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2.突然の裏切り-2

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「どういうことだい?」

ダンは怪訝そうに私とミアを見る。


ミアはみんなに愛されて、信頼されているから、ミアの言うことがいつもみんなの中で真実になる。

だけど、ダンは違うと知っていたから、ゆっくり答えた。

「すれ違っただけなの。わざと押したりはしてない」

言いながら、ダンのミアを見つめる瞳と触れる手が少しだけ親しげで、違和感を感じた。

ミアがダンの腕に抱きついて、泣き叫んだ。

「私がダン様に会いに行こうとしたら、ソフィアから「私の婚約者に会うな」って、急に背中を強く押されたの」

ミアは膝からは流れる血をダンに見せるようにして、涙を流す。

「そんなこと言っていないわ」

ミアが話を誇張するので私は抗議したけど、ミアは勢い付いたのか、無視して話し続ける。

「それに今日ソフィアは聖女見習いなのに能力がないから、結界張りを代わりにやれって私に言ってきていて。

でもそれは神殿への嘘になるし自分のためにならないって私が言ったら、ぶたれたの。

ソフィア、きっと私のことまだ怒っててこんなことをしたのよ」

事実無根の主張に、突然の親友の裏切りに、体が震えるのを感じた。

確かに結界張りを頼まれたことも、怒ったことも、ぶったことも事実だ。



彼女は完全に変わってしまったと確信した。

いままで彼女は私の力を使ってはいたけど、仕事はしっかりと終わらせていた。

だけど最近は、やってもいないのに嘘をついて職長に仕事の完了報告をするようになり、その結果、結界を張るべき街に結果が張られず、モンスターを出現させて市民を危険に合わせていた。

仕方なく彼女が仕事をした後にこっそり私が尻拭いをしていた。

今日はそういう3人の怠慢で放置された仕事を補完した直後に力を貸すように頼まれたから、さすがに体がもたなくて断った。

そしてミアが怒って私をぶった。

「ミア、さすがにそんな嘘を並べられたら私も怒るわ」

ダンはシクシク泣くミアの背中をそっと撫でると、ミアを叱る私を少し怪訝そうな顔で見つめる。

ミアは自分の魅せ方を知っている。

私に怯えたような表情を見せて体を小さくさせ、小動物のような守ってあげたい庇護欲を唆る。

ダンの変わって行く表情を見て、きっとこのまま彼も騙されて彼女を庇うのだろうなと早々に悟って、悲しくなった。

「うそなんかじゃないわ! みんなに聞いてみて! ユリア来てくれる?」

ミアは他の見習い聖女を呼んだ。

ユリアは貧乏な家出身で、お金持ちの商家出身のミアからお金で何かと言うことを聞いていた。

「ユリア、ダンさまに本当のことを話してくれる?」

「はい、私はソフィアがミアに仕事を何度も押し付けるその現場を見ていました。

ソフィアはダンさまの前ではいつも天使みたいに振る舞うけど、私たちのことを辛くいじめるんです」

私は長年尽くしてきた友達の裏切りに、絶望とか悲しみを通りこして、諦めに近いものを感じていた。

「ユリア、あなた何を言っているかわかってる? 」

仮にも誓いを立てた見習い聖女が、聖堂とこんなに堂々と嘘を吐くことの重さをわかっているのだろうか。

私たちの振る舞いが国に影響を与えて、全て返ってきてしまうというのに。

私が止めようとすると、ミアが泣き真似をした。

「ソフィア、嘘がばれたからってユリアをいじめるのは、やめてください! 」
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