孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

1章 国王陛下ですよね？

ランバート先生の秘密

「ランバート、ルルに嘘は通じないぞ。本当の事を話した方がいいぞ」


ジョンさんに言われて、ランバート先生は暫く考え込んだと思うと静かに話し始めた。


「私にはヨシュアという子供がいました。だが2年前にメイドによって誘拐され行方不明になってしまいました…私は必死に探しましたが見つけられず…まさか孤児院にいるとは思いませんでした。」



「ジョンさんが気付いたんだね…チロを」


「昔見たときは赤子だったが面影が残ってたからな」


「あの…チロがどんな状態で発見されたか知ってるんですか？」


「はい…全て聞きました…」
ランバート先生は苦しそうに顔を歪めている。


「妻はヨシュアがいなくなってから部屋に引きこもるようになってしまい…最近は身体も弱ってきて寝込んでいます。」


「…チロを引き取るんですか？」


「そのつもりです」
ランバート先生は決心した顔をしていた。私は何も言えずただチロを見つめる。


「まぁまずはチロをこいつん家に連れていこうと思ってな、少しずつ慣れていかねーとな」


チロは何も分かってなく、美味しそうに出されたクッキーを頬張っている。私はチロと離れる事を考えないといけないんだ。ランバート先生はチロに優しく問いかける。


「チロ君、もし良かったら家に遊びに来ないかい？」


「ちぇんちぇいのおうちー？…ねーねもいく？」


チロは不安そうに私を見る。そんなチロを見て涙がこみ上げそうになり必死で抑える。


「もしルルさんが良かったら一緒に来ませんか？」


ランバート先生はすがるような目で私を見るので、なんとも言えない気持ちのまま頷く。


「ねーねも行くからチロも行こう？きっと大きいお家だよ～探検しよう！」


「うんいくー！たんけんしゅるー！」チロは嬉しくて小躍りしてる


ランバート先生は泣きそうになりながら私にお礼を言った。ジョンさんは静かにそんなやり取りを聞いていた。


私はチロと部屋に戻ってきた。


「ねーね！たのしみだねー。いちゅいくの？」


「2回寝たらだよ…ねえチロは家族が欲しい？」


馬鹿だな…3歳の子に何聞いてるんだろ。


「うーん…かじょくはねねーねとアンリとーあとね…ジョンしゃん！」


チロは嬉しそうに話している。私は我慢出来ずに涙が出てきて止まらなくなってしまう。そのタイミングでいきなりドアが開きジョンさんが入ってきて私を抱きしめた。


「ごめんな、お前の気持ちも考えずにあいつを連れてきたのは俺だ。俺が悪いんだ」


「そうだよ！何で…グズっ…チロと離れたくない！」


「あぁ。そうだな…ごめんな」ジョンさんは優しく私の背中をさする。


「ねーね？…グズっ…どーちたの？」


チロは私が泣き出したのが不安だったのか泣き出してしまう。私は必死で涙を拭くと無理矢理にでも笑顔を作る。


「チロ兵士！…一緒に笑いましょう！」


「グズっ…あい！」


そして2人で笑った。