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3巻
3-3
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「このガキが! 誰かこのガキを拘束しろ!」
怒り狂う男性は、近くを巡回していた兵士に命令する。だが兵士達は一向に動かず、何故かユリアが彼らに向かって手を振る。
「こんちはー!」
「「「「こんちはー!」」」」と、デレデレして手を振り返す兵士達。
その光景に唖然とする男性と可憐な女性。ユリアは高貴そうな女性の元に歩いていく。
「だいじょぶー?」と心配そうに女性を見るユリア。
「ユリア王女! まぁ可愛らしいわ!」
「ユリア……かわいい……エヘヘ」
高貴そうな女性は恍惚としており、ユリアは泥まみれのまま照れている。
男性がユリアと女性に詰め寄ろうとすると、後ろが騒がしくなる。そこにはシロとカイル達がいた。
「ユリア……何してるんだ?」
修羅場の真ん中にちょこんといるユリアに呆れるシロ。カイルとルウは、一生懸命な足取りでユリアの元に行く。
「ユリア、しゃがちたよ!」とぷんすか怒るカイル。
「おにゃかしゅいた」と何処までもマイペースなルウ。
「キャー! まぁまぁ可愛らしい!」
高貴そうな女性はもはや「高貴」からは程遠く、おちび達に悶えている。その光景に驚きを隠せない男性と可憐な女性。
ユリアは男性を見るとぷんすか怒る。
「おんなのこ、いじめたらダメでしゅよ! このちとのうちろにいるこが、おこってましゅ!」
ユリアはそう言って高貴そうな女性を見る。
「この人の後ろにいる子が怒っている」――その言葉の意味を理解したシロは溜め息を吐くと、女性に声をかけた。
「お前は精霊使いか?」
「精霊使い?……いえ」と首を傾げる女性。
すると女性の後ろの空間が光り出して、金色の髪を靡かせた少年が現れた。
「あー! こんちはー!」
ユリアが高貴そうな女性の後ろに現れた少年に挨拶する。少年は驚いてユリアに近付いてくる。
『僕が見えるの?』
「みえりゅよ」
見つめ合うユリアと少年。カイルはやきもちを焼いたのか、頬を膨らませてその間に割って入る。ルウはぼぅーと見ているだけだが、その視線は確かに少年を捉えていた。
「あにゃたはなにものでしゅか⁉」とカイルが問う。
『君達にも見えるんだ! 僕はラルフ、フレア姉様を助けて!』
少年の言葉におちび達は首を傾げる。
ユリアはぽかんとしている女性に声をかける。
「おねーしゃんはフレアねーしゃまでしゅか?」
「は……はい! 私はホークイン公爵家長女、フレア・ホークインと申します」
洗練された挨拶をするフレア。その後ろでドヤ顔をするラルフ少年。シロは埒が明かないとフレアに説明する。
「見えていないようだが、お前の後ろに子供がいる。魔力が強いから精霊の類かと思ったが……人間か? 死霊ではないな……まだ生きている」
「らりゅふっていってりゅよー!」
ユリアの言葉に反応するフレア。
「……今、ラルフって言いましたか? あの子が……あの子がいるんですか!」
「「「いりゅよー」」」と一斉にラルフを指差すおちび達。
『見える人がいて良かった! あの二人が姉様を悪者にしているんです! 姉様は何もしていないのに!』
「ひどいでしゅね!」
「うん!」
「……ぶぅ」
ラルフの説明に、ユリア、カイル、ルゥがそれぞれ怒りの気持ちを表明する。ルゥだけはブーイングだ。
そんな中、フレアは涙ながらに後ろの空間に呼びかけた。
「あの……ラルフ? 聞こえる? お願いだから目覚めて……お父様もお母様も私も待っているのよ?」
「何~? 気味が悪いわ……」
ラルフが見えないでいる可憐な女性は眉をひそめ、男性は何かに気付いた様子を見せた。
「ラルフってお前の弟か! まだ生きていたのか?」
その言葉に男性を睨み付けるフレア。
「あの子は〝天使花〟さえ手に入れば助かるの!」
「あの花はいくら金を積んでも手に入らないぞ? 運だからな~? それまであのガキが耐えられるかだな! ギャハハ!」
悔しくても言い返せないフレアを、男性と女性は更に馬鹿にした。
『あいつら~!』
ラルフはギリリと歯噛みする。
それを見ていたユリアは、フレアの元に行くとポケットからあるものを出す。それは泥まみれだが、それでも光り輝いていた。
「これは……〝天使花〟⁉」
『わーお!』
「「ええーー‼」」
フレア、ラルフ、男性と可憐な女性がそれぞれ驚く。ラルフは興奮のあまり変な驚き方になっていた。
「いっぱいあるかりゃあげゆー!」とニコニコ笑うユリア。
フレアは泣きながらユリアにこれでもかとお礼を言うと、男性達を無視して急いで屋敷に戻って行った。
ラルフも深々と頭を下げる。
『ユリア王女、ありがとうございます! ユリア王女にここで出会えたことに感謝します! また会いに行きます!』
「うん! らりゅふ、またねー!」とユリアは去っていくラルフに手を振った。
その一部始終を離れた所で見ていたアネモネとフローリアは、笑うしかない。ルイーザは嬉しそうに拍手している。それに気付いたユリア達が手を振りながら、大人達の元へ戻っていく。
男性と女性は王族の登場に急いで平伏したが、もう遅い。
シロが二人の前に立つと、ユリアが後ろから大声で言った。
「ひっとりゃえろー!」
「「「「おおーー!」」」」
周りで見守っていた兵士達が、ユリアの一言で一斉に二人を取り囲む。
「……ユリア、そんな言葉、何処で覚えたんだ?」
「あにちーー!」
「だよな……」と溜め息を吐くシロ。
兵士に捕らえられた男性と女性が暴れていると、アネモネとフローリアがやって来て、悪魔も凍りつくような笑顔でこう言った。
「私の可愛い娘を怒鳴り付けたんですって?」
「私の可愛い孫を怒鳴り付けたんですって?」
「たあ! たあたあ! たあーー!」と、フローリアの腕の中でぷんすか怒るルイーザ。
冷気すら漂う怒気を前にへたり込んで震える二人。彼らはすぐさま拘束された。
後日、フレアの潔白が証明され、ホークイン公爵、そして夫人とフレアが、元気になったラルフと共にお礼の挨拶に、王宮へやって来た。
「あーー! らりゅふっー!」
元気に手を振るユリアに、満面の笑みで手を振るラルフとフレアだった。
一方で、地下牢に拘束されている男性と女性の前には、殺気立った二人の男が立っていた。
「ユリアを小汚いって言ったんだって? お前達の方がどんなに汚いか……まぁ言ったことを後悔するんだな」
そう言うと、オーランドはチェスターと共に牢の鍵を開けて入っていく。
この日、地下牢から男女の悲鳴が聞こえてきたとか、こないとか。
第2話 真実を確かめよう!
ジェスの出現から数日後のこと。
「ガイナス・ロンド公爵、顔を上げよ」
冷たく威厳のある声が、謁見の間に響き渡る。ガイナス・ロンドは跪いたまま顔を上げた。
声の主はオーランド国王。その横にはガイナスの知らない長髪の男性と、緑色の髪の少年が立っている。部屋の中には王弟ケイシーと、歴代最強と謳われたオーウェン前国王もいた。
王宮魔術師団長としての仕事に追われていたガイナスの元に、今朝いきなり国王からの使者が来て、至急謁見の間に来るようにと言われて今に至っているが、この息苦しい緊張感に手足が小刻みに震える。
「どうですか? この者ですか?」
オーランド国王は、横に堂々と立つ男性と緑色の髪の少年に声をかける。ガイナスが見るに、男性の方は何処となくオーランドに似ていた。
「「違う」」
二人が同時に否定する。
「コーナスじゃない、魔力も違う」
長髪の男性――ジェスがきっぱりと断言する。
「コーナスじゃないね~、魔力もコーナス程じゃない」
緑髪の少年――マーリンも同じく否定する。マーリンはコーナス捜索の手助けこそしないが、面通しの役目は拒否しなかった。
オーランドは訳が分からずにいるガイナスに全ての事情を話すことにする。今の問答は、万が一コーナスがガイナスに成り代わっていたら、という疑いを晴らすためのものだったことも。
ガイナスは青ざめて、ジェスの方を向き急いで平伏した。
「初代国王陛下! 我が先祖コーナスの非道な行いの数々……何ということを……誠に申し訳ありませんでした!」
「お前達子孫に罪はない。……このまま子孫に迷惑をかけるのか⁉」
いきなり大声を出したジェスに驚くガイナス。
「いるんだろ? 憎い俺がいるんだ! 出てこい!」
「「「「「「…………」」」」」」
全員黙って耳を欹てるが、何も反応がない。
「……あれ? 絶対いるはずなのに! 俺恥ずかしいんだけど!」
ジェスがあわあわと焦り出す。
「あーー! 嘘だろ! あははは!」
マーリンは突然驚いた声を上げ、そして笑い出した。
「どうしたんだ?」とジェスが恐る恐る聞く。
「コーナスは今からやって来るよ!」
マーリンが言ったと同時に、謁見の間のドアが開く。そしてそこに立っていたのは――
「はいってもいいでしゅかーー!」
ユリアだった。
「「「「ユリア⁉」」」」
「はいりまちゅよ! わるいちとつれてきまちた!」
ユリアの後ろからシロとクロノスに連れられて、コーナス・ロンドが現れた。酷く痩せ細り、頬はこけて随分老け込んでいる。シロ達が手を離すと、たちまち床に倒れ込んだ。
見る影もない痛々しい姿にジェスは驚く。
「一体何があったんだ⁉」
オーランドがユリアに近付いていき、怪我がないか確認した。
「ユリアはだいじょぶよー! あにょね、ユリアのパンチでわるいちとたおちたの!」
「ユリアのパンチ?……え?」
反応に困り、上手く返せないオーランド。
説明を求め、皆の視線がシロとクロノスに集中した。
シロが淡々と説明を始める。
「コーナス・ロンドは、ガイナスの影に忍び込んで謁見の間まで来るつもりだった。だが、ユリアがそれを……阻止した」
皆がユリアを見る。ユリアは倒れているコーナス・ロンドをマーリンと一緒にツンツンしている。
それは今から数十分前に起きた。
いつものように中庭で遊ぶためにシロとクロノスと共に歩いていたユリアだったが、前方を歩いていたガイナスを見つけると、急にピタリと止まってしまう。
「どうしたんだ、ユリア? お腹が痛いのか?」
「お前は食べすぎだぞ!」
そんなユリアを心配するシロとクロノスだったが、彼らも前方にいる男の異変に気付いた。
「あのちとのうちろがモヤモヤちてるー‼」
男の影に何かが潜んでいることに気付いたユリアは、追いかけようと手を伸ばす。
するとその手に吸い寄せられるように、黒く悍ましい煙が湧いて出てきた。ガイナスは自身の影に起きている異変に気付かず、そのまま王宮の中へと去ってしまった。
中庭に残された煙からユリアを守るように立ちはだかるのは、最強の魔物シロと竜王クロノスだ。二人が簡単に黒い煙を吹き飛ばすと、そこから黒いマントを被った男が落ちてきた。
男の姿は骸骨のように痩せこけて、顔は青白く、死霊のような陰気さが更に悍ましさを際立たせていた。
その澱んだ目からは、あらゆるものを惑わせ地獄に落とすことに対し、何の躊躇いもない残酷さが滲み出ていた。そしてクロノスには、全てを憎んでいるような激しい怒りや悲しみ、そして〝後悔〟が感じとれた。
「うぅ……もう少しであいつの所まで行けたのに……くそ!」
悪態を吐きながら、悔しそうにユリアを睨み付ける男。
「お前のせいであの悪習がなくなり! ルウズビュードが……苦労して破滅に追いやったはずのジェスが……‼ 〝神の愛し子〟だと⁉ そんなこと信じられるか‼」
ジェス復活の原因であるユリアに向かって、男は闇の魔法で攻撃してきた。
だが、ファイテングポーズをとってヤル気満々のユリアに攻撃が当たることはなく、体の周りに現れた防御壁に弾かれて、その攻撃が男に返っていく。ユリアに害をなす攻撃を撥ね返すという、クロノスの与えた加護だ。
男は自身に当たる寸前でかわしたが、驚きを隠せない。
「まさか……竜王の加護を得ているのか? 竜族とは国交を断絶したはずだぞ⁉」
「ああ、やはりお前のせいか、コーナス・ロンド。父上を騙せたとは……まぁあの時は母上に色々あってルウズビュードにまで気が回らなかったんだろうが、あれからずっと後悔していた。ジェードの件も、誤解を招くような伝え方をしたな?」
竜王クロノスとして問うそのあまりの迫力に、一瞬怯んでしまったコーナスだが、気を持ち直して話し出す。
「はじめまして。貴方が二代目竜王、クロノス様ですね。ラクロウ様は随分と心が弱いお方でした。奥方様の件で更に弱っておいででしたので、ジェスやジェードがいかに非道かを丁寧にお伝えしました」
卑しく笑うコーナスの言葉を、クロノスはただ黙って聞いているだけだった。
しかし――
「きゅろをいじめりゅなーー‼」
クロノスの長い脚の間から顔を出して、ユリアは短い手で一生懸命にパンチを繰り出した。勿論この距離で拳が届くわけもない。そんな幼子を小馬鹿にして見ていたコーナスだったが、次の瞬間、勢い良く後方に吹っ飛び気絶してしまった。
「何が起こったんだ⁉」
呆然とするシロと笑いが込み上げてくるクロノス。
「あははは! ユリア! お前のパンチ、強いな‼」
「えっへん‼ ユリアはちゅよいんでしゅ‼」
そう言ってまたパンチを繰り出そうとするユリアをシロが急いで止め、クロノスは気絶したコーナスを早速捕まえた。
そして今、謁見の間には転がるコーナスとドヤ顔のユリアという構図が生まれていた。
「コーナスがユリアに攻撃しようとして……クロノス様の強力な防御魔法に返り討ちにされたと?」
オーウェンは現実から目を背けようと、話を作り変えようとする。オーウェンとアネモネにとって、ユリアが常識外れの能力を次々と獲得していることは頭痛の種だった。
「ちがうもん! ユリアがパンチしてたおちたにょ!」
だが、愛娘ユリアによって現実に引き戻される。
「ユリア~凄いね~!」
ぶれないのはオーランドだけだ。
「エヘヘ~!」
照れるユリアだが、正しくは、パンチした瞬間に強烈な波動がコーナスに向けて放たれたのだ。
ジェスはユリアの頭を優しく撫でると、倒れているコーナスの元へ歩いていった。
ジェスはコーナスの頬を叩いて無理矢理起こそうとする。そして頬の痛みで目が覚めたコーナスは、封印したはずの憎しみの根源を目の前に捉えた。
「おい、そんなに俺が憎いか?」
ジェスはコーナスの前に立ち問いかけるが、何も返答はない。コーナスはただ黙り、ジェスを睨み付けている。
「なぁ、コーナス・ロンドがこの時代で死んだら子孫達はどうなる?」
ジェスが後ろにいる魔神マーリンに聞く。
「変わらないよ。こいつがこんな感じになっちゃった後は、奥さんが息子のために家を守っていたからね。女傑って感じの凄い人だよ! こいつには本当に勿体ないよ!」
「アイリーンか……彼女なら大丈夫だ」
そう言いジェスが笑うと、黙っていたコーナスがいきなり喚き出した。
「黙れ! アイリーンも……お前のことを好いていた! 何処までも私のモノを奪っていくんだ!」
怒りに震えるコーナスの脳裏には、これまでの記憶が蘇っていた。
遥か昔の話だ。コーナスとジェスは、共に建国に力を尽くした同志であり親友だった。
ジェスという男は皆をまとめ上げるカリスマ性や、圧倒的な力、そしてその人柄で人々から支持されていた。
そんなジェスの右腕として苦楽を共にしていたコーナスには、アイリーンという愛しの妻がいたが、彼女はいつもジェスの話ばかりしていた。自分がどんなに頑張っても、アイリーンも人々もジェスを称賛する。二人の間には息子がいたが、それもコーナスの慰めにはならなかった。
次第に劣等感と嫉妬に苛まれるようになったコーナスは家に帰らなくなり、王宮で暗躍するようになる。ジェスがいなくなればアイリーンは、人々は自分を評価してくれると考え、ジェスを恐れる人族達を上手く利用することにした。
そして運命の日。
人族達からの和睦したいという申し出を喜んで受け入れたジェスを待ち受けていたのは、親友からの残酷な裏切りだった。
隙をついてジェスの封印に成功したコーナスは早速、国中に嘘の情報を流して国王の乱心だと広めるが、キリヤやジェードはその話を決して受け入れず、側近や国民すらも信じようとせずにジェスの行方を探し始めた。
そしてアイリーンもその捜索隊に参加すると聞いたコーナスは、更に怒りと絶望感で我を失っていき、禁忌とされる闇魔法を使い始めた。命を削る代償にキリヤやジェード、側近達に強い【魅了】をかけたのだ。そしてジェスや自身が大切にしていた国が滅びに近付くのを楽しんでさえいた。
ただ、アイリーンには【魅了】をかけられなかった。今のこの醜い姿を彼女だけには見られたくなかったのだ。
そしてジェードの死を見届けたコーナスは、彼の息子達にも【魅了】をかけた。王女は災いの種だと信じ込ませるために。
この頃、コーナスの暗躍によって粛清の嵐が吹き荒れ、そして疫病によって竜人達は確実に数を減らしていた。
このまま混乱期が続けば国はいずれ破滅するだろうが、コーナスにゆっくりと見ている時間はもうない。そのため、ジェードの息子達を争わせる計画を立てていた時、ずっと持ち歩いていたジェスを封印した箱が急に光り出して、忽然と消えてしまったのだ。
突然のことで酷く焦ったコーナスだが、何故か箱の気配は感じていて、後を追うために調べたところ、かなり先の時代に飛ばされたことが分かった。その時代に行くには更に命を削らなければならない上に、二度とこの時代には戻れない。
考えたのはアイリーンのことだ。だが、こんな闇にまみれた男が近くにいない方がいいと思い、結局会わずに未来にやって来た。
そして驚愕の事実が判明する。この時代ではあの悪習がなくなり、平和な国になっていたからだ。
原因はユリアという王女で、その幼子は最強の魔物を従えた〝神の愛し子〟だという。エズラという少女を利用して、また一から暗躍しつつ、封印の箱を探し始めたが、問題が一つあった。この時代にやって来てからは、不思議なことに箱の気配が急に消えたのだ。
そして、何もかも上手くいかないコーナスに追い打ちをかけるように、ジェスの気配が復活した。箱から出られたとしても待っているのは死しかないはずの忌々しい男は、何故か生きていた。
王宮にいることが分かったので、ジェスをまた封印しようと子孫であるガイナスの影に隠れて無事に忍び込んだが、運悪くあの幼子に遭遇してしまったのだ。
怒り狂う男性は、近くを巡回していた兵士に命令する。だが兵士達は一向に動かず、何故かユリアが彼らに向かって手を振る。
「こんちはー!」
「「「「こんちはー!」」」」と、デレデレして手を振り返す兵士達。
その光景に唖然とする男性と可憐な女性。ユリアは高貴そうな女性の元に歩いていく。
「だいじょぶー?」と心配そうに女性を見るユリア。
「ユリア王女! まぁ可愛らしいわ!」
「ユリア……かわいい……エヘヘ」
高貴そうな女性は恍惚としており、ユリアは泥まみれのまま照れている。
男性がユリアと女性に詰め寄ろうとすると、後ろが騒がしくなる。そこにはシロとカイル達がいた。
「ユリア……何してるんだ?」
修羅場の真ん中にちょこんといるユリアに呆れるシロ。カイルとルウは、一生懸命な足取りでユリアの元に行く。
「ユリア、しゃがちたよ!」とぷんすか怒るカイル。
「おにゃかしゅいた」と何処までもマイペースなルウ。
「キャー! まぁまぁ可愛らしい!」
高貴そうな女性はもはや「高貴」からは程遠く、おちび達に悶えている。その光景に驚きを隠せない男性と可憐な女性。
ユリアは男性を見るとぷんすか怒る。
「おんなのこ、いじめたらダメでしゅよ! このちとのうちろにいるこが、おこってましゅ!」
ユリアはそう言って高貴そうな女性を見る。
「この人の後ろにいる子が怒っている」――その言葉の意味を理解したシロは溜め息を吐くと、女性に声をかけた。
「お前は精霊使いか?」
「精霊使い?……いえ」と首を傾げる女性。
すると女性の後ろの空間が光り出して、金色の髪を靡かせた少年が現れた。
「あー! こんちはー!」
ユリアが高貴そうな女性の後ろに現れた少年に挨拶する。少年は驚いてユリアに近付いてくる。
『僕が見えるの?』
「みえりゅよ」
見つめ合うユリアと少年。カイルはやきもちを焼いたのか、頬を膨らませてその間に割って入る。ルウはぼぅーと見ているだけだが、その視線は確かに少年を捉えていた。
「あにゃたはなにものでしゅか⁉」とカイルが問う。
『君達にも見えるんだ! 僕はラルフ、フレア姉様を助けて!』
少年の言葉におちび達は首を傾げる。
ユリアはぽかんとしている女性に声をかける。
「おねーしゃんはフレアねーしゃまでしゅか?」
「は……はい! 私はホークイン公爵家長女、フレア・ホークインと申します」
洗練された挨拶をするフレア。その後ろでドヤ顔をするラルフ少年。シロは埒が明かないとフレアに説明する。
「見えていないようだが、お前の後ろに子供がいる。魔力が強いから精霊の類かと思ったが……人間か? 死霊ではないな……まだ生きている」
「らりゅふっていってりゅよー!」
ユリアの言葉に反応するフレア。
「……今、ラルフって言いましたか? あの子が……あの子がいるんですか!」
「「「いりゅよー」」」と一斉にラルフを指差すおちび達。
『見える人がいて良かった! あの二人が姉様を悪者にしているんです! 姉様は何もしていないのに!』
「ひどいでしゅね!」
「うん!」
「……ぶぅ」
ラルフの説明に、ユリア、カイル、ルゥがそれぞれ怒りの気持ちを表明する。ルゥだけはブーイングだ。
そんな中、フレアは涙ながらに後ろの空間に呼びかけた。
「あの……ラルフ? 聞こえる? お願いだから目覚めて……お父様もお母様も私も待っているのよ?」
「何~? 気味が悪いわ……」
ラルフが見えないでいる可憐な女性は眉をひそめ、男性は何かに気付いた様子を見せた。
「ラルフってお前の弟か! まだ生きていたのか?」
その言葉に男性を睨み付けるフレア。
「あの子は〝天使花〟さえ手に入れば助かるの!」
「あの花はいくら金を積んでも手に入らないぞ? 運だからな~? それまであのガキが耐えられるかだな! ギャハハ!」
悔しくても言い返せないフレアを、男性と女性は更に馬鹿にした。
『あいつら~!』
ラルフはギリリと歯噛みする。
それを見ていたユリアは、フレアの元に行くとポケットからあるものを出す。それは泥まみれだが、それでも光り輝いていた。
「これは……〝天使花〟⁉」
『わーお!』
「「ええーー‼」」
フレア、ラルフ、男性と可憐な女性がそれぞれ驚く。ラルフは興奮のあまり変な驚き方になっていた。
「いっぱいあるかりゃあげゆー!」とニコニコ笑うユリア。
フレアは泣きながらユリアにこれでもかとお礼を言うと、男性達を無視して急いで屋敷に戻って行った。
ラルフも深々と頭を下げる。
『ユリア王女、ありがとうございます! ユリア王女にここで出会えたことに感謝します! また会いに行きます!』
「うん! らりゅふ、またねー!」とユリアは去っていくラルフに手を振った。
その一部始終を離れた所で見ていたアネモネとフローリアは、笑うしかない。ルイーザは嬉しそうに拍手している。それに気付いたユリア達が手を振りながら、大人達の元へ戻っていく。
男性と女性は王族の登場に急いで平伏したが、もう遅い。
シロが二人の前に立つと、ユリアが後ろから大声で言った。
「ひっとりゃえろー!」
「「「「おおーー!」」」」
周りで見守っていた兵士達が、ユリアの一言で一斉に二人を取り囲む。
「……ユリア、そんな言葉、何処で覚えたんだ?」
「あにちーー!」
「だよな……」と溜め息を吐くシロ。
兵士に捕らえられた男性と女性が暴れていると、アネモネとフローリアがやって来て、悪魔も凍りつくような笑顔でこう言った。
「私の可愛い娘を怒鳴り付けたんですって?」
「私の可愛い孫を怒鳴り付けたんですって?」
「たあ! たあたあ! たあーー!」と、フローリアの腕の中でぷんすか怒るルイーザ。
冷気すら漂う怒気を前にへたり込んで震える二人。彼らはすぐさま拘束された。
後日、フレアの潔白が証明され、ホークイン公爵、そして夫人とフレアが、元気になったラルフと共にお礼の挨拶に、王宮へやって来た。
「あーー! らりゅふっー!」
元気に手を振るユリアに、満面の笑みで手を振るラルフとフレアだった。
一方で、地下牢に拘束されている男性と女性の前には、殺気立った二人の男が立っていた。
「ユリアを小汚いって言ったんだって? お前達の方がどんなに汚いか……まぁ言ったことを後悔するんだな」
そう言うと、オーランドはチェスターと共に牢の鍵を開けて入っていく。
この日、地下牢から男女の悲鳴が聞こえてきたとか、こないとか。
第2話 真実を確かめよう!
ジェスの出現から数日後のこと。
「ガイナス・ロンド公爵、顔を上げよ」
冷たく威厳のある声が、謁見の間に響き渡る。ガイナス・ロンドは跪いたまま顔を上げた。
声の主はオーランド国王。その横にはガイナスの知らない長髪の男性と、緑色の髪の少年が立っている。部屋の中には王弟ケイシーと、歴代最強と謳われたオーウェン前国王もいた。
王宮魔術師団長としての仕事に追われていたガイナスの元に、今朝いきなり国王からの使者が来て、至急謁見の間に来るようにと言われて今に至っているが、この息苦しい緊張感に手足が小刻みに震える。
「どうですか? この者ですか?」
オーランド国王は、横に堂々と立つ男性と緑色の髪の少年に声をかける。ガイナスが見るに、男性の方は何処となくオーランドに似ていた。
「「違う」」
二人が同時に否定する。
「コーナスじゃない、魔力も違う」
長髪の男性――ジェスがきっぱりと断言する。
「コーナスじゃないね~、魔力もコーナス程じゃない」
緑髪の少年――マーリンも同じく否定する。マーリンはコーナス捜索の手助けこそしないが、面通しの役目は拒否しなかった。
オーランドは訳が分からずにいるガイナスに全ての事情を話すことにする。今の問答は、万が一コーナスがガイナスに成り代わっていたら、という疑いを晴らすためのものだったことも。
ガイナスは青ざめて、ジェスの方を向き急いで平伏した。
「初代国王陛下! 我が先祖コーナスの非道な行いの数々……何ということを……誠に申し訳ありませんでした!」
「お前達子孫に罪はない。……このまま子孫に迷惑をかけるのか⁉」
いきなり大声を出したジェスに驚くガイナス。
「いるんだろ? 憎い俺がいるんだ! 出てこい!」
「「「「「「…………」」」」」」
全員黙って耳を欹てるが、何も反応がない。
「……あれ? 絶対いるはずなのに! 俺恥ずかしいんだけど!」
ジェスがあわあわと焦り出す。
「あーー! 嘘だろ! あははは!」
マーリンは突然驚いた声を上げ、そして笑い出した。
「どうしたんだ?」とジェスが恐る恐る聞く。
「コーナスは今からやって来るよ!」
マーリンが言ったと同時に、謁見の間のドアが開く。そしてそこに立っていたのは――
「はいってもいいでしゅかーー!」
ユリアだった。
「「「「ユリア⁉」」」」
「はいりまちゅよ! わるいちとつれてきまちた!」
ユリアの後ろからシロとクロノスに連れられて、コーナス・ロンドが現れた。酷く痩せ細り、頬はこけて随分老け込んでいる。シロ達が手を離すと、たちまち床に倒れ込んだ。
見る影もない痛々しい姿にジェスは驚く。
「一体何があったんだ⁉」
オーランドがユリアに近付いていき、怪我がないか確認した。
「ユリアはだいじょぶよー! あにょね、ユリアのパンチでわるいちとたおちたの!」
「ユリアのパンチ?……え?」
反応に困り、上手く返せないオーランド。
説明を求め、皆の視線がシロとクロノスに集中した。
シロが淡々と説明を始める。
「コーナス・ロンドは、ガイナスの影に忍び込んで謁見の間まで来るつもりだった。だが、ユリアがそれを……阻止した」
皆がユリアを見る。ユリアは倒れているコーナス・ロンドをマーリンと一緒にツンツンしている。
それは今から数十分前に起きた。
いつものように中庭で遊ぶためにシロとクロノスと共に歩いていたユリアだったが、前方を歩いていたガイナスを見つけると、急にピタリと止まってしまう。
「どうしたんだ、ユリア? お腹が痛いのか?」
「お前は食べすぎだぞ!」
そんなユリアを心配するシロとクロノスだったが、彼らも前方にいる男の異変に気付いた。
「あのちとのうちろがモヤモヤちてるー‼」
男の影に何かが潜んでいることに気付いたユリアは、追いかけようと手を伸ばす。
するとその手に吸い寄せられるように、黒く悍ましい煙が湧いて出てきた。ガイナスは自身の影に起きている異変に気付かず、そのまま王宮の中へと去ってしまった。
中庭に残された煙からユリアを守るように立ちはだかるのは、最強の魔物シロと竜王クロノスだ。二人が簡単に黒い煙を吹き飛ばすと、そこから黒いマントを被った男が落ちてきた。
男の姿は骸骨のように痩せこけて、顔は青白く、死霊のような陰気さが更に悍ましさを際立たせていた。
その澱んだ目からは、あらゆるものを惑わせ地獄に落とすことに対し、何の躊躇いもない残酷さが滲み出ていた。そしてクロノスには、全てを憎んでいるような激しい怒りや悲しみ、そして〝後悔〟が感じとれた。
「うぅ……もう少しであいつの所まで行けたのに……くそ!」
悪態を吐きながら、悔しそうにユリアを睨み付ける男。
「お前のせいであの悪習がなくなり! ルウズビュードが……苦労して破滅に追いやったはずのジェスが……‼ 〝神の愛し子〟だと⁉ そんなこと信じられるか‼」
ジェス復活の原因であるユリアに向かって、男は闇の魔法で攻撃してきた。
だが、ファイテングポーズをとってヤル気満々のユリアに攻撃が当たることはなく、体の周りに現れた防御壁に弾かれて、その攻撃が男に返っていく。ユリアに害をなす攻撃を撥ね返すという、クロノスの与えた加護だ。
男は自身に当たる寸前でかわしたが、驚きを隠せない。
「まさか……竜王の加護を得ているのか? 竜族とは国交を断絶したはずだぞ⁉」
「ああ、やはりお前のせいか、コーナス・ロンド。父上を騙せたとは……まぁあの時は母上に色々あってルウズビュードにまで気が回らなかったんだろうが、あれからずっと後悔していた。ジェードの件も、誤解を招くような伝え方をしたな?」
竜王クロノスとして問うそのあまりの迫力に、一瞬怯んでしまったコーナスだが、気を持ち直して話し出す。
「はじめまして。貴方が二代目竜王、クロノス様ですね。ラクロウ様は随分と心が弱いお方でした。奥方様の件で更に弱っておいででしたので、ジェスやジェードがいかに非道かを丁寧にお伝えしました」
卑しく笑うコーナスの言葉を、クロノスはただ黙って聞いているだけだった。
しかし――
「きゅろをいじめりゅなーー‼」
クロノスの長い脚の間から顔を出して、ユリアは短い手で一生懸命にパンチを繰り出した。勿論この距離で拳が届くわけもない。そんな幼子を小馬鹿にして見ていたコーナスだったが、次の瞬間、勢い良く後方に吹っ飛び気絶してしまった。
「何が起こったんだ⁉」
呆然とするシロと笑いが込み上げてくるクロノス。
「あははは! ユリア! お前のパンチ、強いな‼」
「えっへん‼ ユリアはちゅよいんでしゅ‼」
そう言ってまたパンチを繰り出そうとするユリアをシロが急いで止め、クロノスは気絶したコーナスを早速捕まえた。
そして今、謁見の間には転がるコーナスとドヤ顔のユリアという構図が生まれていた。
「コーナスがユリアに攻撃しようとして……クロノス様の強力な防御魔法に返り討ちにされたと?」
オーウェンは現実から目を背けようと、話を作り変えようとする。オーウェンとアネモネにとって、ユリアが常識外れの能力を次々と獲得していることは頭痛の種だった。
「ちがうもん! ユリアがパンチしてたおちたにょ!」
だが、愛娘ユリアによって現実に引き戻される。
「ユリア~凄いね~!」
ぶれないのはオーランドだけだ。
「エヘヘ~!」
照れるユリアだが、正しくは、パンチした瞬間に強烈な波動がコーナスに向けて放たれたのだ。
ジェスはユリアの頭を優しく撫でると、倒れているコーナスの元へ歩いていった。
ジェスはコーナスの頬を叩いて無理矢理起こそうとする。そして頬の痛みで目が覚めたコーナスは、封印したはずの憎しみの根源を目の前に捉えた。
「おい、そんなに俺が憎いか?」
ジェスはコーナスの前に立ち問いかけるが、何も返答はない。コーナスはただ黙り、ジェスを睨み付けている。
「なぁ、コーナス・ロンドがこの時代で死んだら子孫達はどうなる?」
ジェスが後ろにいる魔神マーリンに聞く。
「変わらないよ。こいつがこんな感じになっちゃった後は、奥さんが息子のために家を守っていたからね。女傑って感じの凄い人だよ! こいつには本当に勿体ないよ!」
「アイリーンか……彼女なら大丈夫だ」
そう言いジェスが笑うと、黙っていたコーナスがいきなり喚き出した。
「黙れ! アイリーンも……お前のことを好いていた! 何処までも私のモノを奪っていくんだ!」
怒りに震えるコーナスの脳裏には、これまでの記憶が蘇っていた。
遥か昔の話だ。コーナスとジェスは、共に建国に力を尽くした同志であり親友だった。
ジェスという男は皆をまとめ上げるカリスマ性や、圧倒的な力、そしてその人柄で人々から支持されていた。
そんなジェスの右腕として苦楽を共にしていたコーナスには、アイリーンという愛しの妻がいたが、彼女はいつもジェスの話ばかりしていた。自分がどんなに頑張っても、アイリーンも人々もジェスを称賛する。二人の間には息子がいたが、それもコーナスの慰めにはならなかった。
次第に劣等感と嫉妬に苛まれるようになったコーナスは家に帰らなくなり、王宮で暗躍するようになる。ジェスがいなくなればアイリーンは、人々は自分を評価してくれると考え、ジェスを恐れる人族達を上手く利用することにした。
そして運命の日。
人族達からの和睦したいという申し出を喜んで受け入れたジェスを待ち受けていたのは、親友からの残酷な裏切りだった。
隙をついてジェスの封印に成功したコーナスは早速、国中に嘘の情報を流して国王の乱心だと広めるが、キリヤやジェードはその話を決して受け入れず、側近や国民すらも信じようとせずにジェスの行方を探し始めた。
そしてアイリーンもその捜索隊に参加すると聞いたコーナスは、更に怒りと絶望感で我を失っていき、禁忌とされる闇魔法を使い始めた。命を削る代償にキリヤやジェード、側近達に強い【魅了】をかけたのだ。そしてジェスや自身が大切にしていた国が滅びに近付くのを楽しんでさえいた。
ただ、アイリーンには【魅了】をかけられなかった。今のこの醜い姿を彼女だけには見られたくなかったのだ。
そしてジェードの死を見届けたコーナスは、彼の息子達にも【魅了】をかけた。王女は災いの種だと信じ込ませるために。
この頃、コーナスの暗躍によって粛清の嵐が吹き荒れ、そして疫病によって竜人達は確実に数を減らしていた。
このまま混乱期が続けば国はいずれ破滅するだろうが、コーナスにゆっくりと見ている時間はもうない。そのため、ジェードの息子達を争わせる計画を立てていた時、ずっと持ち歩いていたジェスを封印した箱が急に光り出して、忽然と消えてしまったのだ。
突然のことで酷く焦ったコーナスだが、何故か箱の気配は感じていて、後を追うために調べたところ、かなり先の時代に飛ばされたことが分かった。その時代に行くには更に命を削らなければならない上に、二度とこの時代には戻れない。
考えたのはアイリーンのことだ。だが、こんな闇にまみれた男が近くにいない方がいいと思い、結局会わずに未来にやって来た。
そして驚愕の事実が判明する。この時代ではあの悪習がなくなり、平和な国になっていたからだ。
原因はユリアという王女で、その幼子は最強の魔物を従えた〝神の愛し子〟だという。エズラという少女を利用して、また一から暗躍しつつ、封印の箱を探し始めたが、問題が一つあった。この時代にやって来てからは、不思議なことに箱の気配が急に消えたのだ。
そして、何もかも上手くいかないコーナスに追い打ちをかけるように、ジェスの気配が復活した。箱から出られたとしても待っているのは死しかないはずの忌々しい男は、何故か生きていた。
王宮にいることが分かったので、ジェスをまた封印しようと子孫であるガイナスの影に隠れて無事に忍び込んだが、運悪くあの幼子に遭遇してしまったのだ。
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