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ユリア、旅をする!!
ユリアと邪悪な者達②
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「ユメ!私です!セラムです!!」
セラムは必死になってユリアの頭に引っ付いている“スマホ”に語りかけていた。
『⋯セラム?何で私の名前を知ってるの?』
“スマホ”の中から聞こえてくる女性の声。そして、その女性の衝撃的な発言にセラムもミリーも固まってしまう。
「おい!お前はユメって女じゃないのか!?」
『ええ、私は徳丸夢よ?⋯⋯ん?あなたは妖精さん!?凄い!初めて見たわ!!』
「おい、徳丸夢だって言ってるぞ?なのにお前たちの事を知らない感じだぞ!?」
徳丸夢と名乗った“スマホ”から聞こえる声は、目の前にいる妖精コウを見て感動していた。コウも訳が分からずにセラムとミリーに説明を求めた。
「ユメ!!俺だよ!時の精霊王ミリーだよ!!昔よく一緒に遊んでくれたじゃないか!!」
必死に訴えかけるミリーと、未だに放心状態から抜け出せないセラム。
『ミリー?⋯ごめんなさい、記憶が無いの⋯。確か学校の帰り道で事故に遭って⋯長い間眠っていたような感覚で⋯眩しい光に呼ばれて気がついたら真っ暗なここに立っていたの⋯』
「くらいにょー?」
ユリアが“スマホ”の悲しそうな声に反応した。
『ええ。この画面以外は真っ暗で何も見えないの』
「がめんー?ユリアのとこりょにくれば?」
ユリアはそう言うと、自分の頭に引っ付いたままの”スマホ“を手に取った。すると”スマホ“が激しく光出して、薄暗く不気味なこの屋敷全体を光が飲み込んだ。セラムとミリーはこの凄まじい光の魔力に一歩も動けずにいた。
「おい!何なんだこのガキは!?」
「歴代の愛し子達でこんなにも凄まじい光の魔法を使える者など一人もいなかったのですが⋯一体この子は⋯」
闇に堕ちたが、セラムは生命神として創造神ラズゴーンに次いで最も古い神の一神であった。力も本来までは及ばないものの、今でも相当な力を持っているセラムが今回は一歩も動けなかったのだ。
暫く光を放ち続けた”スマホ“だが、少しずつ収まっていった。
「あれ?ここはどこ?真っ暗じゃない!!」
眩しく目を瞑っていたユリアとコウが目を開けると、そこには変わった服を着た少女が立っていた。髪は真っ黒な長髪で、瞳も黒であった。民族衣装のような紺色の服に大きな赤いリボンをつけていた。そして同じ紺色の膝までのスカートを履いていた。見たこともない青色の肩掛けカバンを持っていて、可愛らしい熊のような人形がチェーンのようなものでそのカバンに付いていた。
「だれでしゅか?」
「⋯え?えええーーー!!!」
目の前にあの金髪の可愛らしい幼子がいる事に驚いた少女は、つい幼子の頬をプニプニしてしまう。
「なんでしゅか?」
「何だお前は!?ユリアに触るなーー!!」
意味が分からない少女の行動に首を傾げるユリアと、警戒して少女を威嚇するコウ。
「え?あの妖精さん!?目の前にいるーー!!可愛い!!」
「何だよ!近寄るな!!⋯おい!!お前達が招いた事だぞ!どうにかしろよ!」
少女にロックオンされたコウは必死に逃げ回りながら、ずっと黙ったままのセラムとミリーに猛抗議する。
「あ⋯ああ。本当にユメだ⋯セラム様!目の前にユメがいます!!」
大粒の涙を流しながら喜ぶミリーだが、見た目はユリアと同じくらいの幼子だ。ユメは急に泣き出したミリーに急いで近寄って行った。
「おちびちゃん!どうしたの?ポンポンが痛いの?」
「このお馬鹿な感じ⋯ユメですよ!」
「失礼なおちびちゃんね!飴ちゃんあげようと思ったけど、考えさせていただきます!」
ミリーのお腹を心配そうに摩っていたユメだが、お馬鹿と言われてプンスカ怒っていた。
「あめちゃんってにゃんでしゅか!!」
ユメが持っているカバンに付いている熊の人形に興味津々だったユリアが、あめちゃんに惹かれてユメに詰め寄る。
「あめちゃんは甘くて美味しいのよ!はい、これあげるから!これはいちご味よ!」
ユメはカバンから小さな赤い包み紙を取り出してユリアに渡した。
「キャーー!かわいいでしゅねー!⋯⋯どうやって食べるんでしゅか?」
「このギザギザしたところをこうやって引っ張ると⋯ほら開いたでしょ?」
ユメは丁寧に包み紙の開け方をユリアに説明してあげた。包み紙から出てきた甘い香りのする飴にうっとりしながら口に入れた。
「おいちいーー!!」
あまりの美味しさに大興奮して小躍りを始めたユリアと、そんなユリアを見て自分も欲しいとユメに飴を催促するコウ。
「妖精さんには大きいかな~?飴ってどう割るの?ん?」
飴を前に頭を抱えていたユメだが、そこへコウがやって来て魔法で簡単に細かく割った。
「⋯⋯」
口に飴を頬張り、美味しそうに舐めているコウと美味しさのあまり小躍りを続けるユリアだった。そしてセラムはというと、目の前に夢にまで見たユメがいる嬉しさと、同時に何故か自分とミリーを知らない彼女に寂しさを感じていた。
(何故この世界の記憶が無いのか⋯まさかラズゴーンが?)
ミリーにも飴をあげているユメを見ながら、セラムは今後の事を考える。そして⋯
「よし、旅に出ましょう」
突拍子のないセラムの爆弾発言に皆がそれぞれの動きを止めたのだった。
セラムは必死になってユリアの頭に引っ付いている“スマホ”に語りかけていた。
『⋯セラム?何で私の名前を知ってるの?』
“スマホ”の中から聞こえてくる女性の声。そして、その女性の衝撃的な発言にセラムもミリーも固まってしまう。
「おい!お前はユメって女じゃないのか!?」
『ええ、私は徳丸夢よ?⋯⋯ん?あなたは妖精さん!?凄い!初めて見たわ!!』
「おい、徳丸夢だって言ってるぞ?なのにお前たちの事を知らない感じだぞ!?」
徳丸夢と名乗った“スマホ”から聞こえる声は、目の前にいる妖精コウを見て感動していた。コウも訳が分からずにセラムとミリーに説明を求めた。
「ユメ!!俺だよ!時の精霊王ミリーだよ!!昔よく一緒に遊んでくれたじゃないか!!」
必死に訴えかけるミリーと、未だに放心状態から抜け出せないセラム。
『ミリー?⋯ごめんなさい、記憶が無いの⋯。確か学校の帰り道で事故に遭って⋯長い間眠っていたような感覚で⋯眩しい光に呼ばれて気がついたら真っ暗なここに立っていたの⋯』
「くらいにょー?」
ユリアが“スマホ”の悲しそうな声に反応した。
『ええ。この画面以外は真っ暗で何も見えないの』
「がめんー?ユリアのとこりょにくれば?」
ユリアはそう言うと、自分の頭に引っ付いたままの”スマホ“を手に取った。すると”スマホ“が激しく光出して、薄暗く不気味なこの屋敷全体を光が飲み込んだ。セラムとミリーはこの凄まじい光の魔力に一歩も動けずにいた。
「おい!何なんだこのガキは!?」
「歴代の愛し子達でこんなにも凄まじい光の魔法を使える者など一人もいなかったのですが⋯一体この子は⋯」
闇に堕ちたが、セラムは生命神として創造神ラズゴーンに次いで最も古い神の一神であった。力も本来までは及ばないものの、今でも相当な力を持っているセラムが今回は一歩も動けなかったのだ。
暫く光を放ち続けた”スマホ“だが、少しずつ収まっていった。
「あれ?ここはどこ?真っ暗じゃない!!」
眩しく目を瞑っていたユリアとコウが目を開けると、そこには変わった服を着た少女が立っていた。髪は真っ黒な長髪で、瞳も黒であった。民族衣装のような紺色の服に大きな赤いリボンをつけていた。そして同じ紺色の膝までのスカートを履いていた。見たこともない青色の肩掛けカバンを持っていて、可愛らしい熊のような人形がチェーンのようなものでそのカバンに付いていた。
「だれでしゅか?」
「⋯え?えええーーー!!!」
目の前にあの金髪の可愛らしい幼子がいる事に驚いた少女は、つい幼子の頬をプニプニしてしまう。
「なんでしゅか?」
「何だお前は!?ユリアに触るなーー!!」
意味が分からない少女の行動に首を傾げるユリアと、警戒して少女を威嚇するコウ。
「え?あの妖精さん!?目の前にいるーー!!可愛い!!」
「何だよ!近寄るな!!⋯おい!!お前達が招いた事だぞ!どうにかしろよ!」
少女にロックオンされたコウは必死に逃げ回りながら、ずっと黙ったままのセラムとミリーに猛抗議する。
「あ⋯ああ。本当にユメだ⋯セラム様!目の前にユメがいます!!」
大粒の涙を流しながら喜ぶミリーだが、見た目はユリアと同じくらいの幼子だ。ユメは急に泣き出したミリーに急いで近寄って行った。
「おちびちゃん!どうしたの?ポンポンが痛いの?」
「このお馬鹿な感じ⋯ユメですよ!」
「失礼なおちびちゃんね!飴ちゃんあげようと思ったけど、考えさせていただきます!」
ミリーのお腹を心配そうに摩っていたユメだが、お馬鹿と言われてプンスカ怒っていた。
「あめちゃんってにゃんでしゅか!!」
ユメが持っているカバンに付いている熊の人形に興味津々だったユリアが、あめちゃんに惹かれてユメに詰め寄る。
「あめちゃんは甘くて美味しいのよ!はい、これあげるから!これはいちご味よ!」
ユメはカバンから小さな赤い包み紙を取り出してユリアに渡した。
「キャーー!かわいいでしゅねー!⋯⋯どうやって食べるんでしゅか?」
「このギザギザしたところをこうやって引っ張ると⋯ほら開いたでしょ?」
ユメは丁寧に包み紙の開け方をユリアに説明してあげた。包み紙から出てきた甘い香りのする飴にうっとりしながら口に入れた。
「おいちいーー!!」
あまりの美味しさに大興奮して小躍りを始めたユリアと、そんなユリアを見て自分も欲しいとユメに飴を催促するコウ。
「妖精さんには大きいかな~?飴ってどう割るの?ん?」
飴を前に頭を抱えていたユメだが、そこへコウがやって来て魔法で簡単に細かく割った。
「⋯⋯」
口に飴を頬張り、美味しそうに舐めているコウと美味しさのあまり小躍りを続けるユリアだった。そしてセラムはというと、目の前に夢にまで見たユメがいる嬉しさと、同時に何故か自分とミリーを知らない彼女に寂しさを感じていた。
(何故この世界の記憶が無いのか⋯まさかラズゴーンが?)
ミリーにも飴をあげているユメを見ながら、セラムは今後の事を考える。そして⋯
「よし、旅に出ましょう」
突拍子のないセラムの爆弾発言に皆がそれぞれの動きを止めたのだった。
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