15 / 22
1章 始まり
13.⦅壁を登る⦆不審者って!?
しおりを挟む「おい!不審者!とうとう追い詰めたぞ!!」
アーサーは、そう叫びながら部屋の中に入ると、
先ほどまで追いかけていた奴は、まるで何事もなかったかのように勝手にリビングの椅子に座り、手に持った大きなおにぎりにかぶりついていた
「おい、お前は誰だ!!なんでフェンスの外にいた!!」
アーサーは左手のナイフを奴に突き立てたまま、大声で威圧した。
「え“っあ…いや、ちゃうで!?あ、怪しくないで!!?」
と奴はおにぎりを持ったまま両手を左右に振った。
いや、誰がどう見ても怪しい。壁を登って3号棟の窓から侵入する時点でおかしい。
「じゃあなんでさっき廃墟にいた?」
と眉間にシワを寄せたまま聞くと、テンパったように
「ちゃうねんちゃうねん!なんか気になってんて!!だって廃墟ばっかりやしさぁ…なんか変な人間がおったし…」
とそいつは眉尻を下げて大きく首を振った。
「…何を弁解したいのか全くわけがわからない…、そうだな、不審者として軍の方にあとは始末してもらおう」
「ふ!!不審者ちゃうって!!!」
普通そこは『軍に始末してもらう』事に驚くか怯えるかするだろ
…やばいやつと言うのはつくづく話が通じない…
アーサーは話の通じない嫌いな人間を思い出し、ハァーと深くため息をついた。
すると、ヘイデンと先ほどの謎の学生2人が部屋に入ってきた。
________________________________________________
日向は紫郎と3階まで登ると、後ろからヘイデンがやってきた。
「フェンスは!?」
「あぁ、すぐ修理が来たからそっちに任せた。それに…
もしなんかあった時、君たちだけじゃ危ないからね…」
ヘイデンも先ほどの壁を登った男のことを用心していたようだ。
先ほどからアーサーが何かを叫んでいるような声が聞こえており、部屋で対話していることは日向もわかっていたので、3人で静かに廊下を歩いた。
部屋の扉は開いており、用心深く中に入ると、手前には警戒MAXなアーサーと、奥の机にはリュックを置いて、おにぎりを片手に立ちすくんでいる長身の黄色い髪の少年がいた。
「あれ…?」
なんだか見覚えがある…
「おや?そなた、ヘリコプターの…?」
と紫郎が言うと、日向も思い出した!
「あっ!!そうだ!さっき一緒だった琥博くんだよね!!」
「あ!日向っちとしろっちやんな!!」
そう彼が返事をすると、ヘイデンとアーサーが二人してこちらを見た。
「なに!?知り合いなのか!?」
「えっと…実は…
ヘリコプターで一緒にアルバイトにきたんです…」
「でぇ!?」「はぁ!?」
ヘイデンの間抜けな驚き顔と、アーサーのキレてるような表情が同時に日向に問い詰めた。言葉では言っていないが、2人の表情は続きの説明を求めているようだ。
「えっと…アメリカの空港を出てヘリコプターに案内されたんですけど、その時に先に琥博君が乗ってて…」
「それで、彼と3人でヘリコプターに乗ってこの島に到着したのだ」
そうだ、私たちが降りたりしている間に、琥博くんはどこかに行ってしまってたし、自分達はバリーを助けたりと忙しかったことで彼の存在を完全に忘れていたのだ…
「じゃぁ…つまり、アルバイトは元から3人だったってことか…?」とヘイデンが眉をひそめてこちらを見ている
「そやで!!」琥博の陽気な関西弁が聞こえてきた。
「おい!!ちょっと待て、アルバイトってなんのことだ!?」
ひとり、何も知らないアーサーは片眉をひそめて言った。
「あぁ、突然なんだが、彼女たちはアルバイトとして新しくここに配属されたんだ!2か月の間、仲良くやってくれ!」
と言うと、紫郎も「うむ、紫郎だ、よろしく!」と続けて挨拶した。
「はぁ?本気か?そいつらガキンチョだろ。」
眉をひそめながらアーサーはそう言った。
高校生という大人と子供の境目である時期を生きている日向は、ガキンチョじゃないわい!と大人ぶりたかったが、それを口にできるほど強気な人間ではなかった。
「ま、挨拶だけならいい、どうせこの先話すこともねぇだろうからな。それならさっさと出て行ってくれ。そこの不審者も連れて。」
とアーサーは言うと、アルバイトのことに全然興味がなさそうだった。
「ふっ不審者ちゃうって!!」
「ところで、バリーはどうした?普通こういうことはバリーが言いにくるだろ」
と普段とは違うようすにアーサーは不思議がっていた
「あぁ、その事についてはバリーから伝言を預かってる」
というと、ヘイデンは胸についているポケットから紙を出し、パッと開いた。
「はぁ?手紙?」
アーサーは何事か?という感じの険しい顔でヘイデンの方を見た。
「んんっ じゃあ読むぞ…
『アーサー、バリーだ。少し怪我をしてしまって、今はヘイデンにこのことを任せている。直接説明できなくて申し訳ない』」
「はぁ!?怪我だって!?」
アーサーは目を見開き、身を乗り出して驚いた。
「ゾンビにやられたのか!?」
「いや…事故で爆発に巻き込まれたらしい。詳しいことは後で直接バリーに聞いてくれ」
バリーの状況をしらなかった日向もそれを聞いて驚いた。右肩の脱臼や、体全身の傷を見た感じからして、結構危ない事故だったようだ。
「ったく…」
アーサーはゾンビじゃなかったことに安心したのか、呆れている態度だったが、どこかほっとしているような表情を浮かべていた。
「じゃ、続きを読むぞ」
とヘイデンはそんなアーサーの気持ちなどお構いなしに手紙を読み進めた。
「えーっと、『彼女たちのことを聞いたと思うんだが、これから2ヶ月間彼女たちと一緒に仕事をしてもらいたい。』」
「はぁ!?『一緒に仕事』だと!?」
手紙の内容を聞いた途端、先ほどの安堵の表情から、たちまちしかめっ面に戻った。
「どう言うことだよ!!」
とアーサーがヘイデンに問い詰めるが、ヘイデンは対応が面倒なのか、アーサーの方を見ずに怒っているアーサーの声にかき消されないように、声量をあげて続きを読んだ
「えーーっと、『その上で、君の家で一緒に生活してもらいたい。詳細は後ほど話す』以上っ!!」
「はぁ!!??」
アーサーは信じられないと言った表情でヘイデンの方を見ていた。
一気に読み上げたヘイデンは自分の任務が終わったことでようやくアーサーの質問に応えた。
「書いてある通りだ、ここなら左の部屋が空いてるだろ?」と左の扉を指差して言った
「部屋が空いてるとかの問題じゃねぇんだよ!いやに決まってんだろ!!!」
アーサーはしかめっ面をさらに怖くして、声を張り上げた。
「でもアーサーだって知ってるだろ?俺らの部屋がきたねぇってことを…」
「片付けたら2部屋は用意できんだろ!!」
「彼女たち2人だけならそれでもいけたかもしれないけど、3人に増えちまったからなぁ」
というと、ヘイデンは困った表情で首をすくめた
「ぐっ…」
アーサーも正論を言われてしまい、言い返せなくなってしまった
だがまだ反抗足りないようで、アーサーは叫んだ。
「あーーー!!くそ!!
俺は1人でやってんだよ!!誰がこんなしらねぇ奴らと仕事するか!!」
「それにここだって俺の部屋なんだよ!誰かと一緒に生活するつもりなんかねぇんだよ!」
そこまで言いきったアーサーは、興奮して肩で息をしていた。
彼は結構短気で怒りっぽいところがあるようだ…
…日向はどこか反抗期の頃のひとつ下の弟を思い出した。
あの頃の弟はなんにでも否定するので、日向も困ったものだった。バリーの苦労が目に浮かぶ…
だが、そんな反抗などなんともないようなヘイデンはさらにアーサーが怒りそうなことを付け加えた
「あ、バリーからこの紙渡される時に言われたんだが、『少しは他人と仲良くした方が楽しいぞ~☆』だとよ」
「ちっ!!ふざけんなっ!くっそ…バリーめ…」
と静かに呟いた。彼が気にしていることを言われたみたいだ…
その様子をヘイデンはニヤニヤしながら見ていた。ヘイデンはどうやら、アーサーをからかうのが好きらしい
「いいか、俺は1人がいいんだよ!この家に1人で十分だし、仕事も1人でいいんだよ!!」
そうアーサーが言い残すと、右奥にある部屋に入り、バタン!と大きく音を立ててドアを閉めた。
「やれやれ…あいつ人見知りなところがあるんだよ。仲良くなったら大丈夫なんだけどなぁ…」
とヘイデンはこちらを向いて申し訳なさそうな表情をした。
確かに今の会話の間、アーサーがこちらを見ることはほとんどなかった。人見知りだと思うと本心で私達を嫌がっているわけではないのかもしれないと少し安心した。
「それにあいつの仕事はピカイチだから、きっと信頼できるリーダーになると思う。君たちにはちょっと苦労かけるが、根はいい奴だからきっと仲良くなれると思うぜ!」
ヘイデンはアーサーのことを認めているようだ。日向も仲良くなれるといいな…と淡い期待を抱いた。
「じゃぁ、一旦俺はバリーに報告と…そこの『不審者くん』と話でもしてこようか。フェンスのことなどで色々と話があるからなぁ…」
ヘイデンはこちらを見ながら、面倒だというような表情をしてみせた
「そういえばさっきから静かだな?」
紫郎がそういうので、琥博の方を見ると…
「ぐぅ…」
なんと…おにぎりを片手に椅子に座ったまま口を大きく開けて、大爆睡しているのだ…
「さ、さっきの会話で寝れたの…?」
アーサーもヘイデンも結構な声量で話し合っていたので、まさかこの状況で寝てるとは日向も思わなかった…
これから一緒にゾンビを倒すの、大丈夫かな…
短気で人見知りなアーサーに、壁を登るよくわからない琥博、この気難しい先輩と自分。バラバラな4人で無事にゾンビを倒すことができるのだろうか…
「おい…こいつを起こして行かなきゃなんねぇのかよ!!」
そしてヘイデンの仕事がまた1つ増えた…
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
ご覧いただき、ありがとうございました!
今更気づいたのですが…webコンテンツ大賞に24ptもポイントをいただいておりました!!本当にありがたくて涙が出そうです😭投票してくださった方、本当にありがとうございます!!5万字達成頑張ります!!
ファンタジー大賞にエントリーしていますので、よければお気に入りやコメント、webコンテンツ大賞にて「『ゾンビ島』でリゾートバイトします」に投票していただけますと、とてもありがたいです!
アルファポリスさん、いつもサイトの運営をしてくださり、ありがとうございます。
小説を読んでくださる皆様、いつもありがとうございます!
--挿絵イラストの状況↓--
・6話にイラスト掲載しました!
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
侯爵夫人は子育て要員でした。
シンさん
ファンタジー
継母にいじめられる伯爵令嬢ルーナは、初恋のトーマ・ラッセンにプロポーズされて結婚した。
楽しい暮らしがまっていると思ったのに、結婚した理由は愛人の妊娠と出産を私でごまかすため。
初恋も一瞬でさめたわ。
まぁ、伯爵邸にいるよりましだし、そのうち離縁すればすむ事だからいいけどね。
離縁するために子育てを頑張る夫人と、その夫との恋愛ストーリー。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる