言うセラムに怒りと共に恐怖を覚える一同。ここにいる魔物達は大事な者を失うかもしれないという恐怖を初めて味わい戸惑う。今まで自分達がいればユリアは守れると思っていたが、邪神という計り知れない自分以上の強大な存在に只々従うしかない悔しさに打ちひしがれていた。

「自分が一番強いと思っていた時が懐かしいですか?本当に人族といい魔物といい愚かな存在です」

そう吐き捨てるとセラムは周りを見る事なく手を前に出した。するとそこに歪んだ空間が現れたのだ。

「さっさと行きますよ。あの子がお腹を空かしています」

オーウェンはアネモネを起こして事情を話していたが、有無を言わせないセラムに何も言えずにまだふらつくアネモネを抱え先に空間に入って行った。チェスターも臆する事なくその後から入って行く。そして最後にシロがセラムを睨むつけながら空間に入って行った。

「では皆さん、また会う日まで」

それだけ言うと邪神セラムも消えたのだった。残された者たちは、自分達が出来る事を行動に移す為にすぐさま動き出した。魔族の里にはオルトスとサンドス、マルやシイカが残り里の復興などを手伝う事になった。特にオルトスはルウズビュードに侵攻してきた北の大国タールシアンとの話し合いもあるので気を引き締めていた。

他の者はルウズビュード国に帰還して城にいる者達に事情を話して対策を練りつつ、拘束したネロを尋問する事になった。皆が忙しく動く中、拘束されているネロはずっと不気味に嗤っていたのだった。



一方で歪んだ空間から抜けた四人は薄暗い部屋に立っていた。埃臭く、人が住んでいる形跡すらない古びた建物に見えるが、そんな事よりずっと探していたユリアの気配を感じた四人はセラムを無視して急いでその部屋に向かって行く。

「ユリア!!」

「ああ⋯ユリア⋯⋯ユリア?」

「「⋯⋯」」

そこにはずっと会いたかったユリアとユリアの周りを飛び回る妖精コウ、そして見たことのない珍しい格好をした少女と時の精霊王ミリーがいた。だがコウは腹を抱えて爆笑していて、ミリーは頭を抱えている。そして少女はユリアを見て可愛い~と悶えていた。

ユリアの可愛い頬はピンク色に染まり、眉毛は黒く濃くされていて、極め付けは唇が真っ赤で本人は嬉しそうにポージングしているが、四人はその姿を見て呆然と立ち尽くしてしまった。

「おちび!何だその顔は⋯ブッ」

チェスターの大声に気付いたユリアがこちらに気づいて、少し呆然とした後にその大きな瞳から大粒の涙が溢れ出てきた。

「あにち⋯シロ?とーしゃんーー!!かーしゃん!!うわーーん!!」

ユリアは泣きながら四人に駆け寄り、母親であるアネモネはそんなユリアを強く抱きしめて泣き崩れた。

















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