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1話目
9.初めての口答え
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翌日の聖女選定を控えていても緊張はなく、意外にもゆっくりと寝ることができて、目覚めも良かった。
身なりを整えていると、ズカズカといつもの足音がして、扉が開いた。
「ソフィア、力をもらいに来たわ」
堂々と言って除けるミアに白目をむきそうになる。
「いやよ」
初めての私からの拒絶に驚いているのか、ミアはぽかんとした表情を浮かべる。
「何言ってるのソフィア? 今日は聖女選定の日なんだから、大きな力を貸してくれなきゃ」
「この一ヶ月は遮断されて情報もない中、国を助けるために仕方なく貸してたわ。
それにミア、あなたの嫌がらせから逃れるためにね。
でも今日私は自由になるんだから、もうあなたのわがままを聞く必要はないわ」
ミアは驚いたように口を開ける。
そして、ハッとしたように表情を戻す。
「待って。ねえ、ソフィア。あなたそんな顔でみんなの前に出るの? 」
ミアは私の顔を指差して、薄く笑う。
「選定の日は王宮からも、教会からも、それから大学からもいろんなところから人が集まってくるのよ。
ほら、鏡見てみなさいよ」
わたしは目の前の鏡を見つめる。
「こんなんじゃ、誰も聖女だなんて思わないわ。ただの怪物よ。
そんな姿じゃ立てないでしょ? 大人しく代わりに私に任せてくれればいいんだよ」
ミアに怪物と言われた顔は相変わらずにボロボロにただれた皮膚。
痒くて寝ている間にかいてしまったのか、血が少し滲んでいる。
皮膚のぶよぶよは、薬の効果が薄かったのか、今は元に戻っている。
それでもぶつぶつとした紫や赤の湿疹は目立つ。
「いいの、スカーフで隠すわ」
肌が隠せるように着た裾の長いワンピースの上から、更にスカーフを頭からかぶった。
薄い生地だから、顔を覆っていても前が見えるし、目が覆われてしまっても力を使えば透視ができる。
それに。
「ミアのその幼い服装よりも、よっぽど落ち着いているし、魔法使いみたいで気に入ってるわ」
ミアの言葉に気分は心底落ち込んだけど、この子とも今日でおさらばだと思うと、鏡に映る自分の姿すらも少し楽しい気分で見れるようになっていた。
そうよ。異国にはこんな服装の人も多いみたいだし、なんだか神秘的で、いい感じ。
一方で褒美としてもらったのか、自分で買ったのか、どちらかなのかは釈然としないけど、豪勢でフリフリとしたピンクのドレスを着たミアは顔をしかめる。
「ソフィア。そんな生意気なことよく私に言えるわね。
部屋に篭ってたら頭おかしくなっちゃったの?
自分が似合わないから負け惜しみだって、そんなこと誰が見てもわかるわ」
ミアは一度もったいぶったように間を開けてから伝える、
「本当は言わないつもりでいたんだけど、これはね、ダンからもらったの。
未来の可愛らしい聖女にとってもお似合いだって贈られたのよ。
これをきたら、きっと男の子はみんな私に夢中だから心配だよって言われちゃった。
ねえ、ソフィアはダンから何をもらったの? 」
にこにことした表情で、ミアは平気で私の傷をえぐってくる。
人生で一番の贈り物だと思ったくらいに好きだった彼だけど、私の最後の記憶は、気持ちが悪いと顔を歪めて怪物のような表情で私を見るダン。
もちろん、その後に連絡なんてもらっていない。
その間もミアと仲睦まじくやっていたのは、透視しなくても最後の二人の雰囲気から容易にわかってしまう。
それでも、1ヶ月間部屋に引きこもって冷静になれば、あんな男の本性がわかって良かったと思える。
私は息を吐いた。
そして、もう機嫌をとるのはやめた。
「ミア。そのドレスは確かに可愛らしいミアにはぴったりだけど、お遊戯会に参加する服装みたいだわ。
お金を払って着てくれと言われても、私はこんな大切な日には着たくないかな。
だって国を守る『聖女』という意味では、信頼感を得られないと思うの。
人気者投票じゃないのよ、今日は聖女を選ぶ日なの」
今日でお別れだと思うと、もう何でも言えた。
ミアは顔を真っ赤にする。
「よくソフィアの分際でそんな口聞くわね!」
地団駄を踏みそうな姿に、思わず笑ってしまう。
その私の様子にさらに機嫌を悪くするミア。
「今に見てなさい。
あなたの能力なんてなくても、私には力があるの。
聖女であることを証明して、そんな風に言ったこと後悔させてあげるから!」
ミアはそう言って、大きな音を立てて部屋を出て行った。
そして、そのすぐ後に警備の人から名前を呼ばれて、私は選定の場である聖堂のホールへと向かった。
身なりを整えていると、ズカズカといつもの足音がして、扉が開いた。
「ソフィア、力をもらいに来たわ」
堂々と言って除けるミアに白目をむきそうになる。
「いやよ」
初めての私からの拒絶に驚いているのか、ミアはぽかんとした表情を浮かべる。
「何言ってるのソフィア? 今日は聖女選定の日なんだから、大きな力を貸してくれなきゃ」
「この一ヶ月は遮断されて情報もない中、国を助けるために仕方なく貸してたわ。
それにミア、あなたの嫌がらせから逃れるためにね。
でも今日私は自由になるんだから、もうあなたのわがままを聞く必要はないわ」
ミアは驚いたように口を開ける。
そして、ハッとしたように表情を戻す。
「待って。ねえ、ソフィア。あなたそんな顔でみんなの前に出るの? 」
ミアは私の顔を指差して、薄く笑う。
「選定の日は王宮からも、教会からも、それから大学からもいろんなところから人が集まってくるのよ。
ほら、鏡見てみなさいよ」
わたしは目の前の鏡を見つめる。
「こんなんじゃ、誰も聖女だなんて思わないわ。ただの怪物よ。
そんな姿じゃ立てないでしょ? 大人しく代わりに私に任せてくれればいいんだよ」
ミアに怪物と言われた顔は相変わらずにボロボロにただれた皮膚。
痒くて寝ている間にかいてしまったのか、血が少し滲んでいる。
皮膚のぶよぶよは、薬の効果が薄かったのか、今は元に戻っている。
それでもぶつぶつとした紫や赤の湿疹は目立つ。
「いいの、スカーフで隠すわ」
肌が隠せるように着た裾の長いワンピースの上から、更にスカーフを頭からかぶった。
薄い生地だから、顔を覆っていても前が見えるし、目が覆われてしまっても力を使えば透視ができる。
それに。
「ミアのその幼い服装よりも、よっぽど落ち着いているし、魔法使いみたいで気に入ってるわ」
ミアの言葉に気分は心底落ち込んだけど、この子とも今日でおさらばだと思うと、鏡に映る自分の姿すらも少し楽しい気分で見れるようになっていた。
そうよ。異国にはこんな服装の人も多いみたいだし、なんだか神秘的で、いい感じ。
一方で褒美としてもらったのか、自分で買ったのか、どちらかなのかは釈然としないけど、豪勢でフリフリとしたピンクのドレスを着たミアは顔をしかめる。
「ソフィア。そんな生意気なことよく私に言えるわね。
部屋に篭ってたら頭おかしくなっちゃったの?
自分が似合わないから負け惜しみだって、そんなこと誰が見てもわかるわ」
ミアは一度もったいぶったように間を開けてから伝える、
「本当は言わないつもりでいたんだけど、これはね、ダンからもらったの。
未来の可愛らしい聖女にとってもお似合いだって贈られたのよ。
これをきたら、きっと男の子はみんな私に夢中だから心配だよって言われちゃった。
ねえ、ソフィアはダンから何をもらったの? 」
にこにことした表情で、ミアは平気で私の傷をえぐってくる。
人生で一番の贈り物だと思ったくらいに好きだった彼だけど、私の最後の記憶は、気持ちが悪いと顔を歪めて怪物のような表情で私を見るダン。
もちろん、その後に連絡なんてもらっていない。
その間もミアと仲睦まじくやっていたのは、透視しなくても最後の二人の雰囲気から容易にわかってしまう。
それでも、1ヶ月間部屋に引きこもって冷静になれば、あんな男の本性がわかって良かったと思える。
私は息を吐いた。
そして、もう機嫌をとるのはやめた。
「ミア。そのドレスは確かに可愛らしいミアにはぴったりだけど、お遊戯会に参加する服装みたいだわ。
お金を払って着てくれと言われても、私はこんな大切な日には着たくないかな。
だって国を守る『聖女』という意味では、信頼感を得られないと思うの。
人気者投票じゃないのよ、今日は聖女を選ぶ日なの」
今日でお別れだと思うと、もう何でも言えた。
ミアは顔を真っ赤にする。
「よくソフィアの分際でそんな口聞くわね!」
地団駄を踏みそうな姿に、思わず笑ってしまう。
その私の様子にさらに機嫌を悪くするミア。
「今に見てなさい。
あなたの能力なんてなくても、私には力があるの。
聖女であることを証明して、そんな風に言ったこと後悔させてあげるから!」
ミアはそう言って、大きな音を立てて部屋を出て行った。
そして、そのすぐ後に警備の人から名前を呼ばれて、私は選定の場である聖堂のホールへと向かった。
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