上 下
65 / 99
5章 旅立つ日はいつ?

チロの選択

しおりを挟む
チロは夢を見ていた。


ごみ溜めにうずくまり、暗闇を唯一月が明るく照らしてくれる部屋。チロは薄汚れた服に傷だらけの身体で眠っていた。衰弱状態を見ると、この先後どのくらい生きていられるだろうか。


「おにゃか…しゅいたにゃ…」


チロは虚ろの目で食べ物を探すが何もない。絶望の中で虚ろな目がゆっくりと閉じようとした時、目の前が優しい光に包まれる。光の中心に現れたのはエチカだった。


「チロ!しっかりして!」


異臭を放つチロを、愛おしそうに抱き抱えて泣いている。


「チロ!大丈夫ですか!」


光の中からランバートもやって来て、泣きながらチロに水を飲ませてくれる。場面は変わり、この屋敷でエチカとランバート、そしてカイデルとビビアンに囲まれて幸せそうに笑うチロと、エチカに抱っこされている赤ちゃん。チロが赤ちゃんをあやしてあげると喜んでいる。



そこで目が覚めたチロは、泣き腫らした目をぱちくりさせて周りを見渡す。チロを大事そうに抱き抱えて眠るエチカと、チロの横でスヤスヤ眠る大切な親友達。



チロは静かにベッドから降りると、部屋を出てランバートを探す。途中でセバスチャンに会ったので急いで連れていってもらう。


「とうしゃん!たいへんでしゅよ!」


いきなり入ってきたチロに驚いたが、元気な姿にホッとする。


「チロ、どうしたんだい?」


ランバートの問いかけに、爆弾発言をする。


「かーしゃんあかちゃんうまれりゅよー!かわいいんだよー!」


「「はぁ!?」」


驚くランバートとセバスチャン。


「…どう言うことでしょうか?」


「分からないが…チロ、本当かい?」何故か聞いてしまう


「うん!チロにょいもーとだよ!」小躍りして喜ぶチロ


ランバートはチロを抱っこして、エチカの所に行こうと部屋を出ると、丁度チロを探していたエチカに出くわす。


「チロ…良かったわ!いなくなったと思って…」


涙を流し座り込むエチカを、チロが心配そうに近寄る。だがここでも爆弾発言をする。


「かーしゃんにゃかにゃいで…あかちゃんがびっくりしましゅよ!」


「へ?」驚きで涙が止まるエチカ


「エチカ…医者に見てもらおう。最近体調があまり良くなかっただろう?」


エチカは最近具合が悪そうにしていて、ランバートは医者に診てもらおうと思っていたのだ。


「そうね…でもチロは何を言ってるの?」


「チロねーゆめみたにょ!」


「「夢?」」


「うん!しょこでねーとーしゃんとかーしゃんとじーじとばーばとチロとあかちゃんがいたにょー!」


そこからチロの話が始まった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

影の王宮

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:502

貴方といると、お茶が不味い

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,144pt お気に入り:6,800

国王陛下の大迷惑な求婚

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,640

異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,746pt お気に入り:2,235

異世界で魔工装具士になりました〜恩返しで作ったら色々と大変みたいです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,190pt お気に入り:1,319

ダンジョン配信

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

極道の密にされる健気少年

BL / 連載中 24h.ポイント:2,250pt お気に入り:1,736

処理中です...