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ユリア、旅をする!!
徳丸夢の真実
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一方でユリアを連れ去られてしまった魔族の里では、創造神ラズゴーンの登場に皆が驚き動けないでいたが、魔物達だけは気にする事なく目の前に佇む金髪の少年に近付き、疑問に思っていた事を口にした。
「徳丸夢は本当に愛し子だったのか?」
魔物達を代表してシロが話し出した。金髪の少年、創造神ラズゴーンは少しの間の後に話し出した。
「いや、夢は愛し子ではない…むしろこの世界で最も邪悪な者だ」
ラズゴーンの言葉に皆が驚くが、その中でも一番驚いていたのが魔神マーリンと戦神ライディンだった。
「どう言う事さ!確かに愛し子ではないと思っていたけど…邪悪なる者って…!?」
『何故そんな者が愛し子としてこの世界に来たのだ!』
「君達や他の神々には悪い事をしてしまった…すまない。“あれ”は元々この世界で生きていたが、世界の歪みに落ちてしまって…行方知れずになってしまったんだよ」
ラズゴーンの話はこの場にいる者達や神々にとっても信じられない話であった。邪悪の塊としてこの世界に生まれてしまった存在。世界の負の感情を糧に大きくなった塊はラズゴーンが気付いた時には既に世界に破滅をもたらす子に育っていた。
名前はユーメア。辺境の村で生まれたごく普通の子だった。
だが、彼女が生まれた瞬間に世界では魔物が活発化して各地で暴走し数多の犠牲者が出た。そして各地で諍いが起こり始め、疫病や飢餓で混沌と化していた。
ラズゴーンは彼女を排除しようと動き出した。彼女の力はもう神に匹敵していたからだ。そして更に恐ろしいのは彼女に全く自覚がないと言う事だった。
彼女のちょっとした怒りや不満で、数多の犠牲者が出る事はもう止められなかった。ラズゴーンは地上に降り立ち、可哀想だが彼女を排除しようとした。
「地上に降りたところでそこに巨大な時空の歪みが現れたんだよ。ユーメアはそれに落ちてしまってね…その瞬間にこの世界に広がっていた邪悪な気配が消えたんだよ」
時空の歪みは当時の世界で各地に見つかり多大な影響を与えていた。これも邪悪な者“ユーメア”の力だった。
ラズゴーンの話を信じられない思いで聞いていたのはマーリンとライディンだった。
「なんでそんな大事な事を黙ってたのさ!あの時は確かに邪悪な気配に満ちていたけどそれは世界で起こっていた争いが原因で…」
『つまりあれがそのユーメアという少女のせいだったと?』
「ああ、全て私が悪かった…。皆に、セラムに真実を話していればこんな事にはならなかった。私の創造神としての傲慢さが生んだ事だ」
そう言うと、ラズゴーンは倒れたアネモネを支えるオーウェンをはじめ、皆に向かって深々と頭を下げた。
「ラズゴーン神よ、何故ユーメアは徳丸夢として生きている?」
泣いている息子ゼノスを抱っこしながら竜王クロノスはラズゴーンに問う。
「彼女の魂は歪みの中で消滅する筈だった。だが別の世界に彼女がいたのには驚いたよ。まさか生き延びていたとは⋯それほどまでに生きたいと強く思っていたのか歪みの中は私でも分からないからね」
「その女の事は分かったが、あのセラムをどうにかせんとな」
クロじいの発言に他の魔物も強く頷いた。
「ユリアが心配で堪らない!!早くユリアのいる所へ案内してくれ!!今すぐだ!!」
ユリアの兄であるオーランドが涙を流しながらラズゴーンに詰め寄る。
「⋯セラムの居場所を急いで探しているが、今少し待ってくれ⋯すまない」
「何故だ!!あんたら神のせいで⋯その女のせいで関係ないユリアが連れ去られるんだ!!」
ラズゴーンの言葉に壊れたように崩れ落ちるオーランドを必死に支える祖父オルトスだが、もう一人の祖父であるチェスターの怒りは収まらなく神であるライディンによって辛うじて抑えられていた。
「クソが!!おちびは今頃泣いてるかもしれねぇ!もしあいつの怒りを買ったら⋯⋯くそおおーーー!!」
「セラムとあの子は何故か波長が良い。私も驚いたが彼奴がユリアに何かするという事はない」
ラズゴーンはセラムがまだ生命神だった頃の事を思い出した。彼は人々の醜い争いで亡くなった全ての魂を浄化させたことで疲れ果て屋敷に篭ることが多くなった。心配で様子を見に行くが、我々の前では気丈に振る舞っていた。
そんな頃だった。セラムが一人の少女を連れてきたのは⋯。それこそ徳丸夢であった。
『彼女は私を癒してくれました。今代の神の愛し子です!!』
ラズゴーンは血の気が引いていくのが分かった。せっかく平和を取り戻したこの世界にまたも邪悪な者が戻ってきたのだ。
『あの⋯徳丸夢です!!何故かこの世界を知っている様な気がするんですが⋯?』
『ふふ⋯この世界に君は選ばれた子なんだよ?』
嬉しそうにそう話すセラムをラズゴーンは只々見ているしかなかった。
皆がこれからどうやってユリアを見つけるかを話し始めた時だった。一同は先程までこの場にいた人物の気配を感じてたので戦闘態勢を取りつつもユリアが戻ってきたのかと期待した。
だが現れたのは邪神セラムだけであった。
「ああ、先ほどは失礼したね?」
「ユリアはどうした!」
睨み合うのはセラムとシロだ。他の魔物も今にも攻撃を繰り出そうとしていた。
「その事で相談があるんだが、君たちの中で四人ほど一緒に来て欲しいのです」
セラムの意味不明な発言に皆が苛立ちを隠せない。
「おい!おちびは無事なのか!!」
「ええ、ピンピンしていますよ?今は肉を食べたいと大騒ぎしています」
チェスターの怒りに淡々と返すセラムだが、あの時のユリアを思い出して笑顔になる。
「実は夢が“スマホ”から出てきましたが、何も覚えていなくて困っています。なので皆で旅をしながら各地を周り思い出してもらおうと思いましてね」
それを聞いたラズゴーンや一同が驚く。夢が、邪悪な者が復活したのだ。
「おいおい、出てきたって不味いんじゃないの!?」
マーリンは過去の悲惨な世界を思い出して頭を抱えてしまったのだった。
「徳丸夢は本当に愛し子だったのか?」
魔物達を代表してシロが話し出した。金髪の少年、創造神ラズゴーンは少しの間の後に話し出した。
「いや、夢は愛し子ではない…むしろこの世界で最も邪悪な者だ」
ラズゴーンの言葉に皆が驚くが、その中でも一番驚いていたのが魔神マーリンと戦神ライディンだった。
「どう言う事さ!確かに愛し子ではないと思っていたけど…邪悪なる者って…!?」
『何故そんな者が愛し子としてこの世界に来たのだ!』
「君達や他の神々には悪い事をしてしまった…すまない。“あれ”は元々この世界で生きていたが、世界の歪みに落ちてしまって…行方知れずになってしまったんだよ」
ラズゴーンの話はこの場にいる者達や神々にとっても信じられない話であった。邪悪の塊としてこの世界に生まれてしまった存在。世界の負の感情を糧に大きくなった塊はラズゴーンが気付いた時には既に世界に破滅をもたらす子に育っていた。
名前はユーメア。辺境の村で生まれたごく普通の子だった。
だが、彼女が生まれた瞬間に世界では魔物が活発化して各地で暴走し数多の犠牲者が出た。そして各地で諍いが起こり始め、疫病や飢餓で混沌と化していた。
ラズゴーンは彼女を排除しようと動き出した。彼女の力はもう神に匹敵していたからだ。そして更に恐ろしいのは彼女に全く自覚がないと言う事だった。
彼女のちょっとした怒りや不満で、数多の犠牲者が出る事はもう止められなかった。ラズゴーンは地上に降り立ち、可哀想だが彼女を排除しようとした。
「地上に降りたところでそこに巨大な時空の歪みが現れたんだよ。ユーメアはそれに落ちてしまってね…その瞬間にこの世界に広がっていた邪悪な気配が消えたんだよ」
時空の歪みは当時の世界で各地に見つかり多大な影響を与えていた。これも邪悪な者“ユーメア”の力だった。
ラズゴーンの話を信じられない思いで聞いていたのはマーリンとライディンだった。
「なんでそんな大事な事を黙ってたのさ!あの時は確かに邪悪な気配に満ちていたけどそれは世界で起こっていた争いが原因で…」
『つまりあれがそのユーメアという少女のせいだったと?』
「ああ、全て私が悪かった…。皆に、セラムに真実を話していればこんな事にはならなかった。私の創造神としての傲慢さが生んだ事だ」
そう言うと、ラズゴーンは倒れたアネモネを支えるオーウェンをはじめ、皆に向かって深々と頭を下げた。
「ラズゴーン神よ、何故ユーメアは徳丸夢として生きている?」
泣いている息子ゼノスを抱っこしながら竜王クロノスはラズゴーンに問う。
「彼女の魂は歪みの中で消滅する筈だった。だが別の世界に彼女がいたのには驚いたよ。まさか生き延びていたとは⋯それほどまでに生きたいと強く思っていたのか歪みの中は私でも分からないからね」
「その女の事は分かったが、あのセラムをどうにかせんとな」
クロじいの発言に他の魔物も強く頷いた。
「ユリアが心配で堪らない!!早くユリアのいる所へ案内してくれ!!今すぐだ!!」
ユリアの兄であるオーランドが涙を流しながらラズゴーンに詰め寄る。
「⋯セラムの居場所を急いで探しているが、今少し待ってくれ⋯すまない」
「何故だ!!あんたら神のせいで⋯その女のせいで関係ないユリアが連れ去られるんだ!!」
ラズゴーンの言葉に壊れたように崩れ落ちるオーランドを必死に支える祖父オルトスだが、もう一人の祖父であるチェスターの怒りは収まらなく神であるライディンによって辛うじて抑えられていた。
「クソが!!おちびは今頃泣いてるかもしれねぇ!もしあいつの怒りを買ったら⋯⋯くそおおーーー!!」
「セラムとあの子は何故か波長が良い。私も驚いたが彼奴がユリアに何かするという事はない」
ラズゴーンはセラムがまだ生命神だった頃の事を思い出した。彼は人々の醜い争いで亡くなった全ての魂を浄化させたことで疲れ果て屋敷に篭ることが多くなった。心配で様子を見に行くが、我々の前では気丈に振る舞っていた。
そんな頃だった。セラムが一人の少女を連れてきたのは⋯。それこそ徳丸夢であった。
『彼女は私を癒してくれました。今代の神の愛し子です!!』
ラズゴーンは血の気が引いていくのが分かった。せっかく平和を取り戻したこの世界にまたも邪悪な者が戻ってきたのだ。
『あの⋯徳丸夢です!!何故かこの世界を知っている様な気がするんですが⋯?』
『ふふ⋯この世界に君は選ばれた子なんだよ?』
嬉しそうにそう話すセラムをラズゴーンは只々見ているしかなかった。
皆がこれからどうやってユリアを見つけるかを話し始めた時だった。一同は先程までこの場にいた人物の気配を感じてたので戦闘態勢を取りつつもユリアが戻ってきたのかと期待した。
だが現れたのは邪神セラムだけであった。
「ああ、先ほどは失礼したね?」
「ユリアはどうした!」
睨み合うのはセラムとシロだ。他の魔物も今にも攻撃を繰り出そうとしていた。
「その事で相談があるんだが、君たちの中で四人ほど一緒に来て欲しいのです」
セラムの意味不明な発言に皆が苛立ちを隠せない。
「おい!おちびは無事なのか!!」
「ええ、ピンピンしていますよ?今は肉を食べたいと大騒ぎしています」
チェスターの怒りに淡々と返すセラムだが、あの時のユリアを思い出して笑顔になる。
「実は夢が“スマホ”から出てきましたが、何も覚えていなくて困っています。なので皆で旅をしながら各地を周り思い出してもらおうと思いましてね」
それを聞いたラズゴーンや一同が驚く。夢が、邪悪な者が復活したのだ。
「おいおい、出てきたって不味いんじゃないの!?」
マーリンは過去の悲惨な世界を思い出して頭を抱えてしまったのだった。
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