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1章 始まり

13.⦅壁を登る⦆不審者って!?

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「おい!不審者!とうとう追い詰めたぞ!!」

アーサーは、そう叫びながら部屋の中に入ると、
先ほどまで追いかけていたは、まるで何事もなかったかのように勝手にリビングの椅子に座り、手に持った大きなおにぎりにかぶりついていた

「おい、お前は誰だ!!なんでフェンスの外にいた!!」
アーサーは左手のナイフを奴に突き立てたまま、大声で威圧した。

「え“っあ…いや、ちゃうで!?あ、怪しくないで!!?」
と奴はおにぎりを持ったまま両手を左右に振った。

いや、誰がどう見ても怪しい。壁を登って3号棟人んちの窓から侵入する時点でおかしい。
「じゃあなんでさっき廃墟にいた?」
と眉間にシワを寄せたまま聞くと、テンパったように
「ちゃうねんちゃうねん!なんか気になってんて!!だって廃墟ばっかりやしさぁ…なんか変な人間がおったし…」
とそいつは眉尻を下げて大きく首を振った。

「…何を弁解したいのか全くわけがわからない…、そうだな、不審者として軍の方にあとは始末してもらおう」
「ふ!!不審者ちゃうって!!!」

普通そこは『軍に始末してもらう』事に驚くか怯えるかするだろ
やばいやつ・・・・・と言うのはつくづく話が通じない…
アーサーは話の通じない嫌いな人間を思い出し、ハァーと深くため息をついた。
すると、ヘイデンと先ほどの謎の学生ガキ2人が部屋に入ってきた。  


________________________________________________


日向は紫郎と3階まで登ると、後ろからヘイデンがやってきた。
「フェンスは!?」
「あぁ、すぐ修理が来たからそっちに任せた。それに…
もしなんかあった時、君たちだけじゃ危ないからね…」
ヘイデンも先ほどの壁を登った男のことを用心していたようだ。
先ほどからアーサーが何かを叫んでいるような声が聞こえており、部屋で対話していることは日向もわかっていたので、3人で静かに廊下を歩いた。

部屋の扉は開いており、用心深く中に入ると、手前には警戒MAXなアーサーと、奥の机にはリュックを置いて、おにぎりを片手に立ちすくんでいる長身の黄色い髪の少年がいた。




「あれ…?」

なんだか見覚えがある…


「おや?そなた、ヘリコプターの…?」
と紫郎が言うと、日向も思い出した!
「あっ!!そうだ!さっき一緒だった琥博こはくくんだよね!!」

「あ!日向っちとしろっちやんな!!」
そう彼が返事をすると、ヘイデンとアーサーが二人してこちらを見た。
「なに!?知り合いなのか!?」

「えっと…実は…
ヘリコプターで一緒にアルバイトにきたんです…」

「でぇ!?」「はぁ!?」
ヘイデンの間抜けな驚き顔と、アーサーのキレてるような表情が同時に日向に問い詰めた。言葉では言っていないが、2人の表情は続きの説明を求めているようだ。


「えっと…アメリカの空港を出てヘリコプターに案内されたんですけど、その時に先に琥博君が乗ってて…」
「それで、彼と3人でヘリコプターに乗ってこの島に到着したのだ」

そうだ、私たちが降りたりしている間に、琥博くんはどこかに行ってしまってたし、自分達はバリーを助けたりと忙しかったことで彼の存在を完全に忘れていたのだ…

「じゃぁ…つまり、アルバイトは元から3人・・だったってことか…?」とヘイデンが眉をひそめてこちらを見ている

「そやで!!」琥博の陽気な関西弁が聞こえてきた。



「おい!!ちょっと待て、アルバイトってなんのことだ!?」
ひとり、何も知らないアーサーは片眉をひそめて言った。

「あぁ、突然なんだが、彼女たちはアルバイトとして新しくここに配属されたんだ!2か月の間、仲良くやってくれ!」
と言うと、紫郎も「うむ、紫郎だ、よろしく!」と続けて挨拶した。


「はぁ?本気か?そいつらガキンチョだろ。」

眉をひそめながらアーサーはそう言った。
高校生という大人と子供の境目である時期を生きている日向は、ガキンチョじゃないわい!と大人ぶりたかったが、それを口にできるほど強気な人間ではなかった。


「ま、挨拶だけならいい、どうせこの先話すこともねぇだろうからな。それならさっさと出て行ってくれ。そこの不審者も連れて。」

とアーサーは言うと、アルバイトのことに全然興味がなさそうだった。
「ふっ不審者ちゃうって!!」



「ところで、バリーはどうした?普通こういうことはバリーが言いにくるだろ」
と普段とは違うようすにアーサーは不思議がっていた

「あぁ、その事についてはバリーから伝言を預かってる」
というと、ヘイデンは胸についているポケットから紙を出し、パッと開いた。

「はぁ?手紙?」
アーサーは何事か?という感じの険しい顔でヘイデンの方を見た。


「んんっ じゃあ読むぞ…
『アーサー、バリーだ。少し怪我をしてしまって、今はヘイデンにこのことを任せている。直接説明できなくて申し訳ない』」

「はぁ!?怪我だって!?」
アーサーは目を見開き、身を乗り出して驚いた。
「ゾンビにやられたのか!?」
「いや…事故で爆発に巻き込まれたらしい。詳しいことは後で直接バリーに聞いてくれ」
バリーの状況をしらなかった日向もそれを聞いて驚いた。右肩の脱臼や、体全身の傷を見た感じからして、結構危ない事故だったようだ。
「ったく…」
アーサーはゾンビじゃなかったことに安心したのか、呆れている態度だったが、どこかほっとしているような表情を浮かべていた。

「じゃ、続きを読むぞ」
とヘイデンはそんなアーサーの気持ちなどお構いなしに手紙を読み進めた。

「えーっと、『彼女たちのことを聞いたと思うんだが、これから2ヶ月間彼女たちと一緒に仕事をしてもらいたい。』」

「はぁ!?『一緒に仕事』だと!?」
手紙の内容を聞いた途端、先ほどの安堵の表情から、たちまちしかめっ面に戻った。
「どう言うことだよ!!」
とアーサーがヘイデンに問い詰めるが、ヘイデンは対応が面倒なのか、アーサーの方を見ずに怒っているアーサーの声にかき消されないように、声量をあげて続きを読んだ

「えーーっと、『その上で、君の家で一緒に生活してもらいたい。詳細は後ほど話す』以上っ!!」

「はぁ!!??」
アーサーは信じられないと言った表情でヘイデンの方を見ていた。
一気に読み上げたヘイデンは自分の任務が終わったことでようやくアーサーの質問に応えた。

「書いてある通りだ、ここなら左の部屋が空いてるだろ?」と左の扉を指差して言った
「部屋が空いてるとかの問題じゃねぇんだよ!いやに決まってんだろ!!!」

アーサーはしかめっ面をさらに怖くして、声を張り上げた。

「でもアーサーだって知ってるだろ?俺らの部屋がきたねぇってことを…」
「片付けたら2部屋は用意できんだろ!!」

「彼女たち2人だけならそれでもいけたかもしれないけど、3人に増えちまったからなぁ」
というと、ヘイデンは困った表情で首をすくめた
「ぐっ…」
アーサーも正論を言われてしまい、言い返せなくなってしまった
だがまだ反抗足りないようで、アーサーは叫んだ。
「あーーー!!くそ!!
俺は1人でやってんだよ!!誰がこんなしらねぇ奴らと仕事するか!!」
「それにここだって俺の・・部屋なんだよ!誰かと一緒に生活するつもりなんかねぇんだよ!」

そこまで言いきったアーサーは、興奮して肩で息をしていた。
彼は結構短気で怒りっぽいところがあるようだ…
…日向はどこか反抗期の頃のひとつ下の弟を思い出した。
あの頃の弟はなんにでも否定するので、日向も困ったものだった。バリーの苦労が目に浮かぶ…


だが、そんな反抗などなんともないようなヘイデンはさらにアーサーが怒りそうなことを付け加えた
「あ、バリーからこの紙渡される時に言われたんだが、『少しは他人と仲良くした方が楽しいぞ~☆』だとよ」

「ちっ!!ふざけんなっ!くっそ…バリーめ…」
と静かに呟いた。彼が気にしていることを言われたみたいだ…
その様子をヘイデンはニヤニヤしながら見ていた。ヘイデンはどうやら、アーサーをからかうのが好きらしい


「いいか、俺は1人がいいんだよ!この家に1人で十分だし、仕事も1人でいいんだよ!!」
そうアーサーが言い残すと、右奥にある部屋に入り、バタン!と大きく音を立ててドアを閉めた。

「やれやれ…あいつ人見知りなところがあるんだよ。仲良くなったら大丈夫なんだけどなぁ…」
とヘイデンはこちらを向いて申し訳なさそうな表情をした。
確かに今の会話の間、アーサーがこちらを見ることはほとんどなかった。人見知りだと思うと本心で私達を嫌がっているわけではないのかもしれないと少し安心した。

「それにあいつの仕事はピカイチだから、きっと信頼できるリーダーになると思う。君たちにはちょっと苦労かけるが、根はいい奴だからきっと仲良くなれると思うぜ!」
ヘイデンはアーサーのことを認めているようだ。日向も仲良くなれるといいな…と淡い期待を抱いた。


「じゃぁ、一旦俺はバリーに報告と…そこの『不審者くん』と話でもしてこようか。フェンスのことなどで色々と話があるからなぁ…」
ヘイデンはこちらを見ながら、面倒だというような表情をしてみせた

「そういえばさっきから静かだな?」
紫郎がそういうので、琥博の方を見ると…

「ぐぅ…」

なんと…おにぎりを片手に椅子に座ったまま口を大きく開けて、大爆睡しているのだ…

「さ、さっきの会話で寝れたの…?」
アーサーもヘイデンも結構な声量で話し合っていたので、まさかこの状況で寝てるとは日向も思わなかった…
これから一緒にゾンビを倒すの、大丈夫かな…


短気で人見知りなアーサーに、壁を登るよくわからない琥博、この気難しい先輩と自分。バラバラな4人で無事にゾンビを倒すことアルバイトができるのだろうか…




「おい…こいつを起こして行かなきゃなんねぇのかよ!!」
そしてヘイデンの仕事がまた1つ増えた…






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