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1話目
8.選定の前日
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選定の前日に王宮から使いとして、宰相補佐官と第二王妃の補佐官がやって来た。
王は正室の王妃(第一夫人)を溺愛しており将来有望だと言われている皇子もいる。
一方で第二王妃は政略結婚で愛はなく、だからこそ自分の息子を王に即位させようと躍起になっていると習った覚えがある。
だから王側の使いである宰相補佐官と、第二王妃の使いの二人はあまり関係性が良くは見えなかった。
「はるばるお越しくださり誠にありがとうございます。お会いできてとても嬉しいですわ」
ミアが意気揚々と声をかける。
職長や他の聖女見習い2人もにこにこと笑顔で、普段は決してしないのにお召し物を預かったり、うやうやしく対応をする。
「国のために見習い聖女として過ごしている私たちの聖堂をご案内させていただきますね」
ミアは先頭にたって、部屋の案内をしようと足を進める。
そこで宰相補佐官は怪訝そうに尋ねる。
「聖女見習いは4人いらっしゃるのではなかったですか? 」
そう聞かれて、職長の顔が引きつる。
なんて答えるのかしら、と思っているとミアが表情を崩さずに答える。
「そうなんです。もう一人いたのですが魔力の使えない子で、わたしの能力を奪って悪用とした結果、醜い顔と体になってしまったのです。
皆様に感染してしまうので、本日は部屋で休んで頂いてます」
第二王妃の補佐官が顔をしかめる。
「聖女としてあるまじき行為ですね」
まさか王宮関係者にまで平気で嘘をつくとは思わず、わたしは怒りを通り越して驚きだった。
王宮に虚偽を働き、バレてしまえば軽い罪では終われない。
ミアは要領はいいけど、そう言うところを考えられていない節がある、頭が弱いのだろうかとただ不思議だった。
聖堂を1周してから、ミアは補佐官たちを振り返る。
「聖堂のご案内は以上です。
先ほど、欲に溺れた見習聖女のお話で皆様に不快な思いをさせてしまった分、わたしの能力をお見せいたしますね」
そう言ってミアはわたしの力を使い、聖堂に結界張りを行うと、青い光で包まれる。
聖堂はすでに初日に結界を張ったから今更する必要もないことなのに、王宮へのアピールのためだけに聖なる力をパフォーマンスみたいに使うなんて信じられない。
「素晴らしいですわ、さすが聖女さまですわ」
第二王妃の補佐官が嬉しそうに手を叩く。
ミアは嬉しそうに笑い、職長は誇らしげにミアを見つめる。
さっきからダンマリだった宰相補佐官が聞く。
「魔物退治もできるんですか? 」
「ええ、ただ残念ながらここに魔物はいないのでお見せできないんです…。
あ、見てください。森の方に鹿が見えますね。代わりにあれを倒して見せますね」
ミアは3回分(3人分のはずだったけど)あげたうちの2回目の力を使う。
遠くで草をむしゃむしゃと食べていた羊が、バタン、と倒れる。
それを見て、第二王妃の補佐官はまた嬉しそうにミアを褒め称える。
宰相補佐官は何を考えているのかわからないけど、厳しい顔を浮かべていた。
何の害もない動物を聖女の力で倒すミアにも、それに喜ぶ第二王妃の補佐官にも呆れしかなかった。
「素晴らしいです、あんな遠くにいながら退治ができるんですね。
作物を育てたり、花を咲かせたり、実を増やしたりもできるんですか?」
「ええ、では。このままあの草一面を見ていてください」
ミアは3回目の力を使うと、羊の餌である草を全て花に変えてしまった。
のんびり草を食べていた他の羊たちがうろたえる。
羊飼いも突然の変異に腰を抜かしている。
「ミアさまは歴代のどんな聖女よりも素晴らしいですわ」
第二王妃の補佐官は使いのものを使って馬車に積んであったプレゼントを持って来させるとミアに贈る。
「未来の聖女さまに第二王妃ジュアンナさまより贈り物です」
ミアは飛び跳ねて喜ぶ。
無邪気な姿に第二王妃補佐官と職長は魅了されたように目を細める。
無口な宰相補佐官はそんな様子を冷ややかな目で遠巻きに見ている。
わたしが話す機会はないけど、この人だけは話のわかる人かもしれないと思った。
「素敵なものをいつもありがとうございます。とても嬉しいです」
喜んで、素晴らしいわと褒めた称え合うミアたち。
自分の倒した羊も、羊たちから奪った大切な草も放っておくつもりだろうか。
あの子が聖女になんかなってしまったら、この国はお花畑になってしまう。
ドッと疲れてベッドに倒れ込んだ。
でも、何はともあれ
明日は聖女選定の日だ。
ミアはわたしのあげた能力を使い切っているし、ただ私の能力を証明してミアの無能力が露呈すればいいだけ。
王は正室の王妃(第一夫人)を溺愛しており将来有望だと言われている皇子もいる。
一方で第二王妃は政略結婚で愛はなく、だからこそ自分の息子を王に即位させようと躍起になっていると習った覚えがある。
だから王側の使いである宰相補佐官と、第二王妃の使いの二人はあまり関係性が良くは見えなかった。
「はるばるお越しくださり誠にありがとうございます。お会いできてとても嬉しいですわ」
ミアが意気揚々と声をかける。
職長や他の聖女見習い2人もにこにこと笑顔で、普段は決してしないのにお召し物を預かったり、うやうやしく対応をする。
「国のために見習い聖女として過ごしている私たちの聖堂をご案内させていただきますね」
ミアは先頭にたって、部屋の案内をしようと足を進める。
そこで宰相補佐官は怪訝そうに尋ねる。
「聖女見習いは4人いらっしゃるのではなかったですか? 」
そう聞かれて、職長の顔が引きつる。
なんて答えるのかしら、と思っているとミアが表情を崩さずに答える。
「そうなんです。もう一人いたのですが魔力の使えない子で、わたしの能力を奪って悪用とした結果、醜い顔と体になってしまったのです。
皆様に感染してしまうので、本日は部屋で休んで頂いてます」
第二王妃の補佐官が顔をしかめる。
「聖女としてあるまじき行為ですね」
まさか王宮関係者にまで平気で嘘をつくとは思わず、わたしは怒りを通り越して驚きだった。
王宮に虚偽を働き、バレてしまえば軽い罪では終われない。
ミアは要領はいいけど、そう言うところを考えられていない節がある、頭が弱いのだろうかとただ不思議だった。
聖堂を1周してから、ミアは補佐官たちを振り返る。
「聖堂のご案内は以上です。
先ほど、欲に溺れた見習聖女のお話で皆様に不快な思いをさせてしまった分、わたしの能力をお見せいたしますね」
そう言ってミアはわたしの力を使い、聖堂に結界張りを行うと、青い光で包まれる。
聖堂はすでに初日に結界を張ったから今更する必要もないことなのに、王宮へのアピールのためだけに聖なる力をパフォーマンスみたいに使うなんて信じられない。
「素晴らしいですわ、さすが聖女さまですわ」
第二王妃の補佐官が嬉しそうに手を叩く。
ミアは嬉しそうに笑い、職長は誇らしげにミアを見つめる。
さっきからダンマリだった宰相補佐官が聞く。
「魔物退治もできるんですか? 」
「ええ、ただ残念ながらここに魔物はいないのでお見せできないんです…。
あ、見てください。森の方に鹿が見えますね。代わりにあれを倒して見せますね」
ミアは3回分(3人分のはずだったけど)あげたうちの2回目の力を使う。
遠くで草をむしゃむしゃと食べていた羊が、バタン、と倒れる。
それを見て、第二王妃の補佐官はまた嬉しそうにミアを褒め称える。
宰相補佐官は何を考えているのかわからないけど、厳しい顔を浮かべていた。
何の害もない動物を聖女の力で倒すミアにも、それに喜ぶ第二王妃の補佐官にも呆れしかなかった。
「素晴らしいです、あんな遠くにいながら退治ができるんですね。
作物を育てたり、花を咲かせたり、実を増やしたりもできるんですか?」
「ええ、では。このままあの草一面を見ていてください」
ミアは3回目の力を使うと、羊の餌である草を全て花に変えてしまった。
のんびり草を食べていた他の羊たちがうろたえる。
羊飼いも突然の変異に腰を抜かしている。
「ミアさまは歴代のどんな聖女よりも素晴らしいですわ」
第二王妃の補佐官は使いのものを使って馬車に積んであったプレゼントを持って来させるとミアに贈る。
「未来の聖女さまに第二王妃ジュアンナさまより贈り物です」
ミアは飛び跳ねて喜ぶ。
無邪気な姿に第二王妃補佐官と職長は魅了されたように目を細める。
無口な宰相補佐官はそんな様子を冷ややかな目で遠巻きに見ている。
わたしが話す機会はないけど、この人だけは話のわかる人かもしれないと思った。
「素敵なものをいつもありがとうございます。とても嬉しいです」
喜んで、素晴らしいわと褒めた称え合うミアたち。
自分の倒した羊も、羊たちから奪った大切な草も放っておくつもりだろうか。
あの子が聖女になんかなってしまったら、この国はお花畑になってしまう。
ドッと疲れてベッドに倒れ込んだ。
でも、何はともあれ
明日は聖女選定の日だ。
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